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ゼンデギ



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【この小説が収録されている参考書籍】
ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

ゼンデギの評価: 2.89/5点 レビュー 9件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.89pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(4pt)

人間シミュレータ開発ものがたり

イーガン2010年の作品で、時代は執筆時から見て数年後から少し未来。メインとなる舞台は二か所で、一つはイラン、そしてもう一つはタイトルにもなっている Zendegi というアーケード VR ゲーム(!)の世界です。

核となるネタはイーガンお得意の、人間を計算機上で再現しましょう、なのですが、本作品の場合、時代はごく初期の研究開発の段階です。脳の神経構造をそのまま再現する「アップロード」は技術的にとても困難で研究が頓挫する一方、多くの個体から得たビッグデータとしての脳を統計的なアプローチで再構成する技術が生まれます。ただ、それはあくまでも標準的な脳のモデルのようなもので、そこに個体として期待される振る舞いはありません。そんな中、「サイドローディング」という新手法が考案され、主人公(の一人)が自らの分身(作中ではプロキシ)を作る必要に迫られ、自らサイドローディングの被験者となって…というお話です。

サイドローディングというのは (詳しく書くとネタバレなので)ざっくり言うと、統計的に作られた大雑把な脳モデルに対して、個体の振る舞いをシステム同定し、調整して行く、というものでなるほどこういうアプローチなら技術的に未熟な段階でも実用的なプロキシが作れるかもと納得させられます。この辺りは非常によく書けていてさすがこのテーマを長年追い続けているイーガンならではと思います。
また、VR技術の描写も現代的かつ精緻で読み応えがあります。

一方で、作品の相当量がゲーム中のシナリオ描写に割かれていますが、正直これは割とどうでもいい部分な上に、日本人には馴染みの薄いペルシアのお伽話の世界なので、ちょっと読み疲れました。

あと、話の最後のオチが控え目すぎなのも、こっち系のイーガン作品の「 」や「」に比べると物足りないかなぁというのが個人的な感想です。まぁその分リアリティはあるんですが。
ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)より
4150120145
No.2:
(4pt)

2015年の現実を踏まえれば興味深い小説です

2009年に書き上げられた作品だそうで、深刻な病を告知された主人公が幼い息子のために仮想世界に自分の分身を残そうとするが……、というストーリー。VR、仮想世界、AIといった技術が背景にあり、これらが丹念に描かれます。
小説ではなく現実に目を向けると、多層ニューラルネットワークを可能にするブレークスルーがあったのが2007年頃、それを元にディープラーニングの成果が出はじめたのがちょうど2009年頃だったように記憶してます。また、VRに関してはまさに今OculusやProject Morpheusといったものが話題になっていて、ゲームにおいてVRが広がる可能性が見えつつあります。
本作が書かれた2008~9年ごろ、おそらくイーガンはリサーチをもとにこれらの技術を見通し、その近未来を描いてみせただろうと思います。ニューラルネットワークについては当時の論文も参照しているかもしれません。近未来の予測は難しいものですが、それほど大ハズレでもないということに感心します。無論、たとえば急ごしらえのメッシュネットワークで端末間の音声通話が安定的にできるような帯域を得るのは難しいんじゃないのか等、現実に照らすと技術的に疑問はありますが、そんなところはご愛嬌でしょう。
「順列都市」から進歩がないと厳しい評価を下している方もいますが、2015年の現実を踏まえれば、本作で描かれている事柄が必ずしも夢物語ではないということがわかります。なんで2015年の今だからこそ興味深く読むことが出来るんじゃないかな、と。つまり「順列都市」当時よりはリアリティがあるんですね。もちろん、本作で描かれるサイドローディングなる技術によって分身を残すことが可能かどうかはさっぱりわかりませんが。
また、息子を気にかける父親の心情、また友人に対する複雑な思いといった事情も丹念に描かれてまして、イーガンは科学技術用語が連発する無味乾燥な作家から嫌と思ってる人にもオススメです。短編では家族愛やあるいは政治といったものをテーマにしてる作品も多いですし、イーガンはそうした指向性もある作家で、そんな面が出た作品だと思います。
ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)より
4150120145
No.1:
(5pt)

イーガン初心者のみなさんへ。オススメです。

グレッグ・イーガンは決して読みやすい作家ではないです。
単行本としての本邦初訳である『宇宙消失』や『万物理論』はまだしも、『順列都市』や『ディアスポラ』になると、取っ付きが悪く、『白熱光』で頂点に達した感じです。

その点、『ゼンデギ』は、久々に我々の身近に感じる主人公が登場した感じで読みやすいです。もっとも内容は濃いですが。ネタバレになるのを避けるために詳しくは書きませんが、表題のゼンデギZENDEGIが英語のlifeにあたるペルシア語の発音を英語表記したものであることは知っていてよいかと思います。

イーガン初心者には特にオススメ、短編『ルミナス』、『暗黒整数』、『白熱光』で挫折した方にもオススメです。
ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)より
4150120145

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