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中途の家



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中途の家の評価: 6.00/10点 レビュー 2件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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No.1:
(4pt)

エラリー・クイーン全シリーズの中途の作品

非国名シリーズ第1作(?)。
前作『スペイン岬の秘密』で完結した国名シリーズから脱却した作品だが、本書のまえがきで作者自身が述懐しているように、本書はつけようと思えば『スウェーデン燐寸の謎』とつける事も出来たという。確かに本作ではマッチが重要なキーとなり、謎解きに大いに寄与するから、それでも良かったのだが、作者としてはやはり前作で区切りを付けたのだろう。

片や美しい妻を持ちつつも行商人として安物の品々を売る生活、一方で名家の婿になりながらも、相手は年増の性格のきつい女性という二重生活を送っていた被害者。しかしこういった設定にありがちな、周囲の人間関係を探る事で浮かび上がるこの被害者像は不思議な事に立ち昇らなく、犯人捜しに終始しているのが実にクイーンらしい。

そして今回では容疑者は早々に逮捕され、クイーン作品では初めてとなる法廷劇へとなだれ込む。

今までクイーンの作品では現場に残された指紋、血液、唾液といった証拠の類いが一切無視され、遺留品の数々と被害者の奇妙な姿などを基にロジックを組み立てて犯人を究明する趣向が繰り返されていたため、この法廷劇というスタイルは全く合わないだろうと思っていたが、指紋に対する調査結果を基にした証人喚問も成され、一応体裁は整っている。
つまり本作ではロジックゲームの場を現場から法廷へ移したのがクイーンの狙いだと云えるだろう(それでもエラリーは手袋もせず警察が来る前に現場を調査したりするのだが)。

面白いと思ったのは、今まで警部の息子という特権を大いに利用して興味本位で事件に携わっていたエラリーが本作で初めて他者からの依頼で事件の捜査に乗り出す点。今回エラリーは被害者が100万ドルという破格の保険金を掛けていたことで、保険会社からこれが保険金目当ての殺人事件か否かを探るよう要請される。趣味としての探偵でなく、仕事としての探偵に携わるのが新しい。
まあ、恐らくこの理由がなくともエラリーは自分の旧友が事件に関わっているというだけで自ら事件解明に乗り出すのだろうけれど、この辺の新機軸は当時チャンドラーやハメットに「リアリティがない」と揶揄されていた事に対する作者クイーンなりの配慮かなと思ったりもした。

本書でも“読者への挑戦状”は挿入されており、私も一応犯人を想定したがやはり当らなかった。
しかしなんともアンフェアな感じが漂う真相だ。

理詰めで犯人が突き詰められていくが、やはり大前提を無視したロジックはなんとも頭に染み込んでこない。事件自体も一人二役の生活を送っていた被害者という設定の面白さの割にはシンプルであり、全体として小粒である。
本書の舞台である「中途の家」同様、クイーン作品体系の中休みとも云うべき作品なのかもしれない。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
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