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(短編集)
ブラウン神父の童心
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ブラウン神父の童心の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 1~20 1/2ページ
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「青い十字架」に登場したフランスの名刑事が2作目であっさり退場したのがすごく残念だった。この刑事とブラウン神父が、今後コンビを組んで事件に立ち向かうものだと決めてかかっていた。かわりに怪盗フランボウが足を洗って親友となる。「奇妙な足音」は、ブラウン神父が謎の足音から、その人物の行動を推理する話だが、江戸川乱歩の短編にそんなテイストのものがあったように思う。ブラウン神父は警察ではないので、謎は殺人事件ばかりではない。そこが面白い。次に「ブラウン神父の知恵」も読んでみたが、こちらの1作目のほうがはるかに良かった。 | ||||
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死ぬほど読みにくいです。翻訳が悪いのか、原文がそもそも難解なのかは分かりませんが。 ひどい時には、何が起きているのか、どういうストーリーなのか、そもそもストーリーが展開しているのか分からないうちに結末に至ります。 しかし、その発想とトリックは凄まじく、一見不合理であったり、意味不明な出来事の羅列としか思えない事件が、最後の最後ですべて筋の通った一本の論理の糸へと解き明かされる様は圧巻のひとこと。 全五巻、読破しましたが、我慢してでも読む価値があるストーリーばかりだと思います。 もし叶うなら、意訳ですらない「超訳」として、意味不明な箇所や冗長な描写を排して、分かり易いストーリーで新約をしてほしいものです。 | ||||
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日本語翻訳に批判的なレビューが目立ちますが、私はこの翻訳はよくできていると思います。 こんな翻訳ではだめだとおっしゃる方にぜひ伺いたいのですが、例えばこれをどう訳されますか? <Against this one fiery glass were glued the noses of many gutter-snipes, for the chocolates were all wrapped in those red and gold and green metallic colours which are almost better than chocolate itself; and the huge white wedding-cake in the window was somehow at once remote and satisfying, just as if the whole North Pole were good to eat.> (5. Invisible Man / 見えない人 より) この部分の翻訳には、本書よりもっと昔に、このようなものがありました。 <火の様な硝子に向って多くの浮浪少年等の鼻が釘づけにされるのであった。あらゆるチョコレートはチョコレートそれ自身よりも結構な赤や金色や緑色の色紙に包まれていた。そして飾窓の大きな白い婚礼菓子は見る人に何となく縁の遠いようにも見えまた自分に満足を与えるようにも見えた。ちょうど北極はすべて喰べるにいいように。>(直木三十五氏訳) この翻訳文は古い版の創元推理文庫でも使われていたと記憶していますが、どうですかね? わかりやすいですか? というかわかりますか? 「ちょうど北極はすべて喰べるにいいように。」 私は「????」でした。なので、原文をじっくり読んでみました。 私ならこう訳します。 <この燃えるように明るいウィンドウのガラスに大勢の浮浪児たちが鼻を押し付けていた。ともすると中身のチョコレートそのものよりも欲しくなりそうな赤や金や緑の銀紙、それに包まれたチョコレートがあるからだ。それに、そこに置かれているウェディングケーキの白くて大きなことときたら、まるで北極をまるごと食べていいようなもので、なんだか現実感がないのに満足感でいっぱいになるのだ。> (私の試訳) そして本書ではこう訳されています。 <この燃えるようなウィンドウ・ガラスには浮浪児たちの鼻が押しつけられていたが、それはチョコレートの赤、青、金の包装紙が中身よりもおいしそうに見えたからであり、ウィンドウに飾られた大きな純白のウェディング・ケーキは、北極全部が食べられるお菓子だとしたらそうなるように、とうてい手の届かないものでありながら、お腹のくちくなるまで堪能できそうな代物だったからである。> (本書 中村保男氏訳) 読み進める上での障害になる「北極」のくだり、私が「これくらいかな」と思った線より中村氏はさらに踏み込んで読みやすくなるように言葉を補っていることがわかるでしょう。 もう一つ例を上げると、これはどうでしょうか? <Certain of the great roads going north out of London continue far into the country a sort of attenuated and interrupted spectre of a street, with great gaps in the building, but preserving the line. > (7. The Wrong Shape / 狂った形 の冒頭) <ロンドンから北に向かう大通りには随分と田舎の方まで延びているものがある。建物の間隔が広がっても、消え入りそうに途切れそうになりながら続いている。通りの幽霊というところだ。>(私の試訳) <ロンドンから北に走る大路には、ずっと田舎の奥深くまでつづいているものがある。こういう道路は、町並みがまばらになり、とぎれがちになり、家々が間遠になっているのに、その道筋だけはいつまでも通っているという、いわば街頭の化物である。>(本書 中村保男氏訳) やはり後半の部分での中村氏の丁寧な仕事がわかると思います。もう意訳といってもおかしくないレベルまで補足しています。直訳だからわかりにくい? とんでもない、その逆です。 私も全部を読んだわけではありませんけれど、だいたいチェスタトンの文章は感覚的です。論文や新聞記事みたいにきちんきちんとした構文でもありません。「シャレ」も非常に多い。中村訳はそういうところを丹念に説明しています。それでもわかりにくいとしたら、それは原文の感覚的なところがにじみ出ているだけです。 | ||||
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いわゆる昔ながらの探偵小説が好きであるにもかかわらず、なぜか読んでいなかったブラウン神父です。 アガサ・クリスティもポワロやプロット則トリックといったところなど、影響を受けているのではないかと読みながら思いました。どの短編も面白く、冴えに冴えた推理小説です。チェスタトンの本を続けて読もうと思います。 | ||||
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ファンの人がおススメしていたのを見かけ、その熱量にほう?と思い読みましたが、面白かったですよ。 確かに描写が細か過ぎで読み進めにくい所もありましたが、読み飛ばして気になった所から読んでああなるほど、と慣れつつ読みました。 不器用だが筋が通っている神父が、一見侮られたり怪訝に思われたりしつつ、クリティカルな端的さで人や関係を見抜いて事態を明らかにするところは、ブラウンのおやっさん!やるなぁ…!と惚れ惚れしました。 昔の話なので、科学的に考えるとあり得なくね?という事もありましたが、まぁ置いといて。ポンポンと出てくるアイディアを短編に綴っていたのだろう作者の執筆の充実感を感じました。 文章が堅くて読みづらいかもな反面、それが「名言」になっている文章が至る所にあって、それを見つける度にハッとさせられました。 神父である、というのは浮世離れした宗教的精神世界に生きているかのようで、実は夜回り先生のように下々の人間のあらゆる混沌とした側面を見ざるを得ないからこそ、泥の底を知って光の方向を指すことが出来るのだ、というような深さがあり、読み応えがありました。 単にあいつが悪い事した犯人でこんなトリックでした、で終わるのではなく、そこに人生を捉える視点を持ち込んでくる。 そこに痺れる憧れる。 | ||||
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プロット(話の筋)をつかむのに一苦労します。 自分もそうでしたが、物語が動き出すまでに挫折する人が多いのではないかと思います。 謎解き(推理小説)が主体なのか、著者のおしゃべりが主体なのか、 その二者が混ざり合っているところが魅力なのかもしれません。 「青い十字架」は主人公の神父や名探偵ヴァランタンの紹介を兼ねていますが、 「秘密の庭」とのセットかもしれません。「秘密の庭」は変則的ですが かなり凝った密室殺人事件(超不可能犯罪)です。 「秘密の庭」は個人的には推理小説として頭がクラクラしてくる傑作だと思います。 カー(John Dickson Carr)やクイーンもびっくり… 「見えない男」も、女性につきまとう「透明人間現る…」と言う雰囲気で始まり、 最後は密室殺人事件です。数人が入り口のガードを固める中で大胆な犯行が行われますが、 誰も怪しい人物を見ていないと証言します。犯人も死体も消えてしまいますが、 カーの有名な名作短編に似ている部分もあります。 この短編もお決まりの事件が始まるまでの二人の会話を楽しめるかどうかが試されますが、 その反面、ラスト(謎解き)は極めてあっさりと終結します。 (人と人とのコミュニケーションについて考えさせられる短編でもあるようです。) 「神の鉄槌(てっつい)」、タイトルが難しいですが、 (私は漢字が読めなかった…) 有名なエピソードらしく(トリックも有名…)、新旧二つの(海外でのテレビ)ドラマ化がありました。 ぼんやりしているようで反面、鋭い洞察力と思考力というか、 神父のキャラクターや発言が面白いので、 あらすじを頭に入れてからでも、読み返す楽しみがあるシリーズだと思います。 高校生の頃は歯が立たなかったのが当然だった…と 今更ながら納得しております。 自分はKindleの英文がメインで本書は参考(確認)程度ですが、 翻訳は大変だと思います。 Two heads are better than oneだったか、「秘密の庭」と「見えない男」に 同じような表現があったようです。前者はシャレ(言葉遊び)になっていたようです。 | ||||
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この作品は、本はシリーズ全部所有していて若いころ何度も読み返したものですが、何十年かぶりに読み返してみたいと思い、Kindle版を改めて購入。新訳の方が文章が平易で読みやすいといえば読みやすいのですが、旧訳の難しい言い回しを頭をひねりながら読み進め、読み終わったときの充実感を懐かしく感じました。やっぱり年をとったのかな。 | ||||
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1911年刊行の短編集だが、謎解きの部分、キャラクターやストーリーは面白かった。でも、チェスタトンの文明批評や政治批評となると、如何せん百年前のイギリスの知識人のものなのでピンとこなかった。それに、物語の中で、ブラウン神父がこういう人間はこうと一方的に決めつけるところがあって、ちょっと不快だった。シャーロックホームズよりも後に出てきた推理小説なので、ミステリーの形式がすでに、『ブラウン神父』でできあがっていたんだなと思った。 | ||||
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小男で冴えない風貌…しかし何も見逃さない! 事件解決と共に犯罪者を救いに導くという特異なキャラの持ち主。 物語の仕掛けがウマイですわ。人の心理をよく突いてはりますね。 ただ、長編好きの私は短編集なんで読み応えに欠ける分が満点と はいかないところでして。 とにかくオモロイですよ。 | ||||
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たった一人の女、たった一人の友、そしてたった一つの思い出と一冊の書物、これらを手に入れるだけでも、懸命に生きなければ手にすることができない。――英国の作家、批評家、ギルバート・ケイス・チェスタートンの言葉である。 チェスタートンは、『ブラウン神父の童心』(ギルバート・ケイス・チェスタートン著、中村保男訳、創元推理文庫)などのブラウン神父・シリーズの推理小説で知られているが、独得の逆説と諧謔に満ちた多くの警句を残している。 例えば、「私の成功の秘訣は、敬意を持って最善のアドヴァイスを聞き、そのアドヴァイスの全く逆を行ったことである」、「解決策が分からないのではない。問題が分かっていないのだ」、「本を読みたいという熱心な人間と、読む本が欲しいという退屈した人間では、雲泥の差がある」などである。 これだけ山葵(わさび)の利いたアフォリズムをひねり出せる著者の手になる推理小説が、面白くないわけがない。 | ||||
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最初に読んだのは小5か小6のころ。面白くて、シリーズを毎月のお小遣いで1冊ずつ買い集めるはめになりました。 今でも全巻購入できるのはうれしい限りです。 本格推理と呼ばれるミステリの場合、いかに読者に小さな矛盾や不自然さを気にさせないようにするかが重要だと思います。 探偵役のキャラクターや適切なタイミングでの名台詞などのケレン味はそのためのものだと思うのですが、ブラウン神父ものではそれが特に生きていると思います。 逆説的といいながら現代ではさほどエキセントリックでない思考方法もそうだし、悪を知り尽くしている立場としてカトリック神父というのはうってつけに思えるし。箴言といってもいいけれど、よく聞くと普通のことを当たり前に言っているこの小さな神父は実に魅力的です。 本格推理のトリックにこだわる方には物足りないものもある作品集かもしれませんが、舞台裏のアラに目を向けるのはやめて、とりあえず1冊目で推理の点では粒ぞろいの本書を読んでみてください。 ブラウン師のケレンが気に入ったら、以降のシリーズも十分楽しめると思います。 | ||||
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高校生のときに入手して読もうとしましたが、 当時の私は、展開が把握しにくく、筋書きと無関係な部分が うっとおしく、魅力を十分に味わえなかったシリーズです。 ところが、数十年の歳月を経て、落ち着いた静かな心で 読み返してみると、「ブラウン神父の童心」一冊で、 他の推理小説の何冊分のも満足感、感動が味わえると納得しました。 私は最初の二つだけ(ネタバレにならない程度に)ご紹介 させていただきます。どちらも傑作。 「青い十字架」、ブラウン神父、怪盗フランボウ、 パリ警察の長官でもっとも有名な探偵ヴァランタインが初登場。 ヴァランタインも脱帽(本書41ページ)のブラウン神父の活躍をお楽しみください。 怪盗フランボウは後に悔い改めて、ブラウン神父の相棒役を つとめるようになるのが微笑ましいです。 ブラウン神父ものの選集、対訳本の冒頭に必ず収録されている「青い十字架」は 神父の自己紹介代わりですので、このお話を最初に読まれることをおすすめします。 「秘密の庭」、高い壁に囲まれ、入り口が一つしかなく、 しかも、入り口(出口)はいつも監視されていて、絶対に 勝手に出入り不可能という庭の中で、見ず知らずの男性が殺害される、 被害者はどうやって庭に入ったのか? そして犯人らしき人物は逃亡、どうやって庭から出たのか? しかし、最後のページで明かされる驚愕の真相! キツネ に つままれたような感覚、本の乱調か、誤植かと、読者は心の混乱する体験が味わえます。 --- 程度の差はありますが、一般的にどのお話も事件が起きるまでの、登場人物、状況把握が少しストレスです。 依頼人が訪ねてきて相談を始めるというようなワンパターンではなく、多様性に富んでいますので、 焦らないで楽しんでじっくりと読み進めると、後半から最後にかけて 報いが大きいです。密室物、消失物も多く、そのトリックの豊かさでは 右に出るものはないでしょう。 ブラウン神父がさりげなく登場するとホッとするというか、 神父のキャラクターは生き生きしていて魅力に富んでいます。 (状況設定が人工的な感じがすることもあると思います) カトリックの神父さんが主人公で、はしばしにそれらしい話題が自然に 提供され、宗教、心理学などに興味のある人には、これほどワクワクする推理小説はないと思います。 (もし、トリックだけに興味のある場合は、読み飛ばせばよいと思います) 本書とともに、「古書の呪い」が収録されている『ブラウン神父の醜聞』もおすすめさせていただきます。 フランボウといっしょに読者も推理を楽しめますが、ある程度は当たりますが、 私の場合は満点にはほど遠く…(神父に)翻弄されるというか、 (作者に)だまされる快感がくせになりそうです。 | ||||
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ブラウン神父物でも傑作が集中している短編集。 特に「秘密の庭」「見えない男」「折れた剣」は必読。しかし、必ず「青い十字架」からまず読むこと。そうしないと作者の仕掛けた大仕掛けを見逃すことになる。 中でも「折れた剣」は特に有名で、ブラウン神父とフランボウの問答は歴史に残る名問答(ブラウン神父の答えが、推理小説の全てを言い現していると言って過言ではない)。とかく探偵の引き立て役に甘んじがちの相棒だが、この問答を見る限り馬鹿じゃないことが知れる。ま、読者より、フランボウより、ブラウン神父が数枚上手なのだから仕方がない。 自分が原書まで買い求めたのは、チェスタトンとJ・D・カーの二人だけ。 とにかく読んで損はしないはず。オススメ。 | ||||
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フト読みたくなって今回再読しましたが、いやぁ〜面白いのなんのって。。ほんとに天地が ひっくり返るようなユーモアと奇抜あるトリックメーカーだよな〜チェスタトンはさ!!! いわゆる不可能犯罪を解明する時には、とことん論理に徹するか、もしくはフィーリングや 直感を澄ますかどっちかな訳だが、後者を好むタイプには本当に愉しい時間が過ごせる宝物 の様なストーリーが詰まってます。 個人的には特に『秘密の庭』、『見えない男』、『イズレイル・ガウの誉れ』なんかの、とこ とん不思議だけど、とことん単純って感じが大好きだ。 それに何と云ってもブラウン神父という人物は魅力的すぎる。。一見すれば間抜けのトンマ だが、常人とは違う角度で物事・人物を視るその態度は時に不気味とすら感じられる凄みが ある!それでいてやっぱりヌケテル...是非堪能してみて!!! | ||||
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奇抜な発想から生まれた推理小説からなる ブラウン神父譚の第一短編集です。 どれもが30ページ程度の小品ながら、 豊富なアイデアが盛り込まれています。 刊行されたのが1911年と、 100年近く前に書かれたものであるにも関わらず、 今読んでも斬新な物語で、 意表を突いた展開と結末が読者を魅了して止みません。 以下に本書収録の12編について、簡単なコメントを記します。 「青い十字架」ブラウン神父とともに、怪盗フランボウ初登場。 ふたりの行くところ、奇妙な事件が頻発するが・・・。 「秘密の庭」首切り死体の事件。意外な犯人。 「奇妙な足音」足音のみから神父は鮮やかな推理を展開。 「飛ぶ星」フランボウ、最後の犯罪の行方は。 「見えない男」心理的に見えない犯人の正体とは。人間の盲点を突いた作品。 「イズレイル・ガウの誉れ」奇妙な物であふれる城。頭のない死体の謎の解明が秀逸。 「狂った形」隅が切られた紙の謎。 「サラディン公の罪」中世さながらの決闘に仕組まれた罠。 「神の鉄槌」神の力を持った凶器とは。 「アポロの眼」エレベーター坑への女性墜落死事件。新興宗教対ブラウン神父。 「折れた剣」賢い人間はどこへ木の葉を隠すか?という問いが意外な事件の真相を導く。 「三つの兇器」ピストル、ナイフ、ロープは兇器ではない? 思いがけない使い方とは。 | ||||
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ずっと引っかかっていたことがあって、それは私が中学生だったとき、私を読書好きにさせた友人が最初に薦めた本の一つが「ブラウン神父」だった。結局それから読む機会がなく、あのチェスタトンが書いていることを比較的最近知って是非読まねばならぬと思い、今回38年の長い月日をこえて念願がかなった。 この作品ではブラウン神父とフランボウがコンビで出てくるのでコナン・ドイルのシャーロック・ホームズものと較べられるのだが、作品としてはシャーロック・ホームズの方が先なのでチェスタトンの方がスタイルをまねたとも受け取れる。しかし本国はもちろん日本でもシャーロック・ホームズの方が圧倒的に人気があるのでほとんど問題にならないだろう。日本では昭和30年代にこのブラウン神父ものをはじめとするチェスタトンの探偵小説が洪水のごとく続々と邦訳され一種のブームが生じたこともあって、比較的年配の方に知名度があるのではないかと思われる。 この本は1982年が初版だからその当時よりは訳がこなれていると思うが、それでもたとえば「サラディン公の罪」の中の「『なむさん!』とサラディン公爵は言って白い帽子を荒々しく頭にのせ」というところを読むと「なむさん」を国語辞典で引かなきゃわからないわけで、確かにこの原本が最初に出版されたのが1911年(明治44年)なのだから、文章の格調に時代性を考慮すれば訳としては間違っていないんだろうが、今の感覚では読みにくいと思う。 全部で12の作品が載ってるが、単にトリックのうまさをいうなら作品によって出来の良し悪しが目につくが、一つの物語としてならどれも読ませてくれる。「青い十字架」で神父が人間理性について語るところがあるが、原本が出版される2年前チェスタトンの代表作である「正統とは何か」が出版された。理性を軽視することはカトリックの正統に反することをちょっと披露している。 | ||||
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◆「青い十字架」 大怪盗・フランボウを追うパリ市警主任・ヴァランタン。 タイトルの「青い十字架」は、ブラウン神父が所持する実在のものであると同時に、 終盤、神父とフランボウが神学論争をした丘の上にある星空をも指しています。 そこで神父は、大宇宙のなかでの理性の限界を訴えるフランボウに対し、 全宇宙をあまねく照らす、理性と正義の普遍性を高らかに宣言するのです。 ◆「奇妙な足音」 ホテルの廊下で、足早な足音と落ち着いた足音が交互に繰り返される。 のちに、高価な銀器が盗まれたことが発覚するのだが…。 ◆「イズレイル・ガウの誉れ」 神秘的な伯爵の生死を調査しに来たブラウン神父たち。 城には、奇妙な状態にされた物が溢れていて…。 おどろおどろしく、陰惨な話かと思わせて、 結末であたたかな余韻に浸れる話。 話の核となる、伯爵と召使いのイズレイル・ガウの やり取りには、寓話的な機知とユーモアを覚えます。 | ||||
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一話目から誰もがアッとする展開。 それほど最近の作品では無いのに作者のオリジナリティーが新鮮。これを読んでからかれこれ10年位経ちますが、また読んでみたい作品です。 | ||||
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記念すべき「ブラウン神父」シリーズのデビュー作。神の奇蹟は信じるが、人の起こす奇跡は信じないブラウン神父が数々の逆説で難事件を解決する名シリーズ。目の前にある事実を、人が見ていない現実への皮肉が効いている。 「青い十字架」はブラウン神父のデビュー作であると共に、初期の相棒フランボウのデビュー作。いきなりの奇矯な行動で読む者を驚かす。「奇妙な足音」は陰惨な印象を受ける作品。「見えない男」は衆人環視の中で身代金を奪って行く犯人を描いた有名な作品。冒頭で述べた、「目の前にあるものが見えない」例の典型。「イズレイル・ガウの誉れ」は一見、支離滅裂な展開の中でブラウン神父の論理が光る。「折れた剣」は有名な問答「木の枝は何処に隠す ?」を含む秀作。 どの作品もアイデアが凝らされ、作品毎に陰影に富んでいる。鮮やかな逆説で読む者を楽しませる珠玉の短編集。 | ||||
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数年ぶりに「童心」を読み、はまりにはまって「醜聞」まで全巻そろえてしまいました。「童心」から「不信」までの2冊まではトリックの面白さで圧倒されてしまうのですが、トリックにやや新鮮味がなくなる3巻あたりから、俄然人間小説として面白みがでてきます。しょうこりもなく罪をおかす人間の最低の部分に常に正面から対峙し、理解し、許すブラウン神父様。なぜこの人にはそういうことができるのだろう?日本人仏教徒の私にはとても不思議な罪と許しのシステムを営々と作り上げたカトリック宗教と人間の関係。下世話な推理小説の形をとっているから生臭くなく素直に読むことができる宗教書。スピリチュアル流りの現代にこそ読みたいブラウン神父様です です。 | ||||
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