魔術師(イリュージョニスト)
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初版刊行(参考)
種別
長編
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63回
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あらすじ
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評判
魔術師(イリュージョニスト)の評価:
7.40/10点 レビュー 5件。 A ランク
魔術師(イリュージョニスト)の総合評価:
8.31/10点 レビュー 75件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1〜4 1/1ページ
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リンカーン・ライムシリーズ第5作の本書はシリーズの中でも1,2を争う傑作だという下馬評が書評家のみならずネット読書家からも漏れ聞えて来ていたのでものすごい期待値が高い状態で読み始めた。
今回の敵は題名どおり“魔術師”。英語ではイリュージョニストと呼ばれているが、日本では手品師というのが一般的だろう。
しかし早変わり、クロースアップマジック、読心術、腹話術、動物のトリックにピッキング、さらには脱出マジックなどの細かで繊細な物から大掛かりな物まで全てをこなすオールマイティのマジシャンだ。
とにかく今までと違うのは犯人である魔術師ことマレリックが殺害の途中に警官たちに囲まれてしまうところだ。それにもかかわらず逮捕の寸前まで行きながらも逃れてしまうのだ。この顛末が非常にスリリング。
手錠を掛けようとすればフラッシュコットンを使って閃光で目眩ましをして逃れたり、腹話術や目線などで気を逸らせたりと、マジックの手法を巧みに利用して捕まらないのだ。さらには手錠を掛けても脱出トリックで解錠技術に長けたマレリックにしてみれば一瞬に解除出来てしまうからすぐに逃れてしまう。まさに最強の殺人犯なのだ。
毎回その作品でスゴイ!と唸らされる連続殺人鬼を生み出すディーヴァーだが、今回も今までの作品の更に上に行く犯人を送り出してきた。いやはやホントこの作家のアイデアの豊富さには畏れ入る。
原題は“The Vanished Man”。「消された男」だ。つまり見事に他人になりきることでその存在自体を消し去る男のことを云っている。まさに変幻自在の殺人鬼「魔術師」に相応しいタイトルだ。
この魔術師に絡めてカルト集団「愛国同盟」の指導者アンドリュー・コンスタブルの手下によるチャールズ・グレイディ検事補の暗殺計画が並行して語られる。
この2つの事件はやがて複雑に絡み合うのだが、とにかく二転三転するストーリー展開に読者は何が真意なのか、そして誰が魔術師なのか疑心暗鬼に陥ってしまう。
しかしよくよく考えると今回もディーヴァーが創案した魔術師は実は日本のミステリ読者ならば誰もが一度は読んだことがある古典的な名シリーズを思い浮かべるだろう。そう、江戸川乱歩の『怪人二十面相』シリーズだ。
しかし西洋人であるディーヴァーならばやはりここは同じく変装の名人怪盗ルパンがモチーフであるのだろう。つまりディーヴァーは古くからある物語を現代のマジシャンの最新技術とライムの鑑識技術と装置とを使うことで新たなエンタテインメントを紡ぎだしているのだ。
まさに古き器に新しき酒を注いで現代に新たな本格ミステリを生み出すこのディーヴァーの着想の冴えにはただただ感服するばかりだ。
今までのシリーズと違うところはライムが何度も魔術師と対面するところだ。その都度ライムは推理を開陳し、戦いを挑む。しかし魔術師はその名の如く逮捕されるたびに誤導や手錠解錠、偽造死などマジックの技法を使って巧みに脱出を繰り返す。
さらに興味深かったのは魔術師が以前火を使ったイリュージョンの失敗で重度の火傷を負い、かつ妻を失った過去を持つことだ。それは捜査で事故に遭い、四肢麻痺に陥ったライムと似た者同士だということだ。
しかし一方は犯罪に走り、一方は正義の道に戻ったこの二人の対照が物語の陰と陽を象徴しており、なかなか考えさせられた。
また今回も他の作品からのカメオ出演があった。パーカー・キンケイド。『悪魔の涙』で主役を務めた文書検査士だ。この辺の演出はディーヴァーの他作品への売り上げを上げるためのコマーシャルなのだろうか。
しかしこれまでの作品の中で最高のどんでん返し度を誇ると著者が豪語した割には読めてしまったというのが正直な感想だ。つまり読者として作者の手筋が見えてきたのだろう。
ちょっと過剰にサーヴィスしすぎた感が無きにしも非ずだ。この辺は哀しいかな、シリーズのマンネリ化を防ぐが故に生じた弊害だろう。
逆にもっと意外なところで不意打ちを食らいたいものだ。そう、作者の企みに満ちた微笑が行間から見えるような不意打ちを。
個人的にはライムシリーズを映像化したような『CSI』シリーズや『ミッション:インポッシブル』などのドラマや映画に触れている小ネタにニヤリとしてしまった。これら実在のドラマや映画に触れるということは逆に作者自身も対抗意識を燃やしているという表れなのだろう。
期待値が高かったせいもあって、10ツ星献上というほどのサプライズは感じなかったが、サプライズよりも今回は魔術師とライムら捜査側の騙し合いの攻防が非常にスリリングで面白かった。
まだまだネタは尽きないディーヴァー。次も読むのが愉しみだ。
▼以下、ネタバレ感想