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ザ・スイッチ



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ザ・スイッチの評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt

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No.1:
(3pt)

まだまだ発展途上の作品

レナードの作品にはある一定のテーマパターンがあって、その1つには夫婦関係というものがある。『マイアミ欲望海岸』では既に夫婦という関係が失われた後で、その呪縛に縛られる未亡人が物語の中心だったが、外から見るには何不自由ないと思われる夫婦、家族の間は実は冷え切っていて、そこに非日常性、つまり事件が介入することで今まで知らなかった自分、もしくはかつてそうであった自分を取り戻す、というのが隠れたテーマになっている。
で、この『ザ・スイッチ』はまさにその典型。

不動産会社を経営して裕福ながらもその関係は冷え切ってしまっていた夫婦。その妻が前科者2人組に誘拐される。2人の悪党は巨額の身代金を要求するが、事態は思わぬ方向へ進む。

まあ、冷え切った夫婦の片方が誘拐され、巨額の身代金が要求された時に夫はどうするかという、非常に人間くさいところを上手く突いたところが面白い。今の日本人ならば案外同調するところがあるかもしれないが、個人主義の発達したアメリカ人ならではの展開というところか。
そしてこの事件をきっかけに妻も変わる。題名どおり「スイッチ」が入るが如く。身内しか解らない夫の秘密を暴き、逆に攻め側に転じるのだ。
こういう物語のツイストこそレナードの真骨頂。しかしまだこの作品では本領が発揮されていないように感じた。

本書に出てくる悪党オーディルとルイスは後のレナード作品にも登場する。この三文悪党がけっこう気に入ったらしいが、私自身はどうにもピンとこなかった。はったりばかりが強くて、一本芯が通っていない、いわゆる背骨の無い連中だなぁというのが漠然とした印象。レナード作品に登場する悪党には妙なこだわり、マニアックな趣味という物を備えていて、それがキャラクター造形に一役も二役も買っているのだが、この2人にはそれが希薄。
誘拐事件をこのように展開するレナードの妙には感心はしたが、キャラクターが弱かった。『キャット・チェイサー』の後、続けて読んだ2作があまり琴線に響かなかったので、このときの私の心には微妙な空気が流れていたのだった。

Tetchy
WHOKS60S

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