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無罪 INNOCENT
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無罪 INNOCENTの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.04pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全23件 21~23 2/2ページ
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1988年に刊行された『推定無罪』の続編である。 と言っても、わたしは『推定無罪』を読んでいない。ハリソンフォード主演の映画は見ているが、実はこの記憶も定かでない。ただ、「推定無罪」という言葉に当時は奇妙な語感を覚えたが、このときしっかりと意味を覚えたものだ。被害者の体内にあった精液の血液型がハリソンフォード演ずる主人公のサビッチ検事のそれと同じだったという記憶があって、本編『無罪』では20年間保存してあったこれをDNA鑑定するかどうかがひとつの山場を作っている。最近の東電OL殺人事件の容疑者無罪を決定的にしたのがDNA判定であったのは妙な符合だ。ハリソンフォードが悪女に翻弄されるスケベエリートだったことは覚えている。映画での真犯人も覚えていたのだが、はて小説『推定無罪』でもこの人が真犯人となっているのだろうかと首をひねる。 『推定無罪』を読んでいなくても差し支えないと言われているが、前作で登場した人物がその因縁を引きずって新作に再登場するのだから、やはり読んでおいたほうがよかったなぁと悔やみながら読み終えた。 「名作『推定無罪』から24年。あの悲劇を清算する裁判がはじまる。」 「かつて検事補殺しの裁判で無罪を勝ち取り、今や判事の座に昇りつめたラスティ・サビッチ。彼の妻バーバラが変死した。遺体の発見から通報までに空白の一日があったことに疑惑を抱いた検事局の調べで、サビッチに愛人がいたという事実が浮かび上がった。次々に状況証拠が積みあがる中、かつてサビッチの裁判で屈辱的な敗北を喫した地方検事トミー・モルトは、ついにサビッチを妻殺しで訴追することを決意した。」 州上訴裁判所主席判事・サビッチは野心家で、次の選挙で法曹のトップ・州最高裁判事が当確視されている。だが、アメリカのエリートとはこんなものなのだろうか、還暦をこえてまたまた女に夢中になる。才色兼備、ナイスバディの調査官・アンナとの職場不倫だ。寝ての覚めても彼女のことが頭から離れられない。離婚も考える。お互いに恋は盲目なのだ。奥さんが躁鬱の薬漬けだから、浮気心もわからんではないが、その心の病の半分は自分の責任なのだから、これではリスクが大きすぎます。馬鹿な男だ、けしからん男だ、妻バーバラの変死は薬の誤用ではなく、彼による毒殺かもしれないと、読者だってそう思います。 検事局の実質トップにある検事・トミー・モルトは過去の苦い思いを持って、サビッチを殺人者として立証しようとする。晩婚のモルトは若い妻が二番目を妊娠したことで人生最高の喜びを感じているところだ。かつて仕事師と言われた男が挫折を経験し、いま家庭の中に幸福を見出している。なかなかに渋いいい味を出している。主人公サビッチよりはるかに好感を持てる人物だ。 判事ベンジル・イは特例としてこの裁判の判事に指名された東洋系移民。完璧な英語の文章はかけるが、話し言葉は不自由しており、裁判官としての挙措動作に頼りなさを感じさせる。そのオトボケに振りまわされるのだが、彼一流の正義の判断は関係者を動かすに力強い。 ここに、癌に罹病して治療中の老弁護士サンディ・スターンが体を引きずりながら加わる。 だれもがその実力を認める凄腕だ。 完璧なリーガルサスペンスであった。 被告人、弁護士、検事、判事。遺恨、怨念、恩義、ポストへの野心などなど個人的しがらみに左右されるところはあるのだが、いずれもが法曹界きってのプロフェッショナルである。ヒーローが登場し、それが飛びぬけた才気を発揮して見えない真実を明らかにする。そういう颯爽活躍ものではないのだ。わたしにはあまりなじみのない世界であり、しかもアメリカの裁判事情ときたら、たとえば司法取引、陪審員操縦、裁判官の心証形成などの法廷戦術は実感し難い。だからかれらの職人的な丁々発止のつばぜり合いについては、ほんとの見所はとらえていないのかもしれない。裁判というものが、証拠主義の貫徹とか疑わしきは罰せずという根本思想など、われわれ一般人が期待するキレイごとだけで治まるものではないと思っている。法規範や法精神の遵守とはちょっと異質の色合いがある。どうやらプロ同士の黙契、慣習・掟・仁義といった暗黙の仕組みが厳然としていて、相互には敵対関係にあったところで、しっかりとこの枠内でしのぎを削っているのだ。それが法廷なのだ。 たとえば、サビッチの空白の一日はなんであったか。「事実」を積み上げる弁護士、検事、判事であるが、ではそれによって人間関係に潜んでいる「真実」を証明しつくせるのか?という究極の問題提起がここにはある。著者は現役の検事補だと聞く。その道のプロが書いたハイレベルの小説なのだ。法廷の場で説明困難な「真実」と向き合おうとする彼らが「事実」をどのように扱うかを生々しく描いている。裁判を左右するのは証拠であり、証明できないことを主張することは許されないといっても、実はこれが容易なことではないことが語られる。 彼らは裁判という場においてプロの実力を遺憾なく発揮した。そしてサビッチにまつわる「事実」を彼ら全員が納得する形で整理したのだ。そして判決を出したのだ。だがそれはサビッチの「真実」を明らかにしたものではない。真実に基づいた決着にはなっていないのだ。 そして真実を隠し、その罪業におののきながら生きていかねばならない男と女が残された。 深い余韻の文芸作品。これがスコット・トゥローのリーガルサスペンスなのだと思う。 | ||||
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ラスティは法的には無罪なのだろう!? しかしながら、一人の男として鑑みると・・・ 夫として・・・・妻との関わり・・・・ 父親として・・・息子との関わり・・・ 男として・・・・女性との関わり・・・ 読後に、ん〜〜〜私みたいな男でも色々と考えさせられる・・・ トミー・モルト惚れ直したぞ=== | ||||
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本書は、皆さんもご存じ映画化もされた名作”推定無罪“の続篇である、時がたつのも早いもので前作から約20年ぶりである。 首席検事補であったラスティ・サビッチも今や60歳。上訴裁判所首席判事である。いきなりだが、彼は、妻バーバラが亡くなり、殺人の容疑で逮捕される。 ところが、サビッチの弁護士はサンディ・スターンで、検事はトミー・モルトなんである! 前作“推定無罪”をお読みになった方なら思い出されるでしょう・・・奇しくも23年前の女性検事補殺人事件のときと同じ対決になるのですから。スコット・トゥローの作品は一字一句よく噛み締める必要があり、読み飛ばせない。詳細は読んで楽しまれるのが一番です。臨場感ある法廷劇の筆致の見事さ、意外な話の展開とどんでん返しも好い。 しかし注目すべきは、この著者の秀逸な人間観察による記述が素晴らしく、我々に読ませる作品になっていることだと思う。愛の苦悩、愛することの辛さ、愛してはいけない人を愛したやましさ、告白できない罪をかかえたまま生きることの苦しさ等が・・・家族、性、不倫、正義などの問題とともに著者は心を込めて描いている。この秀逸な記述に読者は自分に人生を振り返ってしまう。ただ、前作を読んだ方ならお気づきのように、伏線が張られていることである。お忘れの方は前作からお読みになりたくなるでしょう。 物語性、人生ドラマ豊かな本作品は、どなたが読んでも満足するに違いない。 本作品は、最高の傑作であると思う。是非お薦め!! 評価の☆は5以上ですが。 | ||||
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