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(短編集)
魚舟・獣舟
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魚舟・獣舟の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 21~25 2/2ページ
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【魚舟・獣船】 映画「ウォータワールド」のように、世界の大半が海に沈んだ未来世界で、海洋民は、 十数メートルはある巨大な魚の背中で暮らしている。その魚は、魚舟と呼ばれ、 人が住んでいない魚舟は、獣船となる。 魚舟も獣舟も人の遺伝子を元に人が産み出す生物である。 一方、僅かに残った陸に暮らす陸上民は、皮膚や肉を持つ人型ロボットを使い暮らしている。 人の形をしているが人の遺伝子をひとかけらも持たないロボットと、魚の姿をしているが 人の遺伝子で作られた魚舟や獣舟。 人の遺伝子を持つことによって生物は人間に分類されるのか、 人の形を持つことによって人間に分類されるのか、人とは何だろう という問いかけが、獣舟と人間の関わりを通じて語られている。 物語は、全体に暗く沈鬱なムードで進んでゆくが、未来世界の設定が秀逸であり、コンパクト にまとめられたストーリーなので読みやすい。 説明的な部分はなく事件や出来事を描くこととで世界も人も描いてゆく。 登場人物の数は少なくセリフのある人は二人ですが、二人が関わる出来事を通じて広く深い 未来世界が見えてきます。おもしろい短編です。 【饗応】 ロボットが高機能化し、人と同じ外観となり、人と同じように働き、心も持つようになった未来。ロボットは人と同じようにアンニュイな 気持ちを持ち、人生に疲れたりするまでにつようになる。そして・・・ 【くさびらの道】 新種の茸が突然発生した。その茸は、人を苗床として育つ。 茸の爆発的発生/感染により、人類は滅亡の瀬戸際に追い詰められる。 茸に両親と妹を奪われた男と、茸に妹を生まれた男の運命が交差し、 それぞれが別々の選択をする・・・・ 【真朱の街】 百目や御所車などの昔から存在したクラシックな妖怪は、人から姿を隠すのをやめ、 人前に白昼堂々と登場するようになった。 きっかけは、人が自らの肉体を科学技術で改良し、人と妖怪の境が曖昧になったから。 妖怪と人類が共存する未来を舞台に、人が人でいられる限界を探るかのようなストーリーが展開する。 【小鳥の墓】 犯罪者やドラッグ常用が増えて治安も風紀も悪化した近未来社会。 そこには、選ばれた善良な人だけが住むことを許される町がある。 犯罪がなく規律も保たれ清潔で美しい町は、児童教育のための理想的な環境として作られた町である。 大人も子供も厳選された人たちだけが住み、トラブルを起こせば 居住権を剥奪され追い出される。 子供の純粋培養(教育)のための整えられた町に違和感を感じた少年は、 町に馴染めず、やがて町をはみ出す。 教師と生徒、親と子、男と女、夫と妻、警官と一般人など、 支配する者と支配される者との対立関係がストーリーに満ち溢れている。 お互いを理解することができず、反発しあうものどうしの不幸が 多層的に描かれており、暗く救いがない。 社会や周囲との軋轢や対立は、人類が群れをつくり生きることを 選んだ時点で背負ってしまった原罪であると作者は言いたいのかもしれない。 | ||||
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なんも期待せずに買って、ほほをばしんと殴られたようなカンゲキ!これ、いい! 最高の拾い物をした気分。やった! まず最初に表題作の魚舟・獣舟。 一瞬伊藤潤二先生の名作・ギョを想像してしまった、文章だけなのに絵まで浮かぶような圧倒的な筆力。 最後がまた、すごい。 終わるかと思ったところでもう一ひねり。 短篇の醍醐味がこれでもかとつまった快作。 そうして続く、くさびらの道。 すごい。 今時の言い方を使うなら、バイオホラー? うまい。すごい。気持ち悪い。強烈。 なのにどこか優しく物悲しく、それでいてほころびがない。 最後の小鳥の墓も、秀逸だ。 特別区で純粋培養される上流家庭、そこから逃れようとする一部の若者。 ドラッグ、暴力、破壊。疾走し暴走する若さと力。 しかし、その先に待っていたものとは? この作品はもっともっと、評価されるべきでは? ぜひ、日の目を見てほしい作品。最高。 | ||||
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『火星ダークバラード』の著者の短編集。 この作者の作品は、『火星ダークバラード』しか読んだことがなかったが、それが、とっても心に沁みる一冊だったので、この短編集も読んでみた。 『火星ダークバラード』は、こう、昔懐かしさを感じるハードボイルド小説で、SFというよりも、その文体や雰囲気に惹かれたが、この短編集収録の作品たちもそう。 テーマはいろいろ。ホラーっぽいのや妖怪まで出てくるものもあるが、作者の文章の持つ不思議な力は共通。とっても読ませる。 中でも表題作や『火星ダークバラード』の前日譚である『小鳥の墓』は凄い。 ほかの作品も読みたくなった。 | ||||
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面白くはあるけど、表題の短編とあといくつかを除くとSFである理由がよくわからない。 | ||||
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本書には6編の作品が収録されている。このうち最初の5編は短編であり、ラストの「小鳥の墓」は180ページほどもあるほとんど長編作品なのだ。でぼくはこの「小鳥の墓」に完全にノックアウトされちゃったというワケ。 最初の5編の短編も悪くはなかった。そのほとんどが『異形コレクション』に参加した作品だといえば、どういった感じの作品なのかはわかってもらえるだろうか?それぞれ独特の切り口でその時のテーマ(進化論、心霊理論、未来妖怪など)を展開し、堅実で魅力的なSFガジェットを盛り込んで独特の世界を構築している。硬質でハードボイルドな文体の中に、センチメンタルな要素が介入してくるのも好感が持てた。だがそれ以上ではなく、気持ちを奮い立たせるほどの斬新さやおもしろさに溢れているとは感じなかった。 しかし本書の半分以上のウェイトを占める「小鳥の墓」を読んで、その気分は180度変わってしまう。これは体裁的には「火星のダーク・バラード」の前日譚なのだそうで、そこに登場するある人物の生い立ちを描いているのだが、ぼくのように本編を読んでいなくともなんら問題ない。これは完全に独立した作品であり、SFハードボイルドの傑作として記憶に残る作品なのである。あらすじは簡単、ある連続殺人犯の人格がどうやって形成されていったのかを生い立ちから語りなおすというもので、その点ではまったく新味は感じられない。だがこの作者の凄いところは、その物語を成立させる未来世界を完璧に構築し、なおかつそこに社会の構造まで組み込み深みを与えている点だ。そうすることによって読者は、なんの抵抗もなく物語に没入していける。さらに素晴らしいのは主人公の内面描写だ。彼の感じる世界のとらえ方は犯罪者としての萌芽を内包している分、違和感として読者に伝わるのだが、それがまったくの異質ではなく同調できる隙間を残しているところがいい。だから反発しながらも惹かれていくというなんともじれったい共生関係に陥ってしまうのである。ゆえに、この人物が本編でいったいどういう活躍をするのか、それが気になって仕方がない。 | ||||
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