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(短編集)
魚舟・獣舟
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魚舟・獣舟の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全20件 1~20 1/1ページ
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全編、 驚くほどの満足感でした。 しかも今、 文庫の値段を確認したら、 700円以下という安さ。 驚き。 けっこう分厚いのに。 紙がしっかりしてるだけかな? 300ページちょいですが、 最後のほうはけっこう、 握力をつかう厚みでした。 最後の書き下ろしの力作のせいで、 序盤で記憶が鮮明なのは、 表題作のみですが、 夢中で楽しんだという感覚は、 全作品ちゃんと、 感覚としてのこっています。 読みやすく、 そして個性的で、 暴力もちゃんと描かれた、 いかすハードボイルドなのに、 純文学のように感情を揺さぶられ、 ちゃんと設定はSFで、 ちょっぴり怖い話もあって、 もう、どこまで欲張りなのか!! こんな、なんでもありなのに、 ちゃーんと、 全部を使いこなしてるという。 もう、参りました。 この本一冊でファンになり、 上田早夕里さんの文庫は、 全部買うと決めました。 もう、積み本の山が、 やばいことになってます。 嬉しい悲鳴が止まりません。 積まれた本の山を眺めて、 これを全部読むまでは、 頑張って生きようと、 改めて思わせてもらえる、 そんな幸せな読書時間を、 またいただきました。 ごちそうさまでした。 素晴らしい作家との出会いに、 全幅の感謝の念をこめて、 ★満点を捧げます。 ちゃんと新品で購入したので、 ちゃんと客として評価します。 これは素晴らしい。 最高。 | ||||
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短編五本+中編一本という構成である。外れなし。おそろしくクオリティが高い。 表題作は「オーシャン・クロニクル」の一環だ。長編『華竜の宮』を先に読んだが、発表は本作のほうが早い。 水没後の世界を読者に納得させてから、「朋」が獣舟になってしまった女性のドラマをコンパクトにまとめる力量は大したものだ。 『くさびらの道』「侵略円盤キノコンガ」という漫画があったな。傑作特撮映画「マタンゴ」も思い出した。 キノコは自然界の中で異様かつ奇態で、不思議と親しみやすい恰好なので、ホラーのモチーフになりやすいのか。 本作のキノコが最も恐ろしい。切なく抒情的な読後感を残す。 『饗応』出だしからこの結末は、絶対に予想できない。 『真朱の街』その街には人間の相談に応じてくれる妖怪がいる。受け取る報酬は、金銭ではなく寿命だという。 ユニークな世界観で、ストーリーに緊迫感がある。シリーズになっているらしいので、読んで見よう。 『ブルーグラス』脳裏に映画のように情景が浮かぶ。SF恋愛小説の逸品だ。 甘々が苦手な私が感動したくらいだから、こういうのが好きな人にはたまらないだろう。 『小鳥の墓』彼はなぜ人殺しになったのか。未来SFの枠組みで書かれたサイコミステリである。 スタージョンの「君の血を」を想起した。 プロットはまったく似ていないが、異様なテンションと少年の歪な成長というテーマに通じるところがある。 すべて傑作で、驚くべきことにすべて味わいが違う。ひさしぶりに追いかけたくなる作家に出会えた。 | ||||
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「魚舟・獣舟」は冒頭から鮮やかなイメージ。青い海と青空の下、陽射しに照らされた魚舟の甲板の様子が鮮やかに浮かび、すぐにその世界に惹きこまれました。そのまますぐに次作に取り掛かり、オーシャンクロニクルシリーズを読みはじめたくらい。ほかの短編では「小鳥の墓」がなかなかおもしろかった。「火星ダークバラード」と関係あるらしいので、そちらもいずれ読む予定。 | ||||
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上田早夕里は、長編はもちろん良いのだが、短編では人間の業と、それに伴うもの悲しさが描かれており、長編と同じぐらい素晴らしいと個人的に思っている。表題作のほか、「くさびらの道」が特によい。 | ||||
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現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた表題作。寄生茸に体を食い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではないのだ。戦慄の展開に息を呑む「くさびらの道」。書下ろし中編を含む全6編を収録する。 | ||||
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海洋生物からキノコ、妖怪まで、あらゆる異形が登場するSF短編集。飛び抜けて面白いのは、表題作品の「魚舟・獣舟」だ。オリジナルの世界観が、人の心の純粋さを語る。他の作品も解説するまでもなく面白い。好みは人それぞれだろうが、個人的には「ブルーグラス」がお気に入り。また、「真朱の街」は妖怪の言葉が真実すぎて心に刺さる。 | ||||
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伊藤計劃と並ぶインパクト。獣舟の正体、船団の暮らし、イマジネーション溢れるSF。 | ||||
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「魚船・獣船」は、長編『華竜の宮』と同じく海進によって殆どの陸地が沈んでしまった地球が舞台。人類は体を遺伝子操作して、それぞれの環境に適応しつつ生きている。巨大な魚の上に住む人々もいて、彼らは双子で生まれ、片方は魚になる・・・、という、SFというより民話的な世界観が魅力的。 「くさびらの道」は、新種の茸が巻き起こすパニックもの。より現実的な題材でありながら、恐怖小説の要素もあり、ヒューマニズムも感じさせるし、最もとっつきやすそうなお話。「饗応」はロボットの物語。「真朱の街」は妖怪の物語。「ブルーグラス」は、特殊なオブジェの雰囲気と、海、そして過去の恋愛、という要素が、どうも80年代を思い出させる、どことなくノスタルジックな物語。 そして「小鳥の墓」。これは(未読だが)長編『火星ダーク・バラード』のスピンオフ、というかエピソード・ゼロ的な物語であるらしい。管理社会となった近未来?の世界で育った、ある殺人犯の少年期の物語で、またしても登場人物の少年少女の「不良」っぷりが80年代あたりの価値観を思い出させてくれて、非常に懐かしい物語だった。 本書を読んだ限りでは、どうやら、どんなジャンルでもOK、な作家さんであるらしい。特に面白かったのはやはりSF色の強い「魚船・獣船」や「小鳥の墓」だったし、評価が高いのも過去のSF長編作のようなので、次回はそちらを読んでみたい。 | ||||
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以前にこの著者のラ・パティスリーを読んだことがあり、雰囲気が全く違ったので少し驚きました。表題作を読んでぱっと思ったのは意訳を意識した外国小説の翻訳作品(シドニー・シェルダンのもの等)で言葉の使い方・選択を想起させるということでした。男性目線としての表現が特に。小鳥の墓の雰囲気はシドニーシェルダンの人間を突き放したような風刺的とも取れる書き方、こっけいともとれるような人間心理を浮き彫りにする形に類似性を感じました。話の舞台がSF作品としてとはいえ「日本」を使っていることで恐ろしさを感じる面では全くの架空世界とは異なりより身近であるかのような効果を感じた気もします。★四つにしたのは精神的に弱っているので健康な精神の時に楽しみたかった、という個人的な理由です。 | ||||
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ちょっと積ん読状態だったけど、もっと早く読めばよかった、と後悔した作品集。 古いSF読みも、おお、と触手が伸びるんではないかという感じです。 表題作、この世界はいったいどういう世界なの?こういう生態系はどうなりたってるの?もっと知りたい、、、と思いながらあっという間に読み終わってしまった。このあと、同じ世界を長編で描いておられるようで(華竜の宮)、そちらを読んだらより納得できるのかもしれない。 くさびらの道、こういうバイオホラーSFもありますか、、、でもただのホラーでもバイオでもなく、人の心とは?情とは?と考えさせられる作品。 最後の小鳥の墓、もしかしたら、表題作やくさびらの道以上に好みかもしれない。ハードボイルド、、、主人公の考えに非常に共感しながら、自分も彼の標的になるかもしれない、と思いました。火星のダークバラードのスピンオフとのこと、こちらも読みたくなりました。 | ||||
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すごい作家、作品だと思う。 私は普段、SF小説をあまり読まないのだが、偶然本書を手にした。読めてよかった。偶然の出会いに感謝。今後の楽しみが増えたと思っている。 個人的には、「魚舟・獣舟」「くさびらの道」「真朱の街」の3作品が好みだった。読み始め、「短編なのに凄い世界像を書き出している、大丈夫なの!?」と心配したが、杞憂だった。どの作品も長編小説になり得る世界観を持っていて、「魚舟・獣舟」の長編として「華竜の宮」ができたように、「くさびらの道」「真朱の街」も長編を期待したい。 「饗応」「ブルーグラス」の2作品については、私には面白さを理解できなかった。正直、どう楽しんでいいのか分からない。つまらない、とかいうことでなく、私の頭の上に?マークが点灯しているような感じで読み終わってしまった。 最後の、中編ともいえる分量の「小鳥の墓」は、どうにも好きになれない作品だった。「小鳥の墓」は、著者のデビュー長編小説「火星ダーク・バラード」の前日譚。解説の山岸真さん曰く「より正確には、長編の中で強烈な存在感を放っていた重要な脇役の、少年時代の物語」だそうだ。好きではないのだが、なんだか「火星ダーク」が読みたくなってきた。嫌いだけど気になってしまうような、主人公が勝原に惹かれたような、何とも不思議な感覚だ。 力量のある作家で、すごい作品だと思うが、大絶賛はしない。それは長編を読むまで取っておく。 読んで損はない。読書好きなら、読まないと損だと思う。はっきりと、機会の損失だと思う。 | ||||
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上田さんの作品は初めて読みました…が、文章半端なく上手です! そして、物を見る視点がまぎれもなくプロです! テンポが良いし、情景描写もしつこくないのに イメージしやすい。引き込まれます! 表題作【魚舟・獣舟】は世界観が素晴らしいです。 人から産まれた魚に住むという発想がどこから来たのか! 『人間とは?』という深いテーマを入れながらも、人間のドラマがあるし先が読めません。 全編通してですが、続きが読みたくて仕方ない作品ばかりです。 【真朱の街】は妖怪とSFが溶け込んだ、珍しい作品。 妖怪の能力をSFの科学で解説する場面に、感動しました。こういう作品読んでみたかった!! この作品も『人間とは?』というテーマを含んでいます。 科学の力で、身体の形を便利に作り変える未来の世界。 鵺が「ヒトとしての形態を変容させつつあるお前達の外観は、もはや妖怪同様に 生物として充分に異形だ。」といいますが、この言葉にやられました。 【小鳥の墓】を読んで、上田さんのファンになりました。 それだけの力がこの作品にはあると思います! 主人公の主観で物語が展開しますが、、その視点の鋭さは世界の持つ 『当たり前の正しさ』をひっくり返す力がありました。 この作品を読んで価値観が変わりました。 この書籍に出会えてよかった! 読みやすいので、選り好みせずに読んで欲しい! | ||||
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ややハードっぽい設定も素敵なのだが、ストーリーのミステリアスな展開が、一気読みさせる力を持っているSF短編集。 なにより、セリフ回しと、テンポが抜群に心地良い。著者のインタビューを探して読むと、演劇から「言語に美しさ」に影響を受けたと答えている。なるほど、これは翻訳ものではなかなか味わえるものではない。 収録されている作品はどれも男性を主役に据えている。作者が女性であることを知らなければ、男性作家によるものだと思うだろう。それほど、男性から見た目線を良くとらえているのだ。 気に入った作品は、タイトル作の「魚舟・獣舟」、そして中編(?)「小鳥の墓」(「くさびらの道」、「ブルーグラス」も味わい深し)。 ■魚舟・獣舟 陸地のほとんどが水没した海洋世界。ヒトは双子を産み、ひとりはヒトに、ひとりは魚として生きていく。やがて魚は双子のヒトを乗せる舟へと姿を変えるのだった。 ・・・なんと、感激ものの世界観であることか! ■小鳥の墓 教育実験都市に暮らす優秀な中学生たちのアウトサイダーな日々とその後。・・・巧みな心理描写とノワール感は、著者がリスペクトするパトリシア・ハイスミスと、ジェイムズ・エルロイ仕込みというところか カバーイラストもステキ | ||||
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6本の作品が収録された(連作短編を除く)著者初の短編集 「魚舟・獣舟」 タイトルに「船」という漢字では無く「舟」という漢字が用いられていますが、このセンスが抜群です 生々しいというか、土着的で異形な雰囲気がたまりません! 30ページ程のボリュームですが、かなり濃厚です 人の遺伝子をもとに造られた異形の生物は、果たしてヒトなのか? それよりも、人を模して造られているが、人の遺伝子は用いられていない人型の人工知性体にむしろ親近感を覚えるのは何故か 「人」の定義を揺さぶるバイオSFでした 人工知性体や遺伝子改造が行われていること等を考えると、(科学)文明の崩壊は起きていない模様 同じ世界設定の長篇や短編も本作発表後に執筆されているので、そちらも今後読みたいです 「饗応」 掌編的な作品でした サラリーマンタイプの人工知性体のもの悲しさを描いている 北野勇作氏の作品で取り扱われていそうなテーマの作品でした ただし、雰囲気はかなり違いました 北野氏は曖昧な書き方をすることが多いですが、こちらは人工知性体の主観がストレートに綴られていました 「ブルーグラス」 既婚男性のダイバーが過去の恋愛を回想した話ですが、化学反応を利用したインテリアオブジェが出てきたり、環境保護のため海洋ドームの建設が行われようとしている等SF的要素も多くありました 自然を資源とし消化・破壊しつつも、一部は保護するといった状況に疑問をなげかける一面もありました 「小鳥の墓」 書き下ろし作品であり、本著の半分以上を占めるボリュームでした 著者のデビュー長篇「火星ダーク・バラード」の前日譚的作品とのこと 私は「火星ダーク・バラード」は未読ですが、全く問題なく楽しめました 非常に面白かったので、「火星ダーク・バラード」も是非とも読んでみようと思いました 連続殺人犯の半生に隠された壮大な社会実験を描いた作品 環境と脳の器質によって人(の行動)はかたちつくられているといったような冷めた視点と主人公の空虚な心理とが相乗効果となて織りなす乾いた空気感が素晴らしかった 「くさびらの道」「真朱の街」は既読の為、省略 | ||||
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一話目が表題作なのですが、読んでいくうちに別世界にひきこまれていく感覚が、とても気持ちよかったです。 初めて読んだ本がこれなので、他の作品は未読ですが、とても良い作家さんだなあ、と思いました。 「小松左京賞」という賞のこともよく知らないのですが、(受賞作「火星ダークバラード」はオーソドックスな宇宙アクションSFらしいです) この本は「5短編と、文庫本半分の中篇」の作品集で、5短編のほうは、意外なアイデアを、映像が目にうかぶようになめらかに書き上げています。読み終えて何日かたってからも、ふっと作品のイメージが脳裏をよぎることがあって、幻想小説であると同時に、「美しいホラー」でもあるような気がします。(そういうところが、私は小松左京の「くだんのはは」とか、「女シリーズ」とかに共通するものがある気がしました。) 中篇のほうは、幻想部分はまったくなく、なんでも「火星ダークバラード」にでてくる重要な脇役の青年が、火星に行く前、地球にいたころの物語なのだそうです。 この人の書くものにはどれも人間には太刀打ちできないような、自然とか、時間とか、生命とか、あるいは人間そのものが生み出す汚染とか、が出てきます。 その大きさを受け止め、その中でできる限りのことをしようとする、小さな存在である主人公を、作者はいとおしんでいるようです。 そしてなぜか、舞台はすごく広い世界なのに、登場人物は漢字名の日本人です。(私はそこにも小松左京との共通点を感じました…。) 文章がとても読みやすい作家さんで、この本に書かれている内容を、こんなに平易に、過不足なく語ることは、誰にでもできることじゃないなあ、と思いました。 | ||||
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雑誌やアンソロジーに発表した5編の短編に、書き下ろし中編「小鳥の墓」を加えた。「真朱の街」と「くさびらの道」は、ホラーSFというかダーク・ファンタジーというか、奇妙な世界を完成度高く描きあげた。「魚船・獣船」は短すぎて、遠大に広がる背景世界がもったいないと思ったら、今後この題材で長編を書く予定があるという。これは楽しみ。 「小鳥の墓」は長編「火星ダーク・バラード」のスピン・オフ作品だという。おお、「火星ダーク・バラード」も読まねば。 | ||||
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【魚舟・獣船】 映画「ウォータワールド」のように、世界の大半が海に沈んだ未来世界で、海洋民は、 十数メートルはある巨大な魚の背中で暮らしている。その魚は、魚舟と呼ばれ、 人が住んでいない魚舟は、獣船となる。 魚舟も獣舟も人の遺伝子を元に人が産み出す生物である。 一方、僅かに残った陸に暮らす陸上民は、皮膚や肉を持つ人型ロボットを使い暮らしている。 人の形をしているが人の遺伝子をひとかけらも持たないロボットと、魚の姿をしているが 人の遺伝子で作られた魚舟や獣舟。 人の遺伝子を持つことによって生物は人間に分類されるのか、 人の形を持つことによって人間に分類されるのか、人とは何だろう という問いかけが、獣舟と人間の関わりを通じて語られている。 物語は、全体に暗く沈鬱なムードで進んでゆくが、未来世界の設定が秀逸であり、コンパクト にまとめられたストーリーなので読みやすい。 説明的な部分はなく事件や出来事を描くこととで世界も人も描いてゆく。 登場人物の数は少なくセリフのある人は二人ですが、二人が関わる出来事を通じて広く深い 未来世界が見えてきます。おもしろい短編です。 【饗応】 ロボットが高機能化し、人と同じ外観となり、人と同じように働き、心も持つようになった未来。ロボットは人と同じようにアンニュイな 気持ちを持ち、人生に疲れたりするまでにつようになる。そして・・・ 【くさびらの道】 新種の茸が突然発生した。その茸は、人を苗床として育つ。 茸の爆発的発生/感染により、人類は滅亡の瀬戸際に追い詰められる。 茸に両親と妹を奪われた男と、茸に妹を生まれた男の運命が交差し、 それぞれが別々の選択をする・・・・ 【真朱の街】 百目や御所車などの昔から存在したクラシックな妖怪は、人から姿を隠すのをやめ、 人前に白昼堂々と登場するようになった。 きっかけは、人が自らの肉体を科学技術で改良し、人と妖怪の境が曖昧になったから。 妖怪と人類が共存する未来を舞台に、人が人でいられる限界を探るかのようなストーリーが展開する。 【小鳥の墓】 犯罪者やドラッグ常用が増えて治安も風紀も悪化した近未来社会。 そこには、選ばれた善良な人だけが住むことを許される町がある。 犯罪がなく規律も保たれ清潔で美しい町は、児童教育のための理想的な環境として作られた町である。 大人も子供も厳選された人たちだけが住み、トラブルを起こせば 居住権を剥奪され追い出される。 子供の純粋培養(教育)のための整えられた町に違和感を感じた少年は、 町に馴染めず、やがて町をはみ出す。 教師と生徒、親と子、男と女、夫と妻、警官と一般人など、 支配する者と支配される者との対立関係がストーリーに満ち溢れている。 お互いを理解することができず、反発しあうものどうしの不幸が 多層的に描かれており、暗く救いがない。 社会や周囲との軋轢や対立は、人類が群れをつくり生きることを 選んだ時点で背負ってしまった原罪であると作者は言いたいのかもしれない。 | ||||
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なんも期待せずに買って、ほほをばしんと殴られたようなカンゲキ!これ、いい! 最高の拾い物をした気分。やった! まず最初に表題作の魚舟・獣舟。 一瞬伊藤潤二先生の名作・ギョを想像してしまった、文章だけなのに絵まで浮かぶような圧倒的な筆力。 最後がまた、すごい。 終わるかと思ったところでもう一ひねり。 短篇の醍醐味がこれでもかとつまった快作。 そうして続く、くさびらの道。 すごい。 今時の言い方を使うなら、バイオホラー? うまい。すごい。気持ち悪い。強烈。 なのにどこか優しく物悲しく、それでいてほころびがない。 最後の小鳥の墓も、秀逸だ。 特別区で純粋培養される上流家庭、そこから逃れようとする一部の若者。 ドラッグ、暴力、破壊。疾走し暴走する若さと力。 しかし、その先に待っていたものとは? この作品はもっともっと、評価されるべきでは? ぜひ、日の目を見てほしい作品。最高。 | ||||
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『火星ダークバラード』の著者の短編集。 この作者の作品は、『火星ダークバラード』しか読んだことがなかったが、それが、とっても心に沁みる一冊だったので、この短編集も読んでみた。 『火星ダークバラード』は、こう、昔懐かしさを感じるハードボイルド小説で、SFというよりも、その文体や雰囲気に惹かれたが、この短編集収録の作品たちもそう。 テーマはいろいろ。ホラーっぽいのや妖怪まで出てくるものもあるが、作者の文章の持つ不思議な力は共通。とっても読ませる。 中でも表題作や『火星ダークバラード』の前日譚である『小鳥の墓』は凄い。 ほかの作品も読みたくなった。 | ||||
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面白くはあるけど、表題の短編とあといくつかを除くとSFである理由がよくわからない。 | ||||
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