生誕祭



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    初公開日(参考)2003年05月
    分類

    長編小説

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    生誕祭 上 (文春文庫)

    2006年04月07日 生誕祭 上 (文春文庫)

    六本木のディスコで黒服のバイトをしながら満ち足りぬ日々を送っていた彰洋は、偶然出会った幼馴染の麻美に不動産屋の美千隆を紹介される。時はバブル真っ盛りの八〇年代後半。おれはおれの王国を作りたいんだ―若くして成り上がった彼の言葉に魅せられた彰洋は、二十歳そこそこで大金を動かす快感に酔いしれていく。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    生誕祭の総合評価:7.59/10点レビュー 32件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    疑心暗鬼の時代、それがバブル

    狂乱の時代バブル絶頂期を舞台に億単位の金が躍る世界を描いた作品。金を動かし、金の魔力に憑りつかれ、金に溺れる人々の虚構のダンスが繰り広げられる。

    莫大な金を手に入れるには人を騙し、嘘を平気でつけられるようにならなければならない。善意のお手伝いと見せかけ、二束三文で土地を買占め(とはいえ、バブル期の二束三文は億単位なのだが)、その10倍、100倍の利益を上げる。

    作中お金を儲ければ儲けるほど感覚が麻痺してくるものだと齋藤美千隆が述べる。かつて感動した美味しい食事が味気なくなり、高級な服やバッグや宝石も驚きをもたらさなくなる。途方もない金額のやり取りが数字としてしか見えなくなってくる。それに従い、嘘をつくことにも全然罪悪感を感じなくなってくる。
    つまり金を儲ければ儲けるほど人は外道に堕ちていくのだ。

    そんな金の亡者たちの物語の中心にいるのは4人。

    1人目は齋藤美千隆。30半ばにして新進の不動産会社で気焔を吐く不動産業界の寵児。
    人に対して決して本心を見せず、利用する者は利用し、役に立たない者は容赦なく切り捨てる。謎めいた魅力はカリスマ性を伴い、周囲を引き付ける。人間を見る目に長け、穏やかな表情と口調で人心操作を容易にするが、地上げの神様と呼ばれる波潟を失墜させようと虎視眈々と隙を窺っている。

    2人目は波潟昌男。東北弁が残る田舎者の風貌ながら地上げの神様と云われ、政財界のみならず日本を陰で牛耳る極道にも太いパイプを持つ。
    最近業績を急速に上げている齋藤美千隆を警戒視しながらも表面上は友好的で、彼の腹心堤彰洋を自社に限定社員として取り込む度量も見せる。風体の上がらない親父然としながらも周囲の人間に対して冷徹に評価し、自分の足手まといになる者、将来強大な敵となり得る者、そして自分に歯向かう者に対して凄まじいまでの報復を行う。

    3人目は堤彰洋。しがないディスコの黒服をしていたところ、幼馴染でかつて恋人だった麻美と再会し、彼女に齋藤美千隆を紹介してもらったところでバブル全盛期の金の亡者どもが跳梁跋扈する不動産業へ乗り込む。
    若さとよく回る頭を駆使し、心酔する齋藤美千隆と共にいつか創る「王国」を夢見て。21歳の若さゆえの純粋さと情熱、そして祖父から繰り言のように叩き込まれた誠実であれ、正直であれという家訓に縛られながら、齋藤美千隆のスパイとして波潟の会社に潜り込み、さらにその娘早紀に惚れてしまうことで運命の糸に自縄自縛に絡め取られていく。

    4人目は三浦麻美。貧しい母子家庭に育ったことでお金に対する執着が強く、お友達の父親である波潟の愛人となるに至る。
    その美貌と身体を武器にどんな男でも陥落させるが、美千隆だけは思い通りに操ることが出来ず、実は彼に惚れていることに気付きながらも“バブルと寝る女”を演じる。常に自分が一番でなければならないという性分の持ち主で、自身を貶めようとする人物には一生消えない傷を肉体的・精神的に付ける。その反面、自分が波潟にいつ捨てられるのか不安に思っている。

    この一癖も二癖もある人物たちの関係が複雑に絡み合い、欺瞞と憎悪と裏切りの黒いゲームが繰り広げられる。

    それは人心操作のヒエラルキーとでも云おうか。
    麻美は波潟を操り、美千隆に操られる。美千隆は麻美と彰洋を操り、波潟に真意を悟らせない。波潟は美千隆に大いに疑念を抱きながら彰洋を受け入れ、利用する。その3人に翻弄される彰洋。わずかに残っていた純粋さはすり減り、自己嫌悪の沼にずぶずぶと嵌っていく。自我崩壊が進んでいく。

    さらに後半関わってくる関西の地上げ屋金田義明にも弱みを握られ、波潟と美千隆の動向を常に報告するよう脅される。

    今までの馳作品の主人公と同じように堤彰洋は全てが悪い方向に働き、どんづまりに陥ってしまう。
    ただ彰洋が他作品の主人公と違うのは彼が若輩者で齋藤美千隆に魅せられて一緒に成り上がっていきたいという若者であり、詐欺紛いの手法で老人たちから土地を巻き上げてはいるものの、犯罪者とまでは行かない人物だということだ。

    おまけに混血児でもない。一つだけ特徴的なのは敬虔なクリスチャンであった祖父から常に嘘をついてはいけない、人を騙してはいけない、人から物を盗んではいけないと云いきかされていたということだ。幼き頃に叩き込まれた教訓は相反することをしている現在の彰洋の心に歪みを少しずつ、だが着実に生じさせていく。それが彼にとっての呪縛なのだ。
    馳作品の主人公たちは心の奥底に持っている生い立ちに由来する心の暗黒を持っているのが特徴だが、彰洋のそれは彼らに比べてもさほど重い物ではない。

    逆に彰洋が自身を食い物にしている奴らを出し抜くために地面に這いつくばって犬のように振舞うところに彰洋がいつか成功することを夢見ていた普通の若者だったことが強調される。
    成り上がっていく者たちは元々の出自が貧しいだけに真の富豪たちのような余裕や度胸がない。つまり自分が稼いだ金の上に胡坐をかき、それを崇める者たちに傲慢に振舞うばかりなのだという事実に気付いた彰洋の強さ。それがこの物語の大きなターニングポイントだ。

    上下巻合わせて1,050ページ強の大作。
    彼ら4人が破滅に至るまでのプロセスがじっくりと事細かに語られる。それぞれを縛るための因果をところどころに織り込ませ、それらが物語の最後に一気にカタストロフィとして連鎖反応的に爆発していく。

    しかし果たしてこれだけのページを費やす必要があったのかとも思う。巨万の富を得ながら、金のために金を遣い、金を稼ぐ者たちの終わりなき修羅の道行。
    全てが破滅へと収束していくように紡いだ物語はしかし、いつもながらの呪詛の連続で途中だれてしまったのは否めない。恐らくこの半分の分量で同様の物語を紡ぐことはできたのではないか。

    そしてバブル全盛期の不動産業界を舞台にしたとはいえ、とどのつまり物語を彩るのは金、暴力、セックスだ。
    こうまでテーマが同じだと、馳氏はこの3つのテーマが必要不可欠なモチーフを探して物語を書いているようにも思える。

    そしてバブル全盛期の不動産業界を舞台にしたことで結末が解っているだけに波潟、美千隆、金田、市丸ら地上げ屋、株屋のひりつくような金のやり取りが途中空虚になっていく。誰が成功しても全てが砂上の楼閣のように灰燼と化していくことが解っているからだ。
    文字通り命と魂の削り合いのような駆引きを一歩引いて眺めている私がいた。

    しかし前述のようにもう金と暴力とセックスまみれの話は読み飽きた。もっと違う一面の馳作品を期待したい。


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    No.31:
    (5pt)

    ミチタカ△

    大好きな馳星周さんの本で、未読だった「生誕祭」。一気読みしました。下巻もあるなんて。
    生誕祭(上)Amazon書評・レビュー:生誕祭(上)より
    4163218505
    No.30:
    (4pt)

    読み応えは抜群

    80年代バブル期の地上げと金とオンナの話。
    上巻はとにかく飽きさせない。
    下巻になり、ヤクザや関西の絡みが出てくると、物語自体はハマるんだが、主人公の描写に少し飽きてしまった。

    にしても、馳星周さんはノワールではさすがだと思います。これももう20年前の作品なんですね。

    久々読み返しましたが、損した気分は皆無でした。
    生誕祭(下)Amazon書評・レビュー:生誕祭(下)より
    4163218904
    No.29:
    (5pt)

    馳星周先生は最高

    馳星周先生は最高
    生誕祭(上)Amazon書評・レビュー:生誕祭(上)より
    4163218505
    No.28:
    (1pt)

    長い

    同じ表現が続く、強調したいのだろうけど、しつこい。物語自体は面白いと感じたけど、ぎゅっとしてほしかった。

    あと、お色気が多すぎ。ちょっとグロい。
    生誕祭(上)Amazon書評・レビュー:生誕祭(上)より
    4163218505
    No.27:
    (2pt)

    長い

    ストーリーとしては面白みがあるが、中弛みがすごい。ぎゅっとしたら上巻だけで充分終われる作品で、くどいと感じました。そもそもお色気が多いのは苦手なので、この評価なのかも。ちょっとグロささえ感じた作品でした。
    生誕祭(下)Amazon書評・レビュー:生誕祭(下)より
    4163218904



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