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室町無頼



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【この小説が収録されている参考書籍】
室町無頼
室町無頼(上) (新潮文庫)
室町無頼(下) (新潮文庫)

室町無頼の評価: 4.22/5点 レビュー 68件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.22pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全68件 21~40 2/4ページ
No.48:
(5pt)

伝わる感じがサイコー

何がオモロイか?登場人物の成長の姿がもの
凄く伝わる点と作者が伝えたい、書きたかった点がビシバシ伝わってくるところだとかんじました。読んでいてワクワクしました。
室町無頼(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(上) (新潮文庫)より
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No.47:
(4pt)

掌に新しく何かを掬えば、今まであったものは、指の間から必ず零れ落ちていく。生きるとはおそらく、そういうものだ

1462年9月、応仁の乱から遡ること5年前、最初の大規模な一揆が起こる。
 昔ながらの侍の世を終わらせるために。
 たとえその結果、一時この世が地獄になってもかまわない。
 足軽が武士にとってかわる世の中をつくるために。

 骨皮道賢と蓮田兵衛は考え方や理想は同じ方向にも関わらず、立場は真逆であるがゆえ、お互いを認めつつも対立せざるを得ない。
 そんな二人に見込まれた天涯孤独の少年才蔵。
 「善悪など見る側の都合によって決まる。それだけのものじゃ。ぬしがその目で確かめればよい」
 骨皮道賢からそう言われ拾われた才蔵は、命がけの厳しい修行を乗り越え、たぐいまれな棒使いをこなす兵法者となる。そして
「虫けらでもいろんなことに気づく。この世の矛盾も見えてくる。虫は虫なりに自分にできることは何かと考えるようになる。その中で自分を満たそうとする。」
と述べる蓮田兵衛の生き様を見るうち
「恩を返す相手は別にわしでなくても良いのです。情けをかけられたそやつらも、いつかはまた他の誰かに情けをかける。その誰かも、また誰かに情けをかける。そうやって情けというものが繋がり、この世も動いていくのではないか」との思いに至る。
 混沌の時代にいかに生きるべきか。
「誰かの代わりにはならないし、なれもしない。掌に新しく何かを掬えば、今まであったものは、指の間から必ず零れ落ちていく。生きるとはおそらく、そういうものだ」
 骨皮道賢、蓮田兵衛、遊女の芳王子、そして才蔵。
 それぞれの生き様を熱く描き出した「ヒートアイランド」「ワイルドソウル」の垣根涼介らしい時代小説です。
室町無頼(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(上) (新潮文庫)より
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No.46:
(3pt)

前半と後半のつながりの整合性が弱くて残念。

垣根さんの現代小説は大好きです。仕掛けとどんでん返し満点のスマート・ノアール物語ヒートアイランドシリーズも、反対に殺伐さを感じさせない爽やかなサラリーマン小説君たちに明日はないシリーズも大ファンであります。

 その垣根さん最近は歴史小説にご執心のご様子で「信長の原理」に引き続いて本書の発表です。しかもよりによって室町時代。南北朝から応仁の乱と、世情が安定しない一方で、稲作が本格化し貨幣経済が定着し、馬借、車借などの陸上輸送業者、海上交通では廻船を用いて輸送や委託販売を行う中継業者の問丸が活躍するといった活劇小説の舞台としてはワクワクする材料が揃っています。なかなかいいところに目をつけましたね。

 ところがですよ。この舞台装置を無理やり物語りに取り込もうとしたためか、残念ながら小説としては主題がぼやけて、結果としては未消化なものになっています。

 元は武家であったが没落して牢人の子として極貧生活を送っていた才蔵は、15歳で天涯孤独になり京に出ます。幼いころから柴売り、油売りをしていて天秤棒扱いの基礎が出来ていたため、棒術はかなり得意です。その腕を見込まれ金貸しの用心棒になるのでした。ところがこの金貸しを襲ってきた骨皮道賢に気に入られ、蓮田兵衛という無頼に預けられます。この兵衛は無頼の癖に義民みたいな一面があって借金に苦しむ農民の相談役をしているのです。才蔵はその捧術の腕を兵衛からも見込まれて、武芸者として仕込むために更に一人の老人に預あずけます。ここで老人から修行を受けるまでが上巻なのですが、若者が無茶な修行を強いられる場面は抜群に面白いのです。棒術の老師匠はまさにスター・ウォーズのヨーダです。 同じく垣根の名作ギャングスター・レッスンでもチンピラの若者がプロのギャングになるまでに過酷な修行をしますが、こう言う成長譚を書かせると垣根さんは冴えています。

 過酷な修業を終え、才蔵は棒術の達人として蓮田兵衛の右腕となり、兵衛が扇動する一揆の一翼を担うことになるのです。(下巻に続く)
室町無頼(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(上) (新潮文庫)より
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No.45:
(3pt)

前半と後半のつながりの整合性が弱くて残念。

(上巻より)下巻は幕府軍と一揆を起こす土民たちの戦闘シーンがメインになってくるのですが、この間、時代背景や、京都の様子、人々の生活等が上手く説明されていて無理なく物語りに入り込めるところは垣根さん筆達者です。

 但し大いに残念なのが、物語の前半が、才蔵青年の成長物語なのに対して後半は一揆という叛乱戦争物語がメインになっていて、主人公・才蔵の影がうんと薄くなっています。せっかく捧術使いとしてひとかどの武芸者になったのに、合戦という大きな流れの中では一戦闘員として、ただの人になってしまった感が強いのです。

 「京洛一の女」として登場し、蓮田兵衛も骨皮道賢も才蔵さえも食べちゃう遊女も余分といえば余分だし。兵衛も道賢も、無頼の徒としてもっと描き込めば面白かったのでしょうが、なんだか中途半端です。もっと長尺の小説としても良かったのですが・・。

 実は本書は第156回候補直木賞選考会で、あの恩田陸「蜜蜂と遠雷」に負けちゃっています。選考委員の浅田次郎先生からは「垣根さんに関しては、クライマックスに持ってきた修行が良いという評価もありました。大変妖艶な女性のシーンが秀逸という意見もあったが、全体的に、主人公があまりに単純でストレートだとして、評価されなかった。」と評されています。全く同様に感じたのでちょっと嬉しかったですよ。
室町無頼(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(下) (新潮文庫)より
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No.44:
(5pt)

やっぱり面白い

垣根先生の作品はすごく好きなのですが、歴史物?と懐疑でしばらく敬遠していました。 久しぶりに本を読もうとふと購入したのですが、、
相変わらずの面白さ。あっという間に世界に引き込まれ、上下巻を一気読みしてしまいました。
最後には読んでいて泣きそうになるエンディングで、、
期待以上に面白かった。これは光秀の定理も読まねば。
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No.43:
(5pt)

戦国時代突入前の雰囲気がわかる

さすが垣根さん。いつも何を読んでも興味深く楽しませていただいています。
戦国時代の小説はたくさん読んでますが、その前は、なかなか読む機会がありませんでひた。この作品で下克上前の雰囲気なども感じられて、さらに戦国期に突入する過程の世相なども理解できたように思います。
何より一気に読んでしまう面白さがいいです。
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4101329788
No.42:
(5pt)

室町時代のならず者たちの物語(ややネタバレ有り)

史実にある程度基づいた物語。登場人物も、中には歴史資料に実際存在した人物も登場する。
しかし、生死を賭けるほどの猛特訓の末六尺棒を武器とし、めちゃくちゃ強くなった一方で従順でどこか可愛げのあるまだ二十歳にも満たない才蔵の存在がこの物語をドライブする!

垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」や「ヒート アイランド」シリーズ、どれを取ってもハズレが無い。
私の中では垣根さんは、Mr.ハードボイルドだ。
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4101329788
No.41:
(5pt)

乱世に立ち上がる。

室町時代、応仁の乱が起こる数年前。
この混迷の世の中は理不尽がはびこる。
そんな乱世に、はみだしたものが力を合わせ一石を投じる。
「己の身を立てよ」
そして世の中を変えていく。
土一揆。
蓮田兵衛、骨皮道賢、吹き流し才蔵という3人の無頼が戦う。
「戦は負けるまで続くのだ」
その無頼の気骨がここにある。
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No.40:
(5pt)

乱世に熱血。

秩序がなくなり乱世になっていく室町時代を描く。
世の中を変えていこうとするものたち。
実在した蓮田兵衛と骨皮道賢が登場する。
六尺棒、棒術の達人になるため修行していく。
京の町並み、大坂、滋賀と、往時の様子が描かれている。
世を変えていこうとする熱き血潮を感じる。
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No.39:
(3pt)

かっこいいだけかな・・・私は垣根ファンですけど

室町時代の土一揆である徳政一揆前後を舞台背景としたストーリーで、3人の無頼な男たちが主人公です。無頼というからには、イコール男の物語。小説として求めた紅一点は、この3人の漢たちに関わる女性が一人。本当に紅一点といっていい。女性の存在は他に一切感じさせない物語りです。この女性が2章で長々と自身の矜持を女言葉で語りますが、実際は男目線。そして、語りすぎ。おそらく、垣根さんの理想の自立した遊女。つい書き込みたくなったのでしょう。

後半は、一揆の戦闘風景の描写が増え血生臭くなります。そういう物語。といっても、一揆だからとはいえ、百姓や貧乏人の目線といった語りは一切ないです。そういう物語ではない。それが直木賞の選考から漏れたのは仕方ないかもしれない(それに直木賞受賞作品にはちょっと足りない)。あくまで、3人が腐った世の中を無頼で生きるその生きざまや哀愁を描いている。この闘いの描写が長いのは、個人的には読むのは退屈でしたが、空から描いた視点が感じさせました。それは面白かったですが、長くて好みではなかった、ということ。

うっすらと「光秀の定理」の二番煎じ、焼き直しを感じさせなくもない・・・。3人の男主人公であること。そのうち一人は惨めな境遇から剣の達人となる青年。光秀の定理の愚息、蓮田兵衛、骨皮道賢、剣のお師匠もその生きざま、かずかずの言葉、いちいち、かっこいい。但し、同じ作者と簡単に分かる構成。私は垣根作品は全て!読んでいますので、少し残念です。
室町無頼(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(上) (新潮文庫)より
4101329788
No.38:
(5pt)

応仁の乱前夜を熱く生きたかっこいい男たち

垣根涼介といえば『ワイルドソウル』や『ヒートアイランド』といった現代小説の印象が強く、またその中でも出てくる「男たち」がとにもかくにもかっこいい。
何がかっこいいって、生き様だったり、芯の強さだったり、喧嘩の強さだったりなのだが、それは歴史小説でも健在。
日本史上初の傭兵部隊を作った男・骨皮道賢。一揆の首謀者として初めて史実に名を残した男・蓮田兵衛。圧倒的強さを誇る棒術使いの才蔵。その才蔵の師匠である老人・・・・・・。
この『室町無頼』に出てくる男たちのかっこよさといったら、最高なのである。

「無頼」とは本来、正業につかずに無法な行いをする人のことを指すらしいが、そもそも舞台となった室町中期から後期は、貧富の差はどんどん激しくなり、幕府はまったく役立たず、さらに飢饉の連続で死ぬ者続出。
正業につきなさいと説くこと自体が馬鹿らしいような世の中なのである。
その厳しい世の中を己の才覚のみで生き残ろうとする男たちの生き様は、上下巻もまったく気にならないほどの熱量を放ち、読み始めたが最後、読了のその瞬間までその熱さに圧倒されっぱなしなこと必至だ。

また、この作品は何よりも歴史考察が素晴らしい。
骨河道賢や蓮田兵衛というのは実在の人物であるし、京都の町中の描写や、建造物、歴史的事象について、著者がしっかりと粘り強く資料をあたったであろうことは想像に難くない。
重厚かつ骨太な時代背景を、男たちが自由自在に躍動する舞台へと昇華させた著者の剛腕が素晴らしい一冊。
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4101329788
No.37:
(5pt)

何にも頼らずに自力で道を切り開いていく野武士的な生き方、それが無頼

「無頼」とは何か。所謂「ごろつき」ということか。本書の登場人物たちにそれはあたらない。もっと品格があり、己に対する規範を持っている。ではもう少し格好良く「伝統的な価値観や規制を無視するニヒリズム」ととらえるか。それも少々ちがう。無頼派を気取った太宰のような弱いものではない。室町中期は、貨幣経済が発達し、持てる者と持たざる者の格差を広げ、それに幕府が何の手も打たない状況の中で、やむなく体制秩序の枠を外れ、法も掟も無視して、何にも頼らずに自力で道を切り開いていく野武士的な生き方が本書の「無頼」であろう。
 本作は第156回直木賞の候補に挙がった。恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』が賞に輝いた回である。その選考に異議はないが、選者の中にもっと土一揆に立ち上がった民衆視点での社会問題に焦点を当てるべきだったかのような評価があったのは残念である。本作で垣根氏が書きたかったのは、救いようのない時代にあって「無頼」の気骨で時代の流れに抗った痛快さであっただろう。暗黒面を描く社会小説ではなく痛快無比剣豪小説で良いではないか。本書が『蜜蜂と遠雷』と並んで直木賞同時受賞であっても良かったのではないかと思うのは私だけではないだろう。
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4101329788
No.36:
(5pt)

南北朝から戦国時代への過渡期としての時代状況がよく判る

室町時代のことは歴史でもよくわからなかったがこの本で当時の様子が具体的によく判りました、ストーリーも面白かったです
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4101329788
No.35:
(5pt)

垣根涼介時代劇エンターテイメント

室町時代、応仁の乱前の。兵法者たち、の物語。この時代の小説は、つまらないのが、多いが、この作品は、面白く、スラスラ、読み進めた。
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4101329788
No.34:
(4pt)

時代を駆け抜けた3人

時は室町時代。主人公は才蔵である。

室町幕府の将軍、足利義教を殺した赤松満祐の家臣が、才蔵の父だった。しかし、赤松はすぐに倒され、才蔵の父は牢人になってしまった。その後生まれたのが才蔵である。父親に定職はなく、才蔵は小さい頃から食うにも困っていた。そのため、12歳で働き始める。その後、油の振り売りをするようになる。その仕事の途中で追い剥ぎに遭い、何回か撃退した。その腕を買われ、土蔵の用心棒になる。

ある日、その土蔵に賊が侵入する。才蔵たちは応戦するが、相手の数が多く、才蔵だけが後に残った。才蔵も賊の首領に負けてしまう。しかし、その男……骨皮道賢はなぜか才蔵を殺さず、自分の拠点に連れて帰った。そして道賢は、才蔵を蓮田兵衛という男に預ける。

兵衛の家に居候することになった才蔵。兵衛について行き、その行いをつぶさに見ることになる。兵衛は関所で金を払わず、止めようとする者を全て切り捨てる。その上、関所の金を奪っていく。その一方で、百姓や地侍には親切に相談事を聴いてやる。才蔵、兵衛、道賢……やがて、この3人が大きな事を起こすことになる。

兵衛は、才蔵に師匠を付け、竹生島流と呼ばれる棒術を学ばせると言う。そして10か月間、才蔵は棒術を学ぶ。このあたりから面白くなってくるので、ここから先は触れない。

この小説で最も興味を引かれたのは、才蔵が修行を積み、成長していく過程だった。しかし、前作(光秀の定理)でも感じたが、この著者の時代小説には独特の雰囲気がある。上っ面ではなく、この時代の底を流れる真理、本音のようなものが作品全体に感じられる。そんな雰囲気を含めて、なかなか楽しめるエンタメ時代小説だった。
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4104750069
No.33:
(2pt)

人物描写が薄っぺらい

舞台は室町時代で六代将軍の足利義教の時代。足利幕府は下り坂になり、応仁の乱、そして戦国時代という混乱の時代の入り口に差し掛かっている。主人公の才蔵は浪人の息子として貧しい中で育つが、天秤棒を使って戦う才能を当時足軽大将として勢力を振るっていた骨革道賢に目を付けられて、武芸の腕を磨くことになる。

なかなか魅力的な舞台設定で、ストーリーの展開も早くてそれなりに楽しめるのだが、読んでいるとだんだんつまらなくなる。登場人物のキャラクターが薄っぺらくて安っぽいからだ。著者がそういう人物が好きなのかも知れないが、主人公を始めとする主な登場人物3名は揃いもそろって女性に優しく、自分自身には余り欲がなく、次の時代の為に身を捨てても生きるという同じようなキャラクターである点に少しうんざりしてしまった。

そもそもこのような価値観は極めて現代的なものであり、当時生きた人間にそのような感覚があったとはとても思えない。著者にはもっと生の人間を描いてほしいと残念に思った。
室町無頼Amazon書評・レビュー:室町無頼より
4104750069
No.32:
(5pt)

面白かった!

室町時代、いわゆる非農業民で「悪党」と言われたアウトローが活躍した時代を活写した時代小説。面白かったですね。2016年下期直木賞候補作品。

「悪党」については、以前読んだ歴史家網野善彦氏の説を想起しながら読みました。「悪党」とは単なるヤクザでなく、三代将軍足利義満の日明貿易による多量の明銭の輸入で貨幣経済が浸透し、また出雲、石見の砂鉄によるたたら製鉄技法が広まり鋤・鍬の農機具も鉄製となり生産力が飛躍した、いわゆるバブル景気の時代。一方で幕府財政の逼迫による関所税の強化などで幕府の権威が下がった下克上の雰囲気のあった時代に、素浪人、逃散農民や、馬借、車借のプチ商工業者などで相応の才覚を有し自由闊達、無頼に活躍した人々の呼称なんですね。南朝の忠臣楠正成もこの種の悪党であった。

この小説の骨皮道賢も伏見稲荷社に食い込み付近の馬借、車借という交通業者を統括し300人の子分を率いる大立者。一方、浮浪人の蓮田兵衛はネットワーク作りの達人で、己の屋敷を行商人や牢人、農民たちに自由に利用させたり、高利貸しの土倉と農民の間を仲介し利子引き下げの交渉をしたりして、世間の名声や信頼を得ながら土一揆の準備に勤しんだ。

二人とも一介の牢人の身分だが、実力も無いのに権勢を利用し関所税を乱発する幕府とか、裏では高利貸し業者みたいなことを平然として行っている寺社などの権門階級に対し一矢報いたいという同志的な気持ちを抱いていて、土一揆を企む蓮田と監視役の骨皮の駆け引きが対照的なキャラの設定も活かして面白く描いているのも読みどころでしょうか。
この立場の違う二人が魅了されるのが芳王子という孤高の高級遊女という設定も面白いし、この孤児出身の美女の気風と気性にはほれぼれするものがありました。

読みどころと言えば、骨皮と蓮田の二人に棒術の腕を見込まれ、棒術の達人である老人のもとで武芸の修業をする、もう一人の主人公の17歳の少年才蔵の命を懸けた修行ぶりが度肝をぬくもので臨場感たっぷりで素晴らしい。
大きな松の枝に何枚もの長短の短冊型の布を垂らし、布の先に短刀を露出させ、風が吹き寄せ短冊が激しく舞う中で六尺棒を使いまわして身を躱す。その身のこなし方息使いの描写は剣豪小説の趣もありました。

この才蔵の父親も赤松家没落による牢人で村の厄介者であったのですが、才蔵は父の言いつけを守り、「襤褸は着てても心は錦」の心情で、超一流の棒術の腕になっても、優しい気性を所々で発揮し、恩師の蓮田にも従順な好青年と描かれているんですが、なにか物足らない気分がしましたね。まあ、一服の清涼剤というところでしょうか。
京都洛内の土一揆の合戦の場面は克明に描かれていてライブ感覚がたっぷりで迫力がありました。
室町無頼Amazon書評・レビュー:室町無頼より
4104750069
No.31:
(5pt)

おすすめです。

ほぼ新品で良かったです。
友人の勧めで、この本を買いました。垣根涼介という人の本を初めて読みました。
時代考証にこだわることなく、室町時代の男の美学と大人の女がうまく表現してあり、
なかなかの作家です。(生意気ですが。)おすすめです!
室町無頼Amazon書評・レビュー:室町無頼より
4104750069
No.30:
(4pt)

らしさ一杯

著者らしさ一杯でした。
どこか荒んだ、そして心の奥底に火を灯しているようなキャラが一杯です!光秀よりこっちの方が著者らしい作品に感じました^_^
室町無頼(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:室町無頼(上) (新潮文庫)より
4101329788
No.29:
(3pt)

応仁の乱前夜の雰囲気が新鮮

応仁の乱前夜を扱う小説は少ないので、時代がもつ雰囲気がすごく新鮮でよかった。

少年漫画みたいに無名の少年が、師匠の修行の結果、圧倒的な武術を身に着け大活躍
という話が好きな人はきっとおもしろいと思う。

自分はこの現実離れした設定がちょっと馴染めなかったので、雰囲気の良さと差し引き、評価は普通というところか。
室町無頼Amazon書評・レビュー:室町無頼より
4104750069

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