(短編集)
祈りの海
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きょうから寝るまえの読書は、グレッグ・イーガンの短篇集『祈りの海』にしよう。このイーガンの短篇集は再読になる。一作も憶えていないけれども。おもしろかったかどうかさえ覚えていない。 1作目は、「貸金庫」精神寄生体の話。精神寄生体が人間の意識を持っているもの。その精神寄生体が語る経験。無数の人間に寄生した体験を語るというもの。 2作目は、「キューティ」人工的に子どもをつくれる技術があって、主人公の男は妊娠する。ただし、その子どもの寿命はきっかり4年と決まっている。男は子どもを育てる。 3作目は、「ぼくになることを」つぎのような文があった。「二十八歳ともなると、(…)」これはくどいほど書いてきたが、二十八歳という年齢が西洋文学では、子どもと大人の分岐点になることを示唆しているものと思われる。物語は脳にコンピューターを入れて、個人が生きているように、コンピューターが学習し、本物の脳が機能しなくなったときに、その代わりに働くというもの。主人公はなぜかそれを恐れている。しかし、じっさいはすでにそれがはじまっていたのであった。 4作目は、「繭」抗ウィルス、抗汚染物質、そしてゲイやレズビアンになる因子を除去するものを研究所がつくっていた。研究所の開発部が爆破された。主人公はゲイの私立刑事。真相に近づくと、犯人は、会社そのものだった可能性があった。 5作目は、「百光年ダイアリー」未来のことが分かっている主人公は、日記をつけていたが、それは未来から送られてくる情報をそのまま書いたものだった。戦争についても書いていた。あらかじめ知っていても、日記に書いたことは必ず起こった。 6作目は、「誘拐」妻を誘拐されたと思ったのだが、映像の妻はコンピューターでつくられたものだった。しかし主人公の男は、コンピューターでつくられた妻であっても身代金を犯人に渡した。 7作目は、「放浪者の軌道」メルトダウン後4年たつ。主人公は女とくっつき離れては放浪していた。 8作目は、「ミトコンドリア・イヴ」物理的装置を使って、人類の祖先を調べたら、共通のイヴも、共通のアダムもいなかったという話。 9作目は、「無限の暗殺者」無数にあるパラレル・ワールドで、ドリーマーの女を殺そうとしている男がいたが、その行為は無駄だった。 10作目は、「イェユーカ」癌の専門医がアフリカで体験した癌手術と盗賊に襲われた話。 さいごの11作目は、「祈りの海」植民惑星で思春期と青年期を過ごしたひとりの男の物語。10歳のときの経験で神がいることを実感したが、その後、大学に行き、卒業して、しばらくして、他の学者の研究の成果を見て、海に大気に多幸症的にする成分があることを知って、無神論者となる。 | ||||
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若かりし頃、夢中で読んでいたSF(と言われるジャンルの小説)をこの御年にしてまた読み始めているのだけど、最近の作家については殆ど予備知識も接点もないまま、いくつかの作品を読んでみた。 で、そのいくつかの作家の作品については正直なところ、これは!と膝を打ち手を叩くようなものがなかったのデス。 選んだものにもよるけれど、何となく自意識過剰で観念的で、そもそもの物語のダイナミズムを排除するようなエリート意識みたいなものも感じられて、なんだかなあと思ってた。これが「SF」の現在進行形か?と。 この作者も、ある長編の紹介文中に”ハードSF”とあったので、短編が中心の本書を読むまでは、コムズカシイ話を教えてあげますよ的な、逆の意味での自己中心的な作家なのかいなと長いこと思ってたが・・驚いた! 本書にはさまざまな物語があるけれど、そのどれもに科学的な知識や洞察と意表を突くアイディア、そして何より物語としてのカタルシスが横溢しているじゃありませんか!! 読み始めの数編から、もしや、と思ったが、読み進めるうちに、これはとんでもない作家(作品群?)なのではと思いは募り、読了後はそれが明確になった。 そして、読んでるうちから気が付いていたが、巻末の翻訳者のあとがきや解説を読んで、あらためてこの作家のテーマを確認した次第。う~む、やはりそうだよな。にしても、このテーマを様々な切り口で表現し追求しようとする、それも”人間”の物語としてのダイナミズムを損なうことなく果たしていることにホントに驚いた。 全11編の物語は、一つ一つが長編になってもおかしくないような密度をもった作品群で、いやあ、とにかく久しぶりに「SF」に瞠目させられました。まいった! とはいえ自分の頭がバカになってるせいか、文章に情報量がありすぎるせいか、一度読んだだけではなかなか理解しにくい、また撮像しにくいところがあったので、自分的にはほし4つ半です。 でも、ホントに驚いた!まだまだ「SF」という小説ジャンルの地平には遥けきものがありますね。 | ||||
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イーガンを読むのは4冊目(上下巻を含む)だけど、初めての短編集。 日本で独自に編まれた傑作選。20世紀の最後の日に出版されている。 初期のイーガンは短編の方が凄いという評価を聞いていたので、期待と不安半々で読み始めた。 長編と違って、アイデアとストーリーの構成がシンプルでわかりやすい作品もあるが、そうではない作品もある。 発表から20年~30年経っているが、古くなった感じはない。問題意識は今でも変わっていない。 11の中短編が収録されているが、評者の基準では傑作が2作、準傑作が3作、秀作が4作。十分理解できなかったのも2作あったが、水準以下と思うものはなかったので全体としての評価は5点とする。 個別に見てみよう。 「貸金庫」 分散化された自己。個人のアイデンティティはどこに有るのかを探る短編。『順列都市』のモザイク化された意識の原点のように思う。 「キューティ」 生命を自由に操作できるようになった21世紀後半、子供を欲しがらないパートナーと別れたぼくは自分でキューティを出産して育てることにする。倫理的な問題が気になる衝撃作。イーガンのSFとしては最初期の作品。 「ぼくになることを」 出生時に脳内に移植した電子装置で脳の機能をバックアップするのが一般化した時代。生身の脳が劣化して除去した時、そこにいるのは本当に自分なのだろうか? 「繭」 胎児の健康管理のために胎盤機能の研究を行っていた企業の施設が爆破される。社会的・心理的不安をテーマに推理小説風に描いた未来小説。正常とは何かと考えさせられる。傑作。 「百光年ダイアリー」 地球に住むすべての人が、100年過去に向けて1日当たり128バイトのデータを送ることが認められるようになった時代。未来のことがわかるようになった人々はどう生きるのか? 「誘拐」 仕事中のぼくにかかってきた映話に添付されていたのは誘拐された妻の映像だったがそれは偽物だった。本物とは何か?人は何を重視するのか?想像力と共感力はリスクでしかないのか?恐ろしいし、ひどい話だ。傑作? 「放浪者の軌道」 これまでに読んできたイーガンとはかなり異質な話。評価は高いらしいが評者は理解できない。人は必ず何かに所属しているという寓話か?理論もテーマも高難度。 「ミトコンドリア・イヴ」 人類学上の仮説をイーガンらしい架空の技術で検証する話。Y染色体アダム仮説は、学会に先行して発表されたのか? 「無限の暗殺者」 現実崩壊感、ぐちゃぐちゃ感は、ディックか平井和正のような雰囲気?ストーリーは読ませるのだけれど何を表現しようとしているのか理解できない。単なる娯楽作ではないと思うが・・・。これも高難度。 「イェユーカ」 社会派タイプの未来SF。「繭」の進化系か?若干、教条的過ぎる感じがしないでもないが、世界認識と思想のストレートさによるくすぐったさを除けば、作品としては良くできていると思う。 「祈りの海」 誰もが認める傑作らしい。遥かな未来の異星における人類の子孫の生態と文化をち密に構築。その社会における宗教の意味を問い直し、科学とは何かについて真正面から取り組んだ作品。確かに傑作。 | ||||
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「祈りの海」は、ファンタジー要素、恋愛要素、そして現実の社会問題を取り入れたバランスの良い構成となっており、それほど芸術色のある作品ではないものの、良い意味で無難な作品でした。 イーガンの特徴としてゴテゴテの理系SFで突っ走る作品がやや多い中、「祈りの海」はバランスの取れた美しい作品に仕上がっています。 | ||||
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SFといえばSFだが、登場人物の内面が色濃く描かれている。空想世界の羅列というよりは、自分の存在とは何か、というような哲学的なメッセージが強いと感じた。 かといって難解な文章ではなく、短編集ということもあり、サクサク読める印象。 もしかしたら、今自分が生きているこの世界も、、、と思ってしまうような展開に飲み込まれること間違いなし。 | ||||
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