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最後の女



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【この小説が収録されている参考書籍】
最後の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-3)

最後の女の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

腐ってもクイーン!

クイーンシリーズとしては最後から二番目の長編となる本書。
なんとその舞台はライツヴィル。そして本書は『顔』で語られたグローリー・ギルド事件の続きから始まる。つまり本書はエラリイ・クイーン自身が書いた作品だ。

『真鍮の家』でリチャード・クイーンはジェシイ・シャーウッドと結婚したが、本書ではそれは無かったことになっているらしい。同書の事件を飛び越して『顔』の事件の後、しかもエラリイの復調のためにクイーン警視はライツヴィルの保養所にて一緒に過ごす。しかもそれについて妻に断りを入れる云々の件はない。その後自宅に戻ってもジェシイの影など少しも見かけられない。確かにあの作品はエイブラハム・デイヴィッドスンの手になる物だからそれも致し方ないのだろう。

従って本書でのクイーン警視は案外俗物っぽい。エラリイを裸映画(ポルノ?)に誘ったり、ジョニー・Bの遺産相続人のレスリーに対して「あと30年若かったら…」などとのたまう。長い間やもめ暮らしをしていた老人の悲哀を感じる。

また本書ではノンシリーズの『ガラスの村』の舞台となった<シンの辻>が意外と近くにあることが明かされる。事件の舞台となったジョニー・Bの別荘はライツヴィルと<シンの辻>の間に位置するのだ。

そんな物語の中心人物は何度も結婚を繰り返すジョニー・B。父親の莫大な遺産で何不自由なく暮らし、毎月世界中のどこかのイベントに参加する自由人。
そんな彼だから結婚に縛られるような人物ではないと思っていたが、実は信託財産で年間30万ドルが支給されるようになっているが、それでは彼の生活では足らないので遺言状にある「私の息子ジョンが結婚した時には500万ドル与える」というのを「私の息子ジョンが結婚する時にはいつも500万ドル与える」と読み替え、それが故に結婚、離婚を繰り返すことになったという仕組みだった。

しかしそんな暮らしに終わりを告げる予定だった第4の妻ローラの存在を探し、またジョニー・Bを殺害した犯人を見つけるのが本書の謎。

3人の元妻たちに囲まれた中でそれら元妻には遺産は相続しないと宣言したその夜に起きた殺人事件。こんなシチュエーションであれば必然的に犯人はその3人に絞られてくる。そんな中に不協和音を奏でるのが前日に紛失した3人の女性たちのそれぞれの持ち物であったイヴニング・ドレスに緑のかつら、そして手袋。

それらが見事に論理的に解明されるラストは実に鮮やか。たった1つの解で全てがピタリと収まるべきところに収まる鮮やかな手際にやはり本家クイーンは凄いと唸らされた。
まさに長年の沈黙を破る会心の一作だ。

正直に云えばクイーン全盛期の作品と比べれば地味な物語でありサプライズの度合い、地味な物語などやや落ちるのは否めないものの、他作家のクイーン名義を読んだ後ではこの作品がやけに眩しく感じてしまう。
そういった意味でちょっと甘めに8ツ星としたい。


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Tetchy
WHOKS60S

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