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卵をめぐる祖父の戦争



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卵をめぐる祖父の戦争の評価: 4.64/5点 レビュー 69件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.64pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全64件 41~60 3/4ページ
No.24:
(5pt)

戦争の本質を伝えたかったと思われる戦争小説

旧ソ連で第二次大戦下、捕虜になった二人の青年がある奇妙な依頼を受け戦争に分け入っていくこに・・・というお話は、皆さん読んだ通り。
この後、二人が体験することになる様々な事件や事象は戦争というものが、ただ戦って人を殺すことだけではなく、銃後で苦労する女性や子供までを含めて戦争であるという事実を伝えてあまりあり、ある評論家の人が戦場だけ報道するのは「戦場報道」で戦争の本質を伝えていない、というのを聞いたことがありますが、この小説で著者が言いたかったのも、多分同じようなことだったのでは、と思いました。更に二人が織りなす会話や行動が珍道中風で楽しく、緊迫した戦闘シーンもありますが、戦争を戯画化したような、例えば「キャッチ=22」や映画だけど「M・A・S・H」に連なる反戦小説になってるようで中々奥の深い作品のように思いました。唯一、変に思ったのが二人の片方がタンパク質不足の折、オナニーにふけっていた、と述懐する所で何故?と考えてしまいましたが、皆さんはどう思われたでしょうか・・・
何れにしろこのような作品がポケミスで出るのもちょっと驚きでした。あと勝呂さんの抽象画から突然デザインが変わったのも結構衝撃でした。その斬新なデザインに思わずジャケ買いしたのも少し懐かしい思い出になりつつあります。ジャケも含めて傑作だと思います。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.23:
(5pt)

友情と愛と冒険の青春小説

作家のデイヴィッド・ベニオフ(著者)は、祖父のレフから戦時下の体験を取材して小説を書くことにした。
1941年6月、ナチスドイツ軍がレニングラード(愛称ピーテル)に侵攻してきた。ドイツ軍はピーテルを包囲し兵糧攻めにした。10月になると食べるものがなくなって、飼い犬を丸焼きにして食べたという噂が広がった。11月になると燃やす物がなくなった。猫を食い尽くしネズミを食い尽くし、何しろ食べ物がない。ピーテルのそこら中に死体が転がっていた。人食いまで出る始末だった。
レフが17歳のときだ。ある日の夕方に、パラシュートでドイツ兵の死体が空から降ってきた。夜間外出禁止の時間になっていることを忘れ、死体を取り囲んでワイワイやっているうちに、レフは警邏のロシア兵に捕まって連行された。法を犯した者は処刑される。
監房では、饒舌なロシア兵のコーリャと同室となった。翌朝になると拷問も銃殺もまぬがれて、ふたりは秘密警察の根城となっている貴族の邸宅に連れていかれたのだ。そこで、大佐から娘の結婚式のケーキを作るのために、1ダースの卵を木曜日の夜明けまでに調達しろという命令が下されたのだった。今日は土曜日だ。
ピーテルを探し回るが、飢餓状態の町には卵などあるはずもない。ふたりはドイツ軍の包囲網をかいくぐりピーテルの外に出ることにした。
寒くて空腹で不潔で、やりきれない逆境にもかかわらず、ユーモアを感じさせ悲壮感がない。友情と愛と冒険の青春小説である。



卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.22:
(5pt)

これほど登場人物に共感した小説も久しぶり

傑作。読了後、久々に(しばしの余韻のあと)無性に再読したくなった小説。
2010年の新刊時、各誌で絶讃していて読みたかったが、タイミングを逸した。
1年半足らずでの自社文庫化は、時期ともども背景を憶測させるけれど、
一読者としては、ただただ感謝。1000円未満で、圧倒的な充実感。

かくも酸鼻で、野卑で、下劣で、醜悪な場面が、幾度となく現われるのに
(それぞれ該当する箇所の引用すら、ためらいます)、なぜ、これほどまで、
清冽に感じ、心にしみるのか。あるいは、登場人物に共感を覚えるのか……
(最初は主人公のレフに、やがては、相棒のコーリャに)。

翻訳も読みやすく、原題“City of thieves”を、程のいいユーモアをこめた
邦題にしたセンスも、まことに結構。
名のみ高く、晦渋で浅薄な日本語で書かれた一部の“純文学”を読む位なら、
本書を、すみからすみまで耽読したほうがいい。まず、読み物として最高だし、
“文学”の本質、ないし効用(毒にも薬にもなる、という意味で)が、
よっぽど得心できる。そう確信します。

概要とピンポイント的な魅力については、親本のハヤカワ・ミステリや
本文庫の他の方のレビューでたっぷり語られてますので、そちらを。
自分は、しびれた(戦慄した、ではありません)箇所をいくつか挙げます。

――「恐怖を経験すれば、人はより勇敢になれるなどと一般には
信じられているが、そんなことはない。始終恐怖を感じていれば、
恐怖を隠すのが容易になるということはあるかもしれないが。」(p37)
――「この世で一番淋しい音はほかの男女が愛を交わす音だ」(p135)
――「詩人その人は過去形でも、詩のほうは現在形で語れることが
嬉しかった」(p192)
――「母の心の中では、文壇も軍隊とまったく同じように階級制だった
んだ。称号や徽章はなくても階級のあるところだったんだ」(p291)

……以上はもちろん、ほんの一部。
文学と、詩人を含む文学者(集団)への愛情と皮肉も絶妙。

だが、何よりもしびれる場面は、国家に殺された詩人を父にもつ主人公が、
パルチザンの名狙撃手である少女と、初めて親しく話す場面(p354〜357)。
この前後の感銘は、“ミステリ”の範疇を超えている。
また、この場面あってこそ、最終章の、最後の高揚に至る、のでは。
未読の若い読書好きの方、とくに20代前後の男性には、強くオススメします。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412480
No.21:
(5pt)

怖気、笑い、冒険、そして感涙

舞台はナチに包囲された第2次大戦中のレニングラード。
あの、“スターリングラード攻防戦”です。
平和な時代に生きるボクたちの価値観など
通用しない世界が展開しています。
冒頭からすきっ腹を抱えた主人公たちは戦利品を求めて、
ドイツ人の死体に群がりますが、
そんなのは序の口です。「尊厳」などという言葉は、
絵に描いた餅に過ぎません。
けれど、残酷さを売りにしたり、
ただただ戦争の悲惨さを押し付けてくるような小説とは
ひと味もふた味も違います。
明日をも知れない命だというのに、
主人公は自慰のネタに夢中になったりしますし。
主人公の相棒はその場の空気を全く読まないヤツで、
まるで文学の主人公にでもなったように振る舞います。
こうした、物語全体をおおう「達観」とは違う
しびれたような笑いは、
苛烈な状況を中和するための装置のようにも働いているのですが、
どんな状況でも泣いてばかりでは生きられない、
人間の生々しい“生”を、見事に捉えていると、
ボクは受け止めました。
確かに、このくらい図太くなければ、この時代を生き抜くことは、
できなかったでしょう。
それから、たとえ戦時下でも、社会の構造や
個人のパーソナルっていうヤツは、
増幅されるだけで、変わりはしないんだなあ、って、
ボクは感じました。
とにかく、かつてない読書体験ができる小説です。
ラストは感涙ものです。
ぜひ読んでいただきたい。

【追記】
この小説を読んで
旧ソビエトの近代史に興味をもった方には、
島田荘司の「ロシア幽霊軍艦事件」をお薦めします。
ただのトンデモ小説ではありませんよ、
史実と虚実を緻密に積み重ねて、
見事にオオボラを信じ込ませてくれます。
この小説に対する理解も深まりますよ。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412480
No.20:
(5pt)

レニングラード攻防戦の悲惨さを軸に、ユダヤ系ロシア人の歴史を面白く伝える小説。

最初は、著者の祖父の実話に基づいた小説なのかな、と思って読んでいたが、恐らくは、戦後にアメリカに移民した、沢山のユダヤ系ロシア人の様々な記憶、昔語りを著者がこつことと集め、ひとつの話に仕立てたものなんだろうと思う。例えば、ユダヤ人がソ連になっても迫害され、特にスターリン時代に知識人の多かったユダヤ人への迫害が強まったこと。秘密警察にある日突然連行され、二度と消息を聞くことがないこと。レニングラードの攻防戦の悲惨な、飢餓状況。そして、もっと悲惨だったのは、ドイツに占領された地域で、ナチスによる無差別虐殺が日常茶飯事だったこと。それでも、レニングラードの市民は、関西人のように、逞しく、下ネタジョークをまきちらしながら、過酷すぎる日々を逞しく生き延びたこと、などなど。

こうした民族の集合的な記憶を、エンターテインメントの形で何とか残そうとして、本書のスタイル、つまり無垢で内向的なユダヤ系少年が、逞しい青年へと成長するまでの物語という形を取ったのではないか。

内容はあまりにも残酷で悲惨なのだけれど(そして殆どが実際にあったこと思われるが)、楽しく読めてしまうのが不思議。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.19:
(4pt)

馬鹿げた設定と下品な会話で戦争の愚かさを嗤う!

はっきりいって前半はもどかしい。

というか、『軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達』というあまりにも馬鹿らしい設定と
青年兵コーリャのあまりに『下品な物言いと行動』に何度かこのまま本を置いてしまおうかとも
考えた。

だが、徐々にそしてたたみかけるように積み上げられていく“悲惨な”戦争の実態に
あまりに“残虐な”人間な行為に頁を括る手が止められなくなる。

そして正に、このコーリャのセリフが無ければ、救いようのない戦争の愚かさに胸をふさがれて
頁を進められなくなるだろうことに気がつかされる。

最後の最後ラストの粋な会話に“連綿と続いてきた愚かな戦争”のない世界への希望を私たちは見出すことができるのだろうか?
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.18:
(5pt)

『フレンズ』のユーモアと映画『ドラえもん』のような冒険



 この本のことがずっと忘れられません。
  
 描かれているのは、第二次世界大戦下のロシアで、
 荒廃しきった町は死体だらけ、飢餓で苦しみながら、地雷犬や、人食いまで。
 
そんな、目をつぶりたくなる怖い戦争小説。
 しかーし、この小説は、それでも読ませる魅力があります。

 やばい殺されそう!という、ピンチな時でも、
 海外ドラマ『フレンズ』のような
 下ネタやしゃれたユーモアを言う仲間たち。
 
 そして、卵を探して冒険する
映画『どらえもん』のようなエンターテイメント性、
 
 冴えないのび太のような主人公が
 仲間に恵まれ、生き生きしだし、変わっていく様子。
 勇気と友情、恋に。

 ラストは…もう、キュンです。

 そして、読み終わる頃には、 
 日本人の私たちからするとさぞ“遠い”話であった
 ソ連で起きた出来事をウィキペディアで調べている。
 
 忘れられゆく、過去の悲しみの真実に、
 笑いや喜びというポジティブさが加わった
 とてもすばらしい作品です!!

  
 
 
 
 
 
  
 
 

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.17:
(5pt)

なぜポケミス?という良質ビルドゥングスロマン

そもそもこれ、なぜポケミスに入っているんでしょう?ミステリではぜんぜんないと思うんですが?
ミステリからずっと離れていたので、アマゾンのおすすめに入るまでうっかり見落としていたじゃないですか...

実際には第2次世界大戦中の数日間の冒険を描くビルドゥングスロマンです。スラップスティックな展開ながら、ご都合主義と感じさせることのない無理のないストーリー展開で大変面白く読めます。
老祖父の回想形式のため、最初は17歳の少年の一人称が「わし」であることに違和感を覚えましたが、少年らしい感情の動きが見事に語られているため、すぐに気にならなくなりました。
彼が出会う人物、事件、すべてが鮮やかに生き生きと描かれていながらも、あくまで17歳の多感な少年の目線レベルでの理解を逸脱してまで表現されている箇所は全くありません。その抑制のきいたリアリティが見事だと思います。

そして1942年から現在へつながるラストシーン、まさにビルドゥングスロマンらしい、安直に流れないけれど真に幸福な「めでたしめでたし」まで、本当に飽きずに読みました。

クライム・ノヴェルかスラップスティックミステリと勘違いしている方、ミステリ苦手の方、全然ちがいます!
白水Uブックスをよく読む方、これも必読です。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.16:
(4pt)

22章ラストの一言、最高!

作家なのだから、誰かの物語として書けるはずなのに、あえて祖父の昔語りという形式にしたのはなせか。「私」は作者本人(デイヴィッド、作家)という念の入れようで。

22章ラストの一言、最高!

回想形式であると読者は観客でいられる。敵に追い詰められる場面も、死なないことが解っているのでいくらか安心だ。
本作に続いて読んだ「パイド・パイパー」も、回想で二次大戦を描いていた。(但しこちらは三人称)
過剰な緊張感を避けたかったために、この形式を選んだのではないか。

もう一点。本作ではロシアが舞台となっていること。
イントロで「私」が「書きたいのはレニングラードのこと。」という一文がある。これが作者の本音だとする。
しかしデイヴィッド、一体誰がレニングラードの話なんて読みたがるんだ? 
いくら君が有名脚本家だとしても、一ページ目にロシア人の名前を見ただけで人は本を棚に戻すだろう。
外国を舞台にしただけで不利になるものなのだよ。
このデメリットはイントロ第一節に於いて、一行目は刺激的に、続いてアメリカを強調し、最後にやっと「ロシア語の新聞をよんでいた」という形で表現される。
アメリカ生まれアメリカ育ちの「私」を聞き手に据えることで、(力ずくで)舞台をアメリカにしたかったのではないだろうか。
その結果、読者に豊かな想像力を強要しないで、自分のままで聞いているだけでよいということになるのだ。
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4150018383
No.15:
(5pt)

関西人の戦争

他の方のレビューを見て読みました。飢餓の極地と戦争での残忍な行為の中でこの「ひょうきんさ」。立派に成立してます。導入は結末に説明されてます。重い状況と軽い言葉がバランス取って流れて行きます。「レフとコーリャの野次喜多珍道中」ただし道中は「地獄のレニングラード攻防戦」

コーリャの関西人的気質に図太い精神を感じる。死の最後にも声も絶え絶えにシモネタジョーク、言うだろうな〜多分。男やな〜コーリャ
死神も笑い飛ばしてしまえ「種馬コーリャ」・・・星3つですっっ

そんなコーリャにからかわれて、突っ込まれて純なレフは「なんでやねん」を心に、やるときゃやるぜレフ〜〜。星2つですっっ。

あわせて星5つですっっ。
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4150018383
No.14:
(5pt)

途中まで「もしからしたら、自分のこれまで読んだ本のなかで1番かも」と思った

私は海外ミステリが好きで、これまで名作傑作と呼ばれる本は大体読んできました。
「羊たちの沈黙」「シンプルプラン」「少年時代」「スタンド」。ハリー・ボッシュシリーズも、リンカーン・ライムシリーズも全部読んでます。
でも、この本の面白さはずば抜けていて、読んでいてシビれました。
友情もので、冒険ものなのでマーク・トゥエインの「トム・ソーヤーの冒険」やジスティーヴンソンの「宝島」に通ずる小説の根源的な面白さがあると言っても、この作品の褒め言葉としてはあまりに陳腐なような気がします。
ちびで冴えない男の子が主人公の話ですが、これは少年が大人の男になる成長物語であり、英雄譚なのです。
後半、前中盤ほどの面白さはすこしスローダウンしますが、私の人生で間違いなくベスト10に入る作品でした。


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4150018383
No.13:
(5pt)

面白い

この物語は深みがあって、心に残ります。
そしてフィクションとノンフィクションの
境を曖昧にするとこで、
戦争の愚かしさを浮き彫りに
したかったんじゃないでしょうか。
それに見つかるあてのない卵を
求める二人の探索は、
楽天的なコーリャの軽口とあいまって
少し現実ばなれした話のように
見えてしまいますが
それでも面白かったです。




卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.12:
(5pt)

笑いあり涙あり…

このミス関連でいろいろ読み漁って本書にたどりつきました。
本当におもしろかったです。すごいおすすめです!!!

読後の感想としては、
ユーモアとペーソスのコントラストがすばらしい。

笑いって難しいと思うのですが、本著はそこがすぐれているから、
こころを揺さぶられます。(いやほんと、ラスト号泣 (ノД`)・゜・。 )
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.11:
(5pt)

歴史小説の面白さを実感

あまり歴史や戦争に興味のないわたしでも楽しめました。
この作家さんはほんとページターナーですね。
読者をどうすれば、物語に夢中にさせることが
できるかを十二分に心得ています。
読んでいて最後まで飽きませんでした。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.10:
(5pt)

理不尽な青年期

2011年度の「このミス」3位を機に読んでみましたが読み応え十分。第二次大戦中にドイツがソビエトのレニングラード(現サンクトペテルブルグ)を包囲した戦いを背景に、17歳の少年から青年になる男が成長していく話。友情あり初恋ありのとてもよくできた話です。「このミス」に入っているのはナゾですが。

背景については2001年ジャン・ジャック・アノー監督の映画「スターリングラード」に描かれている通り(レニングラードの方が長く過酷な包囲戦だったのですが)。ソ連という国の思想と解離した硬直的な官僚組織とか、包囲されて餓死寸前の人々とか、「街」を愛する人間が戦争によって「国」に目覚めていくとか、ユダヤ人の描き方とか。しかしこの小説はまだまだ子供のような主人公が生死をかけて成長する過程が「卵を探す」という理不尽な軍人の命令とともに遂行されるというのがおもしろい。わけもわからず世界の中へと連れ去られていくような青年期を描くのには最適なのではないでしょうか。

作者は女優アマンダ・ピート(映画「2012」)の夫で、アメリカで主に映画の脚色をしているようですが、なるほどメリハリの利いた場面展開。映画にしてもおもしろそうですが。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.9:
(5pt)

才能がないことが分かっても、何かに打ち込むことは無駄じゃない

レニングラード包囲戦の時代的背景、市民の戦争被害、レフとコーリャの友情、兵士の死、など本書のメインテーマに関しては他のレビューにゆずり、私は印象に残ったエッセンスについて書きたいと思います。

主人公のレフの父親は、チェスの市チャンピョオンでレフは小さいころからチェス・クラブに通っていました。6歳のとき指導者に才能があるといわれて、ジュニアの上位選手としてレニングラード州のトーナメントに出場してはメダルを獲得していました。しかし、14歳にときに自分はいいプレイヤーであるが決して偉大なプレイヤーにはなれないと悟り競技から離れてしまいます。優れたプレイヤーは自分でもうまく説明できない方法で局面を理解して、思いつくままに局面を分析し自分が優位に立つすべを心得ているが、レフにはそうした直観力がなかったことを悟ったのでした。どんなに努力をしても仲間は手の届かない遥かかなたに行ってしまいました。

人は誰でも自分の能力の限界を思い知らされる瞬間が訪れます。それは日ごろ努力を重ねている人ほどその機会は多いと思います。努力をしていなければ自分の限界を知ることもないからです。そのときは人はどうするかということをそのとき考えてしまいました。そのときの年齢にもよりますが、いずれにしても大きな選択を迫られることと思います。しかも志の高い人ほどその決断はつらいものになるのだと思います。

終盤クライマックスでレフの経験が大きな役割を果たす複線となる場面なのですが、努力と才能、その努力が人生に及ぼす影響についてひとり大きくうなずいてしまった場面でした。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.8:
(5pt)

主人公二人のコンビはR2-D2とC-3PCの掛け合いを彷彿とさせ

さすがは人気の映画<ウルヴァリン>の脚色に携わったことのあるベニオフ、主人公2人の関係距離感に
「スター・ウオーズ」の人気コンビを取り込んだかと、勝手に感心している次第。(アーベントロートという<ダースベーダー>
も登場するし、ただし会話の多くが下ネタなのが、ひねりなのか...)
思わす二台のロボットが、とぼとぼと砂漠の惑星を(下ネタで盛り上がりながら)彷徨う姿を思い描いてしまった。
それほど映画的というか、読書していて情景、場面を思い浮かべられないということが皆無で、非常に
細部の<きっかり>とした、題名からはとても想像の付かぬ痛快なスリルに満ちたエンターテインメント冒険小説でした。
私的には満足の☆5.5。こんな本をまた、すぐ読めれば幸せなのだが...
この本がこれほどの面白本となったのは翻訳の貢献も大きいと思う。
読んでいて<おッ、とッ、とッ..>と突っかかる場面が全く無かった事がうれしい。
<ただ、P215 この時代レギンスてあったのか?どうでもいいか...>

話は全く違うのだが、「fallout」( とくに3)というTVゲームをご存知だろうか?
防核シェルター生まれの少年が、突如姿を消した父親をさがして、アメリカと中国の核戦争で壊滅したワシントンの街を
彷徨い冒険するという米国産PPG。生きぬく為には、悪人となり盗みもスリも働くし、必要とあらば恩人も殺す、奴隷商人と
取引もする、という私にとっては驚愕の18禁のゲームなのだが(ご存じなく、興味ある方は、そちらのレビューも読んで見ては...)
本書を読んでいて、崩壊しつつあるレニングラードを徘徊する<食人鬼>、少女を閉じ込める特別行動部隊の将校たち等の件にゲームとの類似性を感じた。
作者が映像業界人ということもあり、その辺りお互いに影響があったのでは、と勝手に想像したりして楽しんでいるのだが...
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4150018383
No.7:
(5pt)

物語る力

素晴らしい小説だ。

この小説の素晴らしさは、歴史的事実を下敷きにしつつも、どこまでも普遍的な物語を語るその語りの力にある。だから、コーリャが語る物語を祖父レフが語るのを作家のデビッド(作者と同名だが実際の祖父の話ではなくフィクションらしい)が語るのを読者が聞くという入れ子構造になっている。さらに言えば、レフの父親は言葉の力によって体制側に殺された詩人でもある。

物語が語るのは、実際の戦争の場、包囲されたレニングラード(思わず、遠い昔に読んだはずの、作者も勧めている「攻防900日」を再読したくなった)という特異な場所で起こりえたかもしれないが語られなかった、戦争の残酷さ滑稽さ、その中に生きる人々の逞しさであり、歴史に刻まれなくても恐らくどこかで確実に起こったはずの、人生の1コマなのである。フィクションかどうかは関係ない。歴史的真実など存在しないのだから、語られる物語こそが生きる力でなくて何だろう。だからコーリャは語り続けるし、言葉少なく実際にはあまり語っていなかったレフが当時頭の中で考え続けたことが、今作家デビッドの言葉を借りて我々に伝えられることになる。当然その作り自体はフィクションなのだが。

物語の背景については他のレビュアーの方も書いているので、題について少し書きたいと思う。原題("City of Thieves" 「盗人たちの街」)を知ってみると、言語の違いはどうしようもないとはいえ、最初は邦題に対して違和感を抱かずにはいられなかった。いかに日本語として座りが悪く、この題が読者の興味を惹く上手い題であっても、やはり印象は違うし、レニングラードについての物語という作者の意図もずれてしまうように思ったのだ。ただ、それからいろいろ考えてみると、どんなに優れた小説であろうと、読まれなければ全く意味はないわけで、そう考えれば、原題からズレようが興味深い題をつける気持ちもわからなくはないと思うようになった(歴史的匂いを感じさせてくれなければ、現に私自身読まなかったかもしれないし)。「卵」と聞いて即座にロシアを連想するのは、非常に単純にファベルジェのインペリアル・エッグが頭にあるからなのだろうが、とするとこの邦題は秀逸だと言ってもいいのだろう。作者の意図どうのこうのではなく、邦題の価値は日本人の我々にいかに情報を伝えるかというところにあるのだろうから。
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4150018383
No.6:
(5pt)

戦争の悲惨さ愚かさを痛烈に風刺し謳った、レフとコーリャの冒険物語

これまで油絵で独特の表紙を描いてきた勝呂忠氏が’10年3月15日に逝去されたのに伴い、伝統の「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」が新カバー、大きな活字でリニューアルされた。本書はその第1弾で、全米大絶賛という触れ込みの歴史エンターテインメントである。

時は第二次大戦下の1942年1月、ドイツ軍によって包囲されたレニングラードでは人々は窮乏と飢餓の極地にあった。当時17才だったレフは、夜間外出禁止令違反と略奪罪で逮捕される。即死刑のピンチにあった彼は、獄中で一緒になった脱走兵のコーリャと共に、秘密警察の大佐から、その命と引き換えに、娘の結婚式のウェディングケーキの材料として卵1ダースを5日以内に持ってこいという、人を喰ったような、笑うに笑えない極秘命令を受ける。かくしてふたりの、卵を求めての一大冒険が始まる。

「ヘイマーケットの人食い夫婦がすりつぶした人肉でソーセージを売っていた。住んでいたアパートが爆撃で跡形もなく崩壊した。犬が爆弾になっていた。凍りついた兵士の死体が立て看板になっていた。顔半分を失ったパルチザンが悲しい眼を殺人者に向けて、雪の上で体をゆらゆら揺らしていた。」極寒の、しかも敵軍に包囲されたロシアで、ふたりは困難を極めるが、そんな中にあっても下ネタと文学談義と恋愛指南といったふたりの掛け合いは限りなく明るい。

著者の祖父であるロシア系ユダヤ人移民レフの懐古談の体裁で綴られる本書は、臨場感に溢れており、レフとコーリャの笑いとペーソスに満ちた友情と冒険を物語のメインに据えながら、戦争の悲惨さと愚かさを痛烈に風刺し謳った傑作である。

卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
4150018383
No.5:
(4pt)

愚かな命令を実行する二人の物語があぶりだす戦争の愚かさ


 アメリカ人作家のデイヴィッドはソ連出身の祖父レフ・ベニオフの戦時中の体験談を取材する。
 1942年、レフはドイツ軍によって包囲されたレニングラードに暮らす17歳だった。略奪罪に問われて拘束された彼は、少し年上の脱走兵コーリャとともにある大佐から密命を果たすよう命じられる。娘の結婚式のケーキのために卵1ダースを今度の木曜までに調達せよと…。

 激しく愚かな戦争のさなかに、娘の結婚式のために卵を手に入れよという愚かな命令を実行する若者二人。その二人が卵探索の旅の途上で出会うのは、飢餓によってむしばまれた市民、戦争の犠牲となる犬、ドイツ兵の慰み者となる少女たち。二人の心が壊れてしまっても仕方ないような筆舌に尽くしがたい体験の数々が続きます。
 馬鹿馬鹿しさを通り越してどこか滑稽で仕方ない物語の進展と、決して避けて通れない戦争の厳しく無残な現実。主人公二人の間に交わされるのはあけすけな性にまつわる話と文学論。
 心の針が交互に両極へと振り切れる思いのする書です。

 最後にレフのもとをある人物が訪れるのですが、それはおおよそ予定調和的であって驚きや新鮮味を感じさせません。ですが、胸を引き絞る体験の連続の果てに、このエンディングはほんのりとした温もりをひとつ残すものとして、この物語にはやはり必要なものであったとも感じます。

 ただ、ロシア人もあきれると目をぐるっとまわすのでしょうか。あれはアメリカの女の子に特有の仕草かと思っていました。
卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)Amazon書評・レビュー:卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)より
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