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IN
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INの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.51pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 1~20 1/2ページ
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やっと手に入り 早速 読み始めました 大変に満足です | ||||
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内容は 好きな作家の作品なので、楽しめました。ただ、字が小さすぎて 年寄りの私には読みにくかった です。ページを多くすることで 多少 本の厚みが増しても 読みやすい方が良いのでは? | ||||
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小説家のいる二家族の物語が、絶妙にクロスする面白さ、その構成の妙に唯々、感銘する。 推理小説でもないのに、〇子は誰か?の真相に肉薄し迫る面白さ、それが過去の恋愛である 点が、なおさら、この小説を大人の作品に仕上げている。 この本で、心に残った”なるほどの一文”「私たちの滑稽な奔走そのものが恋愛の姿なのです」 確かに、恋愛で起きる様々な出来事をうまく表現していると思う。 やっぱり、桐野夏生は凄い!と心底思った。 桐野小説から随分、遠ざかっていたが、また、読みたくなった。 | ||||
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妻と夫、男と女、子供と家族。人間の原点である愛と嫉妬と憎しみと懐疑がそれぞれの立場で緻密に描かれており、自分自身が物語に入り主人公と重ね合わせてみる。 作者の緻密な人物描写、心の中の葛藤が克明に描かれておりぐいぐい引きこまされて行く。 | ||||
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桐野夏生の小説に〚OUT〛と言う外国でも評判の高い本がある。「OUT」があるなら「IN」もあるだろうと捜したらこの本があった。だがこれは〚OUT〛と全く関係ない。「IN」とは各章のタイトルである「淫」「隠」「因」「陰」「姻」「IN」の総称である。第三章だけが「〚無垢人〛(作)」となっている。別の漢字の「いん」を当てても良いではないかと思うが判らない。 舞台は2005年の頃。物語は、中堅作家鈴木タマキが1988年に亡くなった著名作家・緑川未来男が1973年に出版した〚無垢人〛の中で書かれている愛人〇子の実相を、フィクションとして追及する過程を追っている。タマキの三人称の語りであるが、すべての視点は彼女のものである。 緑川未來男のモデルは明らかに島尾敏夫であると読める。『無垢人』は島尾の『死の棘』である。〚無垢人〛に〇子とのみ書かれる浮気相手の女は〚死の棘〛でも単に「女」と呼ばれているのみ。〚無垢人〛も未来男の浮気相手が、緑川家に取り付き、破滅させようと計る悪魔の女として書かれている、男性本位の作品だとタマキは読む。 緑川の代表作〚無垢人〛は私小説の最たるもので、登場人物のほとんどが「実名」を与えられている中で、「〇子」のみはモデルも判らず謎に包まれている。タマキはそれを「恋愛における抹殺」と呼び、モデルを掘り起こし彼女の「名誉回復」を計りたい。のんなタマキには、従来の歴史を転倒させずに置かないジェンダー思想を読み取れる。 だがストーリーはそれほど単純ではない。タマキには7年も付き合い、彼女を育て上げた、阿部青司という編集者の恋人がいる。双方とも結婚している。二人の関係は浮世を断った純粋は文学上の交わりだ。作家のタマキは彼と「一線を越える」覚悟はできているが、サラリーマンであり、浮世での出世願望もある青司はそこまでは踏み切れない。次第に「虚構」の世界に飽きてきたことも原因だ。二人はやがて破局を迎え、彼はその後突然死する。タマキが心から愛した青司は彼女の小説に登場することなく「抹殺」されるだろう。ここには緑川と〇子の関係の正反対の現実がある。 こんな背景を保ちつつ、タマキの〇子探しが始まる。各章はその「容疑者」探しで成り立つ。『緑川全集』に作家と共に写っている謎の美少女・石川茂斗子、緑川の文芸誌の「同人」で文才がないと言われた三浦弓美(故人)の師匠だったプロレタリア作家の村上禎子(故人)の娘静子へのインタビュー、新橋で文壇バーを開いていたという浦霞治子の息子からのたれこみ電話。そんな探訪は読者を飽きさせないが、すべては空振りに終わる。不思議なのは桐野の同様なモデル小説、林芙美子が陸軍報道部報道班員として南方を歴訪した様を描いた『ナニカアル』では、登場人物のほとんどが実名のままであるのに対して、この作品では全員が仮名で登場することだ。本名を類推できそうだが、誤りを恐れて止める。 最後に緑川の未亡人千代子を北海道に訪ねる。〇子は存在しない。すべてはフィクションだと明白に拒否する夫人だが、退去間際に、書かないという条件で、タマキだけに、緑川に宛てた三浦由美の「遺書」を見せる。〇子は実在した。千代子の存念が陽気迫る場面である。 〚ナニカアル〛で示唆されていた軍国日本批判とは異なり、ここから何かの明らかな批判を読み取ることは難しい。『死の棘』に興味がない読者には退屈な本でもある。本書の本当の面白さはそこではなく、作家鈴木タマキの、したがって作者桐野夏生、の普段は語らない創作上の秘密が満載されているところにある。私の場合はこれらに感嘆し、納得したと言っても過言ではなかった。以下はその抜粋である。数字は単行本の掲載頁 〇作家の本性―恐ろしいほどの冷たい視線。自分のことを他人ごとのように見る第三の目[を作家は持っている。従って作家は善人でありえない] 〇真の作家は、負の部分を原動力にして、前に進んでゆく51 〇しかし小説とは、そもそも不公平で不公正なものではないだろうか……夫の真実、妻の真実、愛人の真実、子供たちの真実、各々が真実と信じるものの集合が、真実と言う名の、過ぎゆく時間である130 〇作家は恐ろしいほど愚直に自分の感情を信じている190 〇確かに自分の書いたもの小説が密かに現実を切り崩していくと気がある。そんな時は小説家である自分が悪魔に見えたり、虚構が恐ろしいものに思えたりするが、現実を切り崩すほどの虚構は、現実よりも厳密に作らねばならないのだ204 〇小説とは皆の無意識を拾い集めて、物語と言う時間軸とリアリティを与え、さらに無意識を再編することだと気づく240 〇小説として立ち現れる幻……自分が書いてきたのは、現実を凌駕するほどの虚構でなくてならなかった。優れた虚構には現実を買えるほどの力があるはずだと243 〇なぜ自分はこのように現実と幻が混沌と混じり合う仕事をしているのだろう245 〇だから書くという仕事が見せる夢と幻は、タマキ[作家]の周囲を知らぬ間に変えてきたはずだった。淡く薄い交情を書けば、淡く薄い世界に、激しい感情を書けば激しい人間に。濃密な人間関係を書けば……濃密に246 〇真実は真実ではないからです。真実と思えるものを書いた時点で。それはフィクションになります。それを知っている作家は、真実と思えるものを魅力的に、そして面白くします。そのためには真実に間違われるフィクションが必要なのです。ですから作品はすべてフィクションなのです275 〇どこかの誰か[の読者に]に、自分のことが書かれていると勘違いさせて、居ても立ってもいられない境地にさせ、密かに人生の針を狂わせる[のが]小説というもの286 | ||||
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恋愛の「抹殺」がテーマのお話。 作中に登場する『無垢人』は、島尾敏雄の『死の棘』をモチーフに していることがわかる。 『死の棘』、高校時代に昭和最高の文学と現国の先生にいわれ 薦められていたのだが、なかなか手が出ず、最近ようやく読んだ。 読んだといっても、圧倒的な閉塞感に苦しくなり 途中で読むのをやめてしまったのだ。 恋愛における抹殺とは、なんだろう。 作家である主人公のタマキは自身の終わった愛に思いを馳せながら このテーマを掘り下げていく。 最後に登場する愛人とされた○子からの手紙の下りに この物語の本質はあると思う。 死んでゆく者こそが無垢であり また、タマキの愛人も作中で死ぬ。 ただ、私は思う。 死んでゆく「者」ではなく、死んでゆく「恋愛」つまり、 その瞬間の思いこそが無垢なのではなかろうかと。 あとは、経年とともに腐敗していくだけで、 それを示唆した下りが作中に存在する。 「その時はそう思った」とは、恋愛の本質でもある、とタマキは 思った。恋愛は時間の経過に堪えられずに、密かに変質していく。 腐敗と言ってもいい。ガスがたまり、一気に爆発する。 爆発後は、二人とも、てんでばらばらに投げ出され、 周囲を見回すとまったく違う荒野が広がっている。」 しかし、その時はそう思ったという思いは 永遠になくならない。 存在したという事実が、肉体が滅びてもなくならないのと同様に。 その思いこそが、無垢なのだと思う。 変わらない思いなんて嘘だし だからこそ美しい(醜い) 変わらずにいる努力が大切だというけれど 努力になんの意味があるのだろう? そもそも恋愛は、恋愛したくてするものではなくて 不可抗力的にしてしまうものなのだ。 不可抗力で始まるものは 不可抗力で終わるだろう ただ、「その時はそう思った」ものから 醜いものも美しいものも生まれ、それこそ無垢な魂の発露である。 桐野さんも、それを本書で描きたかったのではないだろうか? | ||||
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私にとって桐野夏生は江戸川乱歩小作家で女探偵「村野ミロ」シリーズの著者。 その後はテーマが変わってしまったので、あまり読んでいません。 久々に読みましたが、私はすっかり引き込まれ、一気に最後まで読みました。皆さんそうでもないのに逆に驚きを禁じえない感じ。 不倫という形の2つの結末。主人公の女流作家の私生活とその女流作家が紐解こうとしている故大作家の私小説に登場する名の明かされない愛人の謎が絡み合って話は進みます。謎に迫りたくて読み進みました。 ひとつ気持ち悪いのは。。。この方が推理作家としてデビューしていながら、謎解きのエピソードがすべて使われず中途半端にぶら下がったままで話が終わることでしょうか? ここで、星マイナス1.5くらい。 星3.5。四捨五入で4とおまけしておきましょう。 | ||||
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過去の私小説「無垢人」の真相を究明していく話と 現実の不倫関係にあった男との再会 そして死。 不倫が与える影響が本人達以上に周りに与えることなのだと。 女は怖い。 | ||||
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桐野さんの「OUT」と反対の題名の「IN」という小説を読んだ。 桐野さんを思わせるような女流小説家と編集者との7年間に渡る不倫の話だった。 設定があまりにも現実と似ているので、私小説なのかな思ってしまった。 だが、実際には、ほとんどがフィクションで書かれたようだ。 作家の鈴木たまきと編集者の阿部青司の恋愛の涯を見たいという感覚や恋愛を抹殺しようとしている鈴木たまきの言葉は心に響いた。 二人の未来がなければ別れると言った鈴木たまきに対して、結局未来を与えることが出来なかった阿部青司だが、鈴木たまきよりも阿部青司の方がその恋愛を必要としていた。 鈴木たまきの方は、恋愛が終わったらその恋愛を抹殺し、何事もなかったように小説を書き続けるが、阿部青司は小説の編集の仕事を離れ、失意のまま不治の病で死んでいく。 女性と男性の恋愛の違いをまざまざと見せられた。 「OUT」は外に向かっていく小説だったが、「IN」は心の内面に向かっていく小説だった。 桐野さん得意の、この恋愛の崩壊による、心の崩壊が今回も書かれていた。 なかなか考えさせられる傑作だった。 | ||||
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言葉の繰り手或いは狂言回しである小説家は、個人の修羅場でさえ華麗かつグロテスクなミステリーとして変容させる。 かつて自分は『柔らかな頬』で、幻滅の極みに追いやられたトラウマがあり、彼女の著作は二度と読むまいと思っていたが、本作への評価を見るにどうやら桐野女史の本来の力量ではないと言うことを知り、恥じ入りながらも再び女史の紡ぎだす生々しい世界観へと足を踏み入れた。 果たしてそれは、確かに『恋愛の抹殺』を真摯に描いた群像型サスペンスと言っても良い巧妙精緻な出来栄えであった。人の心の内面を描くという普遍的かつマクロなテーマから、幾度も転調を繰り返し、読者の興味を煽っていくのだから素晴らしいとしか言いようがない。 ここ最近中身があるようで無い小説ばかり読んでいた自分にとっては衝撃であり、まさに驚天動地な作品であった。内容についてはあまり詳しくは書きたくないが、女性の持つ本能的恐ろしさ、或いは執念深さと言う、ステレオイメージを読者が嫌気がささぬ程度に調整し、一個の作品として昇華せしめた手腕は素晴らしいの一言だ。 最後にあえて言及させて貰えれば、主人公があの結末から生み出す「淫」がいかなるものであるのか、私の興味はつきない。 女流作家はあまり読まないのだが、傑作と言わしめるに十分だろう。 | ||||
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「恋愛の抹殺」という言葉にひかれて手にとった。男女間の執心も愛憎も死によって消えもしなければ浄化もされない、ということを教えてくれた本。 『OUT』という作品に対しての『IN』なのだろうけれど、内容が対になっているわけではなく著者自身にとってのINとOUTなのだと思う。私はむしろINのほうにより心を揺さぶられたかも。個人的には非常に感銘を受けて様々なことを考えさせられたが、かなり好き嫌いの分かれる本だろうと思う。年齢層によっても好き嫌いが分かれること間違いなし。もともと好き嫌いが分かれる作家だと思うが、ファンの中でも賛否両論の作品、つまりOUT、ダーク、グロテスク、あたりの桐野作品が好きで同じものを期待して読んだ読者にとっては肩透かしを食わされた気分になるものだろうと感じた(私自身は上記3作品も好きだけれど)。 一読すると「○子」探しが特に興味深いわけでもドラマティックでもなく、○子が判明したからと言って意外でもなければわくわくするような展開があるわけでもなく平行するタマキのストーリーは私小説風味だし...なのにどうして読むものの心をここまで深く揺さぶるのだろう? 劇中作品『無垢人』において、そしてそれと平行して語られるタマキと青司のいきさつにおける現実と虚構の織り交ぜ方の巧みさ、「書くこと」に対する著者の真摯な姿勢、覚悟、気迫、けれん味の無さ、そういうものを全て力強い筆致で昇華した作品だから、と思う。 タマキに完璧に共感できなくても、主人公「タマキ」の恋人だった青司に魅力を感じなくても作者が様々な覚悟を持って書いた作品であるその真摯さに惹きつけられる。ストーリーではなくその深さ、そして、作者の筆によって揺り動かされる感情や考えにひたる作品と感じた。 『OUT』で放たれたパワーは力強く美しいけれど『IN』においてここまで自分の中に入り込みさらけ出すことは相当な苦痛を伴ったはず。それをやりとげた作者に頭が下がる思いがする。 本作を読んで今後の桐野さんの著作活動がますます楽しみになった。 | ||||
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「OUT」に対して「IN」とは何ぞや?に構造力で答えた作品。読書量の少ない方には余りおすすめしない。通常の世界が「OUT」「IN」の二項で成立するなら、この作品には主に「IN」「IN」「IN」という三つの世界のリンク具合が描かれている。センターの「IN」に向かう著者の意欲作。構造が複雑なので娯楽というよりは、入り方や解り方に関するテーゼ。 | ||||
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桐野夏生の小説には、読むとすぐにそれとわかるモデル事件が存在する。 『OUT』の井の頭公園バラバラ死体遺棄事件、『グロテスク』の東電OL殺人事件、『東京島』のアナタハン事件。 そして本作は、島尾敏雄夫妻と敏雄の作品『死の棘』、業界では誰もが知っていた作者自身のダブル不倫事件がモデルとなっている。 現実に題材を取る作家ではあるものの、しかし桐野は現実に取材する作家ではない。 本作の感想に、作家の取材方法がわかって面白かったと表現しているものを散見するが、桐野自身はこの手のインタビュー取材を行ってはいないのだ。島尾敏雄とミホ夫妻に対する子供側からの冷ややかな視線は、島尾伸三本人が、すでに赤裸々に綴っているところであり、桐野はそれを読んだだけであることは明らかである。 つまり、物語の後半、劇的に真相が明かされていく過程は、娯楽小説としてのスタイルであり、桐野の創作なのだ。もちろん、彼女の不倫相手も死んではいない。 娯楽としてのサービスが充分であり、巧いとも言えるが、甘いともいえる。 良くも悪くも、本作は『OUT』の裏面、対になる作品であり、『OUT』が最終局面で甘く緩い方角に流れたように、また作者のデビュー作の特徴である、「主人公だけに、とっておきの秘密をべらべらと喋る初対面の相手」という女性ミステリ作家にありがちな大きな欠点も抱えており、その欠点の分量込みで、桐野の出世作『OUT』の完全な再現となっている。 (事情を知らない方が本作を『OUT』と無関係と断じているが、桐野は不倫相手と『OUT』を作ったのであり、その創作に至る道筋が本作には書かれている。) 小説家が小説家を主人公にした小説は非常に多く、その大部分が作者の狭い世界の狭さを見せられているようで興ざめなものだが、本作は、その狭さをすさまじい深さで補い、充分に必然性のある激しい作品を作出している。 本作は、桐野の最高傑作には絶対にならないが、次へのステップとして大きな意味がある重要な作品であることははっきりしており、読むべき一冊であることは明らかだ。 | ||||
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桐野夏生ファンである。 追っかけて、追い続けてここまで来た。 「OUT」は外側に拡散していくような 広がりを持つ話だったように思う。 本作「IN」は初期の代表作「OUT」のアンサー作品なのかと、 軽い気持ちで手に取った。 うかつだった。 「IN」は小説そのものの構造もそうだが、 ひたすら、奥へと「分け入っていく」。 丹念に一点を見つめながら足元をひたすら掘っていくような、 一途な怖さがある。 掘れば掘るほど、自らが不安定になる、ような。 「恋愛を抹殺する」とはどういうことか。 小説家は悪魔なのか。 「小説を書く」ということの呪術的な側面と、 感情や生き方を削って「物を書くヒト」を 業深く、現代的に描きながら、 登場する様々な女たちの凄み。 この行間から立ち上ってくる禍々しい女たちの香気にもやられた。 読んでいて身震いがして、 思わずあたりを何度か見渡した。 記念碑的な作品であり、 「OUT」から今日までの彼女のある到達地点を示す作品だと思う。 俺はほんと十分楽しめた。 「○子」は本当は俺たちの中にいる。 | ||||
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主人公のタマキが、「OUT」を誤魔化したものとしか思えないような作品を過去に書いていたり、別れた不倫相手の担当編集者について、妙に生々しい貶すような描写ばかりだったり、タマキの経歴で、おや、と思うところが多々あったりで、どうしても、タマキ=桐野夏生? と思ってしまいます。しかし、そのタマキが書いているのは、過去の小説家、緑川未来男が書いた「無垢人」という作品についてで、この作品に出てくる不倫、そして不倫相手についても、どこまでが現実か、虚構かわからない。つまり、タマキ=桐野夏生も、どこまでが現実か、虚構かわからないということ。自分をどこまで書くのか、どこまで平然と嘘をつくのか。作家のサガに恐怖さえ抱いてしまう面白さでした。 | ||||
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第二章の『茂斗子』の話が面白い。 この本を読み始めた当初は『○子とは誰か』が 物語の最大の焦点であると思っていたが、 そうではなかった。○子の謎は最後には明らかになるが。 もしも『無垢人』が死にゆく者の事であるならば、 忘れられない恋愛を抱えて死にゆく者と、 愛する者を一生許すことが出来ないままに生き続けている者と、 どちちらが不幸なのだろうか。 例えば、死んでもタマキを許さない青司と、 緑川が死んでも尚、生き続けて自ら心の血を流し続ける千代子と。 同じ葛藤を抱えていても『無垢な人』になれるだけでも、 死んでゆく人の方が幸せなのかもしれない。 小説に書かれてあることが『創作』なのか『真実』であるかは、 その物語の当事者にしか分からない。 作者が生きていれば作者に怒りをぶつける事も出来るが、 死んでしまっていてはそれも出来ない。 恋愛は、そして更にそれを文章にしたためる事は、 なんと多くの喜びと犠牲を生み出すことだろうか。 | ||||
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「IN」は「淫」なのかと読み終わって深く納得する。どこまでも伏線があり、読者は読み解くことの面白さも同時に味わいつつ、小説の荒波を共有し、難破せずに最後まで行き着ける読後感も醍醐味。桐野ワールド炸裂で、その冴え渡る筆圧に、同年代で同時代を生きられる幸福感もひとしお。今後にさらに期待。新刊必読の作家なり。 | ||||
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確かに島尾敏雄の「死の刺」って不思議な小説だ。夫の不倫がもとで妻が狂気の世界に入っていくのだが、不倫相手の女はほとんど出てこない。いや、出てはくるけれど、もはや主人公夫婦の敵でしかない。諸般の事情を考慮しても、もとは夫が婚外恋愛してたわけで……相手の女性との恋愛はどうして、こうもあとかたもなく消えてしまったのか…… という疑問が「IN」の主人公の女性作家タマキの出発点だ。作中の緑川未来男作「無垢人」は「死の刺」が下敷となっているが(その換骨奪胎ぶりもすばらしい)、タマキはその中で、全く存在をかき消されてしまう不倫相手「○子」を探しつつ、小説「淫」を書いている。次々に現れる緑川ゆかりの老女たちの不気味さと、タマキの過去の婚外恋愛の苦い思い出と、その相手の死が複雑に絡み合って小説が進行する。 タマキ自身、ふいに関係が終わった(終わってもずるずるひきずった)青司(という元担当編集者)が、なぜ自分を棄てたのか、なぜあんなに理解しあえていたのに、会社の人事異動という外的な要因で、小説そのものに興味を失ったのか、理解できずにいる。その思いが、「無垢人」という小説への疑問と濃密に重なる。 別れた男の醜い嫉妬心、執着心、安っぽいエゴイズムや、自分と別れたあとで、どことなく精彩を欠いていく様子が冷徹なまなざしで描写されるあたり、女は怖い、と背筋が凍る。 一方で、この青司という男は実に魅力的でもある。タマキと青司が突然、新幹線で大阪に行き、蒸し暑い夜の道頓堀を、コンビニで買った一本のビニール傘に入って歩き、青司が子供の頃、川に猫を流した話をする場面は圧巻だ。ねばつくような、ひりつくような雨の夜の、男の暗い表情。突然の死によって、ふいに浄化されるその存在。男も、怖い。 そして何より怖いのは「小説」だ。薄汚れ、忘れ去られ、抹殺された恋愛が、夜の闇に妖しく浮かび上がり、永遠の輝きを見せるのだから。 | ||||
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桐野夏生さんの本は全て買っていますし、OUTは何十回と読んだ作品だったのですぐさまINを本屋に飛んで買いに行きました! 読んでみて、OUTとは全く違う作品ですが私は大好きな作品になりました。INもきっとまた何十回も読み返すでしょう。桐野夏生さんはとても美人なので不倫経験者ですよね?きっと結婚後何回も素敵な恋愛をされてるんだと思いました。桐野夏生さん最高です! | ||||
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「淫」という小説を書こうとしている小説家タマキと、既に発表された『無垢人』という小説が、作家の本性である冷たい視線と、破滅と分かっていても突き進まずにはいられない激しい恋愛を交差しながら物語が進む。 果たせなかった恋愛は、魂の死骸を作ったに違いないと考えるタマキ。 そのタマキが調査するのは、現実を切り崩すほどの虚構である『無垢人』のモデルとなった人であり、タマキの抹殺している過去の恋愛もが蘇っていく。 恥ずかしいなど思いもしない、他人の存在自体が意識に入ってこない恋愛。 時間の経過とともに腐敗していく恋愛。 消えて無くなる恋愛が、小説家の手にかかることで残されてしまう。 魂を奪う恋愛と小説が交差しながら、内面を深くえぐってゆくこの作品。 一度だけでなく、何度も読み噛み砕きたい読み応えがある。 | ||||
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