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(短編集)
ヨハネスブルグの天使たち
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ヨハネスブルグの天使たちの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全19件 1~19 1/1ページ
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世界の紛争地帯の地理や歴史、風土、文物等を知らないと面白さ半減、 みたいな作品に感じました。 各篇の最後に主要参考文献として大量の書名が記されていますが、 作者さんはこれ全部読んだんでしょうね。 すごいですね! 勉強家ですね!! DX9という歌姫ロボットが全編に登場しますので、 一応SF小説なんでしょうけれど・・ 私はあまりSFっぽさは感じませんでした。 そもそも何で製品の耐久テストでそんなビルの屋上みたいな所から落下させるのか? 意味不明です。 歌唱ロボにそんな耐衝撃性能いらないでしょ(笑) あとDX9が初音ミクだなんて解説読まないと分からないよ(笑) 解説に出てくる『南極点のピアピア動画』の方がSFらしくて夢があって私は好きです。 | ||||
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現代の小説家に出会った、と読んでいる時に強く感じた。 中東、NY、日本、アジア様々な国の様々な建築物と初音ミク型楽器のDX9を組み合わせた物語が連作形式で収められている。 人格の転写やロボット、VRなどのSF的な要素を用いながらも世界観はリアルに基づかれており、SF的要素と現実的な社会問題が交錯する様は他の小説ではあまり見ない質感がある。 この作品はSFの枠を越えて直木賞候補にもなったけれども、日本という枠を越えても評価されうる価値があると自分は思う。 もちろん問題点がないわけでも無い。詩的なイメージやスピード感を重視している結果読んでいる側が置いて行かれたまま物語が終わることがしばしばあるのは難点だ。だがそれを踏まえても、この作品の要所要所で見せるイメージは鮮烈で心を動かす。 もし誰かに小説のおすすめを聞かれたらこの作品を推したい。 | ||||
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宮内悠介の代表作だが息子にも読ませたくて購入。日本人の作家が第三世界も含めたワールドワイドな舞台で想像力を展開させて近未来を描く。そんな時代になったんだと個人的には感慨深い作品だった。内容については、そんなに落としてどうする、と突っ込みたくもなるけど、今までにない高揚感を得られたことは確か。ぜひ読んで下さい。 | ||||
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短編集であるが、DX9という歌うロボットが共通なガジェットとして登場する。DX9は日本が開発した楽器扱いの玩具ロボットである。本来の目的は人を楽しませるものだが、この作品では、高性能であるがゆえに、兵器として使われたりする。さらに、DX9は高所から落とされることを運命つけられたように扱われる。この落ちるDX9をどう解釈するか、どう共感するのか、読み手は自由である。ただし、明るい結論は出てこない気がする。本作は直木賞候補だったようだ。ただし、人を楽しませるエンタテインメントではなく、読者に考えさせるエンタテインメントである。純文学に近いかもしれない。 | ||||
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日本製人型ロボットを中心に短い物語が続く。 計算された構成だと思うが物語が膨らむ前に話が終わってしまう印象を受けた。 | ||||
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初音ミク? と思われるDXー9と言う日本製AIロボットが降って来ると言うモチーフで書かれたオムニバス短編集。それだけ聞くとナンノコッチャだが、近未来の設定で紛争や内戦が泥沼化した地域を取り上げ、9・11後の混沌とした世界に真っ正面から取り組んだ志の高い短編集である。とりわけ表題作は傑作で、読んでいて魂が震えるほど感動した。 日本人にはアパルトヘイトやマンデラ大統領のイメージの南アフリカ。だがこの世界では主流派になった黒人勢力と、それに対抗する白人勢力との内戦が泥沼化している。主人公の黒人少年スティーブは同じ日に戦災孤児になった白人少女シェリルと知り合い、生まれて初めて盗んで来たパンを彼女に与えてパートナーとなる。スラムで身を寄せ合い暮らしながら、2人は困窮生活から脱出するためAI技術者をめざす。そんな彼らが、なぜか大量に降り続けるDXー9の一体を捕獲し、意思疎通を試みる。うまくいかないが、その一体は確実に人格を備えており、何度も落下する苦痛から救ってくれた2人の成長を見守ることになる。 スティーブは大学に進んで政治活動を始め、結婚したシェリルが白人である事も評価されて、内戦を収拾すべく大統領にまで上り詰める。だが、反対派のテロリストに狙撃され、外れた銃弾がシェリルの命を奪う。内戦はもはや手の付けられないほど激化して、絶望したスティーブはシェリルの研究を生かして希望者の人格をDX-9に転写し、集団で人の住めない砂漠へと移住する。その時、あの2人が意思疎通を試みたDXー9が本来の機能を発揮して歌い始めるのが詩的で美しく、魂が震える気持ちを覚えた。 ハードSFで難解だし、戦争ものと言うだけで拒絶感を持つ人には駄目だろうが、傑作なのは間違いないと思う。 | ||||
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素晴らしい短編集です。なかでも『ロワーサイドの幽霊達』が傑作だと思います。 哲学色が強いSFで、テクノロジーによって再び神の概念が呼び出されるという、この手のファンには興奮するしかない内容になっています。 主人公の意識と9・11の テロリストとの記憶が重なる描写は戦慄ものの名文だと思いました。 自由意志、神の存在、アイデンティティ、コギトの問いをSFならではの思考実験で、このページ数の短編で描ける才能・技量の宮内さんは、伊藤計劃や円城塔に並ぶ現代作家ではないでしょうか。 | ||||
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「ヨハネスブルクの天使たち」 「ロワーサイドの幽霊たち」 「ジャララバードの兵士たち」 「ハドラマウトの道化たち」 「北東京の子供たち」 どの物語にもDX9という、歌を歌う少女型ホビーロボット、おそらく初音ミクをイメージしたものが登場して高いところからたくさんそれが降ってくるのだが、先ず無数の初音ミクが空から降ってくるというイメージがあって、そのイメージが敷衍されて小説ができあがったのだろう。最後の作品である「北東京の子供たち」が面白かった、格差が進んだ東京に、辛うじて残る中産階級が団地に住んでいて、かつて、その団地では投身自殺が度々起こっていたのだが、DX9を屋上から落とし、そのDX9が落ちてクラッシュするのとシンクロする、追体験するような装置があって、その装置のおかげで、リアルな自殺者がいなくなったという話だ。全体的に暗いのだが、今の時代の雰囲気とマッチしているように思えた。やや希望が見えるようなエンディングではあったが。。。 表題作の「ヨハネスブルクの天使たち」は、南アフリカに、かつてあったが内戦のために撤退した、DX9を開発した会社の高層ビルが舞台で、その高層ビルから耐久試験のために3000体のDX9が降ってくるのだが、その会社の管理者の手違いで、一体だけDX9のスイッチが入っていて、そのため自我がある状態になっていて、それなのに、何度も高層ビルから落とされるシーンがあって、そのDX9が可哀そうすぎた。果たして、A.Iに自意識が宿るのか、宿るならどういう仕組みでなのかといった、疑問はあるが、そこまで細かいことを追求していったら、この小説のテーマから逸脱してしまうだろう。 | ||||
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南アフリカだとオシャレじゃね? と思ってるなら読者を舐めてます。 ストーリーに深みがなく、上っ面を撫でているだけに思えます。 | ||||
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夕立のように落下を繰り返す少女ロボの存在と,その背景や設定に一気に引き込まれ, 続く篇ではあの9.11に虚実を絡め,ややもすれば不謹慎で荒唐無稽に思える物語に感嘆. ただ,解説で触れられる著者の経歴から,本作に漂う『無国籍感』に納得をしながらも, 民族や信仰,貧富といった,わかりやすくもわかりづらい要素の数々に理解が追いつかず, そのデリケートさにこちらが身構えてしまったのか,煙に巻かれたような読後感が残ります. このほか,連作形式とは謳いながらも,はっきりとした繋がりのようなものは持たせず, 少女ロボが様々な立ち位置で登場する程度だったものが,中盤からは一人の男に偏り出し, 五つの街の物語に『芯』のようなものが入ってしまったのが,却って残念に感じられました. | ||||
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本作に収録のSF連作5篇は「DX9」が物語の推進力になる。 「DX9」は日本製の女性型ホビーロボットであり、歌唱用途で作られた。もちろん「初音ミク」を意識せずにはいられない。 また「DX9」という名はヤマハの往年の廉価版FMシンセと同じ名だ。 ヨハネスブルグ、ニューヨーク、アフガニスタン、ハドラマウト、北東京。 その土地の歴史という潤沢な素材を使った我々の知らない歴史の物語。 話中の「DX9」は様々に使われる。落下試験を延々と続け、イスラム武装勢力の兵器として顔と声帯を潰され、生きている人間の人格を転写される。 歴史の渦中で利用される「DX9」の姿は、生き続けるものの悲哀と希望による叙情を読者の心に灯していく。 さらに、初音ミクという本の外の存在によって「DX9」へのフェティシズムも萌え盛る。 宮内悠介の手つきに感嘆する一冊。 ユベルマン『ニンファ・モデルナ』(森元庸介訳、平凡社)は「落下」を扱った、相当に愉快な藝術論だったけれども、『ヨハネスブ ルグの天使たち』もまた無数に落下する機械のニンファ=DX9による強靭な訴求力を持っている。 | ||||
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確かに面白い。選ばれたガジェットも、まるで外国の作家のよだ。 しかし、読んでいる間中ずっと上滑りな感覚、底の浅さが見えるようで気になった。 経験に裏付けされない知識のみで書かれた感が否めない。 熟す前の、青い果実を無理やり収穫して食っているようだったが、長編として熟成させれば、さらに良くなったかも? ともあれ、日本製の歌姫人形が狂言回しにして、明日なき閉塞感から脱出しようともがく世界中の若者を描いた点は、秀逸である。 | ||||
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何とも不思議な読後感。 民族,紛争,アイデンティティといった言葉がキーワードになるでしょうか。 5つの中篇が収めらていますが,日本製のロボット「DX-9」がある種象徴的に登場するので,5つの物語が集積して1つの巨大なストーリーを形成しているようにも感じます。 ヨハネスブルク,マンハッタン,アフガニスタン,イエメン,そして東京。どちらかと言うと日本人には馴染みのない国が舞台になっている点も興味深いです。個人的にはアフガニスタンでの民族紛争を描いた1篇が好き。 | ||||
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南アフリカ、アメリカ、アフガニスタン、イエメン、そして日本を舞台とした短編集。いずれの編においても、日本製のホビーロボット「DX9」が「狂言回し」の役割を果たし、紛争(9.11を含む。)の現場や現代日本社会を彷彿とさせる「閉じられた空間」において生きる人間が描かれており、現代世界において「生きる」という意味を考えさせられます(ただし、舞台は近未来ですが)。 また、上記各国において、日本製のホビーロボット「DX9」が使用されていた(また、現に使用されている)という設定は、それぞれの国における出来事に、(間接的にせよ)何かしら日本も関わっている、ということを想起させ、現在の国際経済関係に繋がるものがあります。 一方で、本書の難点を挙げるなら、アメリカを舞台とした「ロワーサイドの幽霊たち」は観念的・情緒的に過ぎ、読みにくかった感があります。 | ||||
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「ポスト伊藤計劃」「暗黒ピアピア動画」とも呼ばれる傑作集。さすがに『虐殺器官』の「記述」や「語り」には及ばないとしても、個々の短編の完成度は伊藤の短編を凌駕していると思うし、ある部分では『虐殺器官』以上に深く切り込んでいるように感じる。(例えば、『虐殺器官』はほとんどと言っていい程、後進国の人間の声を描かなかった。もちろん、それは先進国によって隠蔽されるように描かれているからだが。) さて本作は伊藤計劃の影響ももちろんだが、JGバラードの影響が強く窺える。『クラッシュ』『夢幻会社』と言った作品を読まれた方は納得できよう。(バラードのニューウェーブ思想の概略を理解したい方は、SFマガジン2009年11月号の牧眞司「やさしいバラード」が参考になるだろう)尤も、JGバラードの影響は伊藤の作品にも色濃いものとして残っている。そういう意味では、確かに本作は「ポスト伊藤計劃」と呼べるかもしれない。デビュー作『盤上の夜』からは予想できない程の成長が見られる高レベルな短編集。今後が楽しみな作家であると同時に、本作で直木賞を受賞しなかったことが残念でならない。(なお、個人的には「伊藤計劃以後」といったパラダイムは好きではない。そこにはシステムが内包できない他者を排斥するような、「『物語』の暴力性」が潜んでいると思うのだ) | ||||
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南アフリカからアフガニスタン、ニューヨークそして東京、荒廃した都市を背景に奔流の様なイメージを具現化する見事な筆力を既成の日本文学に見出す事は稀だ。 ディストピアを鋭い言語への感覚をもって美しく紡ぎ出す。中でもアフガニスタンを舞台とした作品のリアルさは特筆すべき。 クールでメタリックな冷ややかさとエモーショナルさを併せ持つ傑作短編集。 誰もが思う事だろうが著者の長編が早く読みたいものだ。 | ||||
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無数の少女ロボットが雨のように落下してくるイメージを軸にした連作短編集。 南アフリカに始まり、イエメン、キルギスとイスラム・ジハードや民族紛争の世界を描く野心作。 特に「ジャララバードの兵士たち」「ハドラマウトの道化たち」と続くゲリラものは、キャラクターが一部重なったせいもあって、緊張感があり面白かった。感情移入できるキャラクターがいると、ぐっと引き込まれる。 9.11を再現してしまう一篇だけは、どうもよくわからなかった。 | ||||
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紛争や民族対立といった日本人にはなかなか扱い難いテーマをよく書けていると思う。 DX9という日本製ロボットを軸に据えた物語の作りの上手さも感じる。 ただこの作者にとって短編という形はもはや足枷にしかなっていないようにも感じる。 計算して短編に収めたというより、色々端折って妥協して収めたんだろうなと思ってしまう。 どうにも展開が急だったり(数十年時間が飛んだり)、説明が不十分だったり(「ロワーサイドの幽霊たち」の話そのもの)する。 本来短編はどこかそうした投げっぱなしな部分もあるが、この作品からはもっともっと書き切りたいことがあるんだという マイナスではなく抑え切れないプラスのパワーを感じた。 作者が前作「盤上の夜」、本作と連作短編に拘るのには何か理由があるのかもしれないが 次作は是非長編が読みたいなと思う。 十分面白かったが、所々惜しいなと思ったので−1 | ||||
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去年のデビュー作『盤上の夜』が直木賞候補、そして「SF大賞」受賞という快挙をなしとげた宮内悠介の第2作。2作連続の直木賞候補作。 舞台は近未来の南アフリカからニューヨーク、アフガニスタン、イエメン、そして東京。雨のように落下する歌姫ロボットたちのイメージをつなぎながら、人間とはなにか、宗教、戦い、愛……広い視座で、哲学性さえ感じさせる、SFの枠を超えた良質な小説で、感動しました。 是非、翻訳されて、世界中の人に読んでもらいたい。 | ||||
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