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グラーグ57
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グラーグ57の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 21~34 2/2ページ
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前作チャイルド44がデビュー作ながら各誌絶賛の嵐で、ミステリー誌ランクでも1位を独占した傑作でした。スパイ小説でありながら、冒険活劇小説として比較すべき作品がないと思うほど完成度が非常に高い作品で、続編があるということで楽しみにしていた私ですが、何と一年もしないうちに続編が到着。でも前作ほどの評判にあたらないといった感じで、あまりに良く出来た作品の後で、肩透かしを食らった?そんな本作かと、おそるおそる購入し読んでみました。良い意味で予想に反し、またも素晴らしい出来。前作の旧社会主義国の暗躍とした社会を舞台ですが、主人公が1作目で構築した部分が崩壊し、前作同様スパイ、冒険小説の手に汗握る醍醐味に、復讐劇も加わり、物語の展開は急展開をつげます。アクション小説のスパイスもちりばめ、背景には究極の家族愛、家族小説としての深部がストーリーの底辺を形成づくっています。 良い意味で前作に負けない、充実作であることは間違いないでしょう。 | ||||
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衝撃の処女作「チャイルド44」が大成功を収めたイギリス冒険ミステリー界の若き旗手スミスの大河警察小説・捜査官レオ・デミドフ・シリーズ3部作注目の第2部です。本書もまた前作と似た構成で、捜査官レオの国家保安省時代の暗い過去に遡って物語を始め七年後に彼が国家の命により為した悪行の影響が現われるという形が取られています。 七年前レオが潜入捜査官として逮捕した元司祭ラーザリの件に係わった者たちが次々に殺される。今やモスクワ殺人課の責任者となったレオが事件を追う内に、嘗て収容所送りとなったラーザリの妻アニーシャが容疑者として浮上する。彼女はフラエラと名を変えモスクワに暗躍する犯罪者集団ヴォリのリーダーとなっており、レオの養女ゾーヤを誘拐して元夫ラーザリの釈放という困難な要求を突きつける。レオは部下のネストロフを伴い極寒の強制収容所グラーグ57からラーザリを脱獄させる極秘裏の作戦に挑むのだった。 本書は前作と違って警察の同胞から追われる展開ではありませんが、囚人護送船での事故による争いや強制収容所での手違いによる拷問等、周到に練られた計画が齟齬を来たす予期せぬ事態に対処するサスペンスが味わえます。全編に渡りフラエラに踊らされ下水道から収容所を経てハンガリーまで慌しく追跡する長大な冒険物語ですが、本書を流れる最も重要なテーマは「無私の愛は強い憎しみに勝てるのか」でしょう。レオの部下に両親を殺された幼い姉妹の姉ゾーヤが、レオに養子にもらわれながら心許さず親の仇と同列に考えて頑固に憎み続ける心を変える事が出来るのか、夫を逮捕された怨みから心が歪み悪党に変貌したフラエラが復讐する怨念の戦いに終止符が打てるのか。著者は今回トリックや意外性を捨てて真っ向勝負のストレートで大長編を書き上げました。「ゾーヤがレオの手を握った」という唯一事でレオの全ての苦労が報われると思える感動のラストを私は讃えたいです。 | ||||
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「グラーグ57」と言うのは、極寒の強制労働収容所です。 映像で見たら、きっとすごく迫力のある映像になるだろうなと思えるアクション・シーンの連続です。 下水道での追跡劇から強制労働収容所、そしてハンガリー動乱へと、息つく間もないような畳みかけるような展開です。 バックとしては、「スターリン体制」崩壊後、改革派と保守派の主導権争いから、国内だけに留まらず東欧の衛星国にまで動乱の広がった時代です。 そうした状況下で、考えられないような勢力同士の提携があり、それに翻弄される人たちがいます。 主人公のレオがやっと築いた「家族」も、養女ゾーヤの心をほぐすことが出来ず、そこを彼を怨むフラエラ(アニーシャ)に付け込まれ窮地に立ちます。 それもこれも彼のキャリアにおける旧悪に発端があります。 その旧悪を償うことが出来るのか?と言うのが、このシリーズを通しての大きなテーマでしょう。 ミステリー性は前作よりも劣るものの、そのアクション・人物造型など、文句なしに楽しめる作品です。 | ||||
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前作ほど評判が芳しくないこともあり読む前はさほど期待しておりませんでした。 …読み終えた今は、小躍りしています。この作家はこの先どれほど面白い小説を世界に提供してくれるのか、大いなる予感に顔もニヤけます。 時代情勢が前作で描かれた史上最悪の強権体制からすこし緩和したため、絶望的にラストまで疾走した前作ほどの緊迫感はありません。しかし、スタート時での登場人物の好感度が前作とは桁違いのため、続きが気になる、ページをめくる手が止まらないという中毒性は本書の方が上かもしれません。 前作同様、旧ソ連の行政・司法実務、国民生活のリアリティ溢れる描写は豊かな取材力、考察力を感じさせてくれます。また、一流の心理小説と比べても遜色ないような理知的な人間分析、それを驚異的にスペクタルな本筋展開の片手間にやってのけていることがすごい。そして単なる才能のひけらかしに終始せず、読者を満足させるための工夫にまで心を砕く誠実な姿勢を感じます。 その結果、本書は、きわめて純度の高い興奮、悲哀、感動、等々夥しい数の情念が痛烈に殺到するめくるめく小説に仕上がっています。前作とともに強くお薦めします。 | ||||
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前作もそうでしたが、正直、ミステリとしての出来はいまひとつ。 ただ、読ませる力は凄い。 途中でやめることは出来ないだろう。 そのことは認めましょう。 前作にはあったような明白な欠点もないようだし。 ミステリから冒険ものまで、ジャンルを横断しながら展開するのは圧巻。 でも、そのために、ひとつひとつのエピソードが「軽く」見えてしまう。 収容所での物語、ハンガリーでの物語。 それぞれだけでも、このくらいの本は出来てしまうだろう。 そのことの是非を問われたとすれば 私の答えは「非」ということですね。 ほんとにもったいないエピソードが埋まってしまっていますよ、この本には。 | ||||
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強烈な面白さの「チャイルド44」に続く続編です。もし前作を読んでいない人は必ず前作を読んでからこちらを読むことをお勧めします。 前作がスターリンの死ぬ直前から死後(序章は1920年代のロシア飢饉) 今作は序章を抜かすと、フルシチョフの1956年の第20回党大会の「スターリン批判」から始まり、同年10/11月のハンガリー動乱までが舞台の背景です。 読む前、読み終わった後、どちらでも構いませんが、一度それらの時代背景の内容をウィキなどでさらっとでも読んで置くことをお勧めします。 当時のとんでもない政治に翻弄される一般市民や政府側の人間、これらが実際に起きたわけですから、本当に怖いです。 さて前作と変わらずジェットコースターのような話の流れです。(実際にソビエトの歴史がそのようにジョットコースターにしてしまったのですが) だんだん読んでいると、何か、どこかで同じ感じが・・・拷問、脱出、救出、身内との苦悩、死、しかし主人公はどんな拷問でも死なない・・・そ!そうだ!これは「24」と同じだ。 時代背景、国の違いはあるものの、レオ=ジャック・バウアーです。(見ていない方は申し訳ございません) そのレオ君は昔犯した過ちと家族に翻弄されながら、進みます。この小説の悲しくも悩ましいのは、レオは過去は明らかに間違っていた行為を行ってきているので、敵と思われる相手も実は良い人だったりするので、非常に悩ましいです。政治に翻弄されほとんどの登場人物が実は被害者だったりします。 上巻は忍び寄る恐怖、絶体絶命の状況、テンポよく話は進みます。ただ前回に比べてアクション食が強くなった分、精神的な圧迫が少なくなってきています。 (前作はジャック・バウアーを思い起こさなかったものの、このアクションの豊かさが、今作はそう思わされるのでしょう) ちょっとアクションに偏った点が少し残念でした。内容は他の方や帯などで分かると思いますので、割愛しますが、よくもまあここまで巻き込まれちゃうのでってくらい大変です。ただ無理やりな設定ではなく、非常に説得力があるのが素晴らしいです。 アクションに偏りすぎたので、前作より評価を1つだけ下げましたが、それでも素晴らしい作品ということは間違いはありません。 | ||||
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’08年、「このミステリーがすごい!」海外編第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第2位に輝いた『チャイルド44』の続編。三部作になるということなので、本書は<レオ・デミドフ>シリーズのちょうど中間点に位置するのだろう。 前作から3年後という設定で、スターリン亡き後実権を握ったフルシチョフのスターリン批判で幕を開ける。スターリン時代に横暴を極めた秘密警察が今度は復讐の標的となるのだった。念願の殺人課を開設したレオとても例外ではなかった。しかも彼は前作で養女としたゾーヤが一向に家族に心を開こうとしないことに悩んでいた。 ストーリーは、このゾーヤがからみ、不当な扱いを受けてきた者たちの復讐の標的となったレオの苦難がこれでもかと描かれてゆく。 モスクワの下水道の追跡シーン、オホーツク海の囚人護送船上の死闘、強制労働収容所での熾烈な拷問、そしてラストのハンガリー動乱まで、愛する家族であるゾーヤを救うために波乱万丈のレオの冒険がハード・ボイルドタッチで展開してゆくのだ。 本書では、一気読み必至の面白さを秘めた、派手なアクションシーンが目立つが、根底にあるのはレオの家族愛である。きのうまでの常識がきょうは非常識になるという苛酷な運命に翻弄されながら闘うレオの姿には心打たれるものがある。 ヴォリ(強制労働収容所で兄弟の絆を深めた犯罪者集団)の女性リーダー・フラエラの存在感も強烈に胸に響いた。 | ||||
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家族愛がテーマだったと思うが、 失敗していると思う。 親子の愛を描くには、ハードすぎるキャラクターばかり登場する。 この「人は結局独り」的な手触りが好きな人には堪らないだろうが、 例えばトムクランシーのジャックライアン的な家族愛&バイオレンスの世界が好きな人には、 辛口過ぎる作品だと思う。 ストーリーは中々面白いし、 ラストの盛り上がりもまずまずだが、 暗い話なので、 感情移入すると落ち込みます。 作者の意図がその辺にあるなら、 ある程度せいこうしているのかもしれない。 | ||||
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1956年、フルシチョフが突如スターリン批判を展開してソビエト社会が騒然となる中、犯罪者集団ヴォリがかつて自分たちの人生を大きく狂わせた国家保安省の元役人たちを殺害し始める。ヴォリの頭目は7年前に保安省が告発した司祭ラーザリの妻アニーシャ。元保安省職員レオ・デミトフも彼女たちの標的となり、養女に迎えたゾーヤを誘拐されてしまう。アニーシャがゾーヤの無事と引き換えにレオに要求したのは…。 「チャイルド44 下巻 (新潮文庫)」から数年後を描いた続編です。 上巻はモスクワでの謎めいた追跡劇から、極寒の極東グラーグ(強制労働収容所)へと物語が動きます。そのスケールは前作「チャイルド44」を遥かにしのぎ、手に汗握る展開を見せてくれます。 スターリニズムが大きく転換期を迎える中で大変厳しい状況に置かれる我らが主人公レオ。彼は粛清する側に身を置いていた人物であり、今日的視点からいえばソビエト社会主義の手先として糾弾されるべき立場にあります。 しかしこの物語でのレオは良き夫、そして良き父であろうと不器用ながらも懸命に努力する一市民として描かれ、私たちはこの体制側の男に同化しながらスターリニズム末期のソビエト社会の混乱の中に放り出されることになるのです。全きヒーローとしてではなく、指弾される過去を抱えた主人公として描かれるレオという人物設定が見事です。 さらに養女ゾーヤは前作での経緯を受けて激しく養父レオを憎み、妻ライーサも “努めて”夫を愛する日々を送る。 これは、社会主義ソビエトに生きた人々の一筋縄ではいかない人生に自らを重ねながら読み進むという、大変複雑で奥深い体験を読者に味わわせてくれる小説です。 さて、上巻では物語はまだ折り返し点を通過したばかり。レオは果たしてゾーヤを救うことができるのか。そして物理的に救うだけではなく、その魂の救済は果たされることがあるのでしょうか。 | ||||
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前作でもそうでしたが、この翻訳者は、レオとライーサの夫婦間の会話でも、男女の言葉の違いというものをまったく考慮していません。だから女性の造形に深みがでない。 他には、smooth を「すべらかな」。これは文語ですね。凍った川のすべらかな表面。 間違いじゃないけど、普通はこんな風には言いませんよね。 crowded を「ぎゅう詰め」。間違いじゃないけど、普通は「ぎゅうぎゅう詰め」ですよね。 下巻201ページの「技術大学に大勢が集まった」 原書では、the Technological University と、わざわざ大文字で書いています。 これはブダペスト工科大学のことでしょう。 202ページの「ジョルトは技術系の学生だった」 engineering student は、普通は「工学部の学生」と訳すんじゃないでしょうか。 内容は、前作よりも編集者の影響というものを感じました。 余程優秀な編集者が担当しているのでしょう。 ただ、前作よりはすこし落ちます。それに、翻訳で減点1になるから、星3つとしました。 | ||||
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前作でレオが築きあげたものが、続編では次々と壊されていきます。想像をはるかに上まわる容赦のない展開には、ただただ脱帽。前作での“まとめ方”も見事だったのですが、本作の中盤へ向かっての“壊し方”もすごい。著者の実力を見せつけられたような気がします。 とにかく登場人物ひとりひとりの描き方がすばらしくて、どんな脇役も手を抜くことなく丁寧に描かれている。みんな時代の流れに翻弄されながら自分なりに生きる道をみつけて必死に生きていて、そんな人々の生きざまと死にざまに胸を打たれました。ひょっとしたら何よりもまず、時代の犠牲者たちの姿を描きたかったのかもしれない。そう思わせるほど、登場人物たちの姿をとおして著者の熱い思いが伝わってきました。 そしてなんと言っても、読者を楽しませることには決して手を抜いていない。前作ほど圧倒的ではないにしろ、読者をぐいぐい引っ張っていく牽引力は健在。最後まで一気に読ませます。で、読んだあとには怒濤の時代を登場人物たちと一緒に駆け抜けた確かな余韻が残ります。この余韻は前作以上かも。お勧めです。 | ||||
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圧倒的なストーリーにひたすら脱帽!という感じだった前作。ただ、続編があると聞いたときには、あまりにきれいに終わりすぎたエンディングが少し気になっていた。で、本作を読んでみると、前作の大団円を大胆に切り崩していく展開にうならされた。この人、本当にすごい作家だなと思う。 前作は善悪の対立構造がわりと単純明快だったけれど、この作品では、主役級はもちろん脇役にいたるまで、登場人物が自分なりの信念を持って生きるさまがより丁寧に描かれている。正直、読んでいるうちに、誰が正しくて誰がまちがっているのかよくわからなくなった。作品中で死んでいった多くの人々のように、現実に即して生き残る道を選ぶことだって、あの状況下では卑怯だとも思えなかったし…。 映画化を意識しているのでは? と思わせるようなアクション・シーンも満載。最後まであっというまに読めて、エンターテイメントとして充分楽しめるつくりはさすが。個人的には物語の中盤で起きた悲劇に泣いた。 登場人物の一人ひとりにじっくりスポットを当てたぶん、物語の牽引力が弱まった感は否めないけれど、〈レオ・デミドフ物語〉として考えると、この作品が前作を補完する形で物語全体に深みを与えていると思う。最終作で、レオがどんな着地を見せてくれるのか、今からとても楽しみだ。 | ||||
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前作が抜群におもしろく、楽しみにしていただけに、やや期待外れの感があります。地力のある作家なのでしょう、歴史背景や人物描写の緻密さは素晴らしいのですが、次回作を含めた3部作の構想の中でプロットを組み立てているため、大きく展開できなかったのかもしれません。刑務所所長のレオに対する態度や脱出のきっかとなった対応が、強引すぎるかも? レオがあまりにも理想主義的に描かれすぎている気もします。KGBでなくても、組織の中では孤立するのでは? その矛盾を解決するため、有能な庇護者を設定するのもどうでしょうか。とは言え、全体には楽しめないこともありません。前作で本作家のファンになった人は必ず読むべきでしょう。次作でどのように完結するのでしょうか。1作目の興奮をもう1回味わいたいものです。タイトルを前作に合わせたくなる気持もわかりますが、直訳の方が意味深でおもしろいと思います。 | ||||
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前作のほうが面白かったなあというのが正直な感想。 前作のほうが、複雑で、独特のカラーがあり、奥行きがあったように思う。今回は、家族の問題、復讐劇、東欧の革命などが絡むが、前回よりも大味な印象。筋書き、特に家族問題については、悪い意味でハリウッドの典型という気がした。逆に言えば、やはり映画化したら、アクションあり、恋愛ありでそこそこ面白いものになるのだろうなとも。 訳文については、前回同様 いかにもなハードボイルド調。 前作ほどの興奮はなかったが、それでも一気に読ませる。 随所に、まるで映画を見ているように映像が鮮明に浮かぶ描写もある。 途中、ある計画が狂っていく部分は非常にうまい。ハラハラする。 ラスト付近で少し泣かされた。 3部作になるらしいです。次回に期待。 | ||||
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