9・11倶楽部



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    初公開日(参考)2008年06月
    分類

    長編小説

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    9・11倶楽部 (文春文庫)

    2011年06月10日 9・11倶楽部 (文春文庫)

    救急救命士の織田は、路上で倒れていた少女・笑加を助けるが、彼女は十代前半の少年たちと暮らしていた。実は彼らは、都知事による新宿浄化作戦で両親を中国に強制送還された、戸籍のない子供たちだった。事情を知った織田は、理不尽な現実と社会に復讐するため、彼らとともに無謀な行動を起こし始める。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    9・11倶楽部の総合評価:6.54/10点レビュー 13件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    テロリストたちの疑似家族ドラマ

    本書は一種変わったクライム小説だ。救急救命士という真っ当な職業に就く人物が主人公であると変化球を見せれば、新宿に蔓延る中国マフィア連中によって翻弄されるいつものパターンもある。そして最後には都知事爆破を企むというクライムノヴェルの様相を呈していく。

    しかし根っこにあるのは家族を喪った心に獣を飼う男と貧しくも逞しく生きる、東京に親を剥奪された子供達との適わなかった幸せだ。

    この救急救命士の織田と云う主人公は暗黒小説の雄である馳氏の作品とは思えないほど、クリーンだ。昔消防士だった頃に地下鉄サリン事件で妻と子を亡くしたという苦い過去を持つ男だ。

    彼は今までの馳作品の主人公のようにドス黒い憎悪の塊や業深き欲望のような負の要素を持たない男でもある。未成年で、しかも日本国籍のないファッションヘルスで働く儚げな美少女笑加を前にしても性的欲求が頭をもたげずに通常通り振舞う。
    こんな普通な主人公は初めてではないだろうか?

    しかしそこは馳氏。作風転換と見せかけてやはり織田は他の馳作品のようにドス黒い感情を孕んだ人物であることが明かされる。
    地下鉄サリン事件を契機に日常がいかに危ういバランスの上で成り立っているかを思い知り、疑心暗鬼に陥り、自分の身を守るために武器をまとうようになった。
    殺る前に殺る。心に獣を飼いながらそれを押し隠して救命士の職を務めていたが、笑加たちとの出逢いで彼らの不遇とこの世の理不尽さに、鎖で繋いでいた獣を解き放とうとする経過が刻々と語られる。

    とはいえ、この織田の情念は今までの主人公たちに比べれば常識人でもあり、我々一般人が一種理解し難い狂気ではないことが特徴的だ。
    云いたいことが云えない世の中で誰もが抱えるストレスに近い物を感じ、織田がいつキレるのかを待ち受ける読者はどこか自分を重ねて見ることが出来るようなキャラクターのように思える。

    その証拠に織田は道を踏み外そうと決意し、中国人の暗黒街のボス李威の下で犯罪に手を染める手助けをさせられるが、自分がどんな犯罪に加担しているのか知ろうとし、また李威によって利用され食い物にされる人々と接するごとに罪悪感に苛まれる。なかなか悪の道に踏み入ることが出来ない善人なのだ。
    これも馳作品では異色のキャラクターと云えよう。

    特に織田の人生が破綻していく動機が他者のためであるのが特徴的だ。
    今までの馳作品の主人公は己のエゴや黒い欲望のために他人を出し抜き、一攫千金を夢見て、のし上がる、もしくは理想の楽園へ逃れようと実に利己的な動機だったのに対し、織田は親を祖国へ強制送還され、自分たちだけの力で生きていかざるをえなかった明たち不法就労者の残留児たちの生活を守るために、悪事に手を染め、安定した救急救命士という職を擲ち、窮地に陥っていくのだ。
    彼が求めたのはかつて持っていた家庭と云う温もりと長きに亘った孤独への別離。明や笑加を筆頭にしたたかにも逞しく生きる子供らとの生活が長く続くことを願ってやまなかったことだ。

    従って本書ではそれら壊れやすい貴重な宝石のような物が次第に失われていくような儚さがある。危ういバランスの上で成り立っていた疑似家族と云う幸せという薄氷、その象徴が再生不良性貧血という重病で弱っていく笑加の存在だ。

    たった15歳で風俗に身を落とし、生活費の大半を稼いで彼らを養っている母親役の少女。しかしそんな気丈なところがあるようには思えないほどその存在感は儚げなのだ。
    彼女の容態の推移が本書の抗えずに向かう悲劇へのカウントダウンとなっている。

    さらに文体もまたかつての馳作品とは全く違う。抑制の効いた文章で新宿界隈の忌まわしい事件を語る。その抑えた筆致が逆に新宿の荒廃感を醸し出している。
    そこにはラップのようなリズムもなく、刻むような体言止めも存在しない。淡々と事実を、風景を、織田の心情を語る文章があるだけだ。

    そしてさらには呪詛の羅列のような唾棄すべき内容の文章だったのが、ここでは織田と笑加、明たち少年たちの交流を瑞々しく描いている点だ。
    彼らは生き抜くために犯罪に手を染め、大人を出し抜き、更には自分たちの不遇を呪って都庁爆破と云うテロを企てているという、いわばとんでもないアウトローの集団なのだが、実の素顔は日々不安を抱えて生きている少年少女であり、それが子供と妻を地下鉄サリン事件で亡くした織田にとっては何物にも代えがたい宝石となっているのだ。

    その心温まる交流が随所に挿入され、テロを計画するという陰謀とは裏腹に家族愛を感じさせるのが皮肉だ。

    まさにこれは馳流大家族ドラマとも云えよう。

    そしてその家族愛と双璧を成すのが新宿都庁爆破と云うテロ計画だ。

    本書では新宿都庁のセキュリティの甘さが衝撃的に描かれている。展望室へ至るエレヴェーターが実は全ての階に停まり、容易に各階へ侵入できることが書かれている。そしてこれが地下鉄サリン事件を経験し、アメリカの9・11を目の当たりにした国の中枢のセキュリティなのかと警告を発している。

    私が件の場所を訪れたのは2011年だったが、その時は本書のような状態ではなく、エレヴェーターにはきちんと案内人が乗っていたように記憶しているが、もしかしたら本書がきっかけで改善されたのかもしれない。

    つまり本書は日本のセキュリティの甘さを痛烈に批判する警告の書という側面もあるのだ。

    また地下鉄サリン事件という未曽有の都市型テロで家族を喪った織田が、明たちと共に都庁爆破と云うテロに手を染めていくとはなんと皮肉なことだろうか。

    テロの仇はテロで返す、そんな不毛な原理主義が実に虚しく響く。

    これは家族を守ろうとする一人の男の愛の強さを描いた物語だ。しかし馳氏の手に掛るとその愛の強さはテロをも生むのだ。安定した生活を擲って家族のために犯罪に手を染めていく不器用で愚直な織田に、どこか昭和の男の香りを感じてしまった。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.12:
    (5pt)

    ありがとうございました。

    本がきれいで満足しています。
    9・11倶楽部Amazon書評・レビュー:9・11倶楽部より
    4163272402
    No.11:
    (2pt)

    いまいち

    馳作品は、人格破綻した主人公が破滅する流れが徹底していることが多い。今回の作品は、人格者である救命看護師が最後まで子供のために尽くす話。なんとなく馳テイストは薄く正直いまいちだった。
    9・11倶楽部Amazon書評・レビュー:9・11倶楽部より
    4163272402
    No.10:
    (4pt)

    ペース配分

    最初な金気読書ペースが上がらなくどうしたモンかとも思ったが中盤以降おもしろかった
    9・11倶楽部Amazon書評・レビュー:9・11倶楽部より
    4163272402
    No.9:
    (1pt)

    途中までしか読んでいないけれど

    馳星周は若いなぁ・・。感性が。良い意味で。一緒に歳くっていってるはずなのに私が着いていけなくなるスピードとリズムで文章が流れて行き馳星周の感覚は衰えを知らない様に流れて行く。。。こういう人が天才なのだなぁ・・。
    9・11倶楽部Amazon書評・レビュー:9・11倶楽部より
    4163272402
    No.8:
    (2pt)

    とにかく読後感悪し!

    まあ、面白いんですけどね・・・
    でも、ちょっとというか、すごく無理があるんだよね。
    無国籍の子供たちを救おうとしているうちに犯罪に巻き込まれてしまうのは
    まあわかるけど、
    子供たちが、「こうなったのは都知事の新宿浄化作戦のせい」
    「だから復讐」
    まあ、あの都知事は確かに老害だと思うし、
    だから復讐したい気持ちを応援はわかるけどねぇ。
    それが個人を狙ったものではなく、9.11テロをまねた
    都庁爆破って
    それって無差別テロでしょう
    うーん。
    社会の理不尽に復讐ってさー
    それこそ理不尽じゃないの?
    それを理不尽ではなく社会正義ぽく書いているのは
    どうしても感情的になじめませんでした。
    しかも、主人公は
    地下鉄サリン事件のために妻子を失ったという設定なんですよ
    自分が大切なものを無差別テロでなくしたから
    人にもそうしてやろうってことですかね?
    とにかく読後感悪し!
    9・11倶楽部Amazon書評・レビュー:9・11倶楽部より
    4163272402



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