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八点鐘が鳴る時



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八点鐘が鳴る時の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

やきもきさせられるだけで、相性が悪い?

今回のマクリーンが題材にするのはスコットランド沖で暗躍する海賊たちと情報部員フィリップ・カルバートの戦いだ。但し極限状態の自然との闘いはなく、狡猾で悪賢い海賊一味たちに徒手空拳で一人の情報部員が戦いを挑むという、これまたアクション映画のような作品だ。

この主人公カルバートに襲いかかる危難はまず潜入した船で四方に敵を囲まれた状態から機転を利かせて逃れるところから始まり、消失した船を捜すために乗り込んだヘリコプターが海賊たちに撃ち落されて、これまた命からがら脱出、さらには相棒を船で亡くし、おまけに敵は世界有数の富豪で警官も含め町全体が彼の手先になっているという四面楚歌の状態。

さらにはヘリコプターに乗っては撃ち落され、命が1つでは到底足らないくらいの危難に見舞われる。

本書はいきなり主人公カルバートが銃を突き付けられるシーンから始まるが、映画のオープニングにしては申し分ないクライマックスシーンさながらの脱出劇が繰り広げられる。
しかしいきなり物語の渦中に放り込まれた読者は一体何のために主人公がこのような状況に追い込まれ、そしてなぜ主人公がそんな危険な船に潜入したのかがなかなか明らかにされないまま、物語は進む。
マクリーン作品をもう8冊目になるが、この小説作法にはなかなか慣れなく、しばらく据わり心地の悪さを強いられる。

この暗中模索の中、物語が進むのは非常に居心地が悪く、カルバートと伯父アーサーの行動原理が解らない為、感情移入も出来ず、また馴れないスコットランド沖を舞台にしていながら、略地図も付されていない為、主人公たちがどこをどう行っているのかまったく位置関係が解らなく、単に読み流すだけになってしまった。

また最後に怒涛の如く明かされるバックストーリーもあまりサプライズをもたらさなかった。なんせ物語の背景が解らないまま、渦中に追いやられているため、序盤から仕掛けられたカルバートと伯父アーサーの仕掛けも、単純に「へぇー」と感心するに留まってしまった。

『最後の国境線』以来、どうもこのなかなか物語の粗筋が見えぬままにいきなり話が進んでいくスタイルをマクリーンは取っているのだが、これが非常に私には相性が悪く、全く物語に没入できなくなっている。本書も含め『最後の国境線』、『恐怖の関門』、『黄金のランデブー』などガイドブックでは高評価の作品として挙げられているが、いまいち物語にのれないのだ。

あまり凝ったプロットは正直期待してはいない。『女王陛下のユリシーズ号』や『ナヴァロンの要塞』のように、明快かつ至極困難な目的に向かって満身創痍の状態で極限状態の中、任務に邁進し、その道中で挟まれる意外なエピソードを交える構成の作品が私にとってのマクリーン作品なのだろう。

しかしそのような先入観を持たず、まっさらな心で次作も手に取ることにしよう。免疫が出来ていればいいのだが。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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