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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数745件
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気軽に楽しめた群像劇でした。
同著者の『悪夢の観覧車』も群像劇でしたが、このシリーズはそういう系統でしょうか?好みなので他の作品も読んでみたくなりました。 あらすじは、女子高生が交通事故に遭遇し、轢かれて瀕死のサンタクロースから身代金を託される所から始まる。 誘拐犯からの指示、意図しないアクシデント、主人公と読者は同じ目線であり、何が起きているか翻弄される物語は先が気になる面白さでした。章を変える毎に視点が変わり徐々に全貌が分る構成も面白い。コンパクトな群像劇ながらミステリ仕掛けの真相もあり気軽に楽しむのに良い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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B級サスペンスですが、分かりやすい展開と読みやすい文章でサクッと楽しめた作品でした。
あらすじは、40代男性、仕事は順調だが家庭に悩みを抱える主人公。気分転換に少しハメを外そうと六本木のクラブへ足を運びナンパしようにも上手くいかず、、、そこに人生のコーディネーターと称する男が現れ、事件に巻き込まれる。という流れ。 読者ターゲットはサラリーマン男性。分かりやすい設定と問題。読者層の非日常が巧く並べられていると思いました。どんな展開になるかは読んでからのお楽しみですが、深く考えないでシンプルにサスペンスを楽しめた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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堂シリーズ4作目。シリーズ全7作の内、中間にあたる本書は予め著者が構想していた転換となる作品というだけあって、驚かされる一面がありました。この先どうなっていくのだろうと、主要メンバーが固まってきた本シリーズの今後が楽しみです。
孤島を舞台に30m四方の立方体の堂で事件が発生。 堂の構造から密室ものミステリを予想していたのですが、本書は瞬間移動ものでした。一時行方不明となった人物が巨大空間の中に被害者として現れる。どうやって移動されたのか?が謎となります。館ものの大トリックとしては島田荘司っぽい壮大さで好みです。ただ、物語やその事件の背景の魅力が弱すぎて、残念な印象でした。トリックは素晴らしいです。シリーズとしての仕掛けも相まって、名作に成りそびれた勿体なさが残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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異世界転生×本格ミステリ 第2弾。
2作目も相変わらず面白かったです。 1作目のような登場人物・舞台紹介の必要がない為、本書は本筋に集中した物語が楽しめました。 舞台は「帰らずの地下迷宮」。ダンジョンもの。 ファンタジー小説としてダンジョン内を進む冒険ものとして楽しめました。さらにミステリとして、ファンタジー特有の一方通行の壁の中の室内で起きる密室・消失事件、毒殺もの、疑心暗鬼、と多くのガジェットを盛り込んだ作品。読者への挑戦までのワクワク感は見事ですし、解答編もそうきたか!と物語の作り方の巧さに驚きました。 ファンタジーだから作れるダンジョンものの新しさ。 そのダンジョンという特性を十二分に活用しミステリへ昇華した素晴らしい作品だと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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共有された夢の中での殺人という特殊ミステリ。
表紙が古臭いですが2020年の作品。 極秘人体実験プロジェクト・インソムニア。夢を共有するチップを頭に埋め込まれた被験者達の生活実験。今の状況は夢なのか現実なのか。夢の中で死体となった人物が、現実世界でも死んだらしい。何が起きているのか。という流れ。 読んでみると、岡嶋二人『クラインの壺』と川原礫『ソードアート・オンライン』が思い浮かぶ内容でした。おそらくこの2つが好きで著者なりにアレンジした作品かと思うほどでした。映画『パプリカ』もそうかな。虚構と現実の曖昧さ、仮想現実世界での死は現実の死となる。というニュアンスや仕掛けがそのままで、個人的にとても既視感があった内容でした。 その感性で読んでしまうと、仮想現実ではなく「夢」という設定に対しての意味に期待をしていましたが、特に意味づけを感じられなかった為、二番煎じ感が否めない作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園ラブコメミステリ ☆7+1(好み)
タイトルと表紙の雰囲気からTheラノベを感じさせますが、中身は謎解きありの学園ミステリ。殺伐さがない各事件の内容と、読後感が非常に良い作品でした。 まずミステリとして面白いのは2話目の『史上最薄殺人事件』。 絶版となって入手不可能になってしまったミステリのシリーズ最終巻。その謎をカバー情報から解き明かすもの。あらすじ・登場人物の設定の情報を元に、ミステリの作法を用いて推理する話。ノックスの十戒や安楽椅子探偵というワードもでておりミステリ好きの読者の心をくすぐります。 キャラクターものとしても男主人公+双子姉妹の三角関係的なトリオも良い感じ。ラノベとラブコメの定石然り、3人で謎を解く探偵仲間の雰囲気がとても読んでいて楽しかったです。 ミステリの謎解きだけに注目すると物足りないですが、ライトに楽しむミステリとしては非常によい作品。 個人的な評価ポイントとして、死なないミステリで、可愛い双子姉妹の学園ラブコメ、事件の真相が悪意なく救済となっている点が好みでした。続編も期待。 |
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これは好みが分れそう。
あらすじは、連絡が取れない叔父の状況を確認する為、勤め先に訪れると極秘プロジェクトの任務中だった事がわかり、詳しく調べていくとこの会社は日常では触れる事がない非現実的な闇会社であった。ここで何が起きているのか?という流れ。 ミステリの傾向として、閉鎖的な村、宗教もの系統の限定的空間で条件を付与する特殊設定ミステリです。 推理の過程やサスペンスを楽しむものではなく、明かされる真相をどう感じるかが好みの別れ所。前半の会社の異常な体制、会長の存在と社員の意識、これらは丁寧に描かれておりとても惹き込まれました。舞台の状況作りはとても面白く描かれています。一方、事件が起こり状況を把握する流れは退屈でした。麻雀の話然り、何か繋がりがあったとしても、脇道に逸れる内容が多く感じてしまい無駄を感じました。 終盤の真相は確かに面白いのですが、この作品の系統は既視感を感じてしまい、驚きを得られませんでした。仕掛けは面白いけど読み物としては好みに合わず。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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数年ぶりに東野圭吾作品を読書。
著者作品はドラマや映画化している有名どころ。これらは敢えて読まないでもいいかな。という心理が勝手に働いて未読でした。久々に読むと流石に巧すぎるという気持ち。やはり有名作品はそれなりに面白いという事を改めました。 事件の描き方、着目する視点が凄い。 ミステリの殺人事件自体を検証するのではなく、事件が起こった町の人々が主点。日本橋という小舞台の中で生きる人々。各々に接点はなくとも同じ町で暮らしていれば何かしら繋がりがでてくる。この繋がりが見えた所はミステリの謎が解けたような晴れやかさを感じました。 各章の登場人物達のエピソードには陰鬱さはなく、日常の謎と人情味を感じるエピローグで構成されており、読んでて悪い気分はしません。万人向けのミステリとして質の高さを感じました。 敢えて難をいうと、尖がったものがないので、面白いけど心に残ったり揺さぶったりするものがない印象でした。これは個人の好みの話。作品の質はとても高く久々の加賀シリーズとしても面白かった。 |
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『仕事とは何か?』をテーマに含む、野﨑まど流のSFエンターテインメント作品。
著者の作品傾向の中では『know』や『2』に近く、おふざけ要素もないSF作品となっています。『know』では知るとは何か?を扱いましたが、本書は『仕事』について哲学をも用いて感じる作品となります。『know』は少しラノベ表現がありましたが、本書のタイタンは近未来SFとした少し硬派寄りな雰囲気の作品です。 物語の舞台は人工知能が発達しあらゆるものがオートメーション化され、人類に仕事という概念がない世界。 この世界観の中で、人工知能に何が起きたのか?何が起きるのかとミステリのホワイダニット作品のような求心力で読ませます。近未来のシミュレーションや冒険ものを感じる飽きない場面転換もよく、仕事に対して帰結する解答もなるほどと思わせた所が見事でした。近年の流行りネタとなる人工知能やタイタンという存在要素も巧く活用している点が好感触。著者の作品がどんどん面白く進化していて、今後も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ最終巻。 北山猛邦の本格ミステリがとても活きており、シリーズ完結編として綺麗にまとまった内容でした。
本書はシリーズを途中で投げてしまった人でも楽しめる配慮を感じます。 1巻⇒2巻⇒3巻⇒7巻 と読んでも大丈夫。 ※シリーズを追わなくなったとしても名作2巻以降だと思われる為。 結末に向けてのおさらいとして、登場人物、探偵図書館、宿敵の犯罪被害者救済委員会の説明、行われるデスゲームの概要を改めて解説しています。また舞台は1巻のシリウス天文台で行われる館ものミステリでありシリーズ読者はワクワクの設定です。 ダンガンロンパのトンデモ設定の中だからできる本格ミステリとして、著者の特性が活きているのが楽しかったです。 霧切響子の過去の物語。五月雨結との関係。儚くも綺麗にまとまりました。 キャラクターデザインとしての霧切の三つ編みにとても深みを感じます。キャラクターへより良いエピソードを盛り込んだスピンオフ作品として満足の作品でした。 シリーズを振り返ると、1巻,2巻がミステリ成分強めで世界観とミステリのやりたい事をやった作品。3巻からはキャラや世界観の説明が混じってミステリとしてもキャラものとしても薄くなってしまった印象。6巻が終盤へ向けて面白さ。最終巻が原点回帰的なミステリと大団円。という印象。 シリーズが終わり寂しく感じますが、著者の新たな本格ミステリを楽しみにしています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ6作目。最終巻が出たためシリーズ読書再開。3~5作目にて物語が一段落した為、本書は最終章へ向けて新たな気持ちで読書。
個人的にはダンガンロンパおよび本書のシリーズ作品として楽しめた内容でした。 ただ本書の評判は悪いですね。その理由が明らかなポイントが2つあります。1つは単体作品ではボツネタになりそうな小ネタトリック集なミステリである事。2つ目は期待させておいて何もないというガッカリさせる要素がある事。 この2つは読書した人はわかります。で、この点が好みの別れ所でしょう。 ただこの2点は『ダンガンロンパだしなぁ。』で納得しました。ダンガンロンパのゲームやアニメの絶望に比べれば、それ系ですね。 本書をただのミステリとして作っても意味がない。シリーズ作品のダンガンロンパとして何ができるか。みたいな事を考えるとアリな気がしてくるわけです。 事前にトリックのヒントが明かされる『黒の挑戦』という存在自体を逆手にとっての探偵同士の攻防。トリプルゼロクラスの凄さ。形式島の2話目は期待させておいてアレな絶望的な落胆(苦笑)。残酷性。狙撃戦としてテーマをしっかり貫いた構成。良い点をみれば3~5作目の落胆とは違って楽しめた作品でした。最終巻まで続けて読みます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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猫に憑依した死神が、現世に未練を残し地縛霊となった魂の悩みを救う話。シリーズ2作目。本書の場合は1作目から読んだ方がよいです。短編集の体裁で話を進めていくと繋がりが見えてくるのは前作同様面白い。ただ個人的な好みとしていまいちの2作目でした。事件や謎については読者置いてけぼりの展開。手がかりを推理して導くのではなく、当事者達で思い出したり、重要人物が突然解答を語りだしたりするので謎解きは皆無。人情ものとして見たとしても感情移入できるキャラがいない為に感動が薄れてしまいます。
1作目の犬のレオは信念の筋を感じましたが、本作の猫のクロはおちゃらけていて真面目なシーンもなんか気が抜けてしまい軽い印象でした。そこが猫っぽいと言われればそうなのですが好みに合わず。 事件の真相や仕掛けは複雑なものですが分り辛くて楽しみ辛い。ハートフル作品として売り出していますが、中身はミステリを強めようとしてちぐはぐになってしまった印象を受けました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今の時代に読んでも気軽に楽しめるライトミステリ。
本書はドイツの古城を舞台としたユーモアある館ものミステリです。 シリーズ作品ですが本書から読んでも問題ありません。 やはり携帯電話のない時代のミステリは好みです。 古城の入り口となる橋が崩落し外部との連絡が途絶えた舞台。各人何かしらの目的を感じる怪しい関係者達。その中で発生する殺人事件。中世の処刑具まで現れて雰囲気は抜群でした。 シリーズ名にもなっている猫のバランスがいいですね。マスコット的な動き。皆が悩んだ所で示される猫からのヒント。こんな所に手がかりが!と、猫が見つけてくれる。雰囲気が壊れないヒントの出し方が巧いです。仕掛けや犯人や舞台の構成などしっかりミステリをしていて楽しめました。 |
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タイトルは面白い。が、中身と関係がない。
内容は、江戸時代にあった五人組制度を現代に適用された世界での物語。 五人組制度というのは近隣住人を組として、問題があった時の連帯責任や相互観察を行ったもの。本書はその五人組の1グループだけに焦点をあてられている。 正直な所、この特殊な制度を活用した物語という訳ではなく、単純に登場人物や空間的な舞台を狭め、犯罪の切っ掛けを作った導入だけの要素でした。5世帯の家族の中で死者がでており、犯人はこの5世帯の中の誰か。犯罪が露呈すれば連帯責任で全員が捕まってしまう。どうするか。と言った流れ。 ここまでの設定は興味を沸いて面白いのですが、中身が低俗なのが残念で好みと違いました。期待する知的な心理戦や協力犯罪、、というのとは異なり、住人間の脅し、騒がしいだけのパニック、アクセントの為のエログロ、という展開。予めB級ホラーとして手に取っていれば印象が変わったかもしれません。小規模な疑心暗鬼もので救いもない話なので好みに合いませんでした。 設定や仕掛けは面白いのに、読んでいて面白くない。残念。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読みやすくそこそこ楽しめた作品でした。
タイトルにある通り映画を題材としたライトミステリ。 映画好きの引きこもりの探偵役。事件の概要を相談すると、映画の前例と絡めて解決へと導かれる。映画の題材は有名所なので未鑑賞でも聞いたことあるものばかりで馴染みやすい。鑑賞済みなら小ネタが楽しめ、未鑑賞でも見てみようかなと思えたのが良かったです。映画オタクの嗄井戸を通して、著者の映画好きな気持ちと各作品の紹介が得られたのがとても楽しめました。 作品の雰囲気について。日常・学園物から重い内容まで混ざっています。良い表現をするとバラエティ豊かですが、悪い表現をすると方向性がブレています。自分の感想としては後者でして、 2章・3章ぐらいの学園物の雰囲気であればレーベルに沿い、映画×ミステリの特徴でティーンエイジャーにも薦めやすい内容だと思いました。4章のようなシリアスで重い内容が出ると読者の好みが分かれそうだと感じました。ただ、映画を絡めた事件の真相としては4章が一番面白かったです。 シリーズ化されているので2作目がどういう雰囲気の方向へ向かったのか気になります。 読みやすい本なのと映画ネタが面白かったので続けて読んでみようと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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書店に大量に並べてあり、『隠れた名作ミステリ』という帯に釣られて読書。結果満足。
1980年出版なので40年前の作品。掘り起こし作品としての仕掛け販売で流行中みたいですね。 書簡体小説という手紙の文章で作られた短編集です。 手紙という性質上、第三者となる読者が得られる情報は断片的です。文章から人物・境遇・物語、手紙をやりとりしている人の間柄が好意なのか敵対なのかなど、徐々に見えてくる構造が面白い。短編集として、手紙を用いた多様な文芸を味わえます。そして意外な結末を感じる瞬間はミステリのどんでん返しの味わいを感じました。 現代のSNSやメールは直ぐに相手に文章が送れる為、短文を複数回やり取りする性質があります。 40年前の本書が今取り上げられて面白いと感じるのは、そういった現代的なやり取りとは違い、時間の掛かる手紙のやりとり、文章のフォーマット、書き方、相手に伝える文章など、手紙そのものが改めて新鮮に見えたからだと思いました。 おすすめです。 |
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なんというか、お手本のような綺麗なミステリ。
アガサクリスティのような雰囲気・サスペンスの展開。コナンドイルのワトソン&シャーロックホームズのコンビ模様。ミステリの古典作品を現代の世界観で楽しめた感覚でした。残酷な描写、心理的不快感もありません。万人向けです。 物語は自分の葬儀の手配をした当日に殺された資産家の事件から始まります。非公式で警察から依頼を受けている元刑事のホーソンと、そのホーソンから事件の模様を小説にしてほしいと依頼を受けた作家アンソニーを主人公として進みます。 正直な所、事件に奇抜さや惹き込まれるような特徴的な要素はありません。殺人事件が発生して、何が起きたのか?誰が犯人か?を捜査していく流れを作家の視点から綴られていく展開です。事件模様は地味なのですが、この作家視点は面白かったです。ホーソン主体で進む捜査に関わる心境。困惑する作者の頭の中。世の中や仕事の話。色々な思考が楽しめます。そもそも著者自身がTVや映画脚本などそれなりに実績がある方なので、自身の史実を踏まえた経験がリアルで面白いのです。 徐々に手がかりが得られるサスペンス感と作家の思考で、後半までは惹き込まれた読書でした。が、残り100ページの20章ぐらいからは駆け足で事件が収束してしまった印象でした。手がかりや真相も一気に溢れて解決してしまい、真相もあまり驚きがないものでした。なので、それまでどうなるのだろう?と気持ちがワクワクして期待値が上がっていただけに、なんだかスッキリしない読後感でした。 視点を変えれば、映像脚本として質が高いです。 手がかりを小出しにして視聴者を繋ぎ止めたり、作家主人公に同調できたり、映像に不快感がでない事件など。奇抜さはないが敵を作らない万人向け。その方向性だと感じました。翻訳もよく文章も読みやすかったです。 |
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シリーズ6作目。シリーズ内屈指の出来栄えではないでしょうか。惹き込まれるストーリーでとても良かったです。
3,4,5作目...と刊行ペースが速いが質が薄くなっていると感じて手に取るのを躊躇っていました。が、本作はそんな気持ちを払拭する出来栄え。著者の力量と幅を感じた1冊でした。 このシリーズは1作目以降は何処から読んでも大丈夫です。 本書はシリーズ作品とは思えない程、雰囲気が違い、重い話で進行します。 主人公は41歳の母親。シングルマザーとして仕事と家庭の悩み、反抗期の娘との関係。行方不明だった前科のある毒母親の影が身の回りに現れ暗雲が垂れ込まれます。この流れはイヤミスのように陰鬱な気持ちにさせていきました。今までのシリーズ作品のようにライトでサクッとしたイメージと違い、重く感情に響いてくる内容。ただ読みやすい文章は今まで通りなので、重い話で長編とはいえ一気に読めました。 事件の背景も込み入っており面白い。この規模を短編のページ数でやってしまうと手がかりと回答だけの薄いストーリーになってしまいそうなので、長編の作りは功を奏していると感じます。 今回の沙羅は人間にサービスし過ぎなぐらいよく喋り、閻魔のルールとしてどうなのかなと疑問を感じる所はあります。が、ツンデレのように沙羅は基本的に人間に優しい一面があると感じられ微笑ましく思えました。不幸な話の中での希望も描かれており、惹き込まれた読書でした。 このシリーズ気に入っています。読みやすさと物語の面白さは〇。今回は感情に響く話も書けるときたので、次はミステリとして沙羅もが驚くような意外な結末話を読んでみたいと期待してしまいます。 次回も楽しみになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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魔法が存在する世界でのファンタジー×ミステリ。☆7+1(好み)
ただし誰でも魔法が使えるわけではない。魔法全書に記された11種の魔法だけが存在し、それぞれの魔法が扱えるのは各魔女のみ。何でもアリの世界観ではなく、ある程度制限を設けた中での特殊設定ミステリでした。 扱われる事件は、祭りの中で発生した衆人観衆での密室殺人+炎の火災。 剣と魔法の雰囲気も然ることながら、魔女狩りの世界観が組み込まれている雰囲気も面白い。 密室ものでよく議論される、何故密室にするのか?についても、本書では、論理的に解釈できなければ、それは魔女による魔法が扱われた可能性がある為。と、この世界ならではの捉え方で議論されるのが新鮮でした。 本書はミステリというより、バトルファンタジーが主です。ミステリを期待するものではありません。 ただ、扱われる真相と仕掛けはミステリでは前例が思いつかず、本書の世界だから可能にする特有なものな為、とても刺激になりました。唯一無二のネタってそれだけで価値が高まります。 個人的に思う所として、 1000年越しの謎と見立ての事件ですが、『1000年』の扱いにもっと深みが欲しかったです。500年でも200年でも良さそうです。1000という時間。情景や歴史的な変化。もっと深みがあればと思いました。文字だけで"1000年"が頻繁にでるので薄く感じてしまいました。 ルドヴィカとエルシリアの関係について。そんな殺し合うような殺伐とした関係にしないでも良さそうなと思います。ここだけなんかのめり込めませんでした。騎士ウェルナーの成長やルドヴィカとの関係など、王道ファンタジーとしてとても面白く楽しめました。 11種の魔法の存在やキャラクターなどは続編を考慮した作りとなっており、続きの冒険が気になる所ですが、続巻がないのが残念です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本昔話を題材としたミステリ。
日本昔話の内容について新解釈を述べるようなものではなく、設定・小道具を用いた作り。 例えば、最初の物語は『一寸法師』が扱われます。小さな侍や、人を大きくしたり小さくする『打出の小づち』がある世界で殺人があったら?という作りです。 SFやファンタジーの特殊設定ミステリは世の中に沢山ありますが、本書の巧い所は特殊な設定を読者に説明する事無く認識させられる事。『一寸法師』『花咲か爺』『鶴の恩返し』『浦島太郎』『桃太郎』、どんな物語か説明せずとも読者はある程度の予備知識がある為です。さらに内容を伝えやすいので商業的にも宣伝し易いですね。中々巧いです。 さて、予備知識もあり物語を認識している中で、ミステリとしてどうだったかと言うと正直な気持ちは大きな刺激が得られなかった印象。ベースの昔話は認識出来ているのですが、そこから変化させた本書の物語が分り辛く感じました。『花咲か爺』『鶴の恩返し』に至っては昔話要素が雰囲気だけ活用されていて必然性はなく感じます。短編集として作品を揃えたような印象。ミステリとして考えなければ『鶴の恩返し』の構造は面白かったです。 『浦島太郎』についてはこの世界を活用したミステリとして見事でした。必然性もあり、これが一番良かったと思いました。 『桃太郎』については、鬼ヶ島での連続殺人CCもので、誰が犯人かのドキドキ感と真相の面白さは中々でした。難点は鬼の名前が把握し辛くて誰が誰だか分り辛い。鬼太(赤鬼)、鬼菊(桃色鬼)とかイメージし辛い。いっそ、赤鬼、青鬼と言った色だけで良かったのでは。 表紙とタイトルがいいですね。売りやすそうです。 |
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