■スポンサードリンク
城
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
城の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.75pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全83件 1~20 1/5ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
故・池内紀先生の翻訳で分かり易かったです。 本はよいサイズなのですが、一行に60文字ぐらいあり、最初は読んでも読んでも進ます、まるで主人公Kになった気分でした。 しかし、解説にあったように、一旦、カフカの謎に巻き込まれると気になって仕方なく、最後まで読んでしまいます。 未完ではありますが、話の趣旨は途中から分かるので、未完でこそ完結と思えるようになるでしょう。 むしろ、お腹いっぱいになりますし、この話が完結したらガックリしたでしょう。 しかも、同じく未完の「審判」とも似て非なりで甲乙付け難いですが、敢えていうなら、両作品とも解釈は無数に出来、その中に教訓や感銘を受けるテーマなども見出せます。 これがナチスによって焼かれずに済んだのはブロートのおかげでしょう。感謝。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
当節なら「自分でお城へ行く感じですかね?」という表現がふさわしいと思われるが、自らの意思・決定だけで気軽に行けるという状況ではなさそうである。Kが歩き続けても、城に辿り着けないというもどかしさ。それもそのはず…。 437ページ:第十五章 請願 オルガ「お城へ行く道が何本もあるのです。あるときにこの道が繁盛しているとおもうと、たいていの車がそこを通りますし、また、別な道がはやりだすと、すべての車がそこに殺到します。どういう規則でこうした交替がなされるかは、まだわかっていません。ときには、朝の八時にはすべての車がこの道を通っていたかとおもうと、半時間後にはみんなが別の道を走り、それから十分後には第三の道を通り、さらに半時間後にはまた第一の道になり、それからは一日じゅうその道ばかりが使われるというようなこともあります。それでいて、いつなんどき変更になるかわからないのです」 また、Kが一生懸命になればなるほど、相手は取り合ってくれない。やることなすことすべて否定される始末。というようなことを社会で経験したので理解できる箇所もある。城の役人、例えば存在するかもしれないクラムは、村に宿の亭主やお内儀、農民などを遊ばせておくと、何事もやりやすく、都合がいいのだろう。現代の政治と似ている。 書類の山の崩れ去る音は比喩ではないか? 手紙や言伝の返事が届かない。仕事が楽なのでなまくらになったという箇所は、社会主義国家を感じさせる。 第15章のオルガの話が長いけれど、ここがクライマックスかなと思っていたら、隣の垣根を超えたところで、またぞろイェレーミアスの話。縉紳館で秘書ビュルゲルやペーピーの話が続き、お内儀の新しい服の話が中途半端。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
改版(2005年)と旧版(1971年)が混じっているのでしょうか。自分のように古本で買うと旧版がきたりするようです。このページにある派手なタイポグラフィの表紙とは違う黄色い本でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
主人公のKは最後まで城に辿り着くことができない。しかし、麓の村の住人の態度や言動に色濃く表れる城の存在を、これでもかと言うほど思い知らされる。 この作品は、フッサールの現象学、特に間主観性の理論に通じる認識メカニズムを、小説で表現しようとしたもののように思える。フッサールは、人間が主観の中で、世界のイデア的本質を把握する過程を解明しようとしたが、カフカは逆にその不確かさを、パロディ的に描き出そうとしたように感じる。 他者の心に映し出された「城」という世界の存在が、他者の態度や言動を介して、今度は自己の心に映し出される。仮にK自身が城の中に入って行ってその実態を直接認識できれば、他者の心に映った城と付き合わせることで、真の城の存在を捉えることができる。 しかし、この小説の面白さは、K自身が最後まで城に辿り着けないことだ。城に関する手がかりは有りすぎるぐらい存在するのに、それと付き合わせるべきK自身の認識が無い。 しかも、村人の言動に表れる城の人々の行動や意図は、どうも村人が自己の断片的認識に基づき勝手に思い巡らした、幻想に近いものであることが、言葉の端々から窺える。にも関わらず、それがいつの間にか新たな現実を生み出していく。 このため、Kの心の中では、城という強烈な世界の存在が最後までリアリティを持たない。 さらに面白いのは、主人公のKは測量士ということ以外、どのような人物なのかがほとんど分からないことだ。主人公の内面をリアルに再現するのが普通の小説のゴールだとすれば、この小説は、世界の存在が人の内面においてリアリティを獲得するメカニズム(の不確かさ)を浮かび上がらせようとしている。主観にとってのリアリティとはフッサールの言うようなイデア的本質などではなく、自分に都合よくつくられた幻想に過ぎないことを暴露しているようにも見える。 最後に、お役所的な官僚主義と女の自意識過剰さに辟易している人には、思わず吹き出したくなるようなお笑いが所々に散りばめられている。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『城』(フランツ・カフカ著、原田義人訳、角川文庫)は、フランツ・カフカの未完に終わった長篇小説です。 主人公Kは、冬の晩遅く、ある村に辿り着きます。この村の領主で城に住む伯爵から土地測量技師として招かれてやって来たのに、村人は余所者のKには城に通じる道を教えてくれません。確かに城は存在するのに、Kはどうしてもそこに至ることができません。城に入る手蔓を得ようと、あの手この手を繰り出すが、一向に道は開けません。城の官房長の恋人という酒場の女給と同棲してまで城に執着するが、状態は少しも改善されません。その曖昧模糊とした状況に翻弄され困惑するKの心理描写が延々と綴られていきます。 謎が多く、難解とされるカフカの作品は、これまで世界中の多くの識者によって論じられてきました。城とは近づき難い神の象徴だ、精力的で現実的な商人である父に対する抵抗の書だ、書全体がユダヤ人としての疎外感・不安感に包まれている、そして、これぞこの世の不条理を描いた作品だ――等々、さまざまな解釈が提出されてきました。 ところが、もどかしさを感じながら漸く読み終わった私の印象は、これらとは異なります。カフカは、読み手を困惑させることに無上の喜びを感じるトリックスターだというのが、私の乱暴な結論です。 本作品中に、<あのように無益に立ちつづけていること、毎日ただ待ちつづけて、しかもいつもそれをくり返し、変るという見込みも全然ないことは、人間を疲れ切らせ、懐疑的にし、ついにはああやって絶望して立ちつづけること以外には何もできなくしてしまいます>、<ビュルゲルのほうは、まったく自分の思考の筋道に没頭していて、Kを少しばかりまどわすことにちょうど今成功したのだといわんばかりに微笑するのだった>――という表現を見つけました。 <要するに私は、読者である我々を大いに刺激するような書物だけを読むべきだと思うのだ。我々の読んでいる本が、頭をぶん殴られた時のように我々を揺り動かし目覚めさせるものでないとしたら、一体全体、何でそんなものをわざわざ読む必要があるというのか? 君が言うように、我々を幸福にしてくれるからというのか? おい君、本などなくても我々は同じように幸福なのさ。我々を幸福にしてくれる本なんて、困った時に自分たちで書けばよい。本当に必要なのは、ものすごく大変な痛々しいまでの不幸、自分以上に愛している人物の死のように我々を打ちのめす本、人間の住んでいる場所から遠く離れた森へ追放されて自殺する時のようなそんな気持ちを抱かせる本なのだ。書物とは、我々の内にある凍った海原を突き刺す斧でなければならないのだ、そう僕は信じている>。1904年、友人オスカー・ポラックに宛てた書簡の中に、カフカはこのように記しています。 <(現在のわたしは)自分の才能の命ずるままに、不幸とはなんのつながりもないあれこれの意匠をこらしながら、あるいは虚心坦懐に、あるいは逆説を弄して、さらにはまた、観念連合による完璧な交響楽的構成を意図して、自由自在にこのような主題について即興的なでっち上げをすることができるようになっているのである>。1917年の日記に、カフカ自身がこう書きつけています。 <カフカは、とくに意図して自分の思想を表現しようとする時には、かならずひとつひとつの言葉に罠をしかけたからである(つまり彼は、さまざまの危険な構築をくみ上げたのだ。すなわち、そこでは、それぞれの言葉が、論理的に配置されていず、一語が一語の上へとつみ重ねられているので、まるでただひとを驚かし、当惑させることだけをねらっているかのように、また、作者自身だけを相手に話をしているかのように、まったく飽くこともしらずに、意想外から錯乱へと縦横にとびまわっているのである)>。ジョルジュ・バタイユは、カフカをこう評しています。 カフカの読者を戸惑わせるという目的が、目論見どおりに実現していることは、カフカの作品の意図を探ろうという論争が今なお繰り広げられていることに照らして明らかでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
測量師Kは、彼方の山上に見える城に行こうとするが、永遠に到達できない、それが『城』という小説だといわれてきた。この場合、城は、社会秩序の頂点に立つ政府の権威を象徴する。大筋は確かにそうだが、城に迷路のような仕掛けがあるわけではない。Kは、最初に城に行こうとしたが、そこへ行く道筋がわからず、山の麓の村に戻ったあとは、積極的に城に行こうとしていない。代わりにKが熱中したのは、安定的な仕事を獲得し、正式な村の一員になることだった。彼は酒場の女性と懇意になると、小使として小学校に勤務し、教師の高圧的な言動に耐えることもためらわなかった。Kは「この土地に定住するために、はるばるとやってきた」(p277)と、のちに述懐する。 雪の夜、村に到着した直後のKは、「自分は城の伯爵から招かれた測量師だ」と自己紹介する。村人が電話で城に確認すると、城からの返事は「真っ赤な嘘だ」というものだった。だが、すぐに訂正の電話が入り、今度は「Kを測量師に任命した」という。この返事を聞いたKは、城が自分を「測量師として認定」し、「闘いに応じている」(p15)と解釈する。この何気ない場面を看過してはならない。Kが測量師として測量業務に従事する機会は、小説の最後まで訪れることはないからだ。カフカがこの未完の長篇小説(会話の途中で、突然、文章が途切れて終わる)の結末をどのように構想していたかは定かでない。だがもし、Kが城に雇われておらず、測量師でもなかったとしたら、彼の知識人的な地位は、その大前提が音を立てて崩れ去る。カフカは、そういう物語の約束事を根本から揺るがすタイプの作家だ。 物語という約束事では、社会的な名誉や富の獲得、恋愛の成就といった“大団円”に向かって、主人公が数々の困難を乗り越えていく。けれどよく考えると、この約束事は、同一の価値観を共有する社会の内部でのみ成立するものだ。Kは、村落共同体から疎外されたよそ者であり、自分は物語への参加が禁止され、村人の共同意思から永遠に隔てられている、と焦燥している。この閉塞状態を打開するため、Kは、村人の共同意思を解釈する論戦に打って出た。この論戦では、村人や城の官僚たちの言動の裏の意味が解釈され、停滞した局面が動き出すかと思われた矢先、相手側から、その解釈をくつがえす意外な解釈が提出され、局面はふたたび停滞に舞い戻る。徒手空拳のKは、知力という武器だけで闘い続けるが、彼の戦いは展望の開けない不毛な戦いだ。論戦は、解釈が新たな解釈を呼ぶ無限ループから抜け出せなくなっていく。彼の読みの深さは、村人たちの反感を招くだけだし、白熱した論戦が明らかにするのは、文書主義を標榜する官僚機構の非効率的な実態だ。村人たちは、鋭い観察眼を有するわりに、城のお粗末な仕事ぶりを断片的にしか知らず、城の命令に屈服する自分たちの生き方に疑いを持っていない。 小説『城』が未完に終わった事実は、カフカほどの才能をもってしても、従来の“大団円”に取って代わるメタ物語的な着地点が発見できなかったことを示唆する。それでも、カフカ以後、物語はそれまでの絶対的な価値を失うことになった。物語が閉じられた社会の内部でしか通用しないという限界が、彼の小説によって明白になったからだ。現在、社会システムの急激なグローバル化は、国家間の軋轢の最大の要因となっている。この軋轢の構図は、各国の伝統文化を構成する物語の限界が露呈したのに、カフカと同様に、メタ物語的な着地点が発見できていないのだといえる。最後まで読み通すには、解釈の無限ループがもたらす停滞感への忍耐が必要だが、結果的に小説の作法を180度転換させた偉大な小説、それが『城』だと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本来の目的は決して果たせずに周囲に翻弄される主人公は現代でただ生きながらえる為に毎日会社に行く私の様だ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
読了するのに5年かかりました。でも途中で諦めなかったのは本書に特殊な魅力があるから。 主人公のKは自分を取り巻く小世界(小さな村)の理解を通じて、そこにおける自分の立ち位置や目標を定めようとして奮闘する。Kは明らかに、この城を中心とした小世界に馴染めていない。 周囲の人間は、そんなKにたいして親切ではあるが、Kのシンプルな問いに対しておそろしく長くて回りくどい回答を与える。「取り付く島がない!」これが主人公の叫びだ。RPGで主人公の勇者がいろんな酒場の村人に話しかけるように、Kは村中を歩き回り、いろんな人と会話をするのだが、まったく指針を得られない。 そのあたりが、我々が日々感じる世界のわかりにくさ、と通じるものがある。 ほとんどの人は「世界とは結局どういうものなのだろうか。自分とはいったい何者として扱われているのだろうか。」なんてことを日々考えたりはしない。そんなことを考えても答えなんて出ない。仕事とか部屋の片づけとか友達との旅行の約束とか、目先の課題を解決し、日々の生活を回している。 だが、運命の歯車が狂えば、「不思議の国のアリス」でアリスが穴に落ちるように、不条理な状況下に置かれることがある。そのとき感じる世界の捉えどころの無さ、寄る辺なさ、そういったものがじんわりと伝わってくる小説である。 説明がうまくできないが、カフカの城を読むと癒される。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
眠る前に読む。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
いつ、どのような経験の中でその小説に自分が接したかにより、その小説がグサッと胸につき刺さるように自分の人生に影響を与えることがあります。自己の経験と小説の物語とが溶け合い、あたかも一つになり何が現実だか真実だかわかなくなるという「危ない」経験です。真実は何も現実の中にあるとは限らない。私にとってそれは、20歳を過ぎてすぐ、海外の仕事に出た中近東のイラクでの体験であり、その時、感動して夢中で読んだ小説はカフカの「城」なのでした。 当時、1980年代半ばのイラクと言えばあのサダムフセインのバース党独裁政権の全盛期で、治安はかえって安定してました。私の方は20を越したばかりの青二才で、世間をまだ何も知りません。ただただ新しい環境に自分を置いて、その日本とは全く異なるアラブ・イスラム文化を理解し、イラクに真の友だちを つくろうという純粋な気持ちを持って、中近東イラクの仕事に挑んだのでした。もちろん第一の目的は お金を貯めることでした。 千夜一夜物語、シンドバッドの冒険で知られる幻想的で魅惑的なバクダット。しかし、独裁ファシズムの現実の世界のバクダッドの街には私服警察が多くいるので気をつけろと先輩にしょっぱなから言われます。イラク企業だけでなく、ちょとした外国企業の従業員の中にもだれかが秘密警察で日系企業も然りでした。街を歩いていても秘密警察があちこちにいると言われます。我がプロジェクト事務所でも時々運転手が突然消えます。しばらくすると大きなあざをつくって帰ってくるのでした。夜の酒場で酔っ払った 勢いでサダムフセインの陰口でも叩いたのか、理由があって秘密警察に捕まり牢屋に入れられ、拷問を 受けていたのでした。ですからイラク人の従業員と申しても、表面上のことはともかくなかなか腹を割ってのはなしなどできないのでした。日々ともに仕事をする仲であっても、めったなことはお互いにしゃべれない。どこか打ち解けない関係が延々と続くのです。良心的なクラークのおじさんなどは、その制約の中で自分の誠意を賢明に表そうとしてました。それが痛いほど理解できた私はなんとも「せつない」気持ちにさせられました。これが独裁国の社会なのだとつくづく思いました。 そんな時に前任者の一人が残していった文庫本の中にカフカの「城」があったのでした。相手について まったく知らない警戒し合っている者同士の間でのどうしようもなくうまくいかなないコミュニケーション、その中で広がる不安や疑惑、虚言と駆け引き、警戒と恐怖といったものを我がこととして切実に 感じ、20を過ぎたばかりの私は、このカフカの「城」を貪るように読みました。どこまでいっても先が 見えない物語を追っていくと、そこにこそ真実があるのだと納得しました。そして、イラク人の真の友人を何年たってもつくれない現実の私のイラクでの生活のさまにそれは直結しました。あきらめの悪い私は、誰も残りたがらない中近東の海外プロジェクトに、真の人間関係を築こうと、最後の最後まで立ち会いました。Final Acceptance Certificateというブロジェクト最終承認書の取得やRetentionという、日本円で億単位の契約金の最終5%の取得の仕事に従事しました。Retentionというこの最終まで保留にされた額の受領には社会保険局や税務所他様々な役所から、私が携わったプロジェクトが関係した未処理の案件がもうないという証明書をもらわねばならず、一つのステップ処理のためにある役所を訪ねると、別の 三つの要求をされ帰ってくるというようなことはザラで、そのために別の部署をいくつもたらいまわしにされるのでした。「城」のごとく露骨なお役所仕事です。仕事が一向に捗(はかど)らないフラストレーションの溜まった一日を終えた夜など私はもう精魂尽き果て、自分の神経がやられる寸前になりました。そんな時私はカフカの思いに深くまで入りこむがごとく「城」を貪り読み、そのことにより微(かす)かに癒され、神経がまいるのを免れたのでした。 またイラクには異端キリスト教のアッシリア人が少数います。イラクはもちろんイスラム教国ですが洗練されたイスラム世界の中心国ではないので、割と自由で酒も飲めます。シャヘラザードという千夜一夜物語のお姫様の名を取ったビールもあるくらいです。イラク女性はニカーブという黒い布で体全体を覆って目だけ見せてるなどということもごくまれです。ところが、歴史的にイスラムより虐げられてきた少数民族のアッシリア人社会は、もの凄く閉鎖的でした。常住のホテルの受付のアッシリアの女性と親しくなり、ある年クリスマス・パーティーに呼ばれたことがありました。このホテルの従業員もほとんどが アッシリア人です。彼女は小柄ながら千夜一夜物語に登場するお姫様のように、愛らしく、美しく、そしてたれ目ぎみの、常に潤んだ流れるような瞳がとても魅力的な女性でした。クリスマス・パーティーの会場はホテルのレストランの貸切(かしきり)です。皆楽しそうでした。私もビールを少し飲んで皆の楽しんでいる様子を眺めていました。そして、アッシリアの伝統的なフォークダンスの段になったので、若い私は思い切ってきれいに着飾ったその彼女の前に行き、一緒にダンスを踊りましょうと丁寧にお願いしたのです。さあそれからがたいへんです。「若い日本人の酔っ払いがいる」という騒ぎになり、私は2-3人のホテルの男性従業員にがんじがらめにされて、レストランの外に無理やり追い出されました。私はまったく酔っぱらってなどいません。しきたりとしてだめであれば、そう言ってくれれば私も無理強いはしません。一方的に酔っ払い扱いされ自室に戻った私は、ベッドに臥せりながら、くやしくてたまりませんでした。そして、またカフカの「城」のフリーダとKとの会話のやり取りの部分を読むのでした。翌日、ホテルの従業員たちは、昨日のことはなかったように、笑顔で私にGood morningと白々しく挨拶するのでした。その後も、この彼女には無駄な努力とわかりながらも、日本に一時帰国するたびに、たくさんの土産を買ってきました。その品々を渡す時はホテル内ではできず、所定の場所で渡すのですが、厳しい顔つきの彼女の母が、かならずついてきたものです。 最近、長く再読してなかったカフカの「城」を久々に手に取りページをめくりました。20代前半からの イラクでの様々なことが、「城」を読み進めれば進めるほど思い出され、なつかしさとほろにがさで胸がいっぱいになりました。やはり「せつなさ」が積もるばかりですが、決して感傷的なものではありません。カフカの小説は普遍的です。あたかもカフカは、起承転結では真実に至らないと訴えているようにさえ思えるのです。だから未完という作品の捉え方もどうかなと思います。この世界が大きく変わるという予感が高まり、次元さえ変わりかねぬ現代の世の中で、カフカの伝える、常識を突き破る普遍の真実が、改めて見直される時代がくるのではないかと密かに思っています。真実の普遍性とは、むしろ、「城」のような異常な状況の中でこそ浮き彫りになります。カフカは私が最も好きな小説家の一人です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
読んでみたくて購入、ですが無料でとてもうれしいです | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
まずは、希有な小説であり、逸脱している。 人間の深い側面と、人間関係の奇怪さが、交錯し目眩を覚えるほどである。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
とても面白かったです。カフカの世界に吸い込まれていきました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
厳密なテキストクリティックに基づく翻訳で貴重である。しかも名訳! 死期に迫られたカフカの畢生の大作である。高価な全集以外で入手できるところもよい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
This is different from Kafka's neurotic unrealism. If you read this "Castle" with a desire to find the source of Haruki Murakami, you will surely be disappointed. I think it would be more enjoyable to read with an interest in "What is it like to dream of another person?" After reading, I think that if you have such a nightmare, And if you recognize it so clearly that you can write it so clearly and know that "I will dream that night tonight," It is almost certainly going crazy. | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
絶望的な就活氷河期に運良く生残し、何度も転職を繰り返し、面接で辛酸をなめた私のような者が読めば「ああ、そうか」と共感するようなお話です。 (ですので、合う合わないの差は大きいと思います) 私にとって日本経済、あるいは「世間様」は永遠に「城」です。この小説のごとく、複雑で冗長で、不可解で、ストレスフルな世界です。20年以上頑張ってますが、おそらく「城」の中に入ることは「永久にダメ」でしょう。 きわめつけは「未完」ということです。 オチがない。ハッピーでもバッドでもない、分からないのです。だから終わりまで来たら、また冒頭の橋のシーンに逆戻りです。まだ8周目ですが、スローペースに読み続けるでしょう。 そうするしかないのです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
The uncertainty of this is rather pleasure. I have read this twice in my life. Maybe I will read it again before I die. | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
素晴らしいです。自分は残りの人生であとどれくらい本を読めるのかも分かりませんが、この本に出会えたことに感謝します。 自分は”小気味良い”という言葉をほとんど使ったことなどありませんが、これを読んでいると小気味良い気分になる瞬間がたくさんありました。 どの章を読んでいても、軽くランニングをしたあとの少し疲れた時のような、それでいて爽快感のある、というような緊張と緩和があります。 そして甘美で繊細な表現にうっとりしてしまう、文字だからこそ伝わるこの感じ、というシーンが自分にはいくつかありました。 そのような事は自分の頭では言葉で表現もした事がないような、しかし、確かに今までの人生の中で自分も感じたことのある感情で、なんて素敵なんだ、と何度も感動していました。 本は厚いんですが、序盤からハマりました。ただ読み進むのが楽しくて仕方なくて読書をただ読書として楽しむという最高の時間でした。素晴らしい訳者の方にも感謝したいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
"『出ていくなんてできない』と、Kが言った。『ここにとどまるためにやって来た。だからここにいる』"20世紀を代表する作家の1人と評価される著者の死後に発刊された長編3作の内で【最も長い作品】である本書は、測量士として城を目指すKと、周囲の村人たちの【会話劇の様なカオス】が魅力的。 個人的には【未完の作品)と読む前から知っていたので、どのような結末になるのかと多少不安に思いながら読み始めたのですが。冒頭でKが村に到着してから、さっそく城へと測量士の仕事をもらいに行って話が展開するのかと思いきや、どことなく不穏、あるいは不快な村人たちとの【それぞれに長い】会話が延々と続くばかりで終わったのには驚かされました。(そういう意味で。最後も唐突感はないのですが。) 一方で、起承転結で大きな物語を【わかりやすく】共有させるのが著者の目的ではなくて、主人公自体がKと既に【記号化されている】様に、様々な登場人物たちそれぞれを【暗喩的な存在】として配置、話すがままに矛盾も放置して描き、後は【読者に解釈を委ねている】と考えると、Kも含めて登場人物の誰もが疑わしく、誰もが理想的な人物とは決して言えないことが【かえって余韻となって】印象に残りました。 夢の世界を覗く様な作品を探す誰かに。わかろうとせずにそれぞれに感じたい誰かにオススメ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
I loved it so much that I wanted to start over at the beginning as soon as I read the last sentence and I don't think that has ever happened to me before. Trew and trew this book was definitely worth reading, and drew me in, I couldn't put it down no joke read it in a few hours. Thank you for telling a relatable story that needed to be told, in today's world. | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!