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イスタンブールの群狼
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イスタンブールの群狼の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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ドラマ「オスマン帝国外伝」をずっと見ていて、ちょうどオスマン帝国に興味を持っていたところにこの作品をみつけました。1800年代前半のイスタンブールで、新設軍である近衛新軍の兵士が連続して殺される事件が起き、危機感をおぼえた司令官が聡明な宦官ヤシムに解決を依頼するというお話です。 ジャンルとしてはミステリに入りますが、やはり歴史学者が書いたミステリというべきか、歴史好きでおっとりした作風が好きな方にあうと思います。動機やトリック、種明かし重視の本格ファンや、スリリングでスピーディなエンタメ・アクション好きが読むと期待はずれになるかもしれません。あとがきで訳者が書いておられるように、主役はむしろ、イスタンブールというエキゾチックな街だという気がします。いかにもイギリス人作家らしく、くすっと笑えるユーモラスな部分も多いです。 イスタンブールに住んでいる様々な人種、宗教、階層の人たちを描いて秀逸です。アルバニア人のスープ屋親方、皮なめし職人たち、質のよい野菜を売ることを誇りにしているギリシャ人の八百屋、気のいいオカマちゃん、すでにロシアに滅ぼされてしまったポーランドの大使、ロシア大使の若すぎる美人の奥様、そしてオスマン皇帝のスルタンにフランス人の母后、黒人宦官長、スーダンから連れてこられた文書管理室の賢い青年奴隷などなど。翻訳はちょっとわかりにくいところがありましたが、人物のセリフがそれぞれにふさわしい言葉使いに書き分けられていて、リズミカルに生き生きとして楽しいです。 もちろん歴史の勉強にもなります。他国が恐れたオスマン帝国最強の軍団イェニチェリのことは知っていましたが、最後は傲岸不遜になってやりたい放題、市民にも憎まれた末に静粛されたというのは初めて知りました。オスマン帝国は同じ王朝が数百年続いた稀有な例ですが、それはキリスト教に凝り固まって他宗教を迫害した西欧とは違い、異なった人種や宗教を受け入れたゆるやかな統治の仕方のためだったということがよくわかります。文化的にも科学分野でも、昔はオスマンの方がずっと先進国だったわけですが、もしこのまま存続していたら、今頃世界はどうなっていただろうと考えることがあります。 イスタンブールの地図を広げながら読めば、さらに旅情を感じるのではないでしょうか。有名所もたくさん出てきますし、様々な街区の説明もあります。また、主人公ヤシムの作る料理がものすごくおいしそうで、香りまで漂ってきそうです。自分でも作りたくなりました。 事件の黒幕は意外な人物、意外な動機でした。近代に向かって国が変化していく苦悩のようなものも描かれていて興味深かったです。 また、訳者あとがきも楽しいです。作品に関係した部分についての簡単なオスマン帝国解説と、おすすめの関係本、小説が紹介されていてどれも読んでみたくなりました。作品にも出てきた牛の胃ハチノスのスープの詳しいつくり方も出ています。 | ||||
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ミステリとしてはスリラー感覚、でもそういうことよりも、19世紀のオスマントルコという日本人には迷宮のように窺い知れない国情を、眼前に見るがごとく活写している様が素晴らしい。バザールの風景、ヤシムが自炊する時の実際の調理の仕方(これを読むだけで、実際に料理ができそうなほど詳細)、そして後宮(ハレム)、宦官といったどこか淫靡な世界。 19世紀半ばと言ったらもう西欧では共産主義運動が頭角を現し始めるほど近代化していた時代ですよ、それなのにこのトルコといったら、何百年も続いた中世帝国のままだったんですよね(その意味では我が国も同じか)、あらためてその歴史的意味を考えさせられました。 歴史副読本として、高校生くらいの夏休みの宿題で読んでほしいくらい、きっと彼らにとっても興味のわく本だと思います。 | ||||
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