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(短編集)
R62号の発明・鉛の卵
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R62号の発明・鉛の卵の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1~12 1/1ページ
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若いころに「砂の女」以降の長編は読んでいたが、最近、ヤマザキマリさんの影響でこの初期短編集を読んでみた。失業した自殺志願者は、死者は法の外にいるからと、白委の契約書にサインを求められ、囚人番号のような「R62号」という呼び名を与えられる。貧困から逃れるために羊の「盲腸」を自分の体に移植する実験を引き受ける父親。そんな社会的な弱者へのまなざしと、奇想天外でSF的な発想、そして若き著者の創作意欲が感じとれる。「世界の安部公房」になる前の、日本的な情感が感じられもする安部公房の初期短編集。面白い。 | ||||
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「棒」を読みたくて購入。 安部公房の、男が棒になる作品が他にもあるとは知らずに最初は間違えて「友達・棒になった男 (新潮文庫) 」を購入してしまった。「棒」が収録されている本が「R62号の発明・鉛の卵」だと調べるのに、少し手間取った。 | ||||
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1953年から57年にかけて書かれた初期短編を12篇収録している。 60年前の作品なので、あっけなくて物足りない作もあるが、 それにもまして人間と社会の関りを見つめる異様な視点に強烈に惹きつけられた。 「R62号の発明」は自殺志願者をロボットに改造する。今ならサイボーグ化と表現するだろう。 皮肉で残酷な結末が印象に残る。 「盲腸」は食糧危機を回避するため、人間を草食獣にするプロジェクトが発足する。 羊の盲腸を移植された男の運命は如何に。 どちらも困窮して自分を売る男が主役だ。時代を感じさせるなあ。 良い作品は経年によって劣化するどころか、時代の証言としての価値が生じる。この二作が好例だ。 「変形の記録」は南方でコレラにかかった兵士、「死んだ娘が歌った」は売春を強制された女工が主人公だ。 どちらも幽霊である。共産党員だった作者らしい、戦後のプロレタリア文学とでもいうのか。 悲惨きわまりない話なのに、ユーモラスで妙に楽しい。 「犬」は妻の飼っている犬と男の争いを描く。不思議な味わいの嫌犬小説だ。 「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」 人肉食が常識となった世界を描く。食べる階級と食べられる階級のかみ合わなさが笑える。 紳士が全員フリークなのは、何か意味があるのか。あ、自分で齧ったのか。 「鉛の卵」冬眠機の故障で、十年後に目覚めるはずだった男は八十万年後に目覚めてしまった。 この一作だけで作者のSFセンスの素晴らしさがわかる。短編なのが惜しいくらいだ。 読みやすいし、阿部公房入門書に最適と思われる。 | ||||
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又吉さんがおすすめされていたので興味があり購入しました。 読み進めることが少し難しくもありましたが、大変魅力的な本でした。 | ||||
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収録作品である「棒」は安部公房の全短編のなかでも一二を争うくらい大好きな作品だ。むろん安部作品なので、無限の解釈ができるわけだが、私には、使い古されそしてゴミのように捨てられる労働者としての男(棒)と、子供たちにとって掛け替えのない存在である父親とが、同一のものとして存在しえるところの、矛盾、および悲しみが、極めてシュールレアリスティックに描かれてるように思われるのである。読んだらなぜだか涙を禁じえないほどだ。安倍氏ほど人情味溢れる温情な作家は日本にはそうはいまい。 | ||||
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世界初の音ゲー誕生秘話を感動的に描いた「R62号の発明」、陽気な幽体離脱ストーリー「変形の記録」、フリーク好きが高じてグロテスクなスラップスティックを目指した「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」、何百年経っても全人口に占めるバカの比率は変わらないことを直感的に示した「鉛の卵」など、楽しい作品がいっぱい。安部ビギナーにもオススメ。 ただ、迷いが感じられるのも確か。「オレもなあ、一応共産党員だしなあ、ほんとはもっとムチャやりたいんだけどソレっぽいことも書いといたほうがいいよな、うん」てな雰囲気の。 安部の小説が今も新たな読者を獲得しつづけるのは、それが単なる教条的「プロレタリアート文学」ではなかったことの証左でもある(『蟹工船』もヘイト&妄想のムチャクチャさで受けたワケで)。 政治の鎖を逃れたあとの猥雑で活力にあふれた「娯楽作家」安部を読んだ後では、この頃の安部はやや退屈に感じるかもしれない。でもそこには、悪戯好きでホラ吹きの安部の顔が見え隠れしている。 星新一のショートショートみたいに気楽に読めばいい。星新一も実際はブラックでビターな性格を隠そうともしなかった人なんだけど、そういう点でも共通するしネ! | ||||
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常に人間の存在意義を問い掛け続ける安部氏が、前衛的な手法で様々な発想を読者に晒して見せる傑作短編集。 題名作の一つ「R62号の発明」は、自殺志願の機械技師が自分の命を秘密組織に売って「R62号」と呼ばれるロボットに改造される様を戯画的に描いた佳作。組織の目的は"コストの安い"人間を製造装置に使うと言うもので、まさに人間の存在価値を揺るがすもの。ラストの皮肉(発明品)も効いている。「パニック」は、自我の薄い失業者がいつの間にか犯罪者に転落する顛末を風刺的に描いたもの。前作と共に、登場人物は無機質なのに、細部の描写は生々しく、物語の展開は破天荒と言う作者の特徴が良く出ている。「変形の記録」は、コレラが蔓延する戦場と言う極限状態の中、死者が幽体化するとの設定の下での人間模様を描いたものだが、最後に輪廻転生を用意する秀逸な作品。「死んだ娘が歌った...」は、地方の娘が東京に身売りされて自殺した所から物語が始まり、やはり幽体化した娘が故郷に帰る姿を映画の逆回しの様に描いた不思議なムードを持つ作品。「盲腸」は、羊の盲腸を自身の盲腸と入れ替える羽目になった男の違和感を通じて、人間の尊厳を謳ったもの。この研究の目的は世界的人口増加による食糧難を人間の草食化によって解決しようとするもので、クローン牛を想起させるモチーフと共に作者の先見性を感じる。「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」は、食人と言う行為を通じて、階層社会を批判したもの。「耳の値段」では、安部氏自身の名前も言及される。「鏡と呼子」は寒村における猜疑心を扱った不条理な作品。もう一つの題名作「鉛の卵」は、80万年後を舞台に、現代に人工冬眠した人間が甦った事で起きる様々なスレ違いをユーモアSFとして描いた作品。 前衛的な手法で様々なアイデアを提示しながら、人間の存在意義を真摯に考察した傑作。 | ||||
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まるで、メビウスの輪のようである。 機械と人間、犬と飼い主、社会と犯罪、古代人と現代人。 これらの常識的な価値観と位置づけが、あっという間にくるりと反転して、「あっかんべー」と舌を出してくる。 表題「R62号の発明」「鉛の卵」もいいが、「棒」「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」もおすすめ。 「人肉〜」は、ああ、不毛な会話というのはこういうのを言うのか、としみじみ痛感する。 気がついたら、ねじくれた世界に突入していて、表か裏かは、もうわからない。 | ||||
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安部公房の変形譚といわれるシュールリアリズムの短編集です。初心者にも、馴染みすく、面白く読める作品群でしょう。ただし、あくまでも、真面目な純文学ですので、星新一のショートショートとは、まったく価値の違うものです。たとえば、人間が何かに変形するというのは、安部の作品においては、人間疎外をシュールリアリズムで表現しているという、深い意味を持ちます。「砂の女」「他人の顔」などの長編を解読する基礎になる作品群ですので、意味を考えながら読んでみて下さい。 | ||||
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勝手気ままな人間を風刺するかのような、短編集。 安部公房の、多種な文体が伺えました。とても興味深く、面白いです。 特に、死んだ娘が歌ったでは、なかなか鋭く繊維な描写が見られた。 お勧めします。 | ||||
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これは傑作な短編集だ。久しぶりに読んだけどこんなに毒が効いていて、痛快だとは思わなかった。星新一であれば、さらに文章を削いでショートショートに仕上げてしまうのだろうが、私には各短編の適度な分量が満足感を与えられて心地よかった。 | ||||
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安部公房は時代の的確な記録者でありながら、優れた予言者でもあった。そう、歴史は繰り返す。人類は全く進歩していないのだから。 「R62号の発明」「盲腸」には、リストラで人心が縮み込んでいる当世への厳しい警告書だ。その中での個人の卑小さが哀しい。そして前者のラストに震撼する経営者もいることだろう。 「鉛の卵」ではラストに救われる気がするものの、それが本当に救いになるかどうかなんてわからない。 成長か安定かぐらぐらしているこの不安定な時代。どうして人間はこうも同じ轍を踏んでしまうことに懲りないのだろうか。 | ||||
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