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みずは無間
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みずは無間の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.77pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
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NW-SFという今では死語のようなものが出てきたころから、ガジェットと思弁がSFの中心になった。 本作の素晴らしいところは、大宇宙・AI・非人類知生体・次元と絡めた宇宙論など、多くのSF要素に、一組の男女のありようを織りなしたところにある。 そう「織りなした」ということがぴったりで、物語の中の物語は軽やかに距離も時間も乗り越えてシームレスにつながる。 こういう方法をとると、文意の散乱とともに、意味をくみ取ることがむつかしくなるはずだが、読者も軽やかに時空を超えたストーリーに引き込まれていきます。 デビュー作ということもあって、相当時間をかけて練られた作品だと思います。 ところで、この作品と同時に評価の高い『プロジェクト・フェイル・メアリー』を読んでいるのですが、中盤までは多くの類似点が見られて、興味深かったです。あちらはいかにもアメリカSF、映像を重視した正統派という感じでしたが、私は本作のほうが数段上の作品だと感じました。 | ||||
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●小説の面白さは人物描写もさることながら、SFである以上そのガジェットの特異性やSFらしさが 大切である・・・と思う。そのSFガジェットの内容は途中からついて行けなくなる程に難解(私に とって)になる。 それでも十分センスオブワンダーは堪能できた。 | ||||
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図書館で借りて一度読んでいたのですが、とても気に入ったため改めてkindle版を購入しました。 感想はタイトルの通りです。 みずはの描写には迫力があります。暗く、孤独な宇宙の中で、SF的世界観の中で突然現れるメンヘラ気味の彼女の記憶は、あまりに生々しく、場にそぐわなさすぎてぞっとします。それも含め様々な要素を無駄なく使い切り、飢餓というテーマを背骨に通し、ホラーとしてきっちり締めた本作は紛れもなく傑作でしょう。 個人的には小林康三とかよりも今風っぽくて好きです。レビューがいまいち良くないのが不思議なくらいです。 | ||||
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確実に読む人を選ぶが傑作と思う。ラノベテイストで読み易いが内容はハードSF。若い作者のデビュー作だが実に達者だ。 過食症で「一口ちょうだい」が口癖の彼女「みずは」との恋人関係を清算出来ず、無人宇宙探査機搭載の人工知能に自分の人格をコピーするためアメリカに旅立つ主人公。宇宙の果てまで旅する途中でどんどん複製を作ってしまった主人公の人格にはどうしても捨てきれない「みずは」の影が付きまとい、現実の「みずは」が肥大化するのと比例するように周囲を食べ尽くしていく、と言う設定は荒唐無稽なのだけど、実際に読んでみると妙に説得力がある。いろいろと難解な先端科学的説明がなされているが、私のような凡人にとってはそれらしければどうでも良い。たとえ大嘘であってもうまく騙してくれればOKなのである。 過食症で俗物で自分に依存しないと生きていけない「みずは」と、彼女を冷淡に突き放しながらも捨てられない主人公との生々しい日常的恋愛描写はとても感傷的で本来ハードSFと相容れない筈だが、不思議な程に宇宙探査機に複写された主人公の人格が巨大化して宇宙を破滅させるイメージと重なり合う。 SF部分とは離れて本作のテーマは何かと考えると、自分に依存しないと生きていけない自堕落な女性を捨てることの出来ない主人公の態度に関わるのではないか。常識的に考えれば、こんな足手まといにしかならない女性と、自分でも冷淡だと述べている主人公が関係を続けるのはあり得ない。私はこれを主人公の破滅願望の充足と読んだ。何となく惰性で男女関係を続けてるように見えて、過食症のため糖尿病でボロボロの体になり破滅していく「みずは」に自らも同化して破滅に向かっていたのではないか。そしてそれが、宇宙を食べ尽くし破滅させる主人公と「みずは」のイメージと見事に繋がるではないか。 私達もたぶん「みずは」と一緒に暮らしている。そして破滅に向かおうとする自堕落な彼女を本気で止めることは誰にも出来ないのだ。なぜなら「みずは」と共に破滅してしまいたいと言う願望を、きっと私達自身が心に秘めているのだから。 | ||||
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数あるSF作品の中でも、この作品では群を抜いて数学的な知識が多く出てくるため、所々読みづらいとは思う。 しかし、本書の魅力はSF的ガジェットではなく、あくまで日常という身近さと宇宙という壮大さと対比にあると感じた。 その為SF的な説明はある程度雰囲気さえ掴めていれば、十分に楽しめるはずだ。 そのマクロとミクロの対比の先に見える光が、これ以上なくSFらしい結末を迎えるからSF作品なのである。 数学的説明を除けば結構ラノベに近い文体なので、まずは読んでみて欲しい。 | ||||
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知的生命と飽食。このつながりは永遠であり本質的,それが地獄の本質,という直感にはとても説得力がある。ここ数年読んだ中で一番「怖い」作品になりました。 | ||||
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日常と非日常2つの世界が融合しないまま進んでいき、僕と彼女の個人的な問題が壮大なスケールの問題と合体してしまうという最終兵器彼女やぼくらは虚空に夜を視るなどに近いセカイ系とよぶべき作品。 SFとしてもハードで読み応えあるが、上記のような独特な展開についていけない人はいるだろう。 もちろん私は大好物です。 | ||||
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「これは俺のロジックじゃない。 俺に植え付けられた飢餓の記憶だ。 俺が見た飢餓だ。」(286・287ページ、「飽和」より) 誤解を恐れずに一言で言うとしたら、悠久の時間を過ごすための暇つぶしを試みるAIが、自分の過去の記憶と、自分の創った疑似知的生命体と、量子力学的に枝分かれさせた自分自身に苦しめられる……そんな小説である。 この作者は科学的な知識を突き詰めてその向こう側から生じる「IF」を再現する……というタイプでなく、これこれこうした演出をするためにはどの知識を引用すればよいか? という発想でものを書いているのだと思う。よく言えば取捨選択がうまい。悪く言うと知識の使い捨て、とも言える。 先に2作目にあたる「地球が寂しいその理由」から読んで、残念な出来に感じた理由というのが、作中で起きる現象の薄っぺらさ、登場人物の言動の合わなさだった。一作目・二作目、どちらも一人語りで進むという点は同じなのだが、本作の方はかなり注意深く造られている。通奏低音のように現れては消えていく「みずは」の記憶が、彼自身の試行錯誤と重なり、「情報収集」と共に徐々に開示されていく諸要素が、ミルフィーユ上に造られている宇宙、ひいては疑似知的生命体という「フレーバー」をその都度変容(≒アップデート)させていく。 人により合う・合わないが大きく分かれるところがあるが、2作目よりもまず先に本作を読んだ方がいい。こっちが合わないなら2作目は絶対に合わないし、こっちが気にいったからといって2作目には多大な期待を寄せない方がいい。けっこう失礼なレビューだけど、しかし両方読んだ人はだいたいそんな感想を持つんじゃないかと思う。だが、本作の面白さに偽りがないことは確かだ。 | ||||
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過去の恋人に関する個人的な情念によって宇宙が滅びるという、SFとしてはある意味安易な発想を、多少強引な部分もあれども、ちゃんと理屈をつけて書ききっている点が素晴らしい。 「みずは」に関する描写は好き嫌いが分かれるところだろうが、変に小奇麗な書き方をせずに、人間の、生命の「欲」を捉えたいという作者の思いを評価したい。 | ||||
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現代のSF,もしくは、これからのSFが持っている広大な世界を再認識させられた1作。 購入時、表装から、かなり軽いものであろうと思ったのだが、さにあらず。 ほとんど、哲学なのではないかと思えてきた。 AIの知能として、おそらく情報の形でコピーし搭載されて宇宙に放出された”俺・雨野透”。 彼の、情報としての、体験???思考??? 冷静に宇宙を漂流しつつ存在している”俺”が、その膨大な時間空間の中から、見つけるもの・・・・・!!! 基の彼がとらわれていた、”みずは”の存在が、徐々に増大していく様に圧倒された。 ハヤカワSFコンテストの講評が興味深かった。 他の作品も、いくつか出版されるようで、かなり期待している。 | ||||
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AI化した男が延々とつぶやき続ける一人語り。数千年、一万年単位の悠久の時間、彼の意識は宇宙を漂い続ける。地球に残してきた恋人、みずはの記憶ともに。 語り手は重力の井戸から離脱することを望んだ、雨野透(あまのとおる)という(本人曰く)凡庸な天文学者の人格を移したAI、人工知能です。機体は土星探査を終え、太陽系の外に漕ぎ出します。 宇宙を確たる目的もなく旅する彼の脳裏には繰り返し、地球に残してきた、そして彼が重力を脱し飛び立ちたいと願った原因でもある恋人、みずはの記憶が浮かびます。過食で、雨野透からいわせれば自制心のかけらもなく、常に満たされていないメンターな女性。まあ、地雷女でしょう。 雨野透は旅の中で、飢餓こそが地球型生命を突き動かす、と思い至ります。彼の中のみずはは繰り返しささやきかけます。「ひとくちちょうだい。透、ねえ、おねがい」「しょうがないよね」「生きていれば少なくとも一杯の水くらいほしがる」。決して満足することなく、しかし何を求めているのか、何がもの足りないのかもわからない生物。 やがて彼自身も飢えにとらわれてしまいます。そうして悠久の時間宇宙をさまよい続けるのはまさに無間地獄。 非常にハードなSF設定と銀河系規模の舞台にもかかわらず、登場する人物はわずかこの二人。あとは語り手のような人工知能か、彼が旅の徒然に生み出した人工生命や知性体のなれの果てが名無しさんで姿を見せるのみ。このアンバランスさと、どこに向かっていくか読み進めていってもさっぱりわからない、二転三転するストーリがSF者を幻惑し、また魅了するでしょう。 本書は、再開されたハヤカワSFコンテストの第一回受賞作です。 | ||||
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第一回ハヤカワSFコンテスト受賞作。 宇宙を背景にドーナツをほおばるみずはが描かれた甘い表紙とは裏腹に、内容は容赦のない本格思弁的宇宙SFに仕上がっている。 探査機のAIに転写された雨野透の一人称の語りを通じて物語は展開する。 広大無辺の宇宙を漂う合間合間に、人間だった頃のかつての恋人みずはとの記憶が再生され、徐々に彼女の人間性が浮かび上がってくる。 彼女との記憶から逃避するため、雨野がとった行動とは……。 今のSFを代表するとも言われるグレッグ・イーガンと、小林泰三を掛け合わせたような読み応えで、一度読者を引き込んだら最後まで離さない迫力ある描写が魅力的。 アクションシーンのような表面的に派手な描写はあまりないため、ハード・ソフトウェアの改造や情報知性体の創出、自己複製にポストヒューマンなどの次々提示されるSF的アイデアの奔流に反応する方のほうが楽しめるかもしれない。 また、グロテスクとタイトルにつけたが、勿論、血肉が飛び散ったりするようなシーンが登場するわけではない。 宇宙、探査機、情報知性体といった本来無機的なものが、人間の情念に絡め取られていくのをグロテスクと呼ばずにいられようか。他にも、あのシーン、このシーンと挙げたいが興を削ぐことになるので自重。 みずはという情報がもたらした無間には戦慄を覚える。 と、ここまでは作品内容についてのレビュー。 以下は、Kindle版について。 紙の書籍には収録されている選評が電子書籍版には収録されていない。 なぜ本書が受賞作に選定されたのか、選考委員の見方を知り、自分の意見と重ね合わせて本書を再考するという選評の楽しさを味わうことができないのは非常に残念。 電子書籍にあとがきが収録されていないのは身をもって知っていたが、まさか選評までとは……。 愚痴になってしまうが、どのような事情があるにせよ、このような行為は一定のニーズを縮小させてしまうだけだと思うんだがなぁ。 作品自体は文句なしに面白かったので星5つ。 | ||||
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大傑作である。 日本長編SF小説の最高傑作だと思われる。 対抗できるのは「脱走と追跡のサンバ」くらいだろう。 「セルフリファレンスエンジン」と比較して読んでいたが、 作中で、四通りの人生の解釈が提示され、それをもとに物語は輪郭をはっきりさせていく。 ちなみに、めちゃくちゃ読みやすい文章なので、難解だと敬遠している人でも大丈夫。 途中、涙を流して泣いてしまった。 第一回ハヤカワSFコンテストの受賞作がこれほどの傑作なら、 ぼくは世界を許そうと思う。 「こころ」「人間失格」にとって代わる最先端の思弁小説であり、新しい古典たりえる作品。 | ||||
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