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斧
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斧の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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90年代のアメリカにもグローバル化の波がおしよせ、企業合併からリストラの嵐が吹き荒れた。 ミドルクラスの失業など日常茶飯事のことであったことにヒントを得てドナルド・E・ウェストレイクが書いたのが本書『斧』(1997年)である。 この物語の主人公バーク・デヴォアは、アメリカのコネティカット州で妻と子供2人と4人で暮らす51歳の男である。 25年間勤めていた製紙会社でキャリアーを経て今では生産部長である。 が、企業合併のためあっけなく回顧されてしまった。 専門職のバークのよな失業者は多く、製紙会社の求人に応募してきて2年が過ぎたが未だに採用されない。 これでは永久に職に就くことができないと業を煮やして彼の考えたことはユニークだった。 競争相手を6人にまで選り分けて(この方法もユニークだった)この世から消えてもらうということだ。 素人殺し屋になったバークが出たとこ勝負の殺しを、一人目、二人目とそれぞれ思わぬハプニングに遭遇しながら進めていく。 バークが臨機応変に行動するところや、心理描写などは、さすがウェストレイクだと感心させられた。 ストイックになっていくバークと妻のマージョリーとがカウセリングを受けることもストーリーに色を添えている。 本書の終わり近くでバークが、「今日、われわれの倫理規約は、目的が手段を正当化するという考えの上に成り立っている。目的が手段を正当化するという考えは不適切だと思われていた時代があったが、そういう時代は終わった。」と語っている。(P363) 主人公バーク・デヴォアを、なんとか職につかせようと読者も応援したくなるような気にさせる件であり、読みながら恐ろしくなってきます。 「チャップリンの殺人狂時代」という映画でチャップリンが、「一人殺せば殺人者で百万人殺せば英雄となる」と語るところを思い出してしまった。 家族を養うために殺し屋になったバークは、百万人も殺してはいないが、何人もの人を殺したのだから家族にとつて英雄なんだろうか?と、思いながらサイコパス小説『斧』を読み終えました。 | ||||
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週刊文春2001年 海外3位 このミス2001年 海外4位 パーク・デヴォア(50才)は、製紙会社を解雇され、2年間、失業中の身。面接すれども職にありつけない日々を送っていた。バークはついに、再就職のライバルとなる(であろう)ものを選別し、殺害することを決意する。 はっきり言って、気持ちの良い話しではない。が、自身のライバルとなるものを探し出し(この手法は必見)、ミスをリカバリしながら目的を達成していくバークの姿には、興味を惹かれるものがある。悔恨の情は、ままるとしても、あっさりと殺人を犯すバークと、妻や息子に対する思いやりのあるバークの落差が印象的。ヒトの内面にある両極端を、戯画化して描いているということなんだろうか。 ドートマンダーシリーズのような笑いは全くないんだけど、ウェストレイクファンには一読の価値あり。サラリーマンとしては、身につまされることしきりなんだが。 | ||||
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リストラされた男が選んだ就職活動は、ライバルたちを消すことだった。この世から、永遠に。 連続殺人を犯す過程と心理を細かに描いて、場面の単調な繰り返しに陥らない構成に、改めて作家の技を見る。 これ、TVドラマにしたら面白いんじゃないかな。舞台を日本にして。 しかしエンディングは変えた方が良いな。映画ならこのままでもいいけど、TV向きではない。あー、深夜枠ならアリかな。 | ||||
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製紙会社をリストラされた中年男性が、なかなか再就職できないあげく、ライバルの男性を次々殺していくことを考える。 日本の特に都会部では対象となるライバルが多すぎて起こりにくそうな発想だけど、 アメリカのコネティカット州あたりではあり得るのかな、と想像してしまう。 殺人の方法は様々だけど、なぜか「斧」というタイトル通り、黙ったまま斧を振りおろしてる姿が一番似合いそうな恐怖感を覚える。 主人公が淡々と殺害相手を選んで殺人を遂行していく様子が怖い。 なかなかしびれる一冊です。 | ||||
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Donald E. Westlakeの『The Ax』(1997年)の翻訳。 ノン・シリーズの長編ミステリである。 たぶん、ユーモア・ミステリに分類していい作品だろうと思う。暴力と血にあふれているが、根底にあるのは痛烈な風刺とギャグだ。 アメリカ社会の抱える「失業」という問題にまっこうから取り組んだ意欲作(?)であり、確かに、こうすれば解決するかもねと納得させられる。 ラストをどうするかは著者も迷ったのではないか。しかし、**(ネタバレになるので伏せ字)に決めた点に著者の力量を感じる。 | ||||
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「再就職のライバルとなる6人を皆殺しにする」。あらすじに書かれた突拍子もないこの一文に、現実味がないと感じた人こそはまってしまうと思います。主人公は普通の中年男性。妻子もち。まじめで家族思いで頑固もの。その男が、リストラされて二年というギリギリの精神状態のなかで連続殺人を思いついてしまう。この平凡なおっちゃんが犯罪者になっていく過程や心理の描写がものすごくリアルで思いっきり感情移入してしまいました。特におっちゃんの格好悪さが哀愁をさそいます。殺人方法も不器用だったりして、やってることや言っていることは「無茶苦茶だ」と思いつつも嫌いになれません。最後まで引き込まれるようにして読みました。ユーモアな箇所はあるものの、全体を通してシリアスなトーンでかかれたミステリーです。ドートマンダー・シリーズのようなコメディではありませんが、読み応えは十分。 | ||||
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製紙工場をリストラされ、2年近く再就職できない熟年男が人を殺し始めた。しかも、全部で7人殺す予定だという。真面目で勤勉なサラリーマンだった男が、一体なぜそんなことを始めたのか? 主人公が色々なことを考えながらも真面目に淡々と人を殺してゆくのが、現実味がないといえば現実味がないし、リアルといえばリアル、そしてまた、どこかユーモラスだとさえ感じた。 フィクションだということが頭にあったからこそだが、早く殺人を全て済ませて就職し、「まともで平穏な暮らし」に戻りたいという主人公に同情して、応援する気持ちになってしまった。結末はちょっと予想外で、複雑な心境になったが、これはこれでいいだろうと思う。 英文が結構読みやすい。すっきりしていて、汚い言葉もほとんど使われてない上、難しい単語が少ない。ストーリーも追いやすいので、洋書をあまり読んだことがない人にもおすすめ。 | ||||
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リストラされて逆上した主人公が斧を振り回して次々に上司を血祭りに あげるスプラッタター・・・ってことはなかったです。 サラリーマン小説です。 邦題「サラリーマン金太郎 リストラ編・・きっと再就職するぜ!」ってとこですね。 本屋に行ったら、ビジネス書のところにこっそり置きましょう。あ、夫婦で無駄なセラピー受けるとこ面白かったです。 | ||||
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本作品の主人公は失業により切羽詰まった状況に置かれ、心のバランスを欠いている。家族の心の問題に対処しながら、自分の売り込むべき専門技術で生計を立てたいと今でもずっと思っている。そのために自分と同等以上のスキルを持った人間を6人ばかりリストアップして彼らを一人一人殺してゆく計画を作り出す。 殺しは仕方のないことで、自分をそう追い込んだのは世間だと彼は確信している。こんなことは早く終わらせてしまいたいのだ。家族を守るために。息子を育てるために。何よりも日常に平和と安定を取り戻すために。しかし、多くの殺人が心に積み上げてゆくのは、本質的な冷血。どこかで最初のうちに感じていた被害者への同情が徐々に冷え冷えとし、殺しはその度に残酷さを増し、躊躇がなくなり、大胆になってゆく。 そうした殺しの履歴書を、ただひたすら丹念にこの物語は綴ってゆく。ぞっとするほどの恐怖。恐るべき一人称文体。 殺人の一つ一つは決して同じものではないから読者を飽きさせることがない。その都度スリリングであり、淡々と描かれているのは心の壊れてゆく様子である。皮肉でブラックな結末と、その後への空虚な予感とが、さらなる冷気を吹きつけてくる。社会風刺を取り入れながらも、個人の狂気のきっかけを、大きな壊滅へとじわじわと表現せしめた非常に完成度の高い逸品であるとぼくは思う。 | ||||
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