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城
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城の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全83件 21~40 2/5ページ
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I highly recommend this excellent book to any reader that appreciates a well written, well told story Once in a while a book comes along that keeps you up at night as you read just one more page I chose this book out of the 6 options for the Kindle First Reads Program. I didn't expect to like it thinking it was a fantasy based book which is not my usual choice but the others did not catch my interests at all | ||||
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This was a very nice read. As usual it was a little slow in the middle but picked up and kept your interest The book kept my interest throughout and provided enough plot twists to keep me guessing and turning another page. A great book, a must read and very difficult to put down when you start reading it. | ||||
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Another page turner. Once you started reading, you just wanted to read more Every once in a while a book comes along with a story that is really ... I struggle with a word to describe it ...wonderful, special! I couldn’t figure out exactly what was happening. I loved it and highly recommend it. | ||||
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Author hooked me and I couldn't stop reading until the end. You won't either. This is a must read and I give it a ten out of ten! What a wonderfully new subject for a book. This book was very well written! If you are in doubt, get it and read it. If you've read it before, read it again (a friend of mine tries to read it every year, at the beginning of the year). | ||||
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"『出ていくなんてできない』と、Kが言った。『ここにとどまるためにやって来た。だからここにいる』"20世紀を代表する作家の1人と評価される著者の死後に発刊された長編3作の内で【最も長い作品】である本書は、測量士として城を目指すKと、周囲の村人たちの【会話劇の様なカオス】が魅力的。 個人的には【未完の作品)と読む前から知っていたので、どのような結末になるのかと多少不安に思いながら読み始めたのですが。冒頭でKが村に到着してから、さっそく城へと測量士の仕事をもらいに行って話が展開するのかと思いきや、どことなく不穏、あるいは不快な村人たちとの【それぞれに長い】会話が延々と続くばかりで終わったのには驚かされました。(そういう意味で。最後も唐突感はないのですが。) 一方で、起承転結で大きな物語を【わかりやすく】共有させるのが著者の目的ではなくて、主人公自体がKと既に【記号化されている】様に、様々な登場人物たちそれぞれを【暗喩的な存在】として配置、話すがままに矛盾も放置して描き、後は【読者に解釈を委ねている】と考えると、Kも含めて登場人物の誰もが疑わしく、誰もが理想的な人物とは決して言えないことが【かえって余韻となって】印象に残りました。 夢の世界を覗く様な作品を探す誰かに。わかろうとせずにそれぞれに感じたい誰かにオススメ。 | ||||
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This book deserves all the rave reviews and attention it is getting I knew I should go to bed and I did but I laid there and said I have to finish that book that is how good this book is with every penny of what it cost This book touches your heart and mind | ||||
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カフカは短編も面白いが、やはり『城』が最高傑作だろう。6冊のノートが残された未完の作品で、新編集の全集にもとづく本訳は、従来の原田義人訳とは、章の区切りや、最後の終わり方などが違う。そして何と言っても、池内紀訳は、日本語のキレがとてもいい。カフカの小説は、その内容のユニークさが強調されることが多い。それはそうなのだが、しかしカフカの魅力は、その際立った文章表現の卓越性にあることもたしかである。たとえば、フロベールは、「文体の力だけから作品を生み出す」作家と言われる。フロベールはある書簡でこう語っていた、「私が美しいと感じるもの、私が作り上げたいと思っているのは、なにについて書かれたわけでもない本、外部との繋がりを持たず、地球がなににも支えられずに宙に浮いているように、内部にみなぎる文体の力のみによって支えられているような本です」。カフカにもまたこのような側面がある。『城』には、これ以上の言語表現はありえないだろうと思わせる箇所がいくつもある。たとえば、主人公のKが、フリーダに一目惚れしてしまうシーンの記述はこうである。「フリーダという若い娘がビールを注いでいた。見ばえのしない、小柄な、ブロンドの髪で、さびしげな表情を浮かべ、頬がこけていた。だが、眼差しがちがっていた。並外れて優れたところのある眼差しだった。その目に見つめられたとき、Kはすぐさま、自分がかかわっている問題が解決されたような気がした。そもそもそんな問題があるとは夢にも思わなかったが、それがたしかにあることを、娘の目が教えていた」(p63f)。かくも魅力的な目がこの世に存在しうること、それを我々は、カフカのこの記述によって初めて教えられる。言葉はまさに、存在を立ち現わせる奇跡である。 | ||||
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I know when I go to sleep tonight, I will have excellent dreams because of this beautiful book. I want everyone to read it. I will say it: this is a book I will reread and often. I can't recommend it enough. I loved the author’s descriptive and expressive writing I have to say, I loved this book! I read it through in one sitting. I literally could not put it down. I don't do reviews that would be a spoiler | ||||
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はじめて読んだカフカ。 近づけるようで近づけない城。 生きていると、こういことは結構ありますよね。 | ||||
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城の伯爵から測量士としての仕事を依頼されてやってきたはずなのに、いつまでたっても実際的な作業どころか、そのための手続きの糸口をつかむことに労力を注ぐしか道はないとばかりに主人公Kが城と村の奇妙な規則に延々と翻弄されながらも、なぜか自分を保っている、という、それだけといえばそれだけの話である。 この作品を読んでいると、村の住人の「職業」がやたらと目に付く。なんらかの職業に従事している村の住人達は、それぞれの職務に非常に忠実であるのだけど、カフカ独特の粘着性のないパラパラした言葉のせいか、職業あってこその人間、職業があって初めて人間が機能するかのような印象を受ける。登場人物たちが紙人形のように潤いがなく、人の発する言葉を支えるはずの意思にすら城のシステムや役人の事情が介入している。だからすごく危うい感じがするのだ。職業が人間を呑み込んでしまっているようで、言葉がなかなか頭に定着しない。 しかし、まあそれぞれに事情というものがあるのは分かるけど・・・と読みながらやや不遜な態度になりかけた頃、突如として住人の語る言葉にズシンと重心がかかる。語り部の視線が主人公Kではなく、こちら(読者=自分)に移って話されているようで、普段の自分を支えているはずの意思が大きく揺さぶられて危うくなり、もはや信用できなくなっているのが自分で分かる、実に嫌な感じに襲われるのだ。これがカフカの常套手段なのだろうが、つくづくこの作家には敵わないなと実感する。 本作「城」の主人公Kは、前作「変身」や「審判」の主人公のように、居場所を失って死んだり処刑されたりしない。決定的に違うのは、主人公が自分のエゴを理路整然と語りながら行動し、ダラダラと生き延びている点である。人を生き延びさせるのは信念や信仰心などという美徳とは限らず、むしろその対極にあるエゴやふてぶてしさなのだということかもしれない。 いずれにしても自分にとっては、決してこの小説を自分のバイブルにはしたくないという気持ちと、常にそばに置いておきたいという相反する気持ちが同居する複雑な作品である。ただ彼の生きた時代を考えると、まったくもってカフカ以外の人間には意識がいかない視点であり、まったくもって彼以外には書けなかった作品であると思う。頭が下がる。 | ||||
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読みはじめてすぐに不思議な世界に連れ込まれてしまいます。 「こんなところにいたくないっ!」と思う反面「怖いもの見たさ」でどんどん先にいってしまいます。 Kindle の「無料」で読ませていただきました。 文庫とは訳者も違うのかな?訳が違うとまた感じも変わるのか? なんとも噛み合わないような会話にもおかしさと恐ろしさがあります。 「K」とだけでなぜ名前がないんでしょう?自分自身のカフカの「K」? | ||||
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この物語のなかでは真実が存在しない。常識は経験でしかなく、事実は主観による観察でしかない。主人公を取り巻く村人達は最後まで得体の知れない存在でしかなく、ヒステリックな拒否とげんなりするような長い台詞で都度説得はされても、永遠に納得はできない。それでも序盤は明確な悪意や単純な混乱が目に見えてわかり良いが、徐々に登場人物の行動原理の識別(特に好意と打算の区別)が困難になっていくことに恐怖を感じた。 | ||||
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内容的には、花丸。しかし、PCでの閲覧は疲れる。キンドルペーパーホワイトがほしいなぁ。 | ||||
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この本以外にも、世に大作はいくらでもあるし、名作とよばれているものや、さまざまな文章もあるが私はこの本があればけっこう満足できる。読書の喜びが言葉を読む行為そのものだとすれば「城」を読めばよい。これまで6回読んでいるが読むたびに面白いとか新たな発見があるというのではなく、訳者のすばらしさもあって、言葉を読むことそのものが楽しいのである。逆説かもしれないがこれほど思想を透徹させ一瞬の隙も緩みもなく緊張感に充ちた世界を提示している作家はカフカしかいない。全集よりも「変身」よりもこれで決まり!残りの人生の時間は好きな本だけをくり返し読んでいようと思う。 | ||||
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確かに、ストーリーとしては未完で終わるが、果たしてカフカが執筆時に構想し、友人に語ったとされる ラストシーンまで描き切ったとしても、この作品の完成度が飛躍的に上昇するとは思えない。 逆に言えば、本作の主旋律は現存する「未完」の作品の中で十分表現されている。 「城」にも「村」にも属さない、異邦人としての主人公が、どこにも属していないという1点だけで、食事を し寝床で寝ることすら、ままならないという状況がまずは丹念に描かれる。 この状況が不条理、と見ればなるほどカフカの作品は不条理を描いている、という評価になるだろう。 ただ、どこにも帰属しないことが、現実の社会において、いかに生きにくいことかを、我々は知っている。 カフカの描く、城にも村にも属さず、毅然と自分を堅持し、自由を死守しながら「居場所」を探そうとする 主人公Kの姿は、不条理などではなく、我々の現実と言えるのではないか。またその努力が悉く徒労に 終わっていく姿も含め、むしろ「リアル」と言っても良いほどだろう。 カフカでは突出した長い作品だが、一気に読めるし、一気に読むべき作品。極めて混同しやすい登場 人物の名前(恐らくカフカの明確な意図でそうなっているのだろう)が何組も出てくるだけに、ちまちま 読んでいるとそれだけで混乱して嫌になってしまう人が居るかもしれない。 頻繁に繰り返される、登場人物の長広舌もしっかり読めば人生訓や示唆に富む。それだけでも十分読むに 値する。 前田氏の訳文も大変スムーズに読める。外国文学は訳者を間違うと酷い目に合うが、その点も心配いらない。 登場する様々な年齢や生い立ちの女性が、長く語ると皆同じ語り口になる点が気になるといえば気になる。 残念ながら私の語学力では、原作がそうなのか、訳者の癖なのか判然としない。 | ||||
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カフカの感性は、物凄く鋭い。 子犬なみに鋭い。 しかし、子犬なみに体力がない。 なので、長編を書くと、迷いに迷ってしまう。 確か、最初と最後は決めて書いたそうです。 そういう書き方って、あるんですね。 カフカのような小説は、短編向きだと思います。 安部公房も、どちらかというと短編向き。 なぜって、「夢」は永遠に見られないから。 城に迷い込む度胸がある方にはお勧めします。 | ||||
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『ギフテッド/山田宗樹著』を読んで、是非読みたくなり購入させていただきました。 まだ読んでおりませんが、大変楽しみです。 | ||||
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執筆は、1922年一月から九月まで書き続けられたが、他の長篇と同様に放棄された。理由 はわからない。未完成作品『城』の結末は、主人公Kとお内儀さんの衣裳にかかわる会話で 終わっている。構成は第一章から二十章である。「城」そのものは漠然として、霧につつま れたような存在である。かたや、「K」も、多く存在するであろう「K」のうちの一人であ るかもしれない。実在しているのか、幻影なのか、彼も霞んでいるようなおぼろげな存在で ある。 作中人物を整理しておこう。測量士K(前田敬作訳は「測量師」となっている)が語り手 である。Kと会話する主要な村人たち、「村人グループ」とよんでおこう。宿屋「橋屋」の お内儀ガルディーナ、夫ハンス(目立たない存在)、「シンシン館」という役人専用宿屋の 酒場の女フリーダ、フリーダの後任で元客室付女中から酒場に「出世」した女ペーピー、城 と村の使者(手紙、伝言を運ぶ仕事)バルナバス青年、彼の両親、姉オルガ、妹アマーリア、 靴屋ブルンスウィックと夫人。対話のなかの女たちは、行動的で饒舌である。そして、村人 たちと対照的に、伯爵府とよばれる「城」で仕事をしていると思われる人々、役人、秘書、 書記、従僕、使者などが登場する。X庁長官クラム、クラムの第一秘書の一人エルランガー、 クラムの在村秘書モームス、大物役人ソルティーニ、村長(名前はない)など「役所グルー プ」とよんでおこう。もちろん、「村人グループ」と「役所グループ」の対立構造ではない。 むしろ、役所を覆っている見えない存在である「お城」に入り込みたいと思っている「K」 が、両者から疎外されているのだ。Kは、高く大きな二重の壁に孤独な戦いを挑んでいるの だ。「他国者(よそ者)」と「お城と城下村の人たち」との対立構造といってもよい。 なぜ、Kは城をめざすのか。なぜ、彼は村人グループに溶け込めないのか。「お城」とよ ばれる官僚機構、行政組織の内幕はどうだったのか。クラムという長官は存在したのだろう か。そして、Kとはいったい何者だったのか。さまざまな謎が浮かんでくる。 物語は、Kが深夜に雪深い「ある村」に到着し、宿屋を探す場面から始まり、それから四 日間の出来事である。村の遠くに霞む城の描写は、Kの視点である。「霧と夜闇につつまれ ていた。大きな城のありかをしめすかすかな灯りさえなかった」、「Kは城に生命が動いて いるというかすかな気配すらこれまで一度も見たことがなかった。(中略)ながく見つめて おればおるほど、ますます見分けがつかなくなり、すべては、ますます深く黄昏のなかに沈 んでいった」。Kが城を見上げる描写は、二か所しかない。「城」は限りなく遠く「見えな い」存在として描かれている。 宿泊には、伯爵府(ウエストウエスト伯爵、城の所有者か権力者かわからない)の許可が いる、城に乗っていく橇の使用も許可がいる、「永久に城へはだめだ」と村人からいわれる。 許可、権利、義務、請願、訊問、掟など、お役所言葉がちりばめられている。カフカの好き な言葉だ。舞台は、「シンシン館」「橋屋」「小学校教室」「バルナバスの家」が中心であ る。全編をつうじて、「橋屋」のお内儀がKの周囲を絶え間なく動き回る。彼女の「夫婦ベ ッドと箪笥の部屋」や「こじんまりした、衣裳箪笥と長椅子を置いてある帳場」などで、K と対話する。彼女が、対話のなかで彼の印象、人物像を浮き彫りにしていく。鋭い観察力を もちながら、Kに惚れているような艶っぽい眼差しやしぐさを見せる。しかし、お内儀を含 めて登場する女たちは、Kの「監視役」ではないかと思う。彼女たちは、クラムの影を慕い、 役所への忠実な情報機関になっているのではないか。Kは、彼女たちがクラムと親交がある と「思いこみ」、その糸を手繰り寄せクラムにアプローチしたいと思っている。 お内儀、フリーダ、ペーピーは、クラムと「関係」があったと思われる三人である。お内 儀は二十年以上前にクラムからプレゼントされた「ショール、ナイトキャップ」を大切に使 い、彼から三度呼ばれた思い出を懐かしく語る。Kへ「クラムになにを求めているか」を聞 きだそうとする。酒場の女フリーダ、ペーピーはお内儀とクラムの流れをくむ「クラム一派」 だろう。「クラムが後ろで画策をしているのではないか」とKにいわせるほどクラムを崇拝 していたようだ。しかし、彼女たちはクラムを見たことがあるのか疑問である。声すら聞い ていないのではなかろうか。Kに壁穴から覗かせてくれた「クラム」は本人だったのかどう かわからない。彼女たちは、使者をつうじての伝言だったし、クラムの顔は誰も知らないか らだ。クラムは影の存在ではなかろうか。実在していたのだろうか。そして、クラムの影が 影響していると思われる事件で、彼女たちがKを心配することになる。Kがバルナバスの家 に出入りしはじめたことだ。 現在、バルナバス一家は村八分にされている。理由は、消防祭の日、大物役人ソルティー ニが使者をつうじて、アマーリアに「シンシン館」に来るようにと手紙を持って来たが、ア マーリアは読後、手紙を破いて使者を追い返したのだ。内容は、恋文か尋問かわからい。こ の話をフリーダが村人たちにひろめてしまったのだ。その後、村人たちが、バルナバス一家 を軽蔑するようになる。「わたしたちはあらゆる集団から締め出された」のである。しかし、 Kはお構いなしだ。Kの動機は単純。使者であるバルナバス青年が、クラムから二度手紙を 預かってきたからである。バルナバスと城の関係を利用したかったのだ。軽蔑された原因は、 妹のアマリアにある、と姉オルガがKに語る。この説明が、十五章全頁、文庫本で123頁と なる。他章に比較して断然長い章である。なぜ長いか?お城の官僚制の特質、陰湿性、見え ない権力の行使などが、バルナバスから聞いた情報として説明されるからだ。たとえば、 「軽蔑されるようになった原因」、「娘を守るための父の奮闘」、「弟の官服のこと」、 「官房の内部」、「役人と書記との滑稽な口述筆記のようす」、「手紙の話」などである。 父親の努力にもかかわらず、役人たちは「きみの身になにが起こったのかね」「いったい なにを許して欲しいというんだね」と真剣にとりあってくれない。おそらくソルティーニ の怒りの結果であることは推測がつくが、誰も言わないし、彼から指示が出ているという ような情報もない。実際、そのような指示が出されたのかどうかもわからない。手紙を受 け取り読んだアマーリアがなにも語らないからだ。オルガは「すべてお城からでているこ とです」と推測する。いつの間にか、隠れて見えない力で疎外されていく世界だ。罰せら れる者が罪の原因がわからない。罰の不条理性だ。 そして、役所からの手紙は「正しく判断することは、まったく不可能です」とオルガは語 る。手紙の信憑性を言っている。なぜなら誰が手紙を書き、いつ発信される予定だったのか 不明で、適当に書記から使者に渡されるだけだからだ。「そのとき書いた手紙ではなく古い 手紙、長く机の下で放置されていた」手紙だ。従って、Kが受け取った手紙二通は、「測量 士」宛には違いないが、いつ、だれ宛に書かれたのか確かではないのだ。「測量士」は、K が到着するまで過去に何人もいたはずだ。Kと対話した村長が語っているように、測量士の 採用可否は役所の縦割り行政の結果であると語っている。Kは採用通知で村に来たはずだが、 到着してみると不採用になっている。Kは、KであってもKではないということだ。本当の Kはどこにいるんだろう。 Kはなぜ城にむかおうとしたのか。明確に彼の意思は表現されていない。たとえば、なぜ、 不採用になったのかを知りたい、フリーダと結婚したいのでクラムに了解をとりたい、など が考えられる。「クラムを近くで見たい、対面したい」、「自分の問題を当局相手にきちん と解決しようというのが願い」などの発言からしても、すでに、目的喪失者になっている。 「自分の問題」とは何か? Kの人物像はどうだったのか。Kは到着した夜に酒場の女フリーダと関係をもち同棲生活 にはいる(短い時間だったが)。村長から「小学校の小使」を任命され、「拒否は私の権利 だ」といったん断る。しかし、フリーダからの説得や村長から「(測量士としての)招聘問 題が曖昧なままになっているが、この上なく丁重な待遇を保証している」と諭される。そし て、「教室」でフリーダと助手と宿泊する。Kの「拒否」姿勢は随所にあらわれている。お 内儀から、当地の事情に無知なのに「あなたのやり口は、ちがう、ちがうと言って他人の意 見に耳を傾けない」と言われる所以である。同じことは、第九章の場面。お内儀とクラムの 在村秘書モームスの訊問で、Kがその場の空気を読めない返事をし、お内儀をイライラさせ る光景にもあらわれている。オルガとの対話でも、彼女たちが疎外されていることがなかな か呑み込めない。まとめてみると、「他人の意見に耳を傾けない(よそ者の意識が強い)」、 「大げさに考える」「口にできないことまで説明しないと理解できない」「論破はするが、 それがどうしたというのよ。何が達成できたのかしら」(フリーダの言葉)、「騒々しく子 どもじみて・・・」(ペーピーとの対話)、など。Kは他国者であるがゆえに、「自己」「我」 を放棄できないのだ。論理が違う世界で生きていくことが困難なのだ。村の「掟」に依存で きない存在はあり得ないのに。村人たちから、「頑固」「無知」「こだわり」など軽蔑され る。しかし、お内儀、フリーダ、ペーピー、オルガなど女性たちから頼りにされ愛される存 在にもなっている。もちろん、その裏には、Kと女たちのそれぞれの思惑が読み取れるのだ が。 滑稽な描写や謎めいた対話がある。四日間の物語なので小学校で宿泊したのは一、二泊だ ろが、寝起きのKたちを先生と生徒が眺めている恥ずかしい光景。役所の仕事光景も面白い 描写が多い。たとえば、バルナバスの話で、役人と秘書の口述筆記風景、村長が語る「役人 は電話機のベルが鳴る装置を外してしまう」こと、クラムの第一秘書エルランガーが長広舌 をふるう秘書と請願人との「真夜中の訊問」についての見解、従僕と役人間の書類配布にま つわる駆け引き、など。男の饒舌は村長とエルランガーに代表される。カフカ小説でおなじ みの少年が登場する場面、宿泊所である小学校の生徒で、靴屋ブルンスウィックの息子ハン スが、Kとフリーダの前に現れる。彼の質問が「命令的」だったという。質問内容はわから ないし、なぜ命令的だったのか謎だ。そして、Kが会いたがっている「城の娘」と自ら名乗 るハンスの母親ブルンスウィック夫人とはどのような人物なのか? 結末でのKとお内儀の会話に興味がある。Kがお内儀の衣裳を批判する場面。衣裳につい ては、Kとペーピーとの対話で、彼女が酒場にでる「出世」のため衣裳についてくどくど説 明する場面がある。お内儀との対話も衣裳を話題にしている。Kの「あなたの服は時代遅れ だ」「あなたはほかになにかの目的を持ってる」、お内儀は「わたしの目的は、美しい衣装 を身につけることですわ」「あす、新しい服ができてくるのよ。もしかしたら、あなたを呼 びにやらせるかもしれません」と応える。新しい服の意味はなんだろう。Kとお内儀の関係 が新しい展開になるのだろうか。 論理の違う世界で生きているKと村人たちの「関係」が曖昧で、Kは深い霧のなかで漂っ ているようだ。ちなみに、「クラム」はチェコ語で「幻影」とか「欺瞞」という意味らしい。 | ||||
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奇妙な話。奥が深いようで謎が多くて何が何やら(笑)。そこそこ長い中編です。 | ||||
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何がなんだか分からない状況に読者は放り出される。 右も左も分からない世界で翻弄される主人公・K。 その先に見えるもの。 未完ながら様々な展開を期待させる。 個人的に「本当にKは測量士であるのか」という謎は結構な重みを感じる。 結局誰が自分の事を証明してくれるのか、人間関係も皆無、文書にも期待できない。 あるのは憶測・推測だけ・・・。 カフカは何を書きたかったのだろうか。 | ||||
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