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卵をめぐる祖父の戦争



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卵をめぐる祖父の戦争の評価: 7.50/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(6pt)

卵は貴重品

ラストシーンが良かったです。

わたろう
0BCEGGR4
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

卵をめぐる祖父の戦争の感想

傑作。久々に濃密で爽快な読書体験でした。

海外作品なのに読みやすく、かつ戦争物は堅苦しいというイメージを払拭するユニークな作品です。

正直、本書は意味不明なタイトルと戦争小説のイメージから記憶に留めていませんでした。
きっかけはハヤカワ・ポケット・ミステリの情報を調べていた時に、2010年のリニューアル第1弾として本書が選ばれている事を知り注目。何かが変わる時の作品は関わる人々の強い思いが込められた物になっているだろうと言う点と、世の評判が良かったので手に取りました。

祖父から当時の戦争の様子を語ってもらうシーンで物語は始まります。

舞台はレニングラード包囲戦。第二次世界大戦、ドイツ軍が大都市レニングラードを包囲し食糧の供給が断たれた飢餓地獄の街。食べ物が無い為、図書館キャンディと称する本を口にして糊付けに含まれる蛋白質を補給して栄養を取ったり、人が死んでいれば死体の持ち物を物色するなど凄まじい状況が描かれています。

主人公の青年が仲間と共にドイツ兵の死体から所持品を物色していたところ、運悪くソ連の秘密警察に見つかり略奪罪として捕まってしまう。射殺されてもおかしくない状況で、秘密警察の軍の大佐から5日後に行われる娘の結婚式にケーキを作ってやりたいから卵を1ダースもってこい。と命令を受ける。

卵はもちろん鶏も犬猫もいない飢餓状況の重苦しい状況において、ケーキを作るというなんとも皮肉でユーモアな目的が描かれているのが面白いです。邦訳のタイトルが逸品で本書はこの卵をめぐる冒険小説となります。
(全然違うのですが、『走れメロス』のタイムリミット感や『宝島』のワクワク感のようなものを感じました。)

道中は超お喋りな青年コーリャと旅をするわけですが、このコーリャがとても良い味をだしています。詩の引用をふりまいたり、思春期の男の子なので、女の事や下ネタ話など思うがままに喋りまくる。そしてこの会話文が非常に楽しく絶妙です。舞台設定は非情な戦争背景を描いていながら、物語の進行は主人公とこの青年コーニャのおかげで、とてもユーモアに仕上がっています。

戦争背景、残酷な描写、ハラハラドキドキな冒険、青年達の成長、バカ騒ぎ、ロマンス、活劇、etc……。これらが軽妙な文章で描かれていまして、小説ならではの面白さを堪能しました。しゃれた翻訳が素晴らしかったです。

死の緊迫状況があれど祖父が語る昔話なので、祖父はちゃんと生きているという安心感が根底にあるのも良いです。ミステリとしてどうなのか?と言われると、これは広義のミステリーですね。ポケミスが良質なエンタメ作品を扱っていくという思いや、質の高さを改めて感じました。

▼以下、ネタバレ感想

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egut
T4OQ1KM0

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