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(短編集)

エラリー・クイーンの事件簿 2



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【この小説が収録されている参考書籍】
エラリー・クイーンの事件簿 2 (創元推理文庫 104-23)

エラリー・クイーンの事件簿 2の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

本格ミステリがしんどく感じた

ラジオドラマ用に書き下ろされた中編3編を収めた事件簿パート2。
最初の一編は「<生き残り(ラスト・マン)クラブ>の冒険」。
80ページ弱の必要最小限の情報と登場人物で構成された佳作。この作品が一番最初に読んだクイーン作品ならば評価は高かったろう。それだけの完成度。

続く「殺された百万長者の冒険」は以前ハヤカワ・ミステリ文庫で読んだ『大富豪殺人事件』と同じもの。つまり再読となる。
しかし再読と云いながら全く内容を覚えていなかった。従ってミステリとしては小粒だったのだろう。確かに再読の今もその感は否めない。
百万長者のピーター・ジョーダンのアパートの中だけで完結するストーリーに限られた登場人物。そんな中で意外な動機を考えるとおのずと犯人は解ってくる。

最後の1編は本書の約半分を占める中編「完全犯罪」。
題名は完全犯罪だが、いわゆる読者が想像する完全犯罪とはちょっと趣が異なっている。
通常完全犯罪とは自殺としか思えない状況なのに他殺であった。しかしそれを証明する証拠が見つからないというものを想像するが、本作は誰がどのように行ったかを延々語る。
容疑者は被害者にいい感情を持たないレイモンド・ガーテンとウォルター・マシューズの2人。犯行当時の見取り図に弾道まで書いて、その捜査の様子は『CSI』のようだ。しかしこれを小説でやると何ともまあ複雑。全てを理解するには難く、途中で字面を追うだけになってしまった。そしてそれらの推理を開陳された上で明かされる真相はその部分をすっ飛ばしても解るものだった。事件が小粒の上にただ単純に長かったという印象の作品。


東京創元社が独自に編んだエラリー・クイーンの作品集。このうち『~事件簿1』は現在でも入手可能なのに、こちらはなぜか絶版状態。従って本書は図書館で借りて読んだ。
3編中2編目の「殺された百万長者の冒険」はハヤカワ・ミステリ文庫で『大富豪殺人事件』で既読。他の2編は初読だが、なんといっても収穫は1編目の「<生き残りクラブ>の冒険」。
戦争で撃沈されたある戦艦の生き残りの子孫たちで構成されたクラブという設定も本格ミステリの特異性が光るし、彼らが生き残ることで得られる報酬のために次々に死んでいくという設定もミステリアス。
明かされた真相はツイストが効いてて、読み終わったときは実にクイーンらしいと感じる趣向に満ちている。これが読めただけでも収穫だ。

残りの1編「完全犯罪」は殺人現場の状況と銃声が起きた時間との相関関係への考察が複雑で理解に苦しんだ。このような室内での弾道の解明などは文章よりも『CSI』のような映像の方が一目瞭然で解りやすい。
もうこのような緻密な推理物は読むのがしんどくなってきてしまった。複雑なロジックの解明ではなく、こんなところにミステリの興趣を求めてくるなんて、年を取ったのかもしれない。

読後の感想は上の星評価となるが、だからといって借り物でよかったとは思わない。やはり本は自分で買って読み、いつまでも手元に置いていたいという気持ちは変わらない。
作品の出来栄えとしてはいささか物足りなかったが、内容的に絶版にする意味があるようには思えないので(評価が低いという点はあるが)、復刊フェアの一冊として近い将来本書がリストに載ることを期待しよう。


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Tetchy
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