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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数347件
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ミッシングリンク殺人(未遂)が題材かと思えば密室消失ネタなどが出てきて、かといって本格かと言えば、バイオレンスな作風はハードボイルド寄り?
随所の笑えるようで笑えない展開はブラックユーモアというよりは、むしろそれと真逆の一見ユーモアに見える重い展開であったり……とにかく特定のジャンルのくくりで説明できない、この作者だけの世界が広がっていた作品です。 個人的な感想を一言で言うと、ミステリ作品の皮をかぶった「こういう独自の作品」でした。 この独特な空気と文章は、合う人はスラスラ流れるように一気読みでしょうし、合わない人は拒否反応を示すでしょうね。全編通して直接事件とは関係ない部分含め、暴力、暴力&暴力なので、この辺も爽快感を得る人と、嫌悪感を催す人が分かれるのではないかと思います。 自分としては合うのか合わないのかよくわからなかったというか、ある部分では合ったしある部分では合わなかったと感じたので、間を取ったような点数になりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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龍の彫像のある中庭を縁側状の廊下が囲むようにして多数の部屋が連なるという、特殊構造の元・旅館、「龍臥亭」を舞台に繰り広げられる連続殺人事件。
館ものの超長編『暗黒館』『人狼城』には流石に及ばぬものの、それらに準ずるぐらいの分量を持つ大作です。 横溝御代の有名作『八つ墓村』同様、有名な「津山30人殺し」がモチーフとして扱われていますが、この作品に関してはもはやモチーフというよりは、事実上あの事件そのものを取り扱った社会派ミステリの側面もあるかもしれません。 (事実作者の島田氏は実在のあの事件を正しい形で知ってほしいという主張をあとがきでもされています) そしてこの作品の最大の特徴は『御手洗潔シリーズ』でありながら、御手洗潔は外国におり、最後まで登場せず、事件の渦中にいるワトソンくん役の石岡くんに対して一度だけ、短いごく簡単なヒントと激励の手紙を送るだけという完全に石岡が主役であり探偵役という物語です。 次々と人が殺され、そのたびに謎が増えていく事件に、読者も石岡本人も「こんなの御手洗じゃなきゃ無理だろ~」と思ってしまう中、それでも手紙の御手洗の言葉を契機として、少しずつ石岡は自覚と自信が芽生えていきます。 普段は頼りない石岡和己というキャラをみんなが見直すことになると同時に、手紙の中の言葉だけでも御手洗潔というキャラの存在感と影響力の大きさを改めて感じる一作です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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リアル人狼ゲームシリーズの第三弾です。
第一作、第二作との直接的なストーリーの繋がりはありませんが、複雑化するルールの把握のためにも前二作を読んでから読むのが推奨されます。 今回はさらに配役が増え、「村人」でも「人狼」でもない、第三の立場である「狐」が登場します。 「狐」はたった一人の勢力で村人に紛れ、夜に「人狼」に襲われても死なないけれど、「村人」の役職の一つである「預言者」の調べられると死んでしまい、自身が預言者に調べられる前に、「村人」「人狼」どちらかが全滅した場合一人勝ちという特殊な立ち居地です。 しかし今作で主人公となる「狐」を割り振られた少女は一緒にゲームに参加している一人の少年に一方的に強い愛情を抱き、なんとか彼と生き残りたいと考えます。 一方で「人狼」側は本来「人狼」同士はお互いの正体を知り、協力してゲームを進めているのに対し、「人狼」のうちの一人が名乗りでないという、異例の状況で ゲームは進行していき、物語は「狐」パートと「人狼」パートが同時平行で進んでいきます。 前作とも前々作とも異なる切り口で物語を進めているのは面白いのですが、正直ルールの複雑化に読者以前に作者もやや持て余し気味感を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから想像出来るとおりクローズドサークルものですが、この作品(シリーズ)の最大の特徴は「猫が主人公」なことです。
猫が探偵と言えば『三毛猫ホームズ』シリーズが有名ですが、この作品の場合はあの夏目漱石の『我輩は猫である』のように「猫視点」で人間の世界を見て事件の真相に迫ります。 猫が人間と会話したり細かい意思疎通を取れるわけではない一方、猫同士では人間レベルの会話をしていたりする荒唐無稽な設定であるのですが、随所に作者の猫好きが伝わってくる「猫あるある」ネタなどが盛り込まれ、猫好きの人は楽しめるのではないでしょうか。 (ちなみに自分は犬派ですが、犬も出てきますよ!) そのような特徴が面白い作品ではありますが、肝心の本格ミステリとしての内容は「普通」かな、という感想です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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乱歩御代の短編の中でも有名かつミステリ色の強い一作。
まず「屋根裏の殺人鬼」とか「屋根裏の犯罪」などではなく「散歩者」というタイトルにセンスを感じますね。 とにかく何をやってもつまらない、人生を退屈している男がとうとう見つけた楽しみ……という犯人目線の倒叙ミステリです。 やってることは本当に酷いんですが、なぜか感情移入してしまう犯人でした。 明智小五郎も登場しますが、後の私立探偵として有名な完全無欠のヒーロー的なキャラクターではなく、『D坂の殺人事件』同様、正義感ではなく単純に好奇心から事件の真相を探る変わった男という位置づけです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから想像できる通り密室トリックで有名な古典ですね。
二人の探偵による推理対決、という要素も当時としては前衛的だったのではないでしょうか。 しかし、100年以上前の作品ということで、今読んだら読みにくい、つまらないを覚悟し、トリックもあくまで「当時としては」画期的だったんだろうとあまり期待はせずに読みました。 案の定今読むと正直退屈で、国産ミステリを読むのに比べ、同じページ数で2,3倍時間がかかった気がします。 翻訳が悪い……という感じはあまりしませんでした。むしろ頑張っていたんじゃないかと。 どうも探偵役のルールタビーユが好きになれませんでした。 というか作者がわざと反感買うようなキャラにしてませんか?と言いたくなる言動に感じました。 結局タイトルの「黄色」の意味も特にないのも肩透かしでした。 総合して「100年前なら名作だった」加えて「それ抜きにしても自分好みでなかった」という感想です。 続編もあるようですが、それは正直パスですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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誰が彼もが腹に一物持っている資産家一族という、ミステリ定番の誰が殺されてもおかしくなさそうな一家が、女主人の誕生パーティに他人の人生を弄ぶ悪趣味な余興をするという、さらに自分たちで殺されそうな状況を作り出し、所謂「死亡フラグの乱立」をしながら中々誰も死なない…
ちょっとあらすじを説明するのは難しいですが、一言で表すと三谷幸喜氏あたりが脚本を書いていそうなドタバタブラックコメディ調のミステリーです。 この短いページでこれだけの登場人物が登場する話を見事に纏めてしまえるのはさすが赤川氏です。 とにかく登場人物がクズばかりですが、中でもやはり話の中心になる女主人の老婆がいいキャラしていて、性格の悪さもここまで来ると清清しくて逆に好感が持てるというレベルでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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90年代に絶大な人気を誇り、ティーン層を中心にミステリの普及に大きく貢献した『金田一少年の事件簿シリーズ』のノベライズ版第一弾。
原作漫画の第一話の舞台である、孤島のホテル「オペラ座館」を再び訪れた金田一一たちが、そこで再び連続殺人事件に遭遇するという内容ですが、漫画版第一話の謎解き部分のネタバレがあったり、予備知識が特に必要という内容ではないです。 しかしオーナーの顔の傷や、娘の墓など、漫画では結局明かされなかった謎がこの作品で明らかになるので、原作ファンはその辺りも注目ですね。 ミステリ作品としてはお世辞にもレベルが高いとは言えません。 この本は原作者の天樹征丸氏がまだ小説自体を書き慣れていなかったということもあり、まず文章が拙いですし、犯人の正体もトリックもある程度ミステリを読んでいる人間には、もうほぼ全てが容易に予想がつく内容です。 ミステリファンに今更勧められるという作品でははっきり言ってありません。 仮にこの内容を無名の作家がオリジナルキャラクターで書いてどこかの賞に応募しても、一次選考通るかどうかだと思います。 ただ、ミステリとしては基本の基本を押さえていることもあり、まさに原作の『金田一少年シリーズ』などの推理漫画で、ミステリに興味を持ってくれた小学校高学年~中学生ぐらいの子供の推理小説への橋渡しには十分その役割を果たしてくれる(た)、作品ではないかなと感じました。 本を読み慣れた人ならおそらく2時間とかからず読める文章量なので、手軽に「クローズドサークル連続殺人もの」を読みたいという人にもおすすめできるかもしれません。 ただ良くも悪くもジュブナイルに毛の生えた程度の内容にも関わらず、やたら性的な描写を入れるのは止めてほしかったですね。 生々しい動機については物語の核心に影響するので仕方ないですが、嬉しくもない無駄なお色気シーンや、一がコンドームを持っているシーンとかは、まさに薄っぺらな「子供騙し」感を覚えてしまいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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「フリークス」=異形・奇形などを指す単語ですが、この作品は決して比喩ではなく、タイトルどおりそんなフリークスたちが多数出演するお話。
著者である綾辻氏の処女作を含めた、三つの短編(中編?)で構成されています。 個々の話に繋がりは無いですが、精神病棟の患者の記録という共通の形式がとられており、まさに心も身体も異形となった人々の物語です…… いずれも読後感が良いとは言えず、グロ要素も強めの悪趣味な話で賛否両論ありそうですが、私は三作とも好きですね。 ホラーと本格要素が絡み合い、叙述トリックまで仕組まれているまさに「綾辻行人」という作家の魅力が凝縮されている一冊だと感じました。 以下、個別ネタバレ感想です ▼以下、ネタバレ感想 |
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・作中人物が構想を語る「AがBに殺され、BがCに殺され、CがDに殺され、最後にDがAの生前仕掛けたトリックによって殺され、4つの密室殺人が起こる」という筋書きの推理小説。
・その小説の構想どおりに実際に次々起こる殺人を、まさに「読者目線」で、事件を他人事のように好き勝手に推理していく素人探偵たち ・今日に至るまで、推理小説の定番のアンチテーゼとなるような作中人物のとある主張 作中作、ミステリ議論、読者に訴えるようなメタな台詞……とあらゆる意味でアンチミステリ的な題材、作風であり『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』と並ぶ三大奇書と呼ばれている作品ですが、その2作に比べればいい意味で普通のミステリだと思いました。 おそらく発表当時は極めて画期的、前衛的な作品だったのでしょうが、今はそれこそこの作品の影響を受けて似たような手法、題材を使った作品が増えているため、そこまで奇抜な作品とは映らないのでしょうかね。 読みやすさという点でも三大奇書の中ではこれが圧倒的に読みやすいので(他2作が読みにくすぎとも言えるのだけれど)初心者向き、とまでは言えませんが、ミステリ好きを公言できるぐらいの、中級者を自称する段階になったら読んだ方がいいのかなと感じました。 個人的には「奇書」というよりは普通に「名作」「大作」と呼ぶべき作品ですね。 結構な分量の作品ではありますが、それに見合った内容の濃さなので、冗長さなどは感じませんでした。 非常にたくさんの密室殺人とトリックが登場し、一つ一つは今見ると大したものではない(当時にしても既存の名作などの焼き直し?)ですが密室トリック好きにはそれだけでお腹いっぱいになれる作品でもありますね。 どうでもいいことですが、主要登場人物の中で最年少とはいえ、もう高校を卒業する年齢の男性が、他者から徹底的に、地の文でまで「藍ちゃん」呼ばわりされるのはちょっと違和感を覚えるのですが、この時代の小説ではよくあることなのでしょうか? ▼以下、ネタバレ感想 |
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東野圭吾氏の最初期の作品です。
この時代から長編にしてはコンパクトな分量で読みやすさは抜群な作風は健在です。 その多くはないページ数の中で、雪の山荘での密室殺人という定番の本格ミステリシチュエーションに加え、暗号解読・宝探し要素も加わるなど中々豪華な内容になっています。 ただ全ての要素が正直中途半端といった感じで、密室トリックも暗号解読も既存の作品のアイディアのあまり上手くは無い流用という印象でした。 また見出しの通り、「雪の山荘」+「マザーグース」などという題材は抜群にワクワクさせてくれるものだったのに、自分の好みのクローズドサークルでも見立て殺人でもなかったというのが、個人的にはガッカリでした。 登場人物もみんなあまりキャラが立っていないわりに、マイナスイメージだけははっきり伝わってくる感じでなんかちょっと嫌でしたね。 総合して、駆け出し時代の作品としては及第点という感想でしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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有名なゴシックホラーの短編。
主人公が自らの犯した犯罪からその罪の露見までの独白するという形式はある意味「倒叙ミステリ」の走りとも言えるのでしょうか? 猫に心理的にも物理的にも追い詰められる形になる主人公の恐怖に感情移入すべき小説なのかもしれませんが、正直完全に主人公の因果応報(というかそもそもキチガイ)なので、猫は怖いというより可哀想だし、ラストはむしろ「よくやった」って感じですね。 |
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第二次世界大戦直後、1940年代後半のニューヨークで発生した連続絞殺事件。
犠牲者の数が増えると、絞殺犯にはやがて新聞紙上で、被害者を殺害した絹紐を尻尾に見立てた<猫>という異名がつけられた。 被害者はニューヨーク市民であること以外は年齢、性別、人種、職業、素行全てがバラバラで共通点が見えず、無差別に行われる連続殺人にニューヨーク全土は絞殺魔<猫>の恐怖に包まれる…… 一見異常者による動機なき無差別殺人だが、その裏に犯人の真の動機や意図があるはず…… というホワイダニットな作風はクリスティの『ABC殺人事件』を意識し、挑戦しているような所がうかがえました。 (実際『ABC事件』の根底に関わる部分のネタバレに近い台詞もあるので、未読の方は先にそちらを読むべきだと思います) しかしもちろん真相は全く違った形が用意されていました。 連続殺人犯<猫>に対する、ニューヨーク市民の恐怖によって発生するさらなる問題や、 名探偵という存在があるがゆえ、殺人をはじめとする悲劇が起こる、所謂「後期クイーン問題」に対する、クイーンの苦悩が描かれるなど、見所の多い作品です。 完成度も高く感じ、楽しく読めました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「甲賀」と「伊賀」。
2つの忍びの里から各十人ずつ、超人的な忍の術、技を身に着けた総勢二十名の忍者たちが殺し合いを行うという、現在では漫画やラノベなどでメジャーなジャンルとなった、能力バトル、バトルロワイヤル系の作品ですが、この小説の発表は1958年とかなり古い作品です。 能力バトル系の作品が市場に多く見られるようになったのは『ジョジョの奇妙な冒険』の三部(1989年)のあたりから。 バトルロワイヤル系が市場に多く見られるようになったのはタイトルどおり『バトルロワイヤル』(1999年)あたりからだと思われるので、この作品はまさに30年、40年時代を先取りしたと言っても過言ではない、とんでもない作品だと思います。 むしろ当時は時代を先取りしすぎたゆえ、十分に評価されなかったのではと思ってしまうほどです。 実は私は漫画版の方を先に読んだのですが、てっきり漫画版はある程度「現代風に」アレンジして書かれているのかな、と思ったのですが、原作の小説を読むと漫画はきわめて忠実に、原作ほぼそのままのストーリーで書かれていたことに驚きました。 また文章も非常に読みやすく、全く古くささを感じませんでした。 本当に現代の作者がタイムスリップして発表したのでは?とさえ感じるような一冊でしたね。 ただこの作品は自分の中ではどう考えても「ミステリ」という分類にはできないですね。 これがミステリだったらもうバトル漫画やラノベもみんな「ミステリ」です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『百鬼夜行シリーズ』の中でも特にブ厚い、文庫版で1300ページ超のボリュームの大作です。
舞台は雪山の奥深くに、時間を忘れたかのようにたたずむ禅寺、「明慧寺」。 そこは地図にも寺院名簿にも記録は無く、日本中の仏閣は全て知り尽くしていると言っても過言ではない京極堂ですらその存在を知らないという「幻の寺」だった。 寺では多くの僧たちが日夜修行の日々を送り、外界とは隔絶された独自の「社会形態」が構築されていたが、突如僧たちが次々と異常な形で殺害されていく事件が起こる…… 今回も作者の知識量に感服させられます。 「禅」や「仏教の宗派」などについてとりあえずさわりだけでも理解したいなら、この本を読むのが一番ではと思ってしまう一冊でした。 登場人物たちの文字通り「禅問答」的なやり取りも非常に読んでいて面白かったです。 また、これまでの同シリーズ作品同様、題材はシリアスかつホラー調でありながら、個性的な登場人物のやり取りは、随所にユーモアも効いていて相変わらず楽しいです。 このシリーズのレギュラーキャラでは、自分はやはり榎木津が一番好きですね。もうこの人が登場してるだけで無条件に面白い! 舞台が物理的に完全に外界と隔絶されているわけではなく、警察の介入は普通に行われているため、クローズドサークル作品という括りには当てはまらないですが、社会的に外界から孤立した禅寺という空間や、次に誰が殺されるのかという恐怖感など、物語の雰囲気的にはクローズドサークル的な楽しみ方も出来る一作でした。 しかし、本格ミステリという観点で見ると、長さに関係なく物足りないです。 特に何かトリックが弄されてるわけでもなければ、犯人もロジックの元導かれるわけでもなく、理屈で言えば「誰が犯人でも良かった」形だった気がします。 改めてこのシリーズは会話や薀蓄や雰囲気をゆるりと楽しみながら読んでいくもので、「長いけどがんばって読もう」などと考えず、読みたい人が読みたいから読むべきだと思いますね。(まぁ本来それはこのシリーズに限ったことじゃないんですが) ▼以下、ネタバレ感想 |
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少女向けのような可愛い挿絵とタイトルに騙されると大変なことになる、かなり残酷で救いのない話です。
最初から結末は提示されていて真相のどんでん返しがあるわけではなく、犯人が何か計略を練っているわけでもなく、結局謎が謎で残されている部分もあり、ミステリとして見ると、面白いとか出来の良し悪し以前にその体裁をなしてないです。 ミステリ要素を期待して読むのではなく、純粋(?)な文学作品として見るべき本でしょうか。 とにかく読んだ人の誰しもの心には何かが残る話だったと思います。 ただ結局この話は何を伝えたかったのか、十代の時初めて読んだ時も、再読した時も私としてはよくわからなかったし、わかりたいとも思えない作品でした。 |
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登場人物がどいつもこいつも頭に思い浮かんだことを全部口に出しているようなイカれた奴らで、面白いんですが、古い作品とはいえちょっと文章が読みにくすぎます。
それほど長い話ではないし、ストーリーそのものは難しくなかったのでなんとか読めましたが、これでもっとページが多かったり複雑な内容だったりしたら、途中で挫折してしまったかもしれません。 改めて古い作家でも文章が読みやすい江戸川乱歩や横溝正史は凄いというか、ありがたいな、と感じました。 よく指摘される登場人物の多さに関しては、所謂読者目線での「容疑者」になる主要人物と、単にその場で出てくるだけのようなチョイ役は割りとはっきりしていたので、ここについては自分は特に気になりませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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長男と客人の2人の傴僂男、激昂すると平気で刀や銃を持ち出す2人の夢遊病者、監禁された精神異常者、精神薄弱者とやばい人だらけの名家で起こる連続首斬り殺人事件という、横溝御代らしい、おどろおどろしくも惹きつけられるストーリーが展開される今作は、『獄門島』と『八つ墓村』というシリーズ1,2を争う人気作に挟まれて発表された作品です。
その2作に比べると人気、知名度で遥かに落ちるのですが、個人的にはもっと評価されるべき名作だと思います。 傴僂や精神異常者が全面に押し出されてるストーリーがおそらく後年問題視されたのが痛いのだと思いますが、それだけに今は読めない当時の作品ならではの楽しみ方が出来る貴重な一冊だとも言えますね。 一方で古い作品ながら文章はとても読みやすいので、今のミステリファンにもぜひ読んで欲しいと感じる一作です。 300ページ強とそれほど長くない分量ながら、顔の無い死体に始まり、アリバイトリック、密室トリック(焦点になるのは人間でなく凶器ですが) など本格ミステリ定番の美味しい要素が多数盛り込まれ、かつ、それらは全て添え物に過ぎず、メインのどんでん返しが待っているという、非常に贅沢な作品と言えると思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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綾辻氏の『館シリーズ』に代表されるような、奇妙な建物で行われる連続殺人という、自分の大好きなジャンルなので期待しましたが正直この作品はあらゆる面で微妙でした。
まず文章が稚拙で読みにくいです。 特にわざわざそこまで書かなくていいような所も1から10まで説明するようなクドい書き方が気になります。 あと、おそらく森 博嗣氏などの影響を受けて、衒学趣味的なことをやろうとしているのですが、肝心の作者の知識、見識が全く追いついていないため、子供が賢く見せようと精一杯背伸びしているみたいで痛々しいです。 キャラクターもやたら「天才」を出すのはいいのですが、描写に説得力がなく、全く天才に見えません。 「ピカソより凄い」とかもはや小学生が考えたような設定だな……と思ってしまいました。 トリックも派手ではあるんですが、いずれも過去にどこかで見たものの焼き直しでしかありませんね。 総じて見てこの作品には、作者独自のオリジナリティとかアイディアはほぼ見られず、はっきり言って既存の作品のパクリ、劣化版の寄せ集めとしか思えませんでした。 滅茶苦茶辛口な評価になりましたが、デビュー作ですし、奇妙な建物での殺人事件という題材でシリーズが続くのでしたら、それ自体は大好物なので、今後の作品で化けてくれるのを期待したいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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