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残穢
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残穢の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.36pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全160件 101~120 6/8ページ
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数多ある、「ホラーもの」と違い、「キャラクター」に頼らない所に 正々堂々な清さを感じる作品。 どうしても「キャラクター」でやると、怖いのは一作目だけで、 (キャラだと、どうしても、ここで「正体」がバレるし・・・・。) その後は「そのキャラ」が一人歩きしてマンネリ化したり、 それを回避しようと「そのキャラに、色々チャレンジ」させたりするも、 結局果ては、パロディのネタにされたと、「ギャグキャラ」 に堕ちてしまうので。(特に洋画に多し)・゜・(ノД`)・゜・ 「キャラ」として具現化がない=その「何」が分からない。 人は得体の知れないもの(分からないもの)に恐怖や不安を 感じ易いものなので。その人の心理を上手くついているΣ(゚д゚lll) でも何より一番怖いのは・・・・。。 「この話は、フィクションだから、絶対大丈夫だよ!」と 100%断言出来ない所に「残穢」の怖さがあると思う。 「もし「呪い」と「残穢」、どっちの方が怖い?」と聞かれたら、 自分は「残穢の方」と答えますね。(T▽T) 「残穢の意味」を知ってしまったから、今まで気にもしなかった、 TVのニュースや新聞の記事などに、敏感になってしまう。 その「事」って、まさか・・・。とか思うようになってしまった・・・。 まさに「世の中、知らない方が良いこともある」ですよねぇ(T▽T) 日本語では、「これ」を「ざんえ」と呼び「残穢」と書くけれど、 世界の国々では「これ」を何と呼び、何と書き、どう伝えられて いるのかとふと思った・・・。(「残穢」の存在しない国なんて無いから) | ||||
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じわじわと起こる不思議な体験・・・徐々に謎に迫るドキドキ感。 映画化されるようですが、やはり小説が一番楽しめるような気がします。 見えない恐怖をジワジワと体験して欲しいです。 | ||||
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ネタバレありです。 その土地、またその土地に関わった物・人、あるいは怪談話そのものを媒体として穢れが伝染していく。遡れば穢れのある土地なんて珍しいものではなく、伝染する過程で二重三重にと穢れが残っていく。その穢れが人のよくない部分に触れ、また穢れは色濃くなっていく……。 と、怪談の仕組みを調査しながら穢れの仕組みを明らかにしていく過程はとても怖かったです。穢れを残した人物の一人一人のエピソードが生々しく、また穢れに影響された人物のエピソードもおどろおどろしかったです。現実とフィクションの境界を曖昧にしたドキュメンタリー風のタッチも、結末として何かしらの解決を提示しないのも良かったです。 ただ、奥山家探索のあたりから、怪談ものとして怖さを際立たせるに適したスケールを少し逸脱してしまったのか、リアリティが半減したように思えました。最後の廃墟探索で訪れた家屋の悲惨さは身震いしましたが、兼吉家までで滲み出ていた"身近にある怖さ"からは少し離れてしまったような気がします。(主観的に気になった程度ですので評価は文句なしの★5ですが) 「怪談そのものが穢れている場合がある」と警告を受けながら奥山家の話を聞くあたりは背筋がゾクゾクしました。読みなれている人からしたらメタ的な効果を狙いすぎだと思われるのかもしれませんが、もし奥山怪談を受けて主人公にも穢れが移った強い描写があったのなら、しばらくは寝られそうにありませんでした…。 | ||||
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とあるマンションの一室、誰もいないはずの和室から、ときおりかすかに聞こえる、ぶらさがった着物の裾が畳を摺るような音。 過去に、娘の結婚式の当日に、礼装のまま首をくくった母親がいたらしい。 その怪異現象の謎をとくために、筆者らが地域の古老などの記憶や古い資料を頼りに、その地で何が起きたのか、過去をさかのぼって調べてゆく。 陰惨な事件が起きた旧家の歴史を逆からたどる。するとまた、その過去にはまた別の家族の没落の顛末が明らかになる。 この小説のもっとも恐ろしいのは、怪異現象ではなく、人生の没落の連鎖が、執拗なまでに過去にむかって反復してえがかれていること。 人間の歴史は没落の連鎖であることを実感する。自分自身もそこから免れられない。 どうあがいてもなるようにしかならないという無力感を伴う人生観が同伴者になること。 それがこの小説のもっともおそろしくて、もっともおもしろいところ。 | ||||
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一度読んだだけですが、あまりの怖さに耐えられません。 大好きな小野不由美さんには大変申し訳ないですが、今週末にでも古本屋に売りに行きます…。 この本を手元に置いておくのは、あまりにも怖いから。 天井を見上げるのが怖い。 水道管を直視できない。 隣の部屋が怖い。 隙間が怖い。 私が住んでいる土地に、どんな歴史が刻まれてきたのかを考えるだけで怖い。 もちろん長い長い人類の歴史を考えると、そりゃ色々な事が起きているのは当然だよねと思いつつ…。 そっか。 「色々あったんだ」。 そこに気付かされてしまいました。 ああ嫌だ。 こんな事を考えなきゃいいのに、どうしても頭をよぎるのは良くない想像ばかりです。 確かに、この本は賛否両論だろうと思います。 いやむしろ、ハマらない方が良かったかも…。 私のように妄想癖がある人には、決してお勧めできません。 | ||||
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作家の私と、投稿者との交流と取材を通して展開するストーリー。 前半はまったく進展なくグダグダと進みますが、 中盤はいかにもなホラー系へと展開、 後半にかけての怒涛の展開はさすがは小野氏。 たいへん楽しませてもらいました。 こういう作品もいいですが、 十二国記の新しい話が読みたいです、個人的に。 | ||||
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穢れは残る、そして伝播する。 この世には決して触れてはいけない領域があるのだ。 ・・・・・ 作者(小野不由美)を思わせる主人公が思わぬことから関わってしまった強い伝播力を持つ「穢れ」とその顛末を私小説風ドキュメント体裁で描く怪異小説である。 劇的な展開は少なく読み進めるに従って淡々と(物語上の)事件や事実が積み重なっていく。それらは関連性がありそうではあるが、そうとは言い切れないもどかしさがある。読み手は主人公と同じように虚実の間で宙ぶらりんになっていくのだ。だが「穢れ」は確実に主人公周辺をじわじわと侵食しているようにも読み取れるのである。 この辺り、それぞれの出来事の描写が実に怖い。 私は読み進めるのを躊躇するほど怖かった。 過去一度でも「不可解」な出来事に遭遇した経験がある方なら判るであろう。自分なりに「虚妄」であると合理的に判断分類して記憶の片隅に押し込めたはずの「あれ」が皮膚感覚(鳥肌等)を伴って蘇ってくるのである。時には笑い話(異化)にしてまで忘れようとした「不可解」な体験が私にもあるのだ。 今も書きながら鳥肌である。 ある意味読み手を選ぶ作品だとは思う。ただ選ばれなかった方は幸せかもしれない。 何故なら、この物語は全て「実」であるかも、と思い始めなくて済むからだ。 ・・・・・ 「穢れ」は媒介を介しても伝播するのである。 | ||||
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今まで読んだことなかったのですが、ホラー作家としてはそこそこ有名な方らしく、且つ山本周五郎賞受賞!映画化もされるということで、興味本位で読んで見た。 ある土地の因果を現在から大正時代に遡っているいくスタイルは、なかなか新鮮で面白かったが、最後はしりつぼみな感じで終わり、正直「えっ、こんなオチ!」と思ってしまった。 このレビューをみていると小野作品は他の方が面白いらしいので、他の小野作品も今後読んでみたい。 今回のは凄く期待外れで残念。(期待が大きかっただけに) | ||||
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ミステリー好きなので、この異常事態の根っこは何なの?と謎を追っていく過程がおもしろかった。 ただ、穢れがウイルスの感染のように伝染していく、といったような話があったように思うが、これは逆ではないか、と思った。 感染症の要因がわからない昔の人が、感染症で次々に、死者に近い人から亡くなっていくのを目の当たりにして、穢れが伝染していく、と説明づけたのでは ないかと思う。そりゃ、感染症にかかった人と一緒に食事をとったら感染しやすいわね。 忌引きが、なぜ「忌引き」と呼ばれるのか、この本を読んでわかったよ。忌まわしいということか。 遺族をいたわって、だと思っていたら、周りに感染させないためだったとは。 現代では、遺族をいたわって、という意味合いでしょうけれども。お通夜や葬式から帰った後の塩も、なくなりつつあるし。 | ||||
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あまり怖くなかったとか、氏の他の作品の方が面白いとの声もあるが、私はこれは読んでいてリアルに、背筋がゾッとした。まるでノンフィクションのように、坦々とストーリーが展開してゆく。逆にそこがリアルで、もともと霊だとか、怨念だとか信じていない私でも、このような事ってあるかもと思えてきた。夜一人ぼっちで(妻が旅行で不在なんです。)読み始めたが、三分の一ほどで怖くなって止めて、酒飲んだ。で朝起きて、続きを読んだが、昼間でもなんか厭な感じに。タイトルの「残穢」の意味もよく理解出来ました。 | ||||
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作者の他作品である十二国記のファンで、他の作品を読みたくて、図書館でたまたま手に取った作品がこれでした。 作者の元へ霊障(というのでしょうか)が起こるという投書があり、これを調査していくというストーリーです。 内容がホラーということは知ってはいたのですが、読み始めると、そのままそばに置くのが怖くなり(とはいえ、 読み進めるのも怖いというのはありましたが)読み続けました。 読んだ後、夜トイレにいけない、とかの後遺症はありませんでしたが、引越しの際に、お祓いが必要だなと思って います。 | ||||
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元来、この手の作品は、ジャンルとして好みではない ・・・ と言うか、告白すれば「夜、寝るのが怖くなる」ので手に取ることは稀ですが、本作品については、ジャーナリスティックなノンフィクション志向というジャンルの好みが、「寝るのが怖くなる」という問題を完全に押さえ込みました。それ程、堪能できました。 ジャーナリストのように、じっくりと丁寧に事実(?)を追って行く主人公。日本の戦前戦後史を重ねたストーリー展開。怪談(と言って良いのか)をこうした手法で書き上げた著者の技量に脱帽という感じです。嗚呼、今夜も眠れそうにない。 | ||||
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小野不由美先生のホラーワールド全開!! 山本周五郎賞受賞作品です。 この世に未練を残した魂たちが次々と怪奇を起こして行く! 「怪奇は伝染するのか…?」まさに背筋が凍る展開する世界に貴方も足を踏み入れて見ませんか? | ||||
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屍鬼とは違う、このきめ細かい描写と怖さ、惹きこまれました。今度ご尊顔拝したい。 | ||||
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実話のような感じがして、こんなに怖い小説は初めてだった。屍鬼も怖かったが、この残穢ただひたすら恐かった。 | ||||
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怖い本が読みたくて。 小野不由美さん大好きなので信頼して購入。 期待を裏切らない内容でした。 | ||||
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夜は、読めません。怖くて。 読み応えがあり、やはり、安心して作者買いし続けられる方だと嬉しくなりました。 原因不明の怪異が続く前半が特に怖くて、夢中になりました。居心地の悪さを早くどうにかしてくれと、ページを繰る手が止まりませんでした。 後半、解き明かされていく因縁の深さ・呪いの強さにも恐怖と興味が尽きませんでしたが、 「分かっていく」事への安心感で、少し読むスピードが落ちました。 ‘ドキュメンタリーホラー’と銘打たれていますが、どこまでが現実でどこからが創作か分からない不安定感も、この本をより楽しむ一つの要素になっていて、本当によく作り込まれた作品だと思いました。 同時発売されたもう片方をまだ読んでいませんが、レビューで多くの方がこちらを後に読むよういわれてるので、未読の方を読んだらまた読み返したいと思います。 星➖1なのは、装丁です。 個人的好みの問題です(^_^;) | ||||
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小野不由美という作家は「東亰異聞」を読んでから気になっていた。その後、「屍鬼」は読みたかったが長すぎたし、「十二国記」シリーズ」は私の傾向ではなかった。そういう意味では「黒祠の島」は読むべきだったが、機会を逸してしまった。本書は山本周五郎賞を受賞したが、選考委員の石田衣良が「今まで読んだ中で一番恐ろしい小説」とコメントしていたのを読み、ここで読まないと小野不由美は再び読めないと思ったので、満を持してページを開いた。 発端は作家のもとに読者から届いた一通の手紙である。転居した賃貸マンションで妙な音が聞こえるという。調べてみるとその部屋は、短期間に頻繁に退去しているらしい。作家と読者はそこから同じマンションや、周辺の住民に聞き込みをし、退去した人まで探して調査を進めていく。 古来、死や出産などで異状な生理的事態を「穢れ」とし、特に死による穢れを「死穢」と云って重大視された。だから死者を供養し土地を浄めるのだが、あまりに強い場合、浄められずに残ってしまう事を「残穢」という。この正体がやっかいで、本書の主題となる。 話は淡々とした描写で時代を溯っていき、明治、大正年間まで突き進む。壁が膨らみ、よく見るとそれは赤ちゃんの頭で、それが次々と顔を出しては消えていく。こういった一つひとつのエピソードの繋がりが不気味な連鎖を呼ぶのだが、逆にいうと細切れになり、そこで終っている為、恐怖感が続かず、ああ、そうですかという印象しかない。 古びた田舎の因習に満ちた異常な世界のなかで生じる怪奇ではなく、都会のマンションで日常生活をおくっているなかでの怪奇を、現代から過去に溯って調査していくシチュエーションは悪くはない。ただ恐怖感というのか、悪寒がはしるというのか、そういうのを単純に期待する作品ではない。 | ||||
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映画化されて『残穢−住んではいけない部屋−』というタイトルが付けられ、2016年1月30日(土)より全国ロードショーが決まった。だからというわけではないのだが、内容は同じなのに文庫版『 残穢(新潮文庫) 』を買ってしまった。 小説家「私」:竹内結子 仮名「久保さん」:橋本愛 ※何故か「久保さん」は女子大生に変更された。 「畳を擦る音が聞こえる、いる筈のない赤ん坊の泣き声がする、何かが床下を這い回る気配がする。この家は何処か可笑しい。何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べる内、浮き上がってきた『土地』を巡るある因縁。怨みを伴う『死』は新たな怪異の火種となるのか。」 一 端緒 二 今世紀 三 前世紀 四 高度成長期 五 戦後期I 六 戦後期II 七 戦前 八 明治大正期 九 残渣 怖い話を教えて欲しいという「私」の呼びかけに応えた1人、編集プロダクションに勤めるライターである30代の女性・久保さんは最初は背後の和室からの「畳を擦るような音」に悩まされたが、問題の和室を「開かずの間」にしたら今度は「ゴトンと何かを倒した音」が聞こえるようになる。最初が首を吊った着物の女性の帯が畳を擦る音で、次が首を吊る時に倒した台の音らしく、無視するなと抗議せんばかりの悪意に満ちた嫌がらせのようである。しかし、最初の怪音については久保さんには首を傾げるモノを感じた。何故、仕切りの板戸を開いたままだったのか? 本作の主人公である女性小説家「私」は同業者の夫が仕事上の都合で別の部屋に暮らして新居に転居後は同じ空間で生活することに戸惑ったり、懐疑的で淡々とした口調で何か因縁があるのではと先走りがちな久保さんの手綱を引き絞ってどうどうと窘めたりと、何処までも作者の小野不由美女史を体現している。因みに、小野女史の旦那様は綾辻行人(あやつじ ゆきと /本名は「内田直行(うちだ なおゆき)」)氏である。 冷静なようでいて「私」には軽率な一面があり、大晦日の深夜、そんな時間に掛かって来た如何にも怪しい電話にうっかり出てしまい、10代 - 20代前半の男に「今、何時ですか?」と問われ素直に答えてしまったのだ。翌日も答えてしまうが、3日目の晩から出るのをやめて一週間も続いた。久保さんには軽率な対応に密かに呆れられつつも心配されたが、かかってきたのと同様に突如としてイタズラ電話は終わった。 主人公に「音がする」と相談を持ちかけ物語の「端緒」になった久保さんは理由を問われたら「土地の歴史を調べている」と説明するという怪奇探偵の小池壮彦(こいけ たけひこ)氏の機知に倣って調査を行い、やがて実話怪談の蒐集家にして幻想小説・ノワール小説を執筆する平山夢明(ひらやま ゆめあき)氏及び福澤徹三(ふくざわ てつぞう)氏も2人の調査に関連して登場する。 調べ始めた久保さんは或る事実に遭遇する。岡谷マンションから転居した梶川亮(かじかわ あきら)さんが他のアパートで首を吊って亡くなったのだ。その直前、ドラマのように「夢から覚めても夢の中にいる」という不思議な現象を体験し、彼が末期の挨拶に訪れる夢を繰り返し見たため、大家の伊藤さんのショックは大きい。しかも彼の死から1年後に入居した住人が幽霊を目撃したが、それは梶川さんの死の原因である着物の女性の首吊りだった。事件のことは承知の上で少々強引に入居した2人だったが、自殺したのは男性で今までに女性は入居したことすら無いと言っても信じようとせずに次々に出ていってしまう。普通、その部屋で自殺したと考えるのは当然だが、実際にその女性は二駅も離れた自宅で死んだのだ。岡谷マンションに化けに行って、そこから梶川さんに付着して彼を死に追いやった後も居座っているということになる。 吉兼家に凶事が起こると禍々しい笑みに歪む女性の絵の怪と謎の風音に慄く住職の話を聞き、久保さんだけでなく「私」が背筋の凍る思いを抱くのは至極尤もだと思う。殺人と放火、地下を吹き抜けるかのような風の不気味さが怪異の謎と「穢れ」の恐怖を物語る。 そんな時、子供を産んでは殺し遺体の隠匿方法が杜撰になる程に嬰児殺しを慣れて何とも思わなくなった中村美佐緒(なかむら みさお)の事件が浮かび上がり、嘗て、家族を襲ったり放火をしでかそうとした吉兼家の三男の吉兼友三郎(よしかね・ともさぶろう)が「私宅監置」で座敷牢に入れられても当初は床下を徘徊し抜け出したりしたことが判明し、複数の赤児の泣き声や床下を這い回る気配に該当するかもしれない存在の欠片が見え、一世を風靡したJホラー『呪怨』が簡単に紹介された。 健康上の都合で久保さんが調査から外れた矢先、存在自体が怪である北九州最強の「奥山怪談」が浮上する。奥山家最後の当主の奥山義宜(おくやま よしのり)による家族を皆殺しにした挙げ句の自殺という惨劇が、その後の枝分かれし量産された怪異の震源地だった。別々の場所・別々の家や人を不幸にした怪異は、実は元を辿れば同一の原因があるとわかった時の恐怖は形に出来よう筈もない。最終的に平山氏及び福澤氏と久保さんと「私」の4名で廃墟と化した奥山家の跡地に居住し断絶した真辺家の探索を行う。ただでさえ夜に廃墟なんて不気味なのに久保さんは話に聞いていた謎の風音に内心怯えていたため、ダンプが通り過ぎた時の地響きと風に飛び上がってしまう。 住人の流動性の高さも手伝って怪異は広がる。時を越え場所を越えて「穢れ」が巡るかのように「私」と久保さんの調査は時を遡り、場所を移ってはアウトブレイク(爆発的感染)の果てにパンデミック(世界的大流行)を引き起こした伝染病のような「穢れ」の足跡を追う。まるで『呪怨』『リング』等々の世界のように「穢れ」は人から人へ土地から土地へと感染し、風に運ばれ、蜜蜂に付着して運ばれ他の花の雌蕊に受粉するように広まっては新たな怪異の火種と化す。但し、誰彼構わずではなく心に「負の感情」が巣食う人がそうなるらしい、その証拠に何事も無く平穏無事に暮らす人もいるのだから。しかし、何をどうする訳でもなく結局は「すべて世はことも無し」だ。怪しい事象を求めた先で怪しげな事象が転がっただけとも言える。 一度も主人公が名前で呼ばれることは無いままだが、それなのに違和感は皆無である。 | ||||
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夏に怖い話が読みたくて購入。 こういう小説のような形式で怖い話を読むのは初めてだったが、凄くよかった。 ほのかに香ってくる恐怖と、その恐怖へ中々近づけない絶妙な間。 そして最後も、興ざめするような事もなく、妙に納得させられた。 全体的に読んでいて、どうなるんだろうと前のめりになって読めた。 | ||||
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