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春にして君を離れ



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春にして君を離れの評価: 4.48/5点 レビュー 221件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.48pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全195件 141~160 8/10ページ
No.55:
(5pt)

愛読書!!

学生の頃は理解できなかったので読み返す為に購入しました!!アガサ・クリスティーの中で一番好きな作品です!!
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.54:
(4pt)

美しい

アガサクリスティーと言えばミステリーですが、
この作品では人は死にません。
事件も起きません。

ミステリーでもチラチラ垣間見える、
登場人物の心の機微がこの作品では存分に楽しめます。
文章が美しいので、思ったよりずっと楽しめました。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.53:
(5pt)

何度読んでも心を打つ

思春期の頃、栗本薫さんの書評が乗った帯に釣られて買いました。衝撃的でした。そして、今、時を経て読み返してみれば、主人公に寄り添う自分がいました。人はみな、自分が見たいものを見、聞きたいことを聞く。それが真実であろうとなかろうと。自分自身を見詰め直すチャンスを得てそれを知ったとき、今までの自分を変えるのは本当に難しい。私は変われるだろうか。変わりたいのだろうか。これからもこの本を胸に自問自答することでしょう。一生ものです。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.52:
(4pt)

自分は何者なのかという謎を推理するという意味では、一種の推理小説

純然たるミステリーではないのですが、主人公ジョーンが自分で自分は何者なのかという謎を推理するという意味では、一種の推理小説と言えなくもない小説です。

ですから、ネタバレになりかねないので、詳しくは書けません。

とにかく哀しい小説。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.51:
(4pt)

私はロドニー派!

この訳ではなく、ミステリーロマンスから出ている『オリエントから愛をこめて』(どうしてこんなタイトルになったんだ!?)と原文で読んだことを最初にお断りしておく。
それでもレビューを書きたくなったのは、ロドニー派がだいぶ少ないからだ。
主人公ジョーンと自分を重ねてみるのならば、確かに残酷な男に見えるかもしれないが、私は自分をロドニーと重ねて読んだ。
ジョーンのような人たちと、何度も何度も分かり合おうと、真実に目を開かせようとしてきたが、結局、彼女(たち)は別の世界の存在なのである。
どうしても理解しあえない相手と、関係を解消できなくなってしまったとき、できることは諦念を持って出来る限り日々をやり過ごしていくことではないだろうか。
真実に目を向けさせようとすることは不毛で、お互いを傷つけるだけで、日常の中では絶対に成功しない試みなのである。(Only saints can do.とあるように)
もう一点、ロドニーを擁護しておくと、彼は子どもたちに対してはいい父親だと思う。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.50:
(5pt)

これは恐ろしい!

ロドニーがジョーンに真実を言わなかったのは、女の武器をもって人生を潰された事への復讐だとしたら!
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.49:
(5pt)

恐ろしいほどの心理描写が、アガサクリスティの作家としてのすごさを語っている。

すぐに読める本かと思ったら、とんでもない、なかなか読めなかったのは、言葉一つ一つにアガサクリスティの心理分析が
入っていたからだと思う。ついに原文まで読みたくなって、買ってしまった。クリスティの推理作家ではない、ほんとうの
作家の本物の作品だと思った。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.48:
(5pt)

アガサ・クリスティーはミステリ以外でも凄腕の小説家だ

稀代の読書家・松岡正剛の愛弟子・大音美弥子がサイト「ほんばこや」の「いろは本箱」に『春にして君を離れ』の書評を寄せていると知り、以前、強い印象を受けた本書を無性に読み直したくなってしまった。

『春にして君を離れ』(アガサ・クリスティー著、中村妙子訳、ハヤカワ文庫)は、数々のミステリで知られるアガサ・クリスティーの数少ないミステリでない作品の一つである。

ヒロインのジョーン・スカダモアは、成人した3人の子の母であるが、夫・ロドニーの目には「物事に打ちこみ、万事をてきぱきとかたづける有能さ。首筋の線の若々しさ。皺一つない美しい顔。快活で、自身にみち、愛情に輝いている」と映っている。

ジョーンは、バグダードに住む末娘を見舞うため、周囲の反対を押し切って英国を旅立つ。この6週間の旅行中に、彼女は心を激しく揺さぶられるような経験をする。本書の終盤は、この経験の息詰まるような描写の連続で、本当に息苦しさを覚えるほどだ。そして、最終段階に至って、読者は強烈な逆転パンチを食らうことになる。このストーリー展開の巧みさは、さすが、「ミステリの女王」と呼ばれたクリスティーだけのことはある。

ジョーンの前に登場するのが、ジョーンとは何もかも正反対のレスリー・シャーストンという女性である。「後ろめたげな目ざしの前科者の夫をもったレスリー――酒に溺れている夫との貧しい生活、病気、そして死。・・・レスリーはちっともみじめでなんかなかった。沼地でも、耕地でも、川の中でも、構わず歩いて目的地に到達しようと心を決めている人のように、幻滅にも貧乏にもめげずに、彼女は歩んだ。快活に、もどかしげに・・・」、「彼は改めて彼女の勇気に感嘆したのだった。それは自分のための勇気以上のもの、愛する者のための勇気であった」。

私がこの作品から強い印象を受けたのは、3つの理由による。

第1は、愛とは何か、夫婦とは何か、勇気とは何かが、厳しく追求されていること。

第2は、価値観を共有するとはどういうことかが、具体的に語られていること。

第3は、人間が真に変化するとはどういうことがが、クリスティーの冷めた目で捉えられていること。

「あの日、アシェルダウンで彼女と10月の太陽を浴びながら一緒に――しかしひどく離れて坐っていたとき。あの苦悩、そして狂おしいまでの憧れ。二人の間には4フィートの距離があった。それ以上近づくことを恐れたからだった。・・・二人の間の空間は、憧れの火花に満ちみちていた」――本書の中で、私の一番好きな箇所である。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.47:
(5pt)

愛することの奥深さを知った

普段、小説は読まない。途中で飽きてしまってそのまま・・・になる私が、人に薦められてしぶしぶ読み進めていくうち・・どんどん引き込まれ、一気に読み終えてしまった。

読み終えた後、しばし呆然としてしまった。わたしも・・・という怖さもあってか。

人は自分のことは見えない。

人を愛すると言うこと、本当の幸せとは何か、とても考えさせられる一冊だった。

アガサ・クリスティーは万人に共通する人の心の奥深さや、動きを観る才能に優れていたと思う。

何十年も前に書かれたものではあるが、不朽の名作であることは間違いないと思う。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.46:
(4pt)

万人が読んで面白い本だと思います。

アガサ・クリスティーが、「アガサ・クリスティー」という名前ではない他の名前で出版した6冊の本の中の1冊。

アサガ・クリスティーと言えば、推理小説なのだが、これは推理小説ではないから、犯人も何もでて来ない。

この本、どんなジャンルかと言われたら凄く難しい。

ただ、最後は背筋がぞっとする。

この主人公を自分に置き換えて読んでみた時、果たして自分はこの主人公と同じなのか、違うのか…。
同じであったら救われない…。

しかし、多かれ少なかれ、この主人公と同じ部分を誰でも持ち合わせているのだろうとは思う。

★4つというのは「もう1度読んでみたい」という意味なので、これはそうとうレベルが高いです。

万人が読んで面白い本だと思います。
お薦め!
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.45:
(5pt)

自分のことが分からない怖さ。

1ヶ月の米国旅行から戻って、読みかけだったこの本を再び手にとって読み始めた.。英国の中流家庭の婦人ジョーンがバクダットにいる娘の介護を終えて英国へに戻る途中、予期せ災害で砂漠の真ん中の鉄道宿泊所に数日滞在せざるを得なくなったところから物語は始まる。いつ来るかも分からない列車を待ちつつ、無為な時間を過ごすうちに、自分の来し方に思いを巡らせる。独白のように子育てのこと、夫の仕事、夫が好意を感じていた知り合いの女性のことなどが語られていく。眩しいほどの太陽のもと、考えれば考えるほど答えが見つからない主人公の苛立ちと子供達や、優しく働き者だが困難な事や決断を避け気味の夫。こういうシチュエーションは多かれ少なかれ誰の身にも覚えがあることだろう。日常に埋没していると、自分自身の事を深く考える事はあまりないが、ひとりの時間が不意に訪ずれたら否応なく向き合わざるを得ないが、それは、かなり難儀な事だ。
今回の旅行でアリゾナの砂漠気候の中で数週間暮らし、肌がヒリヒリする程の熱気と乾燥を経験し、主人公の気持ちを自分の事のように追体験できた。自分自身についても考える事が多く、強く印象に残った本だった。良き人とは「自分のためではなく、他人に手を差し伸べられる人」と言われるが、自分の価値観の下に行動する事の弊害と言った事も起こり得るしとこの本を読んで感じ、いよいよ複雑だな〜と、迷路に入り込んでしまった感覚に捉われている。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.44:
(5pt)

身を切られました

母・妻・職業婦人(ときどき)ですが、54歳にしてこの本に出会いました。
初めは「ああ、またとてつもなく、おもしろい本に出会った」と勿体なく、惜しみ惜しみの気持ちで味わっていたのですが、次第に、あまりにも「うち当たる」(=沖縄方言で、「自分自身の問題と重なりあって他人事でなくなってしまうどちらかというと否定的感情を味わう」の意)ので、苦しくなって、休み休み読み進めました。結局、頭と心を休憩させながらも、そして、身を切られる思いをしながら、最後まで読むしかありませんでした。一度読んだだけでも、たくさんのことを学びましたが、これからも、何度も読み返し、新しいことを学ぶに違いないという予感がします。こどもを育てるということの底の深さが今は、一番印象に残っています。少しだけ、世の中を、もっと敬意と保留と謙遜の態度を持って見ることができるような気がします。生きているうちにこの本に出会えてよかったと思います。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.43:
(5pt)

淋しくてもこれも愛、移ろう人の心

年を経るごとに変わり行く夫婦の心、そして元来持っている気性はかわるのか?
理想の夫婦を目指して、夫のステイタスや経済面、子供の将来まで自分が計画してきた妻、現実的な事に追われて人の感情面をおろそかにしてきた時、彼女に何が起こり、そして結末は?
真実に悩んだ事のある人にお薦めしたい。彼女の旧友のように生きたい?彼女のように生きたい?女性としてどう生きたいか?
難しく考えもできるし、蜃気楼とも読める。やはり、アガサは好き。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.42:
(5pt)

読み手の自分に驚愕します

怖いですねぇ
何が怖いかって、夫のエピローグです
主人公である妻の話でありますから、
当然妻の行く末ばかりに気を取られているわけではありますが…
弁護士として「有能」な夫に陪審員(読み手)の私はすっかり…
あぁ〜 プアgebara そんな夫の声が聞こえてきます

クリスティーの凄さがわかりました
ぜひご一読を
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.41:
(4pt)

春にして君を離れ

書評でアガサクリスティーらしくないが面白いとあったので早速読みました。大変面白くて、夫を大変愛していて自分は賢く素敵な主婦だと少しでも思っている方・愛する夫が些か物足りないのではと疑問に思っているあなた、是非この本を読んでみてください。目からうろこです。ひょっとしてクリスティの自虐的な体験告白ではないかと思っています。間違えない夫選びの参考にはなりませんが、結婚生活の正しい過ごし方には些か参考になると思います。
幸せな結婚生活を過ごしている方には、まったくチンプンカンで面白くありません。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.40:
(5pt)

現代人の持つ不安と恐怖を見事に表現した傑作

この小説を読むと、生きている自分という人間が一体どういう人間なのかがわからないひとや、まわりからどう自分は見えているのかがわからないひとは、もしかしたら哀れで孤独であり、愚かな人間なのかもしれない。そう思えてくる。また、自分はどうなのだろう。自分は果たして日頃賢く振舞っているのだろうか。自分が考えている自分と、まわりからみえている自分とは同じ評価なのだろうか。まさか、もしかしたら・・・。この本を読むにつれ、読者はそのように考えてしまう。つまりこの小説は、現代人が陥りやすい不安と恐怖=社会のなかでの孤独と疎外感を見事に表現しているのだ。(特に人間関係にナーバスになりやすい日本人にとってこの本はセンシティブに感じやすいだろう。)現代では家族関係すら希薄になっておりそれがもはや当たり前のニュースにもなっているが、アガサ・クリスティは、有名作家になって上流社会の仲間入りをしたり、夫との関係も安定しなかったことから、いち早くこうした孤独や不安と戦っていたに違いない。しかもクリスティのすごいところは、自己憐憫に陥いりながら、そこから抜け出したことである。自分を冷徹に観察し、人間に共通する悩みと苦しみにまで昇華させあまねく表現したところがこの本がいまでも読み続けられるゆえんだと思う。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.39:
(5pt)

自分や自分を取り巻く世界と向き合うことの難しさ

第二次世界大戦を目前に控えたイギリス人主婦の、ミドルエイジクライシスが本書の軸となっています。

文字通り、絵に描いたような良妻賢母の役をこなすことで、人生の難しさから逃れ続けてきた主人公ジョーン。
自分の人生の傍観者として、具体的に人生と向き合ってこなかった夫ロドニー。
それぞれに別々の方法で人生と折り合いを付けてきた三人の子供達。

イギリスから遠く離れた旅先で、ひょんなことから得た内省の時間を活かし、
ジョーンは自分自身、自分を取り巻く世界と正面から向き合うことができるのか?

クリスティー本にしては珍しく殺人事件ではない、と見せかけつつ、
自分の人生の殺人者は自分自身だったのかもしれない、という空恐ろしい物語です。

クリスティーとほぼ近い世代を生きた、アン・モロウ・リンドバーグが、
「海からの贈り物」で、やすやすと内省を行っているのとはあまりに対照的。

ジョーンの一家がどんな結末を迎えるのか、是非読んで確かめて下さい。
文句なしのおすすめです。☆5つ。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
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No.38:
(4pt)

彼女の苦悩はよくわかるとおもいます。

女性の視点で描かれた
人生の回顧録、とでも言える作品です。
主人公である彼女は
旅行へと出かけるのですが
そこでさまざまな記憶が彼女の
感情を揺さぶるのです。

そう、自分の人生は
どうにでもなるけど
他人の人生は自分がどうこう言おうが
必ずしも変わるとは変わらないということ。
それは彼女が彼女の長女のある事実を
知ったときによくわかることでしょう。

あの状況下では
頭ごなしに悪いといっても
通用しないものなのです。
その点主人公である彼女は
利口過ぎて彼女の長女に
深い傷を与えてしまいましたね。
そう、あの事件は扱うのが難しいのです。

そして成長していくにつれ
彼女の思い通りには
子供は動いてくれはしないということ、
そして彼女の夫にも…

この本を読むと
ある意味自分の行き方に自信が
もてなくなってしまうかもしれません。
かなり人生の核となる
部分を扱っていますからね。

でもその部分をわかって、
悔いることは重要なのですから。
人って誰しもこういうことは
あるのです…人である以上。

ロマンスものだけど、
非常に心洗われる1冊でした。

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.37:
(5pt)

最後の言葉に全てが…

色々な本を読み漁ると、途中でふとアガサを読みたくなる。
検索すると、あまりにも評判が良いので
興味を持ち、取り寄せてみた。

この本は、ポアロもミス・マープルも出てこない。
出版当時は、アガサの名前ではなく
メアリ・ウェストマコット名で出されたというのに
アガサの意図を感じる。

殺人自体が起こらない。
普通の主婦の、ある意味回想録的な部分が多い。
なのに、怖い。
何故って、殺人事件など そうそう日常的にある訳ではなく
他人事のように、傍観者でいられる。
それに比べて、この本は 否応なしに主人公と同じ目線で
自分を見つめ直させられるからだ。

自分を見つめることなど、人生においてそう度々あるものじゃない。
日々に追われ、時間に追われ…そうして年月が経って行く。

後半部分、ジョーンが自分のことを知り、認め、夫に対して
謝りたいと、ひたすら願う気持ちは感動すら覚えた。

なのに…。結局、人はそう簡単に変われるものじゃない。
最後のロドニーの言葉が、自分自身にも棘が刺さる。

この最後の一言には、読み終わった後もしつこく余韻が残る。
今更ながら、アガサ・クリスティーは天才だと思う。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385
No.36:
(5pt)

大人のおとぎ話

子どもの頃の、残酷なおとぎ話を読んでいるかのようでした。

ラストの救いようのなさが悲しくて、涙を流しながら
不思議なカタルシスを体験したような気がします。

帰りの車内で出会った「悟りの人」サーシャが言うように
幼い頃から家庭を知り、大人になり結婚した私達にとって
これは、どこにも誰にでも落ちている話なのかもしれない。

きっと、普遍的な経験で、痛みなのだろう。
そして、それは誰にとっても孤独な体験なのだろう。

「自分を知ってしまうこと」。
「発見した自分が、他人と向き合ってしまうこと」。

愚かな自分を、夫からさえも優しさという名の無関心で
見過ごされていた主人公。今の自分とピッタリ重なりました。

ジョーンという人は、結果的に自分にとっても他人にとっても
「主人公」にはなれなかった。自分が傍観者的であったばかりに。

人はそう簡単に変われない。よね・・・・・。

でもバグダッドの空気が太陽が、彼女に変化を促していた。
帰りの席で同じくした貴婦人が、きっと貴女は変われない、
と警告を発してくれた。チャンスはあったのに・・・。

人生の岐路で、ふと立ち止まって自分を振り返ったとき
過去や現在の事実を直視できるか、そうして変われるか?
それがあまりに不条理な事実だとしても?

「きっと、太陽のせいだわ」と白日にさらされた事実を
妄想として切り捨てようとするあたりが
カミュ「異邦人」の不条理文学に似てると思いました。
時代的に、戦争(第二次大戦)の予感が生々しいです。

都合の悪いことは排除したり見て見ぬフリをする、
ジョーンが戦争をそのように呑気に捉えている下りも象徴的です。
(ナチスをあながち悪くないみたい、と言ってみたり)

この小説の問題提起は、ほんとうに万華鏡のようです。

一人の女性の生き方、夫婦のあり方、親子関係とはなにか、
人類愛とは?より深い孤独とは?人間とは、人生とは・・・

今回は初見でしたが、この本のどこを読んで
涙を流したのか、よく覚えておきたいと思います。


春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)Amazon書評・レビュー:春にして君を離れ (ハヤカワ文庫 NV 38)より
4150400385

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