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夢幻諸島から
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夢幻諸島からの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.36pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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たったひとつの答えにたどり着かない、一点に収束しない作品だと思う(読解力が足りないだけかもしれないけど)。 偶然にも、同じ著者の『双生児』を読んでいたおかげで、収束しなくても仕方ないと、開き直って楽しく読めた。たとえば、下記のような問いを立てながら読むのは楽しかった。AとBどちらが先に亡くなったのかとか、誰がこの地名案内の編集に関わっているのかとか。 はっきりした答えはあるはずなのだけど、読者にはたどり着けない(あるいはわかりにくい)場所にあるようだ。 | ||||
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女)その本、ポケットミステリーのサイズね。 俺)形も表紙も旅行ガイドみたいだろ。でも、実はSF小説だ。 どこかの星にある島々についての旅行ガイドの体裁になっている小説なんだ。 目次を見るとほら、島の名前がアルファベット順に並んでいる。 それぞれの章は島々に関する簡潔な観光案内だったり、かつて島で起こったエピソードの紹介だったり、短い物語だったり。 各島のエピソードは互いに何となく関連し合ってる。 同じ事件や、同じ人物について、幾人もの人たちが別々の観点から語っていたり。 段々不思議な世界の実態が分かってくる仕掛けだ。 女)でも物語が切れぎれじゃ、読んでて退屈するんじゃない? 俺)冒頭数十ページは確かに少し退屈する。訳者があとがきでそう書いているから間違いない。 ところがその後、急に調子が出てくる。ストーリーも良いんだ。 しかも、それだけじゃない。 例えば島に関する事実を淡々と数ページ、書いているだけであっても、なぜかそれが面白い。 多分、モノゴトの配合の具合が絶妙なんだな。語りも旨い。ということは翻訳も旨いんだと思うよ。 作者はこの本を書くのに9年掛けたんだそうだ。そういう手間を惜しんでない小説だよ。 女)具体的にどういいのかは、聞いてもよく分からない。けど、そういう本は本物かも。 これから島に旅行に行くから合うかも。借りるわ。 彼氏こういう本、好きなのよね。 | ||||
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イギリスの大物SF作家,クリストファー・プリーストが2011年に発表した長編小説。 時間軸の歪みで,同じ島でも二度と同じ光景を目にすることができず,精緻な地図の作成ができないという異世界に存在する夢幻諸島が舞台です。 これだけ聞くと,『ロード・オブ・ザ・リング』のようなファンタジー,『ジュラシック・パーク』のようなアドベンチャーものを想像してしまいがちですが,本書は,何と旅行記の体裁を取っています。摩訶不思議な島々の伝承を,語り部が淡々と話していくような,あるいは,全くの空想を,いかにも現実であるかのように大真面目に科学的に記述してみた・・・そんなエキセントリックな小説です。 で,そんな風変わりな紀行文の合間を縫うように,あまりにも個性的なキャラクターたちによる,あまりにも風変わりな事件や出来事を描いた短編小説が織り込まれています。それも1つの事件や,1人の人物を幾つもの角度から描いています。ある短編では悲劇の主人公として描かれていた登場人物が,別の短編では,事件の加害者であったりします。あるいは,ある事件の「今」が描かれていると思えば,別の短編では,その事件から1世紀も後の日々のことが描かれていたり・・・・という具合に,読み進めていくうちに,夢幻諸島だけでなく,時間軸の歪みで,自分自身の立ち位置までもおかしくなってしまったのではないか,と錯覚するほどです。 多数の紀行文と,それに挟まれた数編の短編小説を1つにまとめた本書は,果たして長編小説と言えるのかどうかは別として,妙な一体感がありますし,デ・ジャヴにも似た妙なリアリティと,明らかに現実離れした環境設定を,巧みな文書表現で同居させた,何とも摩訶不思議な雰囲気は読み進めるうちに病みつきになります。 今どき2段組という本の体裁がやや読みづらいのですが,一見,起伏のない退屈な展開のようでいて,実は極めて非日常的なSF的世界が広がっているという,この風変わりな魅力は,本好きにはたまらない味わい深さがあります(決して映画化には向かないですが)。 英国SF協会賞やキャンベル記念賞を受賞し,日本国内でも『SFが読みたい!』のベストSF2013の海外編第1位をマークしたというのが納得できる傑作です。 | ||||
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状況設定では戦闘状態の世界が、実に平和的に描かれている。 幻想に幻想を積み重ね、現実感を薄くしている感じだ。 SFと言うよりもファンタジーの世界に近く、ガイドブックと言うよりも、アンソロジーという感じだ。 書き手の意図はここからの続編にあるに違いない。 | ||||
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序文+三十五の章からなる夢幻諸島のガイドブック。……とはいえ読ませる箇所はやはり小説部分。複数の人物が他視点から語られる妙味はあるが、夢幻諸島そのものに関する謎には触れられていないし、全体的な纏まりにも欠けるので、今一つすっきりした読後感がない。が、さすがに手練手管の作者だけあって最後のエピソード配置に狂いはない。 | ||||
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でもアーキペラーゴは、「多島海・エーゲ海」の意味なので、タイトルの「夢幻諸島」というのは少し安っぽすぎる感じですね。 別に夢幻的な話があるわけではないので。。。 続きが出ないかなあ。。。 | ||||
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プリーストの作品っていうのは、へんてこりんな設定の世界を、どのように認識するのか、その主観によって世界が変わってくる、というところがある。ぼくたちの住むこの世界ですら、人によってどんな世界なのか、認識はちがっている。その主観の世界に、ぼくたちはいる、ということなのだろうか。 夢幻諸島もまた、へんてこりんな世界。時空がゆがんでいて、地図の製作は不可能。島伝いに移動しなきゃ(って、「ワンピース」のグランドラインの島々みたいですね)ってな世界。ここで、それぞれの島のガイドブック、という設定の本書なのだけれど、ガイドブックというより短編小説。でも、登場人物や扱っている事件が重なり合っていて、それぞれの記述において、見方が違っている。主観によって世界が変わる、それをそれぞれの島を主題に展開した、という点では、プリーストらしい作品。 そうだとは思う。でも、正直に言えば、技巧に走りすぎて、それぞれの短編から垣間見えるエピソードが、「魔法」や「双生児」や「記述者」ほど、読者に響いてこないな、とも思う。 もちろん、プリーストに要求する水準が高いのは承知。連作短編ではなく、あくまで長編小説。いくつかのエピソードがひとつにまとまっていくところは、見事だと思うし。 ところで、夢幻諸島最強の生物がスライムだっていうのは、プリーストはまさかあのゲームを意識したのでは? | ||||
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プリーストらしく、緻密な舞台装置ながら、この精巧なセットの裏はきっとベニヤ板なんだろうと思わせる、どこかハッタリめいた世界観--その名も夢幻諸島=ドリーム・アーキペラゴという、魅力的な世界の作品が連作短編集として刊行されたとなると、プリーストの長編ファンでない人間も当然のように食指が動きます。 どの掌編にも通底音として流れる風の音の強弱と、はっきりした地図が作れないという幾多の島の入り組んだ地形。そして大陸の戦争への島ごとの政治的対応というリアリティ...これら全部がこのハッタリの世界の舞台美術です。 このドリーム・アーキペラゴのガイドブックという体裁をとりつつ、純粋にガイドブック的な説明のあいまに島の偉人、というかエキセントリックな人物たちのフーガのように連続・錯綜するストーリーが入る構成は、次になにが現れるか期待させ、予告編のうまい映画のよう。 この作家の長編では、エキセントリックなくせに妙に生々しい俗物さを感じさせる登場人物にはいつも好意を持てないでいて、そのため物語に入りきれない部分があったのですが、今回はこの形式がひとつのフィルターとなって、こうした人物像が内容に実に嵌っているように思えます。 この生々しさと幻想世界のバランスは、さりげないようでたぶん超絶技巧を使っているんだろうなと思わせ、非常に心地よい酩酊感を誘います。 「双生児」などの長編を推すむきには異論も多いでしょうが、私としてはプリーストの既刊の中で一番気に入った作品になりました。 | ||||
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一見、短編集、又は同一世界を舞台にした連作集にも見えるが、実は一個の長編と見做す事も可能な作品。 チェスター・カムストンなる人物の序文が最初に配置され、さては架空の作家の小説の体裁を取っているのかと想うとそうでもない。序文を書いた人物も、又、本書に収録されている作品群の登場人物の一人に過ぎない。そして様々な時代と島で、チェスター・カムストン、カウラー、モイリータ・ケイン、ジョーデン・ヨー、コミス、ケリス・シントンと云った人々が時に登場人物の一人として、時に歴史の一頁として繰り返し現れ、時には後の登場する作品の中に前に登場していた作品を補完、もしくは訂正を施す様なものもあり、読んでいて作者がこれでもかとばかりに仕掛けた悪戯を見破っては先に進む様な、楽しい緊張感を味わった。 | ||||
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時間が渦巻いていて地図の作成が困難な世界が舞台。北半球の国々が戦争をしていて、南半球で戦闘が行われる世界。 南半球と北半球の間には「夢幻諸島」と呼ばれる多くの島々が散らばっている。島々は中立地帯となっている。 その島々を様々な著者が、観光案内のように纏めた物語集(という設定?)である。 探検隊が未知の昆虫に出くわして悲惨な結末を迎える話、劇場で働く大学生が手品師に復讐する話、冤罪で死刑になった男の話、島々に遺されたインスタレーション作品と芸術家の関係の話、恋愛(三角関係)の話・・などなど。様々な物語が、多角的に描かれている。 40ページくらい割かれた中核となる話や、数ページで終わる島の記述などがある。 別の島に書かれた記述が、他の部分で別の角度・視点から描かれており、緩やかに全体像がぼんやりと把握できる。 (芥川龍之介の『藪の中』みたいに、読みながら翻弄された感じ?) | ||||
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