沈黙の森



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初公開日(参考)2009年10月
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長編小説

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沈黙の森 ((徳間文庫))

2012年01月07日 沈黙の森 ((徳間文庫))

新宿の暴力団・東明会の金を持ち逃げした男が、軽井沢に潜伏。金額は五億。臭いを嗅ぎつけた危険な連中がこの閑静な別荘地に現れ、男の行方を血眼で捜しはじめた。かつて新宿で「五人殺しの健」として名を馳せたが、今はヤクザ稼業から足を洗い、別荘管理人として静かに暮らす田口健二のもとにも協力を要請する輩が訪れ…。雪山に乱反射する、欲望、復讐―すべてが暴力に収斂していく。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

沈黙の森の総合評価:6.28/10点レビュー 18件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

馳作品最強の男登場

軽井沢と云えば皇后家ゆかりの地。ここにはやくざはおらず、その手の取り締まりも厳しいそうだ。
そんな金持ちの別荘地である軽井沢が戦場と化す。馳版『マルタの鷹』ともいうべき本作では5億円をやくざから持ち逃げした投資ファンドの男を追って、東京から極道が、中国系マフィアが大挙してくる。馳氏に掛かると閑静な富裕層たちの避暑地も血で血を洗う修羅場となるのだ。

物語はかつて20年前に新宿で大暴れした四人の男を軸に回る。田口健二、城野和幸、山岸聡、徳丸尚久。

田口健二は“五人殺しの健”と異名を持つ伝説のやくざ。かつて5人の中国人を相手に立ち回り、それらを殺害した武勇伝を持つ。しかしある日突然姿を消し、軽井沢で別荘の管理サービスを個人で営み、生計を立てている。

城野和幸は田口を兄と慕い、そのまま所属している東明会に残り、同系列の井出組の若頭となっている。組の金を持ち逃げした鈴木という男を追って軽井沢に乗り込み、かつて新宿に来て暴れた名を馳せた地元のやくざ遠山と組んで鈴木を捜し出そうとしている。

山岸聡は極道から足を洗い、しがない場末のスナックを営んでいるが、経営難に陥り、5億円持ち逃げの情報を聞きつけ、軽井沢に駆けつける。

徳丸尚久はつい最近死に、その息子達也が田口を訪ね、一緒に組んで5億円を手中にしようと持ちかけるが一蹴されてしまう。

そんな4人を中心に、いや極道から足を洗いながらもその伝説的な強さゆえに放っておけない輩が田口を訪れ、否応なく抗争に巻き込まれていく。

かつて田口の伝説に挑みながらも、果たせず長野に舞い戻った田舎やくざ遠山は田口とどちらかが強いのかを20年経った今でも心に燻らせている。

長野県警捜査二課の暴力団担当の安田と本田は遠山の不穏の動きから周囲をかぎまわり、田口に至り、田口を種に周囲にけしかける。

この4人+2人が殺戮の渦にある者は自ら身を投げ、ある者は中心となって、またある者は否応なく、そしてある者はそれと知らないうちに巻き込まれていく。

そんなヴァイオレンス色濃いプロットの殺戮の幕が開くのは実はかなり早い。600ページ弱の物語で1/3を過ぎたあたりで田口の心に火が着く。
自身の写真集作成のために軽井沢を訪れていたフォトグラファー馬場紀子が拉致されることが田口の中の獣を目覚めさせる。正直馬場紀子は登場時点からフラグが立っていることは明白だったのだが。

そして物語のちょうど2/3の辺りで田口の中の獣が狂獣となって立ち塞がる者すべてに牙を剥き出すようになる。それは田口が紀子を人質に5億円を横取りしようとした達也を殺害した後で、達也が実は田口がかつて愛した女性との間に生まれた子だったことを知らされ、図らずも田口は子殺しという忌まわしい存在になったことを悟ってしまうのだ。

この田口健二というキャラクターは今までの馳作品の中でも最強ではないだろうか。
今までのキャラクターには悪人でありながらも対抗勢力に対しての恐怖心、自分と云う存在が消されることへの怖れ、また守るべき物、大切にしている物、よすがとなっている物を持ち、良心が感じられたが、田口はそんな一切の弱みはなく、痛みや脅しが一切通用しない。また人を殺すセンスに溢れ、殺人に対する躊躇いが全くない。
とにかく自分の前に立ち塞がる者を、それがやくざであろうが警察であろうが、全て殺すのみ。しかも一切の手心を加えずに、再起不能となるまで、いや既に死んでいるように見えても、更に死者を嬲り殺すように徹底的に破壊する。冷酷な殺人マシーンと書くだけ以上の怖さがある。

馳作品の特徴は疾走感を持ちながらも複数の登場人物が錯綜し、それぞれが有機的に絡み合って破滅と云う名の交響曲を奏でるという実に複雑なプロットが持ち味であるのだが、本書はそんな複雑な構図は鳴りを潜め、単純明快に物語は疾走していく。
本来であれば作品に最後まで関わっていくであろう配役たちが早々に退場していく。それは田口と遠山と云う二人の獣の一騎打ちという非常にシンプルな結末に向けて次々と現れる障害物を薙ぎ倒していくかのようだ。
今までの馳作品は上に書いたような複雑な構図を持ちながらも、結局最後はとち狂った主人公による大量殺戮で敵味方関係なくぶち殺されていくというプロットの破綻とも云うべき流れだったのに対し、本書は逆に明確に目指す所に向かっていくというシンプルなところがいい方向に出ているように感じた。

そんなかつての馳氏を髣髴させる血沸き肉躍るヴァイオレンス巨編だが、細部や設定の甘さに少々失望したのは否めない。

例えば馬場紀子が自身の職業をカメラマンと述べているのには違和感を覚えた。フォトグラファーと自称するくらいの性格付けはしてほしかった。またカメラマンと云ってもヴィデオグラファーやシネマグラファーなどその対象によって様々な呼称がある。
上にも書いたようにこれでは単純に田口が獣に目覚めるためだけにあてがった生贄に少し肉付けしたにしか過ぎないではないか。馳氏の作品は人が簡単に死ぬだけに単なる物語を動かす駒にしか過ぎないように思え、人物描写や造形に詰めが甘いのが残念だ。

また達也が実は田口の息子だったという設定には正直辟易した。馳氏の作品には血の繋がりがもたらす業の深さや運命の皮肉、因果応報が色濃く出ているが、達也については紀子同様、登場時からフラグが立ちまくっている。紀子への凌辱、達也を殺害することで子殺しの親という忌まわしい過ちという二段階の奈落を設定することで田口が過去の殺戮者に戻るためのスイッチとしたことは解るが、これでは明らかに読者に見え見えである。

本書の疾走感はそれまでの馳作品の中でも随一であることは認めよう。
しかしそれだけに最後の田口と遠山との一騎打ちがなかなか始まらなかったのは、物語を意図的に引き延ばそうとしていたようにしか思えなかった。どういった意図によるのか解らないが、駆け抜けていくのであれば、とことん最後まで休まずに全力疾走してほしかった。
物語はシンプルなものほど面白いというのが私の持論なのだが、本書ではそれがもたらすカタルシスにもう一歩届かなかった。
ただ田口は今までの馳作品の中で最も印象の残った男だったことは正直に認めよう。これが本書を最後に馳作品と別れる私にとって最大の収穫だった。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.17:
(3pt)

元ヤクザの過去と現在が交差する衝撃作

本書は、冬の軽井沢を舞台にしたノワール小説。

元ヤクザ、田口健二が主人公。

物語は、田口の過去と現在を交錯させながら進行する。

彼の内面や葛藤は深く掘り下げられ、読者は彼の正義と暴力本能の間で揺れ動く心情を垣間見ることができる。

著者は、田口のキャラクターを通じて、暴力という行為が個人に与える影響と、それが周囲の人々に及ぼす波紋を巧みに描き出している。

本書は緊張感とスピード感あふれる展開でイッキ読みできる。

暴力シーンの描写が多いので、こういった話が苦手な人は要注意。

田口の愛犬である疾風が物語に温かみを加えている点も、印象的な要素のひとつ。
沈黙の森Amazon書評・レビュー:沈黙の森より
4198628246
No.16:
(5pt)

狂騒の森

バイオレンス映画を観ているような臨場感とリアルな暴力性、その裏に潜む静寂に、ゾクリとするほどの魅惑を感じ作品。
沈黙の森Amazon書評・レビュー:沈黙の森より
4198628246
No.15:
(5pt)

スピード感

馳さんの真骨頂ですね。
一気に読み終えました。
また不夜城のような小説期待してます。
沈黙の森Amazon書評・レビュー:沈黙の森より
4198628246
No.14:
(2pt)

いや最後がさぁ

なんかそのまま逃げてうまく隠れてくれればよかった。ただの暴力大好きなバイオレンスジジイの物語でした。
沈黙の森Amazon書評・レビュー:沈黙の森より
4198628246
No.13:
(4pt)

得意分野で作者の腕が光る

新宿の暴力団の金5億円を持ち逃げしたチンピラが軽井沢に潜伏しているとの話を聞きつけた極道たちが閑静な別荘地に続々と集結し始める。
軽井沢には、かつて新宿で「5人殺し」とよばれた凄腕の元ヤクザ田口が真面目に別荘の管理人を務めていたが、当然彼もこの嵐に巻き込まれていく。

迷惑至極な話。でも、極道やゴロツキの話を書かせたら、この作者はほんとに巧い(相変わらず女性を描くのが下手、というか女性に意地悪だけど)。
登場人物たちは生き生きと、そしてストーリーは緊張感が途切れることなく展開していく。
まあ、如何せん、登場人物の質が質なので、こういう話にはなりますね。
読者によっては眉をひそめる人もいるでしょうか、個人的には面白かったです。抑圧から解放・発散されるエネルギーというものを楽しみました。
沈黙の森Amazon書評・レビュー:沈黙の森より
4198628246



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