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本陣殺人事件
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本陣殺人事件の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.31pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全57件 21~40 2/3ページ
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| 密室の謎解きも面白いが、田舎の因習のドロドロした雰囲気も良いです。 | ||||
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| 先に犬神家や八つ墓村などの有名な長編をいくつか読んでしまっていたので、短編になるとちょっと物足りない気分になりました。なので、最初のほうに読むと良いかもしれません。探偵小説に興味がない方でも、戦前戦後の世界観や、地方の村の中での人間模様など、そういったものが自分の好みとピタリとハマる方にはオススメです。 | ||||
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| 雪が降る日本家屋の離れで起きた密室殺人。何と新婚初夜の新郎新婦を斬り殺した凶器の日本刀は庭の石灯籠? に突き刺さっており、犯人は庭に出て逃亡したと思われるのに出口のない完全密室状態で、庭の雪についている筈の足跡も残されていない。果たして真相は? と言う本格ミステリで、作中に欧米の密室殺人を扱った先行作品について書かれており、作者がそれを戦前の日本を舞台に置き換えて書いてみた事がよくわかる。おまけに被害者の弟であるミステリマニアがそれらの本を完璧にコレクションして持っており、それが実際のこの事件と深く関わって来ると言うのがミステリファンの心をくすぐる。密室のトリックとして物理的なものはつまらない、と言う言及があるが、本作でのトリックは相当手の込んだ物理的なもの。さすがに無理を感じるトリックではあるが、伝統的な日本家屋で密室を構成しこのトリックを編み出した作者の力業には敬服である。 しかしながら本作の真骨頂は密室殺人のトリックでなく、意外な犯人とその動機を巧みにミスリードする面白さにある。謎解きの場面で、作者はクリスティの「アクロイド殺し」を参考にしたなどとミスリードそのものを告白しているが、それはさすがにあざといと思うものの、日本の本格ミステリを書くぞと言う横溝正史の気概が感じられた。それにしてもこの犯人といい、その動機といい、凄い。いかに戦前日本の因習が強く残る旧家での話とは言え、ね。 だが荒唐無稽とも思われるこんな動機での殺人、現代ではあり得ないかと言えばそうでもないと思うのだ。異常に潔癖症な中年男で、処女を崇拝しているので結婚にも消極的。ようやくこれはと言う清純な女性と巡り会って結婚を決意。ところが絶対処女だと信じていた相手がレイプされていた過去を知り、思いあまって・・・理解不能な動機での殺人なんて現代でも沢山起こっているではないか。盛大なネタばらしですみません。 「車井戸はなぜ軋る」では金田一耕助が出てくるのは名前だけで、ほぼ何も活躍していない。外見がソックリの異母兄弟、違うのは目だけ。が、一人は資産家の御曹司であるのに対して、もう一人は没落した家で貧窮している。二人は同じ戦地に赴き、一人は戦死するがもう一人の資産家の御曹司は両目を失う大怪我を負いながら復員して戻って来る。だが戻って来た彼はまるで別人のように妻さえ遠ざけてふさぎ込んでおり、病弱な妹は二人が入れ替わっているのではないかと疑うのだが・・・と言うストーリーで、妻を初め次々に家族が死んで行き、やはりこの男が入れ替わって復讐しているのかとミスリードされる。果たして真相は? と言うストーリーも面白いが、「本陣殺人事件」と同様に妻の貞操を疑っての殺人と言うのが時代を感じさせるところだ。 「黒猫亭事件」は密室殺人などトリッキーな犯罪を知りたがっている探偵小説家(横溝正史?)に、「顔のない殺人」だとして金田一耕助がよこした手紙を小説として構成したと言う趣向。徴兵された金田一が戦地で麻薬をやっていたなどと言うエピソードも出て来て、とても興味深い。で、復員した金田一が「獄門島」(次に読む予定)の事件を解決して一躍有名となり警察も一目置く存在となっている設定。考えてみれば当たり前だが名探偵のシリーズものはそれぞれの事件がつながっているのを再認識。それと金田一の捜査法や存在感は誰かに似てるなと思ったら、この間読んだエルキュール・ポアロだった。これは当然横溝正史の方が西欧ミステリーの影響を受けているわけだが。さて作中に「顔のない殺人」について言及されており、ほとんどが被害者と容疑者が逆になるトリックで、それが途中でバレたら探偵小説としてはまずいのだとか。そんな余計な情報まで与えられて展開する「顔のない殺人」劇、作者の思うツボとは思っても疑心暗鬼になってしまい、意外な真相まで一気に読ませてくれた。 2作とも名作とされている金田一耕助初登場の「本陣殺人事件」に劣らないレベルの作品だった。現代の目からは考えられない犯行動機だったりするが、それをも含めて横溝正史の味である。そしてコナン君を生み出した金田一耕助は実に魅力的で、やはり今でも日本が誇るナンバーワンの名探偵だな。 http://blog.livedoor.jp/nattolove-002/archives/12620143.html | ||||
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| 本陣…は別の全集で読んでたので、何故本陣…がこの表紙絵なのかとわからなかったのですが、金田一年代順に読み進めてたら黒猫亭…の短編がこれに収録されてると言う事で全ての謎が解けました。 | ||||
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| 本陣殺人事件と黒猫亭事件ともう1つが収録された作品。金田一シリーズは、旧家で兄弟姉妹の誰かが犯人で残忍な死体のイメージが強いです。本陣殺人事件のほうはそんな感じですが、動機やトリックは良く精巧に出来ていますよね。 黒猫亭事件も、トリックの裏にトリックがあるという凄いものでした。これも動機に対して犯行するというストーリーにモヤモヤが解消されました。 | ||||
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| 推理物を読んでいると何度もこの作品の名前を目にしますが今まで読んだ事はありませんでした 昔の作品ながら読みやすい文章でした。探偵役も魅力的なので推理小説を好む私にはドストライクでした 本作は解決に至る為の要素はほぼ読者に与えられる作品で推理が好きな人にお勧めです 読んでいて雨戸の「こざる」という部位はなんなのか?や琴の構造や部品についてわざわざ調べなくてはいけなくてはいけなく大変でした トリックも文章だけでは想像しにくく何度も読み直して理解できました。トリックを絵にしていただけたら直観的に理解でき衝撃もより一層強かったでしょう | ||||
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| 古典といっていいほど古い作品だし、作中の時代もかなり昔の設定なので世界観に馴染むまで苦労したが、その辺りを差し引いても本作は面白い。 表題作の「本陣殺人事件」は動機やトリックに驚かされたもののそれが少々力業で拍子抜けしたのですが残りの二作がすごかった。というか本作は表題作の長編一本だと思ってたのですが勘違いでした。短編三本で構成されていますがいずれも濃い。 特に良かったのが「黒猫亭殺人事件」。短いページ数の中で物語が二転三転し予測のつかなさではこれがピカ一。次点で車井戸ですがこれはトリックそのものより交錯する人間関係が光る一作。ドロドロしてます。しかしこれがいい。 三作とも物語に合わせて文体を変えているのも好印象。小説形式であったり手紙を朗読する形であったり著者の技巧が効いています。 ミステリーとしては王道。読者に真正面から勝負している感じが最近のミステリーになかなか見られないものだったのでかえって新鮮でした。シリーズ物ということで他の作品も気になります。☆4。 | ||||
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| 『本陣殺人事件』『車井戸はなぜ軋る』『黒猫亭事件』の3編を収録。 舞台は戦中から戦後の濃い昭和の時代。 江戸時代の残滓を引きずる閉鎖的な農村社会であったり、戦後のどさくさ風俗街であったり、そこに精神的畸形者が引き起こすスキャンダラスな事件が、読者の野次馬趣味を満足させます。 謎解きとしては『黒猫亭事件』がおもしろい。 | ||||
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| 周到に用意された伏線。 事件全体を包む雰囲気。 対称的な金田一耕助の存在感。 どれをとっても申し分ない作品。 あえて言うなら、戦後、紙不足で仕方なかったとはいえ、長編で読みたかった。 これで、4回目だったが、読めば読むほど気付かされることがあるすごい作品。 | ||||
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| 記念すべき第1回日本推理作家協会賞受賞作にして、金田一耕助のデビュー作。金田一耕助のジャンキー時代にも言及されている。 あまりにも有名で、映像化されているがゆえにストーリーは分かってはいるものの、書物として読んだ場合には優れたミステリーであることを認識させられる。金田一耕助がどのように真相を究明していくか、興味とじれったさを持続しつつ、物語が進んでいく。一気に謎解きをするあたりは、爽快感すら感じてしまう。晩年の、いたずらに長くて、登場人物ばかり多いものに比べても、すっきりまとまっていて読みやすかった。 以降の作品のような見立てはないものの、ターニングポイントであることを考えると、作者の重要な作品に違いない。 | ||||
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| 戦争で書けなかった横溝正史が、戦後、溜まりまくった鬱憤と推理小説的ギミックをぶちまけた名作。金田一耕助といえぱ、くたびれた中年男というイメージだが、この作品では20代の青年として颯爽と登場します。メイントリックの密室殺人は、おそらく現実には不可能でしょうが、この作品のミソはトリックの良し悪しではない。犯人はなぜ密室トリックにしなければならなかったのか?三本指の男の正体?この二点に横溝正史の深謀遠慮を感じます。 | ||||
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| 電子書籍でよみかえしてみるとこれまたおもしろい。 本を読む年齢に応じて感じ方が変わるものだと思いました。 | ||||
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| できればKindle版は買わない方がいい。Nexus7で読みましたが、常に最新のバージョンのキンドルを使っているにも関わらず、旧字体が表現されず空白かー(棒線)になる。しかもこの本、村の名前や人名前に旧字体が多いので、酷い時になると1ページの中の多数の単語が読めない。獄門島のKindleでは旧字体のフォントをイメージファイルで添付しており、この問題はなかったのに、本によってはそういうサービスをしないらしい。今後改善してもらいたい。 | ||||
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| 久しぶりに再読して堪能しました。もはや日本探偵小説の「古典」ですね! | ||||
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| 私が本書を購入したのは、ドラマ性の無いアクション主体の漫画を読んだからだ。現在「ミステリーボニータ」で連載中の漫画『9番目のムサシ』の第1シリーズで“顔の無い死体(死体損壊トリック)”と“クローズドサークル”により秘密組織「UB」のエージェントである主人公の篠塚高(No.9 / ♀)が身も心も結ばれた恋人の橘慎悟を捨てた「DUTY12:果てなき日々への追憶」を読んだのが切っ掛けだった。きっと慎悟も古い版の『黒猫亭事件』を読んだに違いない。 『本陣殺人事件』(表題作) → 金田一耕助の探偵デビュー作。作者の疎開地であった岡山の旧家を舞台にした事件で、別名「妖琴殺人事件」。一柳家の当主である賢蔵は結婚する克子が処女ではないと知り、他人の触った火鉢ですらアルコール消毒する病的な潔癖症であったため、汚れた身で自身の妻に成り上がろうする悪女だと克子を蔑んで初夜に惨殺し自殺してしまう。弟の三郎の知恵を借り、他殺に見せかけて。 グラナダ版『シャーロック・ホームズの冒険』の「ソア橋のなぞ」の流れを汲む事件だ。他殺に見せかけた自殺、死後の凶器の隠滅、しかしながら結局は真相が暴かれる。ハンス・グロスの著書に記された穀物商の他殺に見せかけた現実の自殺事件がソアの事件のモデルであり、更には現実の事件でこの“ソア橋のトリック”は使われたことがある。或る男が他殺に見せかけた自殺を決行し、ドイルの遺品は呪われていると世間に噂を流した。容疑者を特定できずに警察の捜査も行き詰まってしまうが、シャーロキアンの一人に“ソア橋のトリック”を利用した自殺ではないかと助言を受け、被害者とされる男による狂言だと判明した。死を賭した願いも虚しくドイルの遺品は離散してしまった。 『車井戸はなぜ軋る』 → 弱冠17歳(数え年の時代だから、満16歳)にして金田一耕助に明敏な頭脳の持ち主と評された薄倖の女性探偵である本位田鶴代による事件解明とその惨劇の舞台となった本位田家の一員としての深い悲しみ、それが結局は鶴代の心の臓の鼓動を永遠に断ち切ってしまった。本位田家に対する難癖の私怨を異父姉おりんに吹き込まれた秋月伍一は片目の瞳孔が二重になっていることを除けば本位田大助に酷似していたため、出征するまでは境遇により欠片も似ているとは思えぬ風貌にしたが、戦争という同じ境遇により再び相似を齎してしまった。そのため、伍一が戦死し大助がボロボロになりながら生還した時、不幸にも事件を解明した探偵役の少女を含め周囲の人間全員、腹違いの兄弟が戦争で入れ替わったという「犬神家の一族」に似た設定の妄想に憑りつかれてしまう。それも絡んで大助は結婚前に関係があったという伍一の死に際のウソを真に受けて妻の梨枝を惨殺し、療養所にいる弟の慎吉を殺そうとして揉み合う内に自身が命を落とす悪夢の事件が起こった。事件を解明したことで悲しみのあまり先天性弁膜症を患う心の臓を断ち切られて鶴代は絶命し、祖母も老齢により余命幾ばくもない祖母を送った後、自身を処す覚悟を固めた。最終的に秋月姉弟の復讐は成就したのだった。 『黒猫亭事件』 → 密室殺人・一人二役・顔の無い死体トリックを推理小説の三大トリックとしており、3つめの顔の無い死体トリックに一人二役を組み合わせ、バー「黒猫」のお繁は糸島大伍の手から完全に抜け出し風間俊六と一緒になる夢を実現させようと企んだ。 大工の娘の“松田花子”がお繁の本名であり、洋画家で資産家の三宅順平に嫁すも教養云々で姑のやす子に疎まれ、家庭に波風が絶えず、そうして嫁姑の争いの果てに姑の毒殺を図り間違って夫を殺してしまったのだ。花子は警察の手が及ぶ前に中国に逃げて素性を隠して暮らしたが、そこで過去を知った糸島に捕まり食い物にされた。お繁は風間に会い初めて恋をしたが、そこに糸島が現れ再び食い物にされ始めた彼女は糸島を殺す決意を固めた。お繁は彼女自身と鮎子という一人二役を演じていた。糸島も知っていたことで、一種の遊びとして彼女が持ちかけた。お繁に横恋慕していた日兆は計画に利用された。千代子を殺して日兆に埋めさせ、同時に黒猫も殺した。これは千代子の殺害時に部屋中に散った血糊を誤魔化すと同時に糸島に嘘を言わせて黒猫の代役を捜させるなど、彼が積極的に関与した証拠を作る意味もあった。その後、わざと体に合わない化粧品をつけて奥に籠もって転居を持ちかけ、引き払うと同時に糸島を殺したのだ。お繁は日兆も殺す気でいたが、彼女を我が物にしようとする日兆に閉じ込められたことで逃亡の機会を失ったのである。 金田一を殺そうとした時、風間が現れてお繁を制止した。すべてを風間に知られたことを悟り、お繁は自身の心臓に銃口を向け自殺した。 | ||||
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| 電子書籍ならいつでも新品??で読めるが、電子書籍を読むための環境が整ってない人で、中古嫌いな方にはこれで読むしかない。 蝶々殺人事件は隠された横溝先生の傑作である。 蝶々殺人事件はミステリーランキングの日本版に獄門島、本陣殺人事件に次いでランキングに入ってることが多々ある。 ミステリーマニアなら蝶々殺人事件は読んでおきたい作品。獄門島、本陣殺人事件、犬神家、八つ墓村といった名作を生み出した作家の傑作といえば読まざるを得ないはず。 横溝正史作品を読んでない人は横溝正史集とこれと適当に横溝正史作品で有名なのを買っておけばいい。 | ||||
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| 日本ミステリ史に残る傑作として名高い表題作。 昔、ドラマを観たことがあるのでトリックについて理解できたが、 活字だけだとなかなか映像的に把握し辛いのでは? 読み手側の想像力の問題かも知れないが。 名付けて“探偵小説狂殺人事件”。 第2話『車井戸はなぜ軋る』は短編ながら『犬神家の一族』とそっくりの展開。 但、初出はこちらの方が早い。展開は同じでも結末は…。 “元祖絵馬手型殺人事件”。 最後が“ワタシハ、ダアレ?コスプレ殺人事件”じゃなくて『黒猫亭殺人事件』。 この作品には横溝特有の雰囲気はない。そして金田一の解説が長すぎる。 | ||||
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| メインの『本陣殺人事件』は、少々トリックに無理があるというか、いまいち景色が目前に広がらない。こういう類の密室トリックは小説ではなかなか難しいと感じた。 それに対し、『黒猫亭事件』は面白かった。そこまで複雑ではない人間関係や登場人物の少なさも理解しやすさに貢献し、どんどん物語りに引き込まれる。導入の長ったらしい説明もないので読みやすい。真犯人がひそかに隠れているという展開には、すこし非現実的なものを感じてしまうが、推理小説としては、犯人のめぼしをつけられないために、犯人を物語の中に出来る限り登場させたくはないので仕方ないかもしれない。 | ||||
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| 表題作を、読売新聞紙上で西村賢太氏が推薦していたので手にした一書。 いわゆるミステリーと思っていたが、意外や意外本格推理だった。無論、種明かしはしないが、率直な印象はちょっと話が込み入っていて、素直に楽しめないという感じ。 全ては合理的に説明され尽くしており、その論理に破綻はなく、謎解きという意味では大変面白かった。しかし、動機、トリック共にやや自然さに欠ける憾みがある。ふつう人間は、こういう動機で人を殺したりはしないだろうし、そこまで込み入った方法で工作したりもしないと思う。犯人が、そういう性格の人間である点の説明は為されるが、説明がくどければくどいほど、かえって不自然さが募る。そのためには、人物造型がしっかりしていないと、真実味を失ってしまうのであるが、いかんせん種明かしの前にあまり特定の人物の出所来歴ばかりに紙幅を割くと推理の面で支障をきたしてしまうのだろう。 かつて三島由紀夫が言っていたが、推理小説に今ひとつ肩入れ出来ないのは、どうしてもストーリーが推理中心になるため、人物造型が甘くなり、真実味を失いがちになるからだ、と。要は、登場人物らが、推理のための道具として都合よく仕立てられていて、人間としての存在感に乏しくなるというのである。その点横溝は、地方の旧家に伝わる一族の血脈というものを設定に取り入れることで、ストーリーにリアリティーを持たせようと工夫しているようである。そういう意味での読み応えは、確かに十分にあると感じた。 他に、2編の中篇が併載されているが、一つ目の『車井戸はなぜ軋る』は、表題作同様、地方の旧家間の秘められた血の繋がりが忌まわしい事件を惹起してゆく成り行きを、ミステリー風に仕上げた佳編で、手紙や新聞記事などを交えた著者の語りの上手さには目を瞠るものがある。これは文句なく楽しめる作品としてお薦めだ。 もう一つの『黒猫亭事件』は、いわゆる「顔の無い死体」を扱った本格推理だが、謎解きが始まるまでは満州から引き揚げてきた男女の過去など興味深々に読ませてもらったが、やはり表題作同様謎解きが始まると、初めは意外なトリックに驚かされたものの、動機や込み入ったトリックにどうしても不自然さがつきまとい、かつそこを著者が(つまり金田一耕助が)詳細に説明すればするほどうそ臭くなって来る点が、難といえば難だ。 本の帯に「読んでいない、では済まされない。全人類必読の名作」という綾辻行人の推薦文があるが、私にはちょっと誇大広告と感じられた。 著者は作家になる前、新聞記者をしていたらしいが、会話を含めた人物造形はやや類型的でおざなりに感じたが、事件のあらましや背景を語る地の文の語りに、目を見張るものがあると思う(H24.1.2)。 | ||||
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| 本陣については、これはホント、現代ではとうてい成立し得ない動機ですね。 トリック云々よりそっちに感心してしまった。このあたりに時代を感じる。 いい意味で。 表題を含む三編の短編集。 「車井戸はなぜ軋る」が一番好きです。 そしてこの本は次の獄門島への前座みたいな向きがあります。 ちょいちょい「獄門島」というワードを出して煽ってるし。 | ||||
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