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夢・出逢い・魔性



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夢・出逢い・魔性の評価: 7.00/10点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(7pt)

警察が捜査情報をダダ洩れするのはあまりに現実離れすぎるのだが

Vシリーズ4作目のテーマは夢。かつて結婚を約束した相手を交通事故でその女性の飼っていた愛犬と共に喪った放送会社のプロデューサ柳川の密室殺人事件がメインの謎である。

しかもその柳川は悪夢の中に出てくる女性に殺されたという実に不可解なシチュエーションである。その女性はかつて結婚を約束した女性で交通事故でその女性の愛犬と共に亡くしてしまう。しかしその女性が毎晩悪夢に登場しては自分を殺害し、さらには夢で登場する劇場に誘われ、実際にそこに行ってみると当の本人が踊っていることに驚愕するという非現実的な話が繰り広げられる。

また舞台がテレビ局というのも非日常的であり、一行が那古野を離れて東京で事件に携わるのも新味があり、なかなか面白い。彼らが宿泊するビジネスホテルの描写など何気ないところに妙にリアルな雰囲気があって、共感してしまう。

また彼らが訪れるN放送は駅が渋谷であることからNHKがモデルであるのは間違いなく、そこもかつて自分が訪れたことがあるだけに土地鑑や建物のイメージが出来たことでいつもより物語に没入できた。

しかし物語の展開にはかなり違和感を覚えた。特に事件に乗り出す警視庁の人間が紅子に色々と事件の内容を明かすことが実におかしい。紅子が人の警戒心を解く笑顔を武器に色々と話を聞くのだが、捜査上の秘密を素人にペラペラと話さないことは今では一般読者でも知っていることだろう。そこを作者は「紅子に対面すると男性は妙に素直になる傾向にある」と全く説得力のない答弁で逃げている。

更に事件の関係者であり最有力の容疑者である立花亜裕美が小鳥遊練無と共に車で建物から出るのを知っていながら見過ごしていることも実におかしい。普通ならば血眼になって2人の行方を捜すのではないか。そういう緊迫感が警察の口調からは感じられない。
この傾向はずっと続き、さらにエスカレートして紅子が望むままに事件関係者たちに逢わせたりと非現実的な昔の推理小説を読んでいるかのような錯覚を受ける。

それはそのまま踏襲され、警察一同集めての推理シーンまでもが演出されるのだが、その謎解きシーンはいつになく派手だ。なんとクイズ番組収録中に真相に辿り着いた紅子がそのまま犯人まで明かすのだ。そこから出演者、司会者、テレビスタッフ、そして刑事の前で紅子の推理が開陳される。

かつて川柳に「名探偵 みなを集めて さてと云い」というほど事件関係者を集めて推理を披露するのは本格ミステリでは定番なのだが、本書では実に聴衆の多い謎解きシーンとなった。番組出演者が32名だから、少なくとも50人近くはいることになる。またこのような場で推理を臆面もなく披露する紅子もらしいと云えば実にらしい。

しかし今回の物語は実にシンプルというか森氏にしては真っ当なミステリであった。小鳥遊練無が容疑者と失踪し、そしてそのために犯人に狙われるというツイストはあったものの、メインの殺人事件が本編の謎の中心であった構成は実に珍しい。なぜならば森ミステリではメインの事件よりもサブとなる謎の方に大きなサプライズがあるからだ。
例えば本書では保呂草の他に稲沢真澄という探偵が出てくる。このダブル探偵という設定ゆえに何かサプライズがあるのではないかと思っていたが、実に普通であった。いや実際は叙述トリックを色々仕掛けていたのだが、これに関しては後に述べよう。

そうそう、副産物として今回初めて瀬在丸紅子のイニシャルが明かされる。このシリーズがなぜVシリーズなのかが初めて明らかにされるのだ。

さて前述のとおり、本書には色々叙述トリックが仕掛けられていると書いたが、それは実に単純なものでいわゆる男女の錯覚である。小鳥遊練無という実に魅力的な女装趣味の男子が登場することでジェンダーの逆転がこのシリーズでは起きているのだが、それ以外にもこの性別の違いを利用した叙述トリックが本書では多い。

さて本書のタイトルは『封印再度 Who Inside』に次いで日本語と英語の読み方が同一のタイトルである。『夢・出逢い・魔性 You May Die In My Show』本書も同じく夢とショーで死ぬという趣向が一致しており、実に上手く感じるのだが、素直に『夢で逢いましょう』とした方が自然で作為を感じないと思うのだが。
しかしそれではいかにも普通であり、森氏独特の語感を味わえないため、やはり今の題名にした方がよかったのかもしれないのか。しかし『封印再度』とは異なり、あまりダブルミーニングの妙は本書では感じられなかった。確かに題名の通り夢とショーで殺されるという趣向は含まれているのだが、あまりインパクトがなかったように感じた。

しかし今回は阿漕荘メンバー東京出張編ということもあって紅子と犬猿の仲である祖父江七夏と元婚約者で刑事の林が登場しなかったこともあり、男女の痴情のもつれというドロドロした一面がなかったのがよかった。それ故に瀬在丸紅子、小鳥遊練無、香具山紫子、保呂草潤平たちの活躍に余計な騒音がなくて愉しめた。特に小鳥遊練無は大活躍である。ちなみに私の中の練無像は椿姫彩菜である。そして最後に美味しいところは瀬在丸紅子がかっさらっていく。
可哀想なのは香具山紫子だ。今回も三枚目に甘んじている。彼女が一番凡人であるがゆえにどうにか報われてほしいと思うのだが。

やはり西之園萌絵のいないシリーズの方が面白い。キャラもさらに魅力を増し、次を読むのが実に愉しみだ。


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Tetchy
WHOKS60S
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

夢で逢いましょう

いつもの森クオリティ。
ただ、犯人は分かりやすい。
及第点の7点。

かいん
AGLSXFF0
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

夢・出逢い・魔性の感想

シリーズ第4弾。テレビ局を舞台にした連続殺人。真相も驚けた。

ジャム
RXFFIEA1
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

Vシリーズの第4作目

タイトル「夢・出逢い・魔性」⇒「夢で逢いましょう」って捻りが足りないと思っていたが、「You May Die in My Show」というサブタイトルに驚いてしまった。

▼以下、ネタバレ感想

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izutti
N05IGXOE

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