静かなる炎
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フィリップ・カーのグンター・シリーズ全6冊読了。 先月、積読になっていた(しかもなぜか2冊もw)第6作目の『死者は語らずとも』を読んで、「これはすごい!」と思って過去の5冊分を全部買って読んでみたのである。 当初は、このグンター・シリーズは3部作として書かれ、日本では1990年代に新潮文庫から出ていたが、すでに絶版。 古本で手に入れた。 後半の3作はPHP文芸文庫で今も新品で手に入る。 それはさておき、このグンター・シリーズの初期3部作は、フィリップ・マーロウをワイマール末期からナチス支配下のドイツに置いたような作品である。 作者本人も、そのことを意図しているのだが、シチュエーションとしては見事に嵌っている。 何しろ皮肉一つ言うにも命とりになりかねない時代である。 そこで様々な事件にぶち当たり、解決していく(あるいは解決できないでいく)のだが、実在の人物が多数登場して、説得力は相当なものである。 2作目では、ハイドリッヒの下で、やむなく事件を解決する役回りとなり、3作目では戦後のドイツ・オーストリアでスパイものの展開となる。 4作目では、人体実験のナチスの医者に入れ替わる陰謀にはまることによってイスラエルのモサドの前身のような機関に命を付け狙われる。 その結果、後期の5作目は舞台をアルゼンチンに移す。 そこでペロンやエビータもからむ醜聞と事件に巻き込まれる。 第6作目では、戦前のドイツと革命前夜のキューバが舞台である。 5作目と6作目は、戦前のドイツと1950年代のブエノスアイレスやハバナを往還する叙述スタイルが取られているが、まあとにかく、仕掛けの大きさには舌を巻く。 大がかりなどんでん返しがこれでもか、これでもかと続くのである。 もちろん、そこにはご都合主義的な展開も含まれているのだが、その壮大さに免じて、という気持ちにさせられた。 もう1つ、この6作に共通しているのは、主人公のグンターが何度も絶体絶命の状況に追い込まれることだ。 本当に、どうやってこの窮地を脱するのだろうと思って読み進めると、都合よく(笑)助かる。 ここいらもご都合主義なのであるが、以前読んだスティーブン・キングか誰かの「ミステリーの書き方」といような題名の本には、読者を惹きつけるこつは主人公がもうどうやっても助かるとは思えないような絶体絶命のピンチを描くことだというようなことを書いていた。 フィリップ・カーがこの本を読んで倣ったとは思えないが、確かにこの手法はミステリーの王道なのだと実感はしたのであった。 作者のフィリップ・カーはすでに亡くなっており、続編が書かれることはないが、まだ本邦未訳のグンター・シリーズが2冊あるようである。 これが翻訳されるのを楽しみに待ちたい。 | ||||
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反骨の一匹狼で、窮地に立たされても減らず口は忘れず、美人にだけは優しく女にモテまくる、典型的なハードボイルドの主人公。 若い頃ならこんな男に憧れたかもしれないが、ある程度歳を重ねた今、さすがに現実離れしていてあまり感情移入はできない。 自分の娘といってもいい歳の美人が、向こうから告白して来たりする恋愛要素も、おじさんの願望まる出しで興ざめ。 ナチスが戦後70年経っても、未だに外国の娯楽小説に悪役として登場させられてしまうのは、実情を考えたら仕方がないが、さすがに食傷ぎみで新鮮さはない。 中盤まで、1950年のブエノスアイレスと、1932年のベルリンの事件が交互に描かれる。 この構成が難物で、それぞれがほぼ独立した別の話なので、二冊のミステリを同時に読まされているのと変わらず、さらに、耳慣れないドイツの人名がこれでもかと大量に出て来るので、かなりの忍耐力が必要になる。 そのわりには、過去の事件は現在の事件とあまり関係がない上に、結末も拍子抜け。 ベルリン三部作から雰囲気は大きく変わっていないのだろうと思うし、当時のそれぞれの国の政情や、実在の有名人を巧みにストーリーに絡ませる手腕、筆力はベテランのなせる技で、並大抵ではない労力をしのばせる。 でも、恐らくそれらの書きたい事を全部詰め込んでしまったため大著になり、全体として焦点がぼやけてしまい、まとまり感があまりない。 「運に任せる独特のやりかた」(p.645)と著者自身が認めてしまっているように、この主人公の捜査の成果は偶然によるところも大きく、ミステリの醍醐味に欠ける。 結局、事件らしい事件は起こっていないし、決着もすっきりせず、政治の陰謀に彼が振り回されたまま終わってしまったという印象が強い。 そういう意味では、ミステリというよりは、ひとりの男の遍歴をたどった物語として読むべき作品なのかもしれない。 | ||||
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よかった。面白かった。続編を出してほしい。 よかった。面白かった。続編を出してほしい。 続編をぜひぜひ読みたいので、嫌なことは書かないようにしたいが、本音もちょっとだけ書きたい。 ラストがちょっと厳しすぎるのではないか。これはエンタテイメントなのだから、長い話を最後まで読んだ読者を、もう少し喜ばせるようなラストであってほしい。 アルゼンチン編での展開が、ちょっと、ご都合主義的、偶然多発的ではないか。特に、失踪した美少女の行方の真相が肩すかしの感があった。 しかし、続編をぜひぜひ読みたい。 | ||||
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何気なく手に取った本作品。全然前知識なく読み進めました。 ナチス独裁下のドイツベルリンを舞台にした異色ハードボイルドシリーズの、久方ぶりのシリーズ再開作のひとつだそうです。 しかし、予備知識が一切なくても、作品としての粒が立っていると言うか、実に読み応えあり、 すっかり皮肉屋で尋常ならざるタフガイ、グンター氏の大ファンになってしまいました。 人気を博した前シリーズは、ナチスの台頭により、様変わりするベルリンのただ中にあって、 自分を失わず驚くべき丹力でもって生き抜いた一人の探偵を描いたものであり、 再開したシリーズのそれぞれの作品もまた、その流れを引き継ぎ世界観を拡げているようです。 第二次大戦後、ドイツを追われたナチス残党が大量に流れついたというより、 積極的に受け入れられたファシストペロンの支配するアルゼンチンを舞台に、 ナチス台頭と変わりゆく祖国ドイツ、そして愛すべきベルリンと凄惨な戦争を刮目し続けた主人公である探偵グンターが、 自身にも因縁ある殺人事件のなぞ解きの渦に、祖国を遠く離れたアルゼンチンにて、時を超えて再び巻き込まれてしまう・・・、というのが本作の大筋。 本当にぐいぐい引き込まれます。歴史上実在した人物が実に生き生きと配置され、作品における濃厚なスパイスになっています。 生々しくこちらの想像をかきたてられる描写はお見事!!としか言いようがありません。 ハイスピードで転がり続ける事件の顛末はおぞましいものなのですが、ペーソスというかぼやきというか、グンター氏の減らず口は、作品の持つ暗い世界観においてある種の風通しの良さを招いていて、にやりとさせられます。このタフガイの男臭さには終始にやられっぱなしでした。 これは前シリーズ含め全作読まなくては。シリーズ再開して以降もどんどん作品は出ているそうなので、日本でもしっかり紹介してほしいものです。 | ||||
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フィリップ・カーと言えば、<ベルリン三部作>を読んだ後あの迷作(?)[エサウ]を読んで、もうこれっきりと見放していたんだが、 ここのレビューの評価の良さに久々に手にとってみたのだが、...前のベルリン・シリーズを凌ぐ面白さに度肝を抜かれた! 本当、出だしからアレヨアレヨの展開に...戦後アルゼンチンと戦前ベルリンでの類似猟奇殺人の捜査話から話はトンでもない アルゼンチンでのユダヤ人受難話に発展していく様は、ドンデン返しも用意されており、本当手練の技。 その話を彩るのは、ペロン、エビータ、アイヒマン、メンゲレ、などなど歴史上名高い(あるいは悪名高い)登場人物達! 面白くないはずがないわな...主人公グンターは金髪碧眼なんだが、思わずハンフリーボガードを思い出してしまった。 幕切れもなんとなく、[カサブランカ]の趣を携え... これから、前作[変わらざるもの]読んで時間潰すので、続編を早く刊行してくれ。 兎に角、面白いハードボイルド探しているならお薦めしたい。(ただし、ドイツ語の名前は、ややこしい!) | ||||
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