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卵をめぐる祖父の戦争



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卵をめぐる祖父の戦争の評価: 4.64/5点 レビュー 69件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.64pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全64件 61~64 4/4ページ
No.4:
(5pt)

少年は、卵を探しながらなにを見つけたのか

戦時下のロシアで、ひとりの青年と、青年になりかけの少年が卵を探して旅に出る。命とひきかえに秘密警察から特命を受け、“卵1ダース”を求めてさまよううち、少年は極限状況に置かれた人間たちの姿を目の当たりにしていく。狂気、暴虐、死――、作者は第二次大戦当時のレニングラードの史実をふまえてこの物語を描いているのだが、数々のむごいエピソードを織り交ぜながらも、本書は主人公レフのナイーブなほどの感性と一見道化た青年コーリャのユーモアと懐の深い優しさを主軸に据えた、哀しくも可笑しい青春小説である。男ふたりの道中には恋愛、セックス、文学の話が飛び交い、表面上は反発しながらもレフがコーリャとの絆を深めていく様子がほほえましい。そしてすべてが終わった時に、喪ったものと残ったもの。戦争の残す傷跡の重みとともにラストは哀切がつのるが、作者はちゃんと人生の贈り物を用意している。
構成は作者同名の小説家が祖父の戦争体験談を聞き書きしたという体裁。どこまでがフィクションでどこまでが事実なのか、読後に読者を煙に巻くベニオフ、さすがハリウッドでは脚本家として活躍しているだけあり、映画にしてもさぞさまになるだろう小説だと想像する。見事にパズルのピースがぴたりとはまった、良質のエンターテイメント。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.3:
(5pt)

語りの妙!

デイヴィッド・ベニオフは『25時』でも、また『99999(ナインズ)』でも語りのうまさがきらりと光っていたが、今回はまさに彼の真骨頂。抑えた文体はときにtongue-in-cheekでありながら、戦時のほろ苦い青春譚を切々とうたいあげる。おとぎ話と思って迂闊に不用意に読んでいると、戦争の残忍さに直撃される。(被爆国)日本に育った人間としては、当然小学校時代に戦争ものを読まされているが、この作品の衝撃度は感受性がまだみずみずしい子供の頃に読んだ作品にも負けず劣らずである。いや、こちらの方が上かもしれない。抑えた文体、皮肉なユーモア、実録ものと見せかけたおとぎ話仕立て、といくつか工作がなされているだけに、シニカルな大人の心もより深く直撃するので。心のやわいところを、グサリと。
三人の若者に巡り合わせてくれたベニオフに感謝するのみである。とくに、コーリャの元彼女のソーニャに命の輝きを見た。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.2:
(5pt)

極上のエンタテインメント歴史小説

すごく面白かった! 一気読みした! 1941年9月8日から1944年1月18日まで900日近くにわたって続いたレニングラード包囲戦は、100万人以上の市民が死亡し、大虐殺の一例として歴史の汚点となっているが、ドイツと枢軸国の関係にあったせいか、あるいは民主主義対社会主義の戦いと映るせいか、日本では知名度が低すぎるような気がする。
 本書は極限状態のもと、不可能で無意味なミッションを命と引き換えに強要された二人の若者の友情・冒険物語だが、主人公が大人になっていく過程を描いた成長物語でもある。悲惨な状況にもかかわらず、17歳と20歳の青年らしく、話題はセックスのこと、排便のことから、文学、芸術、チェスにまで及び、微笑まされたり、笑わせられたりすることしょっちゅうだった。ことに、まるで主人公レフの守護天使のような友人コーリャのキャラクターは、天衣無縫、豪放磊落かつ繊細で、非常に印象に残った。
 ストーリーも、これでもか、これでもか、と波乱万丈で、まったく厭きさせない。とくに、プロローグで、作者の祖父母は生き残ることがわかっているので、友人のコーリャは無事に済むのだろうかとハラハラしながらページをめくった。また、祖母になる女性は誰なのかと、女性の登場人物が現れるたびに、謎解きを楽しんだ。
 これは、笑いとペーソスに満ちた極上のエンタテインメント小説だ。戦争の悲惨さと愚かさ、若者の逞しさと頼もしさ。ときに笑い、ときに涙し、小説の愉しさが存分に楽しめる一冊。お勧め!
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.1:
(5pt)

ページターナーとは、これ!

第二次大戦中のレニングラード。少年レフは敵の兵士の遺体から所持品を略奪し、当局に捕まってしまう。留置場で出会ったのが脱走兵の青年コーリャ。二人は五日以内に卵を一ダース探し出すという条件で命拾いをする。食料難にあえぐ町や敵軍が迫る最前線を行く二人をさまざまな困難が待ち受ける。やがてパルチザンと行動を共にすることとなり、レフはパルチザンの紅一点ヴィカに惹かれていく。終盤、三人はドイツ軍に捕らえられてしまうが、持ち前の度胸と知恵を発揮して絶体絶命の危機を乗り越えていく……。
 ドイツ兵に囲まれ絶対絶命と思いきやパルチザンが現れたり、命がけのチェスの試合に臨んで仲間を救ったりと、主人公が何度も危機を切り抜ける場面で、作者の筆の運びは冴えわたっている。一方、ひどい食料難や、知識人への弾圧、戦闘で犠牲となる一般市民など、悲惨な光景もリアルに描かれている。しかし、なんといってもこの作品の魅力は主人公二人のキャラクターだろう。反体制的とされた詩人の父を誇りに思い、思春期の少年らしく性的好奇心が旺盛なレフと、減らず口ばかりたたくが、実は小説を書きたいという繊細さも持ち合わせ、男の先輩としてレフにいろいろ教えてやろうとするコーリャのやりとりには何度もニヤリとさせられる。


卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383

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