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弥勒世
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弥勒世の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 1~20 1/2ページ
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舞台は日本復帰前の混沌とした沖縄。当時の状況が容赦なく描写され、登場人物の強烈な個性と諸々の事件が複雑に絡み合い、一気に読み切ってしまう。 CIAの手先になった主人公伊波尚友が反戦、反米、反基地の活動家たちの詳細を米軍に報告する一方で、米軍の情報を活動家たちに流して信頼を得、更に、琉球の警察官との情報を交換するという三重スパイのような行動を続ける。その根底にはやまとや日米政府による歴史的にも現在も沖縄が虐げられてきた理不尽な環境とそれに対する沖縄の煮え切らない対応への絶望と憎悪が渦巻き、相互を激突させて破壊させたい衝動に駆られている。そこに同じ施設で過ごした友人、一見酒と女と音楽にうつつを抜かしている天才肌の比嘉正信から米軍基地襲撃という恐るべきテロル計画を打ち明けられ、決行に協力する。ヤクザも一枚かんでいるところが沖縄的か。当時の基地の街コザではヴェトナム帰りの米兵が荒れ狂い、白と黒の兵隊のむき出しの対立、女や麻薬、暴力がはびこり、騒然としていた。一方、日米政府の合意により沖縄返還が決まり、日本復帰、反基地運動が盛り上がる中でB52の墜落事故、毒ガス漏れ事件が発生、べ平連などの左翼活動家も侵入して沖縄全体が激しく揺れ動いていた。主人公の尚友と正信は奄美と宮古島出身という沖縄社会ではアウトサイダーでこれらの騒動を冷ややかに眺め、武器集めのため吐き気をもようすようなあくどい手段も実行する。尚友には同じ施設出の献身的に一途に思いを寄せる魅力的な黒人系ハーフ照屋仁美が寄り添うが、己の所作に嫌悪し、出口のない葛藤を抱えながら物語は進展していく。 | ||||
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沖縄、独特の雰囲気と、作者の独特の雰囲気が最高に融合されている。 | ||||
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沖縄のこと知らなすぎた。 差別・貧困 考えさせられた。 無知だったことに恥をしる。 長編だったが時間を忘れて読んでしまった。 | ||||
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呪詛が足りない憎悪が足りない絶望が足りない詰まり狂気が足りない。 作家が歴史に組み敷かれてどうする。 | ||||
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久しぶりに馳星周の作品を読んだけど、読み応えがあって良かった。 デビュー作の「不夜城」があまりに衝撃的で素晴らしい出来栄えだったので、その後の作品が「不夜城を超えられない」「ワンパターン」といった評価をされがちで気の毒だった。 正直、僕もそう感じる事があったが、この「弥勒世」は「不夜城」に勝るとも劣らない作品だと思う。 それにしても、こういう重く暗いテーマの作品を書く作家も馳星周くらいしかいなくなった。 世間で売れる本っていうのは、主人公は真っ直ぐな性格、それで悪者が卑怯な手段で主人公を陥れようとするが、色々知恵を振り絞って困難な状況を乗り切り、最後は悪者をやっつけてスカッとするっていう勧善懲悪の内容のものが多い。 ストーリーがわかりやすく、受け入れやすいのだろう。 そういう小説が売れてるって事は、馳氏の小説はなかなか幅広く受け入れられるのは難しいだろうなと思う。 「弥勒世」も、人間の暗く醜い闇の部分を描き出し、憎しみ、怒り、諦念、呪詛であふれている。 登場人物の誰一人幸せになれない。 世間一般で売れている小説とは真逆の内容である。 安易な勧善懲悪の希望の物語に走らず、たとえ受け入れられにくくとも、こうした人間の闇を描きつづける馳氏を僕は評価したい。 「弥勒世」の舞台は施政権返還前で、ベトナム戦争真っ只中の米軍統治下の沖縄。 あらゆるイデオロギーが島全体を包み、米兵の沖縄人に対する日常的な暴力、差別。 アメリカにもなれず、日本にもなれない沖縄の特殊な状況。 そんな中で孤児院出身の伊波尚友、比嘉政信、照屋仁美の三人を中心に物語は進んで行く。 上巻では、小さい事件はあるものの、わりと淡々と話が進む。 当時の沖縄の状況説明のような内容が多い。 しかし、これは嵐の前の静けさで、下巻では怒涛の如く急展開していく。 個人的には、ヒロインの照屋仁美が非常に魅力的に書かれてると感じた。 馳氏の作品の登場人物は性格の歪んだぶっ飛んだ人物が多いのだが、照屋仁美は馳作品には珍しく純粋で真っ直ぐな女性なのだ。 主人公の伊波との恋の行方がどうなるかも下巻の楽しみ。 沖縄史の勉強にもなるし、とても読み応えがあった。 勧善懲悪の物語に飽きて、たまには重い小説を読んでみたいと思ってる人にオススメ。 | ||||
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【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する | ||||
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落とし前となる作品。時代故の携帯封印が図らずもエルロイ的世界に道を穿つ。従来にないヒロインが出色。 | ||||
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【ネタバレあり!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する | ||||
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今まで読んできた馳氏の小説はほぼ全作品、内容が濃い・薄いに関わらず、中毒的に読み進めずにはいられないという感覚に陥りました。 3日以内に一冊読み終える感じでした。 しかしながら、 本作(上巻)は感覚がかなり異なりました。 他の作家の方々と同じというか、読みたいときに少しずつ進めれば良い、と。 馳氏の作品の多くは裏社会・闇社会が背景となっており、チンピラやらデバガメやらが主人公である、もしくは彼らが主人公を取り囲んでいます。 ある意味“軽い”。 本作の場合、舞台は<返還前の 米軍占領下の沖縄>。 とてつもなく重く、密度の濃い世界です。 このあたりのことが、作風を違ったものにしているのでしょう。 また、上巻まででは暴力的な性描写はほぼなく、SEXに<愛>が感じられる点も異質でした。P.585から主人公は急に鬼畜な道へと突き進みそうになります。 過去を明かさずに来ていたので、どうしても唐突な感は否めない。 鬼畜な物語を描きたい、またしても鬼畜先にありきなのか? その予測も今回は外れました。 下巻の鍵は案外<濱野>かな? 如何でしょう・・・ *** (以下の文章、CUBAに想いを馳せ、なんだかどきっとさせられる言葉でした。) P.110 「祭が始まるのだ。 理性などうっちゃって本能に全てを委ねればいい。 体力が尽きるまで三線を弾き、歌をうたい、カチャーシーを踊る。 うちなーんちゅはそうやって生きてきた。 そうやって 現実をなおざりにし、夢の中に生きてきた。 その結果がこれだ。 薩摩とやまとに翻弄され、戦争で生き地獄を味わわされ(原文ママ)、アメリカーに尻尾を振る生活を余儀なくされる。」 P.127 「アメリカーからもやまとからも独立し行けるほどうちなーは豊かじゃない。 薩摩に蹂躙される前から、中国とやまとの顔色をうかがってきたんだ。 その間にうちなーんちゅはとことんまで骨抜きに された。 独立したって、あっという間に滅びるだけだ」 P.177 「離島の人間はさらなる離島の人間を差別してきた。 途切れることのない連鎖。 生きとし生けるすべての人間は、他者を差別するという一点で共犯者だ。」 P.472 「愛国心がなければ戦争もおこならないだろうとは思っているがね。」 *** 1969年の沖縄の米軍基地におけるVXガス保管倉庫での事故、そしてその隠蔽は史実のようです。 *** 【2013年12月9日記】 下巻の方がずっと内容が濃く、読み物としても面白いので、とにかく上巻を(我慢して)読破することをお薦め致します。 | ||||
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読み始めテンポ良く良かったのですが、沖縄の事全く知らずで最初はちょっと付いていくのにしんどかった。 途中で地図を見て沖縄の位置をしっかり確認したり、コザ暴動を調べてみたり・・・ でも本当に読んで良かった。 | ||||
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沖縄の見方が変わった気がします。まだ行ったことがないのですがこの本を読み沖縄の観光目的が変わりました。海よりも基地に行って見たい気がした。 読んでいてだんだん辛く哀しい思いがしてきて最後に来て読み終えるのに時間がかかってしまった。死に向かっているというのがきつかったなー仁美が可哀想でならなかった。 沖縄返還の事や沖縄の真実を教えてもらった、本当にこの本に出会えてよかった | ||||
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沖縄の見方が変わったように思います。上下巻と長編でしたが、だんだんと面白くなっていき本当に良かったです。 読み終え少し哀しい気がしました。 沖縄の哀しい歴史を知りました。 | ||||
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ウチナーンチュの混馳氏が沖縄返還を舞台にした作品を描き 高評価だという情報をみて早速読んでみました。 氏の作品は「不夜城」「鎮魂歌」しか読んでいないのですが どちらも大変読み応えがあったこと、 そして私自身沖縄に生まれ育ったことから興味深く さっそく読んでみたのですが これが、もう、予想以上に、ものすごく面白い。 誰かの評にもあったのですが、 かなり取材しできごとを深く掘り下げて表現されているのでは ないでしょうか。 物語では沖縄が日本へ返還されるまでの ウチナーンチュの戦いの様子が描かれているのですが それは私が生まれる数年前の話。 この本のように 憎しみや不満、悲しさが渦巻いている沖縄を ウチナーンチュである私はほとんど知らない、想像できないでいました。 しかし。 氏の描く物語は 当時の沖縄の感じが、匂いや湿度、灼熱の光や 人々の目の暗さまで その場でその体験をしているかのような感覚になってしまいます。 まさに現実以上にリアル。 日本は沖縄を、沖縄はやんばるを、やんばるは離島を差別する。 という一文にハッとしたりヘンに納得したり 小さい島が昔も今も抱える矛盾を、鮮やかにえぐりだしていて もう、いっそ潔い。 出てくるキャラも一人ひとり、味わい深く、無駄がありません。 ところで主人公の抱える闇、裏切り、狡猾さ、哀しみ は 「不夜城」シリーズにも共通しています。 どこにも受け入れられず、馴染めず、ただ一人 生きる為にもがき続ける。 このキャラ、この視点は、馳星周独特ですね。 上巻は走り抜けるように読みました。 下巻も楽しみです。 | ||||
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軽いネタバレを含みます。 馳作品はだいたい読みましたが、私の中ではこの作品が一番です。上下巻あわせて1000頁を越える大作故に敬遠してしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、知人にオススメ本を聞かれたら毎回これを推しています。 虚無主義であり、沖縄を裏切りつつスパイ活動をすると見せかけ、実は二重スパイである主人公。アナーキストの政信。アメリカに対する憎悪を糧に反米活動をする仁美。ならず者かと思いきや、根っこの部分では主人公と志を同じくするマルコウ。情緒不安定で、登場人物達をひっかき回し、悲劇の引き金ともなった愛子。皆個性豊かです。 上巻あたりでは物語の方向性が定まらずにやきもきもしましたが、中盤で主人公の思想が転向したあたりから物語が加速します。 なんといってもラスト。これほど虚しい気分にさせられた小説は初めてでした。 馳作品はだいたい暴力と権力、性描写が色濃く絡んできますが、この物語はそれより深い部分が全面に押し出され、他の作品とは一線を画していると感じます。 ぜひ一読してみて下さい。 | ||||
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ちょうどオームの法則を読んだ後だったのでてっきり弥勒菩薩の本かと思ったら沖縄の話でしたね いつもながら馳星周さんにはやられっぱなしで、体中が痛くなります。 | ||||
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私も沖縄が好きだ。温暖な気候、澄んだ珊瑚礁、カラフルな魚、独特な調べを持つ島歌、陽気なカチャーシー、豊かな島料理、優しい島人… しかし本書はそんな沖縄の表面しか見ない人々を嘲笑うかのように歴史の現実を突き付ける。 「うちなーんちゅはおめでた過ぎる。おめでたいから戦前はやまとに蹂躙され戦後はアメリカーに家畜以下の扱いを受け、怒ることはあっても怒りを爆発させて歌って踊ればそれで忘れる」というような意味のことが主人公の独白や会話の中に何度も出てくる。 この考え方は衝撃的だった。琉球王国の解体や沖縄の地上戦 やアメリカの統治、復帰から今に至るまでの基地のことを知識として知ってはいてもそんなふうに考えたことがなかったからだ。 主人公とその仲間たちは何も変わらないことを知りながら、そんな世界に罅を入れたいと絶望的なテロルに乗り出す。 沖縄が今も基地の町であり続け、米兵による犯罪が絶えないことを思うと主人公たちの行動はより悲劇的だ。 徹頭徹尾他人を拒絶してきた主人公が唯一愛した女との恋愛とその結末が胸に刺さる。 私もその一人だが、巷に溢れる沖縄好きにこそ読んでほしい。 | ||||
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馳星周の作品にハッピーエンドや爽快感を望んではいけない。 それは判っているのだが、それにしてもあまりにも絶望的な結末を向かえる。 殺人集団と化していく3人。 執拗に尾行を続ける刑事。 命を落とす者。 もはや無法地帯ともいえる米軍の不埒さ。 そして、うちなーの怒りと悲しみ。 上巻でたっぷりと舞台背景を語り、主人公たちのイデオロギーや存在に肉付けをした後の下巻。 物語は、用意された皮肉なエンディングに向かって、一直線に走り始め、 読み進むほどに助走はますます加速していく。 こういう終わり方は全く想像できなかった。 してやられた感にしばし虚脱。 | ||||
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ネタバレになるといけないので詳しくは書けないのですが、 とにかく照屋仁美の真っすぐな生き方がとても美しくて心を奪われました。 彼女の存在のせいなのか、馳星周の他の作品に比べると「暗さ」をそんなに感じさせない感じでした。 夢中で上下巻ともに一気読みし、非常に満足な作品です。 | ||||
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今では沖縄が「日本であること」に疑問を持つ若い世代は皆無だろうが、 昔昔は、「日本ではなかった」時代がある。 本作は、日本に返還された当時の沖縄を舞台に描かれた人間劇。 主人公はやはり馳星周お得意の、「アウトローだが、どっぷりヤクザ者には成り切れない男」。 前半は主題がよく見えなかったのだが、 後半にいくと俄然スリリングになり、下巻への期待が膨らんでくる。 米軍、基地、混血、ヤクザ、差別、反戦、白人と黒人と黄色人種、本土と離島など、 ちょっと考えただけでもこれだけのキーワードが挙げられるほど 沖縄が抱える独自の事情は根深く、暗い闇に包まれており、 市井の人々の噴飯と無力感が伝わってくる。 舞台は70年代だが、沖縄の現在は今も変わっていないのではないか。 青い海と白いビーチのイメージの沖縄は、本書には、ない。 | ||||
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上下巻で1200ページという大作で、一部きわどい 叙述もあるハードボイルドです。約40年前の本土復帰 直前の沖縄の現実に向き合うつもりがないなら、読む のはやめたほうがいいでしょう。 5日間のストを構えた全軍労の幹部が、こう言ってい ます。「このストは(中略)やっても無駄だが、やらなけ れば自らが救われない」と。これに似たセリフ、楡周平 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』で安田講堂に 立て籠もった学生も言っていましたっけ。 閑話休題。昨秋、小阪修平氏を偲ぶ会に参加(その場 には『叛乱論』の著者や「矢吹駆シリーズ」の作者の姿 もありました。)した時、司会者がしきりに「私たちは還 暦を過ぎようとしているが、このまま朽ちていいのか。」 と問うていました。つまり、大多数が辛うじて残り火を 絶やさずに生きてきたということなのでしょう。だから、 大学での挫折の後、権力の中枢を狙うというお話しな ど、いかにも作り過ぎで笑止という他ありません。『再生 巨流』、『ラスト ワン マイル』と快調に飛ばしてきて、ちょ っと調子に乗りすぎましたね、楡さん。 しかし、1969年の安田講堂攻防戦と1970年のコザ 暴動、同時期の話題をとりながら、本書の主人公の世 界をぶち壊すという思いに迷いはありません。主人公を 頼る少女の惨死や理想に生きる恋人の自殺、そして主 人公自身の殺人行為など下巻は凄惨で殺伐とするきら いもありますが、人々の暴発と主人公と仲間の米軍基地 へのテロ行動がクロスするクライマックスまでストーリー は疾走してやみません。ラストでは、『仁義なき戦い 広 島死闘篇』(深作欣二)での特攻くずれ(北大路欣也)の 最後を思い出し、その迫力に五臓を貫かれました。 <付記> 著者の最新作『淡雪記』を読みました。やっぱ りハードボイルドの筆致には純愛は向かないかなと。横 道に入らず王道を進んでもらいたいと改めて思いました。 (2011/06) | ||||
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