(短編集)

M(エム)



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    初公開日(参考)1999年11月
    分類

    短編集

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    M(エム) (文春文庫)

    2002年12月01日 M(エム) (文春文庫)

    35歳になった男は義理の妹の媚態が頭から離れない。若い母親は仕組まれた売春の罠に堕ち、青年はSMクラブに足繁く通うようになる…。些細なきっかけで異常な性の世界にはまった者たちが、苦悩と快楽、そして絶望の果てに見るものは?日常に潜む背徳の姿を残酷なまでに描ききった異色作品を4編収録。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    M(エム)の総合評価:6.64/10点レビュー 14件。Cランク


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    (7pt)
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    エロに溺れる救われない人々のお話

    性欲に対する人間の異常なまでの欲望と情動をテーマに描いた短編集。

    まず最初の「眩暈」の主人公は外資系のコンピュータ・メイカーで働く35歳の男の妄想を描いている。
    電話回線を使ってのインターネット利用や、会社のインターネットを不正利用してエロ画像をダウンロードする、などとおよそ現代の会社のITセキュリティーの観点からは一昔前の感が否めないが、もちろん本書の本質はそこにはなく、35歳の、営業の激務に晒され、おまけに家に帰れば赤ん坊の夜泣きのために寝不足になり、かつて美しかった妻はその輝きを失いつつあるという倦怠期にある男の肥大していく、義妹への妄想にある。
    果たして奈緒は隠れた痴女だったのか?そこを敢えて明かさないところが上手い。

    続く「人形」は実に馳氏らしい、どろどろの因縁話だ。
    なんともやるせなさが残る作品。ハッピーエンドなど望むべくもない陰鬱な設定と話だった。実に作者らしい。

    馳作品と云えばやくざだが、「声」ではとうとうやくざが登場する。
    主婦のちょっぴり危険な秘め事が、やくざと出逢ったことで転落の人生の第一歩を辿る。犯され、蹂躙され、女として人妻としての人格を否定され、堕ちていく聡子とやくざ俵の関係と、苛められていると疑いのある息子将人の友人との関係が最後にリンクするところに上手さを感じた。しかし、ホント救いのない話だなぁ。

    そして締めの短編は表題作「M」。MとはもちろんSMのMのことだ。
    話は単純に風俗、それもSMクラブに嵌った男がどんどん自分の貯金をすり減らし、ドツボに嵌ってしまうという、よくある話なのだが、これを馳氏は主人公稔に父親殺し、そして夜な夜な繰り広げられる夫婦のSM、鑑別所を出所した後に引き取られた叔母との性交の日々などを絡め、性と暴力の物語に仕上げていく。
    まゆみへの愛に狂い、衝動的に人を刺していく稔の末路までを描かず、報われなさを描くことで稔をどん底に引き落とす。


    全4編で構成された短編集。全てセックスに関する人間の情動を描いた作品だ。そして全てバッドエンドなのがこの作者らしい。

    ネットに蔓延するエロ画像、秘密の出会い系クラブ、伝言ダイヤルを使った主婦売春、SMクラブとここに挙げられているのは誰もが街中で目にする光景だ。
    電話ボックスのチラシや街中で配られるポケットティッシュの広告に書かれたそれらの情報に興味を持った方もいるだろう。好奇心に押されてちょっと勇気を出して踏み出すことで、いつもと違うディープな世界に迷い込む、そんな性の扉たちだ。
    つまりは人間の、少しだけモラルを踏み外したいと思った時に、一番手っ取り早い方法が、これらセックス産業だと云える。本作の主人公たちはその陥穽に嵌り、人生を転落していく人々。ちょっと踏み外しただけで運命の歯車に巻き取られ、堕ち行くしかない状況へ追いやられる。それまでの長編で見せた転落人生劇場がこの約80ページの短編でも繰り広げられる。

    馳氏のそれまでの作品は忌まわしい過去や血の絆に縛られた主人公がどんどん暴力的衝動を肥大させて、退廃への末路を辿るストーリーばかりだが、作品を重ねるにしたがってそれらの描写や行為もエスカレートしてきた。そして特に生々しいまでに描写が増えたのはハードSM、凌辱ポルノと云った感じの激しいまでの性描写。本書はその激しいまでの性への衝動が前面に押し出されている。

    そして今までの作品と違い、主人公は他の民族の混血児などではなく、純然たる日本人。ただ彼ら彼女らは隣にいるようでいない人物でもある。

    1話目「眩暈」の主人公はできちゃった結婚した35歳のサラリーマンで営業の激務に苛まれながらも帰宅後は妻の愚痴の相手に赤ん坊の夜泣きと疲労が募って仕方がない男。

    2話目の「人形」は家族ぐるみで付き合いのあった隣人との間には両親同士が浮気をして性交を重ね、また娘、息子たちもまた性交を重ねていたという過去を持つ女性。

    3話目の「声」では暇つぶしに始めた主婦売春が病み付きになり、やがてやくざに嵌められ、売春を強要される主婦。

    4話目の「M」では両親が夜な夜なSMプレイを愉しみ、そんな父親を憎んで衝動的に殺害した青年。

    こう並べると4話中半分は誰もが経験しそうな話でもあり、また片方は異常な家庭環境にいた者たちが壊れていく話である。

    性と暴力、抑えられぬ情欲と衝動。お決まりの馳氏のカードばかりだ。ただ本書の主人公たちはいつもの作品と違って我々の身近にいそうな人々。
    そう、ノワールは我々のすぐそばに潜んでいるのだというのだろうか?セックスという生物誰しもが持つ性欲をキーに馳氏は4つのノワールの扉を用意した。ここに書かれているのはいずれも救いのない話。同じように堕ちていくか、そうならぬようぬ踏みとどまるか?貴方ならどうする?と問いかけられているようにも思える。
    今までの馳作品の中でも最も薄い作品だが、中に書かれた人間の激情はいささかも薄まっていない。これを単なるポルノ小説と捉えるか、暗黒小説と捉えるか。私はやはり何を書いても馳氏は馳氏だとその思いを強くした。
    セックスとは男女を問わず獣になる瞬間であり、そこに本性が生々しく表せるからだ。やはりセックスもまた馳氏のノワールには欠かせない要素なのだ。

    馳氏の、人間の心の闇への探究はまだまだ続きそうだ。



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    No.13:
    (2pt)

    普通の本、

    エロ小説かな、読んでいてもそんなに面白くは無い。
    M(エム)Amazon書評・レビュー:M(エム)より
    4163188002
    No.12:
    (3pt)

    衝撃的にグロテスク

    衝撃的とも言えるグロテスクな作品集。

    微に入り細を穿つ性的で暴力的な表現に、気持ちがささくれだってしまう。ここから入ると著者の作品を読むのを止めてしまいそうだ。それほどインパクトは強い。

    妻の妹への歯止めが効かない思い「眩暈」は、酷似した女性をAVを観て妄想爆発で精神が歪んでいく様に痛々しさを感じる。

    幼馴染の父親への思慕がつのる女性「人形」は、ぐちゃっとした人間関係に嫌悪感が残る。

    出会い系で転落していく主婦「声」は、子供の虐めの顛末と並行する寒気のはしる展開。本作品集を象徴するグロテスクさは記憶に刻まれる。

    SMクラブにハマった男「M」は、度肝を抜く胸くその悪さである。

    …とは言え、著者の作品は読み続けているのだった。
    M(エム)Amazon書評・レビュー:M(エム)より
    4163188002
    No.11:
    (5pt)

    エロスとタナトス、タナトス多め

    死の瞬間を想うときのような、胸を絞めつけられる絶望と恍惚を教えてくれる。

    いいのがそろってます。

    名作『片翼だけの天使』を思い出させる作品では、白い雪が降り積もる男が、白くなるどころが、どうしようもなく暗く闇に沈んでいくようなノアール。
    M(エム)Amazon書評・レビュー:M(エム)より
    4163188002
    No.10:
    (3pt)

    エロいけどエロくない

    普通の生活をしていたのにひょんなきっかけから堕ちていく人々を短編で描く筆力は凄いと思うけれど近親相姦やSMが多くて、、、
    官能小説ではないですね。
    中では声がなんとも怖かったかなぁ。
    M(エム)Amazon書評・レビュー:M(エム)より
    4163188002
    No.9:
    (4pt)

    ミステリー・・ミステリアスな作品。

    深いのか・・混乱。ストーリーは読みやすくまた奥深さは確かにある。ただまだ人生経験が浅いので、ラストの余韻の深さが掴めずにいる。でも面白いと思った。ミステリーとは異質だが、こんな作品に触れるのもありかな。
    M(エム)Amazon書評・レビュー:M(エム)より
    4163188002



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