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幽鬼の塔



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幽鬼の塔の評価: 3.50/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

問題の「悪霊」を含む戦前の乱歩を知るための貴重な中短編集

"構想の破綻"を理由に新聞連載を打ち切り、その責任を感じて失踪して世間を騒がせた曰く付きの「悪霊」(未読、これを読むために本作を手に採った)、シムノン「サン・フォリアン寺院の首吊人」(未読)の翻案である表題作、通俗スリラーと称される「恐怖王」の3つの中短編を収録した普段お目に掛かれない戦前の作品を集めた乱歩の中短編集。

中編の表題作は翻案とは思えない程に乱歩の作品と化している。河津という素人探偵が一連の謎を追う姿を描いた一種の冒険譚なのだが、全編を通じて河津の視点で描いている点が乱歩らしいフェアさ。怪奇趣味・覗き見趣味が横溢し、事件の解決後も理性では説明出来ないオカルティックな部分が残る点も乱歩らしい。"黒猫"を恐怖の道具として使っているのはポーへの敬意か。これを平明な文章で書いている点も特徴で、小学生の頃に「少年探偵団」シリーズを読んでいた当時を想い出した。中編「恐怖王」は作品の構成が上手く行っておらず、その場その場を安手のエピソードで凌ぐ、という体裁の物語で魅力を感じなかった。

そして、問題の「悪霊」(冒頭の二章だけ)。美貌の未亡人の全裸殺人事件、降霊会と乱歩らしい題材ではあるが、乱歩の狙いが「***」である事は直ぐに分かった。挫折した理由は「***」をもっと深く掘り下げ様と乱歩が生真面目に書込み過ぎたからではないか。細部は兎も角、もっと大雑把に構想を練らないと直ぐにバレてしまうし、記述を続けるのが難しかったろう。本家だって大雑把にやっている。しかし、問題の「悪霊」を含む戦前の乱歩を知るための貴重な中短編集だと思う。
幽鬼の塔 (江戸川乱歩文庫)Amazon書評・レビュー:幽鬼の塔 (江戸川乱歩文庫)より
4394301750

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