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薄暮
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薄暮の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.11pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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殺人事件などはおきない。 けれども、これはれっきとしたミステリーである。 ミステリーには犯罪などは必要ないのかもしれない。 そう思わせる作品が、篠田節子や宮部みゆきにはある。 そして、これがその一つ。 テーマは美術界。 新潟の田舎で画壇に背を向けて一生を終えた画家がいた。 そして、その画家の絵を発掘した元美術雑誌の編集者は、この画家に献身的に尽くした妻と関わることになる。 献身的に尽くしたがゆえに、思いが暴走し妄想と化す妻。 地元の人の素朴な思い、そして策略。 殺人事件がなくても、ミステリーはこんなに面白い、という作品である。 篠田節子には異境もの、女性の生き方もの、芸術もの、というジャンルがあるが、これは芸術ものである。 彼女自身はバイオリンを弾くらしく音楽をテーマにしたものも多いが、絵をテーマにしたのはこれが初めてかもしれない。 ところで、この小説は日経新聞の夕刊に連載されたものだそうだ。 ぼくは、新聞小説や週刊誌の連載小説というやつが苦手である。 だって、読みたくても次が読めない。 そのフラストレーションを想像するだけで、敬遠したくなる。 毎日、これを新聞で読み続けてきた人には、それだけでぼくとは別の人種かもしれない、と思ってしまう。 | ||||
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高校生の時、尊敬する美術の先生が、ダリの妻ガラについて、「女性は多大なインスピレーションを与えるという点で、芸術家そのものより豊饒な力を持つ存在なの」とおっしゃったのが鮮烈だった。この小説の中心となる二人の女性のうち、一人がそのタイプ。彼女は私が思うに世界最強。今まで読んだどの小説のヒロインよりも強い!と感じた。この小説ではわきを固める女性たちもまたそれぞれに「強さ」を持っている。どれが最強ということはないのかもしれないが、でもやっぱり彼女の強さにはかなわない。これだけ面白い小説、もっと読まれてもいいと思う。ドラマ化しても絶対に面白い。そのとき誰が「彼女」を演じるのか、キャスティングには悩みそうだが。できれば無名の新人がいいな。 | ||||
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篠田節子の もつ 身体の中のうごめきが、 なんともいえず ざわざわ した心のざわめきが、 うっとうしくもあり 同時に 人間って こんな風なんだろうな と 妙に 説得力があり おどろきました。 『さが』 といえば 『さが』 なんですが、 一言でいえない 奥行きのあるものでした。 主人公は 宮嶋智子。 閉じられた画家を 献身的に支え、実家を飛び出し、郷里を捨てて 天才的な 画家を ささえた。 純愛のように思えた。 天才でも オトコであり、そして 悩み 惑うのである。 裏切られても、ただひたすらに 献身をする。 そうすればするほど 逃げていく。 タライの水を 引き寄せるには 引っ張ることではなく 押すことだということが わからない 智子。 どんどんと 自分を正当化させるための物語を紡ぐ。 しだいに 智子の虚構の物語 が崩れ去っていく 天才が死んでしまったがゆえに 過去が自分のものにできる。 そこまで 突き詰める篠田節子の筆力はなんともいえないほど執拗だ。 主人公の 智子の執拗さに比べれば、篠田節子の執拗さが 勝っているという 恐ろしい物語である。 でも 地元というものは ありがたいものである。 郷土愛 という屈折した 愛が さまざまな形で噴出する。 厳しい季節を おくらざるを得ない 切々たる思い。 それが おカネになると人々は ばらばらになっていく。 もう一人の主人公 乳母像のモデルは じっと時間をやり過ごす。 | ||||
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という感覚が拭えなかった。 そんな面倒な著作権者ならもういいやん?みたいなw 妻の葛藤より、趣味と意地で仕事してる男のバカさが痛かった。 内容の割にページ数厚すぎな感じでした。 | ||||
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地方に埋もれていた画家の家族と地域の人達の話。 雑誌編集者が、雑誌に掲載した画家の絵の話題が出てくる随筆への反応で、画集の作成を企画する。 画家の配偶者が、画家を支え、地域の人と対立する。 地域の人の持っていた作品が、偽物だと断じる。 暗躍する画商と、お寺の話がきなくさい。 予想通り、画商の画策が表面化する。 個々の展開は想定外だ。 全体的には想定内だ。 推理小説としては中途半端かもしれない。 家族小説としては幸せな終わりを迎える。 篠田節子の小説家と常識人としての均衡の取り方は面目躍如かもしれない。 作家の家族に対する尊敬の示し方の技法を習得することができた。 複雑度がちょうどよい加減で、苦労が報われるという話として美談だ。 裏に現れる暗躍が、全体を破壊していないというのが出色。 | ||||
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新潟のとある場所で見出された一人の画家。本人はすでに没しているのだが、その作品はいままで顧みられることがなかった。 しかし、ある雑誌のエッセイで取り上げられて一躍注目を浴びる。 そしてその画家を世の中に紹介しようとしたとき、思わぬ障害があった。 画家の妻。現在の著作権者。彼女の思いはいったい何なのだろうか?画家に対する思いはどこまでのものなのか? そして画家の絵をとりまく周囲の思い。価値を値段ではかるもの、そうではないとするもの。 いろんな大人の思惑が渦巻いていく。 作者の小説は読みだすと止まらなくなってしまう。おそらくこうであろうという展開は読めるはずなのに、とにかく先を読みたくなる。 画家の妻、貧しいなか夫を支え続けた妻。そしてなによりも画家の理解者である。彼は天才なのだと思うこと。 それがすべてなのか? ネタバレになるからあまり書きたくないんだけれど、なんだろう、悲しいな。 ただ、本当に好きだったのかな?ってちょっと疑問に思う。好きっていうよりも自分を形作るために必要なパーツだったんじゃないかな。 作中の言葉で絵の価値についての言葉があるけれど、それはその通りだと思う。 二束三文で売られてたって、自分が気に入ればずっと高い価値になる。 けれど、絵の価値は値段ではかられることが多い。 美術品ってそんな危ない部分を多分に含んでいると思う。 | ||||
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芸術家とその周辺で動き回る人々の様が描かれる作品の一つだ。亡くなった地方画家宮嶋の作品を見出した美術誌編集者橘が、それを画集として世に出そうとするが、所有権者たる智子夫人との真贋論争となり、土地の支援者などを捲き込んでゆく。最後は怪しげな多田という画商や、新興宗教も絡み、二回もの不審火による消失騒ぎとなる。 その画商のいう「絵なんて所詮、自分が良いと思っているものが一番いいんですね。自分の懐から一千万出して買ったときに、その人にとって一千万の価値のある絵になるし、一億払えば一億の絵になる。ただでもらって気に入らなけりゃ、ただの場所ふさぎだ」と言わせるが、一面の真理かもしれない。感動的には今一だったので星四。 | ||||
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篠田さんの作品は、ホラーもあるので、ある程度調べてからでないと読めません。 この作品は、角田光代さんの本で紹介されていたので、安心してよめました。 ストーリーは、美術雑誌を担当していたけれど、今はそれを本業にできない編集者の目から描かれる、ひとりの画家をめぐる物語です。 美術、絵画、画集、興味ある分野の裏側をも知ることができました。 長さは気にならず、最後まで引っ張っていかれたように思います。 ただ、登場人物がおおいのでしょうか、少しぶれる感じがありました。 画家と妻とあと重要なひとり、そこだけの物語のような気がしました。 | ||||
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舞台は新潟の雪深い片田舎。 地元でひっそりと愛されてきた郷土画家の遺作が突如脚光を浴びる。 日本の忘れ去られようとしている懐かしい風土を描いた画家の半生と、 それを支えた夫人には、隠された事実があった。 そして、遺作を取り巻く欲望と金・・・。 殺人事件(それらしき描写はあるが)も起きず、名刑事も登場しないが、 とても展開が面白く、飽きさせない。 日本の画壇の闇や宗教法人の裏側を垣間見るような内容も興味深い。 これならミステリー好きな方にも愉しんで読まれるのでは。 そういう私も愉しんだ一人です。 | ||||
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地味な作品 ちょっとじとじとした作品 憂鬱になるかも いい感想が書けません 篠田節子に しては つまらない | ||||
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スライドでしか残っていない「薄暮」などの傑作と,妻の元に残っていた駄作との格差は何に由来するのか? そうした,画家・宮嶋哲朗にまつわる謎が本筋なのであろうが,篠田節子の目はそこだけにとどまらない。 美術誌が廃刊されて働きがいをなくしていた橘,贋作を地方に沈めることを生業にしているという多田,檀家がほとんどいなくなった常楽寺を一人で切り盛りしてきた多津子など,多彩な人間模様が生き生きと描かれている。 また,どんな優れた作品であっても,遺族の機嫌を損ねたら画集を出版することすらできなくなるという不条理もよく分かり,橘が宮嶋作品の画集を出すことができるのかというところも,結構ドキドキしながら読むことができた。 地味ではあるが,篠田節子らしい,読み応えのある作品だった。 | ||||
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直木賞作家の作品はまず読んでみようという私ですが、なぜか篠田さんの作品は手には取っても、読む事はなかった。 無意識に肌に合わなそうと感じていたのだろうけど、読まず嫌いかも知れないと、今回挑戦してみた! 続けて聖域、マエストロ、薄暮と読んでみた感想は、やはり自分の好きなタイプの小説ではないなと思った。 薄暮は、橘の考えを軸に話をすすめている印象。 なので、主要人物である画家の妻智子にしても、長岡の様々な人たちや頼りない編集長にしても、 その人物像はすべて橘の憶測の上に成り立っているようにしか感じられない。 長々と橘を通して説明されているようで、「ちょっと待って。それはあくまであなたの想像上でしょ。他の人間の気持ちを勝手に作りあげないでよ」と 思わず、本の中の橘に言ってしまっていた。 美術書を作り上げていく裏方の世界の説明も合わさるので、小説を味わうというようなわくわく感や、小説の色気、面白さ、 それぞれの登場人物の奥深さを感じる事は出来なかった。 | ||||
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地味でずっしりと重い。 ずーっと嫌な気持ちで読んでいなければならないくらい、人の感情の醜い部分を描いている。 でも読ませる力のある不思議な作品。 小説としては退屈なかんじではあるのに、なぜこんなに読ませる魅力があるのだろう・・・。 なんだかこういう作品こそ長く記憶に残るような気がします。 すでに亡くなっている田舎の無名画家に急にスポットが当てられたことから起こる騒動。 画家の才能を強く信じてきた妻。 絵を購入し、支援もしてきた郷土の支援者たち・・・。 それぞれの思惑が交錯し、とんでもない方向へ転がっていく様を巻き込まれた雑誌編集者の目を通して描いています。 人間同士の愛情はもちろんのこと、宗教観・郷土愛・芸術愛・・・さまざまな形の感情が描かれている。 しかもそれは激しくもあり、醜くもあり、欲や嫉妬にまみれながらもリアル。 このへんの丁寧なうまさはさすが篠田さんと言わざるを得ません。 | ||||
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地味でずっしりと重い。 ずーっと嫌な気持ちで読んでいなければならないくらい、人の感情の醜い部分を描いている。 でも読ませる力のある不思議な作品。 小説としては退屈なかんじではあるのに、なぜこんなに読ませる魅力があるのだろう・・・。 なんだかこういう作品こそ長く記憶に残るような気がします。 すでに亡くなっている田舎の無名画家に急にスポットが当てられたことから起こる騒動。 画家の才能を強く信じてきた妻。 絵を購入し、支援もしてきた郷土の支援者たち・・・。 それぞれの思惑が交錯し、とんでもない方向へ転がっていく様を巻き込まれた雑誌編集者の目を通して描いています。 人間同士の愛情はもちろんのこと、宗教観・郷土愛・芸術愛・・・さまざまな形の感情が描かれている。 しかもそれは激しくもあり、醜くもあり、欲や嫉妬にまみれながらもリアル。 このへんの丁寧なうまさはさすが篠田さんと言わざるを得ません。 | ||||
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篠田ファンなので、大した予備知識もなく脊髄反射で購入しました。 装丁を見て「案外地味な内容かもしれない」と思い込んでいたのですが そこはやはり篠田作品、ところどころにミステリーな要素や予想外の展開もあり またもやワクワクと一気読みしてしまいました。 題材が重いので、全体的にはやや寂寞感がただよっていますが きれいごとでは片付けられないリアルな描写が多く 大人になったからこそわかる裏話満載です。 自分の知らない世界については、真偽のほどはわかりませんが 篠田節子さんが書くととてもリアルです。 読み終わってから装丁を見ると…感無量です。 篠田節子さんには、これからも書き続けてほしいと 心から願っています。 (ある意味ファンレター) | ||||
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篠田ファンなので、大した予備知識もなく脊髄反射で購入しました。 装丁を見て「案外地味な内容かもしれない」と思い込んでいたのですが そこはやはり篠田作品、ところどころにミステリーな要素や予想外の展開もあり またもやワクワクと一気読みしてしまいました。 題材が重いので、全体的にはやや寂寞感がただよっていますが きれいごとでは片付けられないリアルな描写が多く 大人になったからこそわかる裏話満載です。 自分の知らない世界については、真偽のほどはわかりませんが 篠田節子さんが書くととてもリアルです。 読み終わってから装丁を見ると…感無量です。 篠田節子さんには、これからも書き続けてほしいと 心から願っています。 (ある意味ファンレター) | ||||
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人気エッセイストが記事にしたことから無名だった画家に注目が集まり、 虚脱感を抱いて仕事をしていた編集の橘や、 画家を応援していた頒布会に金と欲と見栄が交錯してゆく。 真作と偽物、傑作と駄作、自我と空虚、芸術と金、物故作家宮嶋哲郎の絵を巡り蠢く人々。 読み始めから胸に湧きおこるのは厭な気分で、最後までこの感覚は消えなかった。 金にまとわりつかれてゆく人たちの自我と、 夫の不貞を拒否し妄想を盾にして自我を曲げない妻智子と、自我づくしの中身。 更に巧妙な策略に薄汚さが作品を覆っているため、読後陰湿な気分に覆われた。 | ||||
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とても中身の濃い1冊だった。とある地方に埋もれ、既に亡くなった画家とその絵を巡って、様々な人間の思惑が蠢き、また画家の周囲の謎が次々生まれ、またそれらが徐々に解明されていく。読み始めはこの物語がどこに向かっていくのか分からなかった。あるエッセイストがある絵を褒めた文章を書いたことで、それに目を留めた美術系雑誌の編集者が、その絵(スライドなども)を実際に見て感銘を受け、何とかその埋もれた画家を世に広めたいと考え、画集を製作したいと考える。 ところがそこから(そこまでも予兆はあったのだが)、3歩進んで3歩下がる、を幾度となく繰り返す。ああ、またか、と、ある程度は予想できるものの、それにもめげず食らいついていく編集者のあの手この手の手練手管(というと聞こえは悪いが、多角的に攻めていく姿)が面白く、読む手を休めることができない。また多発する問題も、何故なのかという疑問が、最後まで明確には(途中で仄めかされはするものの)されないのも気になる。 また出版社、役所、宗教団体、美術商などの裏話的なところも興味深いし、画家の地元の人々の感情の移り変わり、それぞれの思惑など、本当につぶさに見てきたように書かれているあたりは筆舌に尽くしがたい。人間の愛憎、欲の深さ、業などが非常によく絡まり、途轍もない人間ドラマに仕上がっている。この著者の作品の中では、かなり印象に残る作品だった。 | ||||
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