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英雄たちの朝
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英雄たちの朝の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
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著者名からではわからなかったが、読んでいくうちに著者が女性でないか?と思いはじめ、実際そうだった。出だしの女性同士のやりとりがリアルで、妊娠した女がなぜあれほど勝ち誇ったような顔をしていられるのかの説明は男には到底無理だ。 正直、進行が緩慢で450ページのボリュームは冗漫に感じた。結局それは女同士の争いであり母娘の対立であり、女性読者を楽しませるかもしれないが、男性読者は引いてしまう内容ではなかったか? 主人公のカーマイケル警部補はさほど魅力的には映らなかったが、カーマイケル警部補が三部作全作を通じての主人公のようだ。次作を読み続けるか迷う。 | ||||
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おそらく翻訳家さんは、ブルーベルの花をご存知でなく、植物の名にも疎く、ブルーベリーを花の名だと勘違いされているのでしょう。 ですが、この言葉が出てくるどのシーンを取っても、ブルーベルの花について語っているとしか読めません。そもそも両者は見た目も、その姿からイメージされるものも、全く違います。 些細な翻訳の間違いに目くじら立てなくても…と言われるかも知れませんが、全然些細な事ではないのですよ、これが。 5月初頭の英国田園地帯を代表するものの一つが、森林の樹々の足元を彩り、青空を地に映したかの如くに美しいブルーベルの絨毯です。 主人公カーマイケルの登場シーンで、彼の目を通してこの、一年のほんの一時期しか見られない天国のような光景が描写されることで、物語の進行につれて徐々に大きくなってゆくファシズムの影が、読者の頭の中でより不気味に、より暗く対比されることになるのです。 その大切な花の名を、それも何度も何度も、最後まで間違えては、著者の意図をすっかり台無しにするようなものです。私が著者だったら、マジ怒ります! なので、物語は面白かったけど、星一つ減点。 | ||||
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歴史改変の傑作との噂の三部作。450ページ、長大な序章といったところ。個人的には200ページくらいまでは退屈で、何回も読むのをやめようかと思いながら我慢して読んだ。中盤くらいからようやく歴史改変の匂いがぷんぷんしてきて、おもしろくなる感じ。次作が楽しみになってきた。 | ||||
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信長が本能寺で死ななかったてな小説を何度か読んだことがあってそれらが全てつまらん小説だったので、これもその手合いかと眉に唾して読みましたら面白いこと面白いこと。まるでこっちが本当の歴史ですよみたいな雰囲気を醸し出しつつ物語は淡々と進んでいきます。ここを退屈だと思う人も多いだろうけど、私はこの淡々さが大事だと思います。イギリスがじわじわ少しづつファシズム化していくムードと重なり合うわけです。大きな変化の前夜の静けさみたいなのが全体を覆っているんですよね。このムードがたまりません。 | ||||
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英国が第二次世界大戦中にナチスと同盟を結ぶという歴史改変小説である。その英国政権の中枢にいるファージング一派で起きた殺人事件。それを追うスコトランドヤーズの 刑事カーライル。英国伝統の推理小説かと思いきや、最後の落ちは読んでるものの消化不良を間違いなく引き起こす結果となる。三部作らしいが、どうも第二話以降 でもこの結果が覆ることはなさそうだ。歴史が改変されていることからくる居心地の悪さと結末の消化不良で正直読んで損した作品。 | ||||
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第二次世界大戦において、もし英国がドイツと和平を結んでいたならば、という歴史改変物。原題は「Farthing」。「ファージング」三部作の第一作である。「Farthing」は舞台となる土地及びそこに巣食った政治勢力の名前であるが、様々な意味で"真実から遠い"という事を含意しているのではないか。作中、殺人事件が起きるので、歴史改変ミステリと言えなくも無い(ユダヤ人を夫にした貴族の娘であるヒロインの一人称と捜査に当たる警部補の言動を主体にした三人称の章が交互に挟まれる構成は、そうした雰囲気を醸し出している)が、作者の狙いは別にある。 ドイツと和平を結ぶ事によって、英国が次第にファシズムに染まって行く恐怖、あるいは大きな権力によって個人の尊厳と自由が奪われて行く恐怖をジックリと描きたかったのだと思う。そして、人種差別、階級社会、同性愛蔑視といった個人の自由を束縛するものへの強い反骨心が全編を貫いている。作中の主要登場人物である貴族兼政治家達やその係累には(被害者の母親を除いて)ロクな人間が居ない。一方、ヒロイン(とその夫)を助ける元家庭教師、一家の相談人といった人達は皆ユダヤ系の女性で、迫害の体験を受けて慈愛に満ちているという好対照の妙も光る。また、重いテーマを扱いながら、新聞のコラムでも採り上げられた、「わたしは、馬を一頭まるごと食べ尽くしたあと、鞍まで食べられるくらいお腹がぺこぺこだった」という様な英国流ユーモアもそつなく添えられている。 また、英国におけるイングランド、スコットランド、ウェールズ、(北)アイルランド間の微妙な関係も良く映し出されている。上述の警部補は偏見に捕われない正義漢なのだが、どうやらスコットランド人らしいのである(この警部補は三部作を通した主人公の由)。非常に充実した内容で、二作目以降も読みたくなった。 | ||||
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典型的な 歴史改竄小説 レン・ディトン SS-GBと同じように 第2次大戦後の英国を舞台にしている 設定はダンケルク撤退 バトルオブブリテン の後にナチスドイツ副総統 ルドルフ・ヘスが英国に飛び和平講和が締結されて 英国が 徐々にファシズムに傾斜していくという歴史背景 物語は主人公ピーター・カーマイケル ロンドン警視庁警部補 と事件の当事者の女性が其々入れ替わりに語るという形式 貴族の館で 有力な国会議員が殺されその胸にはユダヤの星 が置かれている 捜査の指揮を執る カーマイケル警部補一見単純なテロ事件 とも思われ証拠は 貴族の娘ルーシーの夫ユダヤ人の銀行家 ディヴィッド・カーンの犯行を示す 或る手掛かりを頼りに 捜査を進めたカーマイケルは巨大な陰謀により この暗殺が仕組まれたことを 解明する 殺人事件の謎解きと並行して当時の英国上流階級の生活を中心に 英国が徐々にファシズムに犯されてゆく過程が描かれている 歴史改変小説と推理小説を 巧みに組み合わせた 中々の 傑作小説と思える | ||||
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週刊文春で紹介されていたため、購入。 読後、既読の別の小説の作者であることも知りました。 「優れた作品は世に伝わるんだな」、というのが率直な感想です。 結末まで丁寧に読めば、非常に満足できることは保証できます。 ifの歴史を取り扱った小説ではありますが、それが面白いポイントではありません。 まず、丁寧な舞台設定に人物造形があり、読み進めていくうちに 登場人物を人間として「好き」或いは「嫌い」と感じている自分に気づきます。 導入部分は冗長な程ですが、丁寧で淡々とした描写の中、 ライトノベルとは異なり、文章がしっかりとしている本作ではギリギリ退屈せず、 自然と物語の世界に入っていくのですね。 だから物語が一気にクライマックスに入ると、これまで見えていたものが 今までと異なった様相を呈し始めている事に気づきます。 平和でつまらない生活の裏に潜んでいる物、 それを知ってしまえば今までの生活には戻れなくなる。 善を為すのも悪を為すのも神ではなく人間であり、 その決断が未来に続いているのだ、ということがみえてくる。 作者の冴えきった手腕を感じることができるのが本作です。 9割は単調かもしれませんが、最後の1割にきちんと全てが精算されます。 いわゆる推理小説のジャンルというよりは、謎解きがドンデン返しに繋がる。 そんな作品であるといえます。 面白い小説を探している方は、是非読まれてはいかがでしょうか? | ||||
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’00年にファンタジー小説で作家デビューした、英国ウェールズ出身でカナダ在住のジョー・ウォルトン女史による、ナチス・ドイツと講和を結んだ英国を舞台にした、歴史改変エンターテインメント3部作の第1弾。 ’10年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門で3部作まとめて第2位、「このミステリーがすごい!」海外編で第10位。講談社の文庫情報誌『IN★POCKET』の’10年11月号「2010年文庫翻訳ミステリー・ベスト10」で「総合」同点第4位、「作家が選んだ」部門第9位、「翻訳家&評論家が選んだ」部門同点第4位にランクインしている。 1949年、英国は政治家および政界の有力者、軍人、大資本家、社交界で有名な貴族からなる“ファージング・セット”と呼ばれる一大派閥の導きで、ナチス・ドイツと単独講和を結んで8年。この年の5月、そんな派閥の中心メンバーの内輪のパーティーが南イングランドのハンプシャーの田園地帯にある、資産家で子爵・貴族院議員の広壮な邸宅で催されていたが、和平に尽力した下院議員が変死体で発見される。 物語は、その邸宅の令嬢だったが、家族の反対を押し切ってユダヤ人の銀行家と結婚し、パーティーに招かれて里帰りしているルーシーの一人称叙述と、ロンドンからやってきて事件の捜査をするスコットランドヤードのカーマイケル警部補の三人称叙述が、ほぼ同じタイミングで交錯しながら進行してゆく。 ベースは、黄金期の本格パズラーを彷彿させるフーダニットだが、並行世界ならではの英国の、「ユダヤ人差別」「共産主義の弾圧」「国民の自由に対する制約」「ファシズムへの道」などが、‘わたし’ことルーシーの身の回りの述懐からより身近にひしひしと伝わってくる。一方で真相にたどりつきながらも権力の壁に突き当たり、忸怩たる思いをするカーマイケルの苦悩も、この設定ゆえのことである。この物語の救いは、折り合いがつけられない“旧弊な家族”と“ファッショ化する英国”とに見切りをつけ、夫との新しい世界を築いてゆこうと船出する‘わたし’だといえよう。 ともあれ、この、読みやすいながらも深みのある壮大な物語絵巻は、一人称のヒロインを替えて、第2部『暗殺のハムレット』へと続く。 | ||||
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ファシズムへの前奏曲――それは、初夏のイギリス南部の美しい田園風景の中で、静かに奏でられ始めます。いや、本当はもっと前からあちこちで奏でられ始めていたのですが殆どの人は気付かず、架空の1949年5月、後に親独派が権力を掌握する最終段階で行なったと判明する或る殺人事件が某大邸宅で起きます。最初はそこの主人や泊りのパーティー客や使用人達からの聴取がポワロ物っぽい雰囲気で行われ、当然読者は真犯人は誰だ?と気が急きますが、これは推理小説の形を取ってるものの、意外な犯人捜しや巧妙なトリックetc.を楽しむのがメインの軽い娯楽小説ではありませんので、念のため。 小説の構成は、事件の舞台となった大邸宅が実家の女性と、スコットランドヤード警部補の視点で、交互に語られる形を取っています。(もっと詳しく述べると、前者は一人称による回想、後者は警部補を主人公とした現在進行中の物語。)この巧みな作りは、忍び寄るファシズムの気配や、気が付いた時には手遅れとなる恐さを、効果的に表しています。 読了後、ドイツのニーメラー牧師の有名な次の一節、「最初彼等はユダヤ人を連行しに来たが、私はユダヤ人ではないので声高に反対しなかった。次に彼等は共産主義者を連行しに来たが、私は共産主義者ではないので声高に反対しなかった。それから彼等は労働組合員を連行しに来たが、私は労働組合員ではないので声高に反対しなかった。そして彼等は私を連行しに来たが、その時にはもう、私のために声高に反対してくれる人は一人も残っていなかった。」を思い出しました。仮に、この小説で描かれているようにイギリスがドイツと講和条約を結び、植民地は温存され、アフリカのフランス領も英独で分け、米国参戦がなければ、21世紀の今、巨大な米国はなく、斜陽とは言えまだまだ大英帝国はパワフルだったのでしょうか。しかし、ジョンブル魂はどこへ行った?、という事になったでしょうね。イギリスとドイツが手を結んだ場合、ドイツがイギリス化する可能性はなく、イギリスはドイツ化(全体主義化)の方向へ行くのが、リアル且つ無気味。――現実に起きた歴史は一つですが、それ以外の可能性について色々考えさせられました。 全ての方にお勧めしたい本です。そして、これはまだ導入部ですので、是非次の第二部に進んで頂きたいと思います。 (映画『日の名残り』などが好みの方には、特に。ディテールが丁寧に描き込まれているので、風景や大邸宅の様子から衣装・ティーカップに至るまでよく出来た映画を鑑賞しているかのように楽しめました。) 最後に、素晴らしい翻訳である事を付け加えておきます。 | ||||
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第二次世界大戦のときにナチスドイツとの和平を選んだイギリスを舞台に、その講和条約を締結した立役者である下院議員の殺人事件を描く。 一見、歴史改変的設定の本格推理小説の装いをしてはいるが、実は、もっと深い。ナチとの和平という選択をしたイギリスが、どのようにファシズムに染まっていくのか、ユダヤ人迫害へと進んでいくのか、という有り得べき歴史の壮大な思考実験の感がある。 ミステリとしてはあまり謎解きの要素はなく、物足りないし、事件の結末は納得がいかないところもあるだろうが、むしろ、この小説が単なるミステリにとどまらない証左でもある。 著者の描写には、著者自身の政治的信条、歴史観も見え隠れするが、それに対して、賛成する人でなくても、どのようにして、私たち民衆は、自ら進んでファシズムに取り込まれていくのかという点について、深く考えさせられるだろう。 作中でジョージ・オーウェルと思しき作者の『1974』という小説も題名だけだが出てきて、この小説、おそらくはこの三部作がディストピア小説として描かれていることの象徴のように感じた。 舞台であるイギリスの歴史や人物について、もう少し知識があれば、もっと楽しめたと思うが、幸い、詳しい訳注もついているので、参考にしながら読んだ。 主人公であるスコットランドヤードのカーマイケル警部補も魅力的に描かれている。 | ||||
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「館」モノのミステリを期待していたが、全然違った話だった。 「もし〜だったら」という、架空の歴史物語。 舞台は1949年のイギリス。ナチス率いる第三帝国(ドイツ)と連盟を結び、戦争から回避した。ストーリーの始まりでは、イギリス政権が第三帝国の唱えるユダヤ人排斥から一線を引いているものの、ストーリーの途中で首相の交代が起こり、後にナチズム化してしていくことが暗示されている。 政治を動かす中心人物々が集まるファージングの屋敷で、次期内閣入りを期待されていた国会議員が殺され、次いで、襲撃事件が起こる。犯人が残した痕跡は、ユダヤ人とボリシェヴィキ(マルクス・レーニン主義の社会主義者ということになるが、架空の歴史上どういう政事の立ち位置か、本書でははっきりしていない)。 ユダヤ人と結婚したイギリス貴族の女性、ルーシー・カーンと、スコットランドヤード警部補、ピーター・カーマイケルが交互に語り、2つの事件を通し「ファージング」の内情をひもといていく。 ミステリとしての謎解きは後半あっさりと解明し、話の中心は政治権力の恐ろしさ、ということが分かったところで1巻終了。ナチズム、ユダヤ人、同性愛者、社会主義、テロリズム、階級制度などの要素は断片的で典型的な型に収まっていて(この意味では、世界史を取っている高校生などは読みやすいかもしれない)、キャラ設定のためだけに用いられたも取れるが、一方で、こうした重い要素の1つ1つですら政治権力の前では「些細なこと」という暗示なのかもしれない。 この1冊だけではまだ分からないことが多すぎるので、シリーズ3巻全部読まないといけないようだ。 | ||||
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ナチス・ドイツと講和したイギリスを舞台にした歴史改変三部作の第一作目。 二次大戦を契機にした歴史改変もので、ユダヤ人問題と聞くとユダヤ警官同盟が思い浮かぶけど、あちらよりも普通のミステリ寄り(に見える)。 戦争を終わらせた最大の権力者たちとその屋敷という定番の設定で、権力者一族でありながらユダヤ人と結婚した女性と敏腕警部補の狭い視点で交互に語られるため、改変ものの醍醐味である現実とのギャップはあまり楽しめない。 しばらく読んでいて、これは単に改変世界を舞台にしただけのミステリなのかと思いきや、後半から個人の奮闘などどうにもならない、真実も法律もねじ曲げる強大な権力が見え始め、ドイツとの和平は前座に過ぎない、さらにグロテスクな改変を、主人公同様に実感することになる。 最もわかりやすい改変の『一九七四』は、イギリスにとっての終戦が早まったことによって、こちらも10年早くなったのかもしれないが、それより何年も早くビッグ・ブラザーの支配が始まることを暗示する重苦しい結末。 ナチスはまだソ連と戦争を続け、おそらく、日本も軍国主義を維持したまま歴史が進んでいるように見える。イギリスだけでなく、世界はどう変貌していってしまうのか、光明は差すのか、それとも暗黒の未来が待っているのか。 | ||||
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