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マリオネットK さんのレビュー一覧

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レビュー数26

全26件 1~20 1/2ページ
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No.26:
(4pt)

これ単独ではただの暗くて気持ち悪いホラー作品

実質的に上下巻の上巻にあたる今作。
完結編に相当する『百蛇堂 怪談作家の語る話』の作中作という位置づけでもあります。
つまりこちらだけ読んだのでは多くの謎が残されたままなのですが、「ホラー作品」として読めば一応こちらだけでも完結しているとも言えます。

内容としては、駆け落ちのような形で家を出たはいいけれど、結局今度は出戻りのような形で田舎の旧家である実家に戻った父に連れられた主人公が、そこでさまざまな不可解な恐怖体験をするのといった話ですが、しかしオカルト的な受難よりむしろ主人公が大人たちに直接的なものから遠まわしなものまでいろいろ虐待を受けて幼少期を過ごす、なんともジメジメとした話という印象が強く、主人公の性格も境遇的に当然といえば当然ですが控えめで暗く、正直面白くなかったです。

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蛇棺葬 (講談社文庫)
三津田信三蛇棺葬 についてのレビュー
No.25:
(4pt)

『鏡の中は日曜日』のおまけみたいなもん

『鏡の中は日曜日』に登場した名探偵・水城優臣が登場する番外編。
それゆえに『鏡の中は日曜日』より先に読んでしまうと重大なネタバレをくらうことになります。
現在は『鏡の中は日曜日』の文庫版に同時収録されているのでこちらの単体本はあまり出回ってないとは思いますが。

試みは面白いですけど、トリックもプロットもしょぼいです。
まさにおまけって感じでした。
樒・榁 (講談社ノベルス)
殊能将之樒/榁 についてのレビュー
No.24:
(4pt)

はっきり言って駄作……だけど最低限読めるのは流石と言うべきか

マイナーながら単独で一冊になっている長編では金田一耕助シリーズの中では最短作品ということで、割りと早い段階で読んでいた話ですが、はっきり言って駄作です。
中々に想像力を沸き立たせる禍々しさのあるタイトルではありますが、百唇譜とは結局ちょっと悪趣味なゆすりのネタ帳でしかなく、はっきり言って肩透かしでした。頭にとってつけたような”悪魔の”という部分も安っぽさを助長してます(最初のタイトルはただの『百唇譜』だったようですが)

終戦直後のまだ戦争の爪跡が残る日本という時代背景が活かされていた同シリーズの代表作・有名作に対して、高度経済成長期が舞台となる今作はなんというか「時代に置いていかれた」感が漂う、この時期の横溝氏の低迷を象徴しているような作品と感じました。

とはいえ腐っても(失礼)横溝御大とは言うべきか、長編にしては短い作品というのもありますが、駄作とはいえ読むのが苦痛になって途中で投げ出したくなるということはなく、とりあえず読ませてしまうだけの筆力はあるのは流石だと思いますね。


悪魔の百唇譜 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
横溝正史悪魔の百唇譜 についてのレビュー
No.23:
(4pt)

”日常の謎”というジャンルそのものがあまり好きでないと言ってしまえばそれまでなのですが

女子大生の「私」が日常で遭遇する他愛ない謎を、落語家の円紫師匠が見事に解決していく、所謂”日常の謎”ジャンルの先駆け的存在の連作短編シリーズの第一弾。
女子大生の私小説的な形式で話が進み、ミステリというよりも純文学のような雰囲気が漂います。
また直接物語の本筋とは絡まない、落語や文学の薀蓄や衒学的記述が目立つ作品です。

いろんな理由で人を選ぶ作品だと思いますが、私は合わなかった人間です。
まさに上で挙げたようなこの作品の特徴であり、好きな人はそこが好きであろう魅力の部分が私にとっては好みではなかったからです。

女子大生の他愛ない日常も、落語や文学の薀蓄も正直興味が沸きません。
その点でまず、私のような読む本がミステリに偏りすぎているような人間には、面白くないミステリでした。

また、当時は「殺人事件だけがミステリではない、それどころか犯罪ですらない他愛ない日常に潜んだ謎の解決もミステリになる」という、日本のミステリにおける所謂”日常の謎”ジャンルの先駆けでもあることが名作と評価されている一因だと思いますが、それだけに逆に言えば今読んでそこまで特別の斬新さ、出来の良さは感じませんでした。

さらに身も蓋もないことを言ってしまえば、私はこの作品に限らずそもそも”日常の謎”というミステリジャンル自体があまり好きではありません。
やはりミステリは人がぶっ殺されて、いろんな人間のまさに”人生”がかかった物語だからこそ、登場人物も読者も真剣になれて面白いと感じ、”日常の謎”作品に出てくるような他愛ない謎はどうしても「どうでもいい」と感じてしまいます。
”日常の謎”というジャンルはまさにその、誰かの人生がかかっているわけでもない「どうでもいい」謎に純粋な知的好奇心で挑むことが魅力なのだろうと思うので、魅力そのものを否定してしまう私のような人間とはそもそもの感性が合わないのでしょう。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
北村薫空飛ぶ馬 についてのレビュー
No.22: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

機上での殺人という題材を真っ先に発表しているのはさすがクリスティと感じるけれど……

飛行中の旅客機内という、言わば究極の密室・クローズドサークル状況で殺人事件が発生するという話は、現代では本格ミステリの一つのパターンになっているかと思いますが、旅客機がようやく世間に一般浸透しだした当時においてはおそらく先例のない試みであり、その点はさすがクリスティと感じます。
しかし、正直それだけの作品だな、という感想でした。
機上での殺人と言う(当時としては)物珍しい状況を抜きにすれば、全体的にストーリーもトリックもこじんまりとしており、ぶっちゃけ長編にするほどの内容ではなかったと思います。

またせっかくの機上での殺人という題材ですが、殺人が起きた後の捜査、解決パートは全て地上なのがもったいないというか肩透かしでした。
これでは別に飛行機じゃなくても、不特定多数の人間が集まってしばらく座席についてるような状況であれば、舞台は電車でも劇場でも成立してしまうようなストーリーとトリックですね。
どうせなら『オリエント急行殺人事件』のように、事件の捜査から解決に至るまで全て機内で行われたほうが作品のテーマ的にもエンタメ的にも良かったのではないでしょうか?
(私がクローズドサークル大好き人間だからそう思うだけかもしれませんが)

また今回はなぜか、実際に登場はしないにもかかわらず、『ゴルフ場殺人事件』でポワロと推理対決をしたジロー刑事の名前が、急に思い出したかのようにポワロの口から何度も出てきます。
『ゴルフ場殺人事件』のレビューでも書きましたが、犬のように地面に這いつくばって証拠を探すと言う捜査スタイルの、某世界的超有名探偵を皮肉ったようなキャラである彼は、正直最初からかませ犬感しかなく、ポワロのライバルになるほどの魅力も器量も感じないキャラだったのですが、そんな彼をポワロが皮肉る様子は、逆にポワロの方も少なからず向こうを意識して対抗意識を燃やしているようで、ポワロまで小物に見えるだけな気がしてしまいます。
そのジロー刑事に加え、作中のコカイン常習者を蔑む台詞といい、吹き矢という殺害方法へのディスりといい、この作品はなんだか随所にホームズシリーズへのあてつけ感があるのですが、クリスティ女史に「ドイルの小説なんか今読んだら全然面白くもないし出来もよくねーよ」的な意図がこめられていたならば、この作品もまた、時代的な価値抜きに今読むと面白いとも出来が良いとも感じない作品になってしまっていることに皮肉を感じますね。

(余談ですが当時の旅客機は客が通気口から外に物を捨てられたと言うのが驚きで、少し面白い薀蓄でした)


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雲をつかむ死〔新訳版〕 (クリスティー文庫)
アガサ・クリスティ雲をつかむ死 についてのレビュー
No.21:
(4pt)

ホラー作家としての綾辻行人はやはり私とは相性がよくない模様

タイトルから最初は江戸時代あたりが舞台のホラー作品なのか?などと想像してしまいましたが、現代日本を舞台にした、シュールな中にどこかリアルさを感じさせるホラー短編集です。
作中で明確に主人公に悪意を向けたり危害を加えてくる人物はいないのですが、どこか胡散臭くて、本当に身を任せても大丈夫なのだろうかと思ってしまう病院の不気味さは、現代日本に住む人間なら誰もが多かれ少なかれ共感できるのではないでしょうか。

独特の世界観や、読みやすさは抜群な点は評価できますが、全体的にただわけがわからないだけで、正直全然怖いと思いませんでした。
ホラーに論理的な理屈や答えは求めませんが、オチぐらいはちゃんとつけてほしいです。
(それゆえこの本の中でもしっかりオチがついてた『開けるな』は面白いと思いました)

綾辻氏は「推理作家」としては国内では私の中で一番と言っていい作家なのだけれど「ホラー作家」として見るとどうも相性が良くないようです。(『Another』は好きですけど)
さらに言えば、私のような本格ミステリに趣向が偏りがちな人間は、何もかもに理屈や説明を求めすぎてホラーというジャンルそのものと相性が悪くなってしまうのかもしれませんね。(ホラーテイストな本格ミステリは大好物なのですが)
深泥丘奇談 (角川文庫)
綾辻行人深泥丘奇談 についてのレビュー
No.20: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

「雪の山荘」「館もの」の魅力が一切感じられない……

『名探偵信濃譲二シリーズ』の二作目。
トリックが超見え見えだった前作『長い家の殺人』に比べれば、ミステリ作品としての完成度は上がったかもしれませんが、人物やストーリーはまだ前作の方が見るものがあったかなぁという印象です。

”雪の山荘もの”であり奇妙な建物を扱った”館もの”でもあるという、ベタだけれどそれだけで魅力的な題材を扱っている作品なのですが、クローズドサークルというわけでもなく、せっかくのそのシチュエーションゆえの魅力が全く感じられない作品でした。

トリックは正直つまらないですし、探偵役を賢く見せるためなのか、登場人物がみんな大人とは思えない幼稚な言動なのが不愉快でした。

作者の歌野氏は私の好きな作家の一人なのですが、正直このシリーズに関しては初期の作品のためかお世辞にも出来が良いとは言えず、かといって若さゆえのパワーとか、光るものも特に感じられないです。
何よりこのシリーズだけの「売り」というものが特になく、正直あんま褒めるところがないシリーズですね……



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白い家の殺人 (講談社文庫)
歌野晶午白い家の殺人 についてのレビュー
No.19: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

18世紀のヨーロッパが舞台という状況設定は面白いけどそれだけ

雪深い山奥の古城を舞台に発生する連続殺人事件を扱った作品ですが、作中の年代が18世紀というのが特徴的です。
当然科学捜査はおろか、まともな警察組織が成立していないので、城から全く出入りできない所謂クローズドサークル作品ではないのですが、それに近いような素人探偵による単独調査によって事件の真相を追うような形式となります。
またそのような時代背景なので、なかなか真相にたどり着かない探偵に業を煮やした城内の権力者が、平気で魔女裁判のようなことも行ってしまうといった展開も特殊でした。

そのように、題材としては面白いものだったと思うのですが、ミステリの内容としてはお世辞にも出来がいいとは言えず、文章や人物にも魅力を感じませんでした。
キャラクターがみな記号的で(”盲目の少女”とか設定を付けたはいいけれど、何一つ活かせていないし必然性もない)、この表現はあまり好きじゃないのですが典型的な「人物が書けていない」作品と言う感想です。
探偵役とワトソン役が無駄に反目しあったりするのもなんだか見ていてイライラしました。
琥珀の城の殺人 (講談社文庫)
篠田真由美琥珀の城の殺人 についてのレビュー
No.18: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

読者一人一人の想像力が問われる物語?

売れない物書きで、明日も知れない貧乏生活の傍ら、空想の中に自分の理想郷を描く日々を送る主人公の男。
彼はある日、自分に瓜二つの大金持ちの知り合いの死を知り、彼に成り代わる計画を立て、それを実行する。
莫大な資力を手に入れることになった彼は、自分の夢に描いていた光景を現実のものとするため、とある小島に理想郷の建設を始める……

形式としては一応倒叙ミステリに分類されるのでしょうが、物語の本質はあまりミステリ寄りではないかもしれません。

この物語を楽しめるかどうかは、日々現実逃避とも言える己だけの空想にふけりながら、それをとうとう実現させた主人公にどれだけ感情移入できるか。
そして、文章によって情景が描かれる、パノラマ島の光景をいかに自分の中に描けるかだと思います。
どちらをとっても、読者各々の想像力が問われていると言える作品なのではないでしょうか。

しかし作品発表当時はともかく、それから100年近くが経った現在。
ディズニーランドやUSJなどの大規模テーマパークを現実に目にしてしまっている現代人の我々にとって、いくら想像力と芸術センスのある男が金に物を言わせて作った理想郷といっても、所詮個人が作った人工物であるパノラマ島の光景を、仮に100%脳内に思い描けたところで感動を覚えることは難しいのではないかと感じてしまいます。

あるいはここで想像すべきなのは、作中のパノラマ島の光景よりも、主人公を自分の立場に置き換えた時、どのような自分の空想の中の理想郷を作成し、隣にいる魅力的な異性にそれを見せるだろうかということかもしれません。

低評価になったのは自身の想像力の乏しさのせいもありますが、それ以上に終盤の主人公の行動への反感からになります。

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パノラマ島奇談 (江戸川乱歩文庫)
江戸川乱歩パノラマ島奇談 についてのレビュー
No.17: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

いろいろと期待はずれでした

作者自身がベスト3に挙げ、ファンからの評価も高い作品のため期待した読んだのですが、私にはいまいち良さがわからず完全に期待はずれでした。

まず、クイーンがしばし滞在することになった架空の街「ライツヴィル」を舞台にした物語と言うことで、本の冒頭に街の地図が載っているのが、箱庭ゲーム感があって、「すごく面白そう!」と期待したのですが、結局この地図は推理にも物語にも最後まで全く関わることなく、肩透かしでした。

また『災厄の町』などとタイトルにあるからには、町全体を恐怖に包むような恐ろしい連続殺人!みたいなのを期待していたのですが、最初の事件からして中々起こらないし、その後も淡々とした展開で内容の割りに冗長に感じ、正直「いつになったら面白くなるんだ?」と思いながら読んでいました。
ほとんど法廷ミステリと言ってもいいぐらい法廷パートが長いのですが、その後の展開と結末から考えるとこの形式にした意味もよくわからなかったです。

そして何より肝心の謎解き部分が物足りないです。
事件が起こった瞬間に犯人がわかってしまい、あまりにわかりやすいのでむしろフェイクか?と深読みしてしまったぐらいですが結局そのまんまの結末でガッカリでした。
こんなの『国名シリーズ』のクイーンだったら一瞬で気づいたはずだと思うんですけどね。

今までのとにかくロジック重視だった作品から、人物描写中心の物語ということで、作者にとっての「新境地」であった作品なのでしょうが、私の求めている彼(ら)の作品ではなかったということでしょう。
若い女性とラブロマンスめいたことをしたり、時には暴力も辞さないこれまでになくハードボイルドなクイーンもなんだかしっくり来ませんでした。



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災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エラリー・クイーン災厄の町 についてのレビュー
No.16: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

B級スプラッタホラーにオマケのようにミステリ要素を加えた作品

『13日の金曜日』のパロディ?という感じに、斧をメインウェポンとした大男の殺人鬼がキャンプに来た男女を殺しまくるというストーリー。
セックスしている男女がその最中に襲われたり、次に殺される人間が前に殺された人間の生首を発見するとかB級ホラー映画のお約束な展開がちりばめられています。
入念な殺害描写などが「文章だから表現できるグロさ」みたいなのに挑戦している感がありましたが、単にグロいだけで怖くはないです。

綾辻氏なので、これだけでは終わらないだろうとオチのどんでん返しに期待して最後まで読みましたけど、まぁなんとなく途中で予想がついたオチで、全体的にビミョーに感じた作品でした。

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殺人鬼  ‐‐覚醒篇 (角川文庫)
綾辻行人殺人鬼 についてのレビュー
No.15: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

”密室の帝王”のデビュー長編

ジョン・ディクスン・カー氏の実質的なデビュー作です。
密室+怪奇趣味とデビュー作から「らしさ」が全開ですね。

あらすじは結構期待したのですが、冒頭であっという間に殺人が起きたかと思うとあとは淡々と話が進み、あらすじをなぞっているだけ感があって正直退屈でした。
トリックもちょっとアンフェア&無理があると思います。

あとこれは作者の責任じゃないですが、私が読んだ創元推理文庫版は日本語訳が読みにくすぎです。
2013年初版の新訳版なのになんでこんな読みにくいんですか?翻訳者は日本人じゃないんですか?と言いたくなりました。
やたらもったいぶった言い回しは原文に忠実に訳しているのかもしれませんが、なぜそこを漢字にせず平仮名で書く?と思うところが多々あったり、擬音も全部平仮名なのが最高に読みにくかったです。

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夜歩く【新訳版】 (創元推理文庫)
ジョン・ディクスン・カー夜歩く についてのレビュー
No.14:
(4pt)

何かがわかった気になったような感想は書きたくないです

少女向けのような可愛い挿絵とタイトルに騙されると大変なことになる、かなり残酷で救いのない話です。

最初から結末は提示されていて真相のどんでん返しがあるわけではなく、犯人が何か計略を練っているわけでもなく、結局謎が謎で残されている部分もあり、ミステリとして見ると、面白いとか出来の良し悪し以前にその体裁をなしてないです。
ミステリ要素を期待して読むのではなく、純粋(?)な文学作品として見るべき本でしょうか。

とにかく読んだ人の誰しもの心には何かが残る話だったと思います。
ただ結局この話は何を伝えたかったのか、十代の時初めて読んだ時も、再読した時も私としてはよくわからなかったし、わかりたいとも思えない作品でした。


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない についてのレビュー
No.13:
(4pt)

ミステリの黄金パターンの一つを作った偉大な作品なのは間違いないですが

お互い憎しみ合う、奇人悪人揃いの一家による骨肉の争いが、遺産がらみでとうとう殺人事件にまで発展するという、ミステリの黄金パターンの草分け的存在のお話ではないでしょうか。
クイーンの『Yの悲劇』も乱歩の『暗黒星』も横溝の『犬神家』もこの作品に影響を受けているのは間違いない偉大な作品だと思います。

ただ今読むと犯人はすぐに見当がつくし、トリックも大したものではないし、その割には無駄に長くてクドくて正直読んでいて寝てしまいそうになる退屈さでした。
この随所に盛り込まれる衒学趣味は好きな人はそこが好きなんでしょうけど、個人的には事件や謎解きと関係ない脱線をしているだけで、こんなことしてるから無駄に長くなるんだよ……と思わずにはいられませんでした。
同シリーズでもこれの次作の『僧正殺人事件』の方は事件そのものが見立て殺人とどこか詩的な題材だったり、容疑者たちが学者などであることで、あまりそういった傾向にも違和感を感じず読めたのですが、そのへんは今作までの反省も活かした所だったんでしょうかね。

『Yの悲劇』を先に読んでいたので、この作品の方が発表は先とはわかっていても、向こうの作品の劣化版みたいな感想を抱いてしまうのが否めませんでした。
では後世の、影響を受けた作品より先に読んでおくべき作品かと言えば、読みやすいドイルやクリスティの作品と違って長くてクドいので、初心者が読んだら途中で脱落してミステリそのものが嫌いになりかねないな……という感想です。


グリーン家殺人事件【新訳版】 (創元推理文庫)
ヴァン・ダイングリーン家殺人事件 についてのレビュー
No.12: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

二作目のジンクスの典型のような凡作

日本ミステリ界に衝撃を与えた『すべてがFになる』の続編となるシリーズ第二作目ですが、はっきり言って凡作ですね。

舞台のインパクト、事件のインパクト、トリックのインパクト、犯人のインパクト。全てが大幅にスケールダウンしています。
話そのものが淡々としていて面白いと感じられず、もう途中から興味はただ一点「どんな密室トリックなんだ?」という部分だけになりましたが、それも前作の密室トリックに比べれば至って「普通」でした。

そのくせ犀川の「周囲が馬鹿ばっかで浮いてしまう天才の自分は可哀想」的な態度や、萌絵の「財力やコネを使って殺人事件に娯楽気分で首を突っ込む我侭お嬢様」という主人公コンビの好きになれないキャラだけは前作から健在、むしろパワーアップしているのがなんとも。

本来は前作よりこちらの方が先に出来ていた話らしいですが、それってようは編集側に続編を急かされ、プロットを練る時間も無く、作者自身満足の行く出来じゃなかったのでボツにしたネタを仕方なく引っ張ってきたような形じゃないのかと思ってしまいましたね。

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
森博嗣冷たい密室と博士たち についてのレビュー
No.11: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

短気は損気?

8の字の形をした特殊な設計の屋敷で、その屋敷を利用した殺人トリックを思いついたという犯人の独白から始まる作品。
その時点で「おー、そういうの大好きだよ!」と期待したのですが、非常にイライラしながら読むことになる話でした。

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8の殺人 (講談社文庫)
我孫子武丸8の殺人 についてのレビュー
No.10: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

悪い方の綾辻さんが出てる作品ですね

中学生ぐらいの時読んだはずなんですが、内容をほぼ失念していたので再読しました。
……あらためて読んでみて、まぁ内容を忘れたのもやむなしかなっていう微妙な出来の話でした。
悪い意味で綾辻氏らしさが出ている感じの作品ですね。
ミステリとしてもホラーとしても中途半端で、正直駄作の部類に入ると思います。

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緋色の囁き 〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
綾辻行人緋色の囁き についてのレビュー
No.9:
(4pt)

理屈ではなく感情、感覚的に好きになれない話だった

東野圭吾氏の作品の中ではミステリ成分は薄めの作品な気がしました。

個人的にはどうも登場キャラクターたちの言動に違和感、不快感を覚える場面が多く好きになれませんでした。
中盤の夫婦のすれ違いの流れが、娘を失ったという最大の悲劇そっちのけで醜い争いしてるなぁ、という気持ちがどうしてもぬぐえませんでした。

出来うんぬんではなく、私の好みではない、という作品でした。

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秘密 (文春文庫)
東野圭吾秘密 についてのレビュー
No.8:
(4pt)

発想・構想は面白かったのだけれど……

比喩ではなく重機まで持ち出され、山荘が窓や天井まで完全に雪で埋められてしまうという、まさに究極「雪の山荘」もの。

さらに一見不可能犯罪とおぼしき連続殺人が起こるたびにまるでゲームだと言わんばかりに「どんなトリックが使われたのか正解した者には賞金!」
と謎の正体主である「トリック卿」から出題が発生し、雪の山荘に閉じ込められた招待客たちに怒りと恐怖を与えるという、クローズドサークルシチュエーション。

設定は非常に面白いと思いましたが。
肝心のトリックや真相が微妙のものばかりなせいで、設定を活かせず、正直駄作といった印象です。

推理小説というよりは、バラエティ番組のコントのシナリオみたいな作品だと思いました。

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トリック狂殺人事件 (光文社文庫)
吉村達也トリック狂殺人事件 についてのレビュー
No.7:
(4pt)

奇妙な建物&クローズドサークル は大好きな組み合わせだけれど……

奇妙な建物&クローズドサークルという私の大好物ですが、ミステリとしてはお粗末な感じでした。


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渦巻く回廊の鎮魂曲 霊媒探偵アーネスト (講談社文庫)


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