幽鬼の塔
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「恐怖王」の感想<ネタばれ注意> ポプラ社の少年探偵団シリーズに、『仮面の恐怖王』というのがあるが、本書はそれとは関係ない。 ややこしい事に、本書を年少向けにリライトした『恐怖の魔人王』が同シリーズに収められている。 昭和になって乱歩はエログロに落ちぶれたと言われた。 乱歩の文体がソフトなこともあって、基本的にはそれほどエロくもグロくもないのだが、昭和6~7年に連載された本作品は、まさにそう言われても仕方のない作品である。無駄に死体とその家族を辱めるのが気持ち悪い。 中盤に被害者の父親に渡す手紙など、まさに鬼畜なので、氷川瓏がどのようにリライトしたのかが気になる。ポプラ社版は多分読んだことはない筈だ。 乱歩自身も本作品を評価してないが、たしかに真面目に読むのはツラい。 それはエログロが原因ではなくいつものお約束事の問題なのだが、本作ではそれらが悪目立ちする印象。 乱歩には変身願望があって、彼の作品には他人に化ける行為が後を絶たない。『猟奇の果』や『幽麗塔』のように人体改造術(整形手術)もあるが、いわゆる変装のオンパレードである。【注2】 ここで乱歩作品を楽しめるかどうかの分水嶺がある。 後の少年向けでさらに顕著だが、変装や声マネは100%完璧で見破る事ができないというのを鷹揚に受け入れる必要があるw 本作品では喜多川夏子が男装して大江蘭堂の前に姿を現しても、彼はまったく気付けない。 いや彼が特にパープリンの可能性もあるが【注3】、多用される声マネはさらにすごい。 場合によっては腹話術だったりするが、腹話術の声で特定の他人のマネをするなんていっこく堂でも無理だよ。 それでも、グロ趣味と子供っぽいバカバカしさの混在の中に一種の魅力がないとも言い切れない。 TVがない当時、乱歩の作品が受けていたのは確かである。【注4】 もしかすると黄金仮面が先に自ら名乗っていたかもしれないが、それを除けば、自ら恐怖王なんて名乗ったりする凶賊は初めてだと思う。その自己顕示欲はなかなかのもので、 ・盗んだ死体の背中に“恐怖王”の文字を彫る。 ・五つの米粒に、恐怖王恐怖王恐怖王……と写経。 ・飛行機雲で空にkyofuo。 ・砂浜に足跡でkyofuo。 ・肘から切断した生腕に“恐怖王”の文字を彫る。 いやキ〇ガイです。 恐怖王の指示かゴリラ男の独断か判らないが、これにあの非道い手紙が加わるし。 ちなみにゴリラ男とは、親分ともどもかなり残虐な恐怖王の手下だが、その名前と役柄から宇宙猿人ラーにしか思えない……。 こんなことを何度も仕掛けられたら、気がおかしくなってしまいそうだが、蘭堂は意外に耐性があるのよな。恋人の無惨な死体が発見された直後にも、苦笑したり、ハハハハと笑ったり……。 ま、乱歩作品の登場人物はこんなのばかりですが。 そして恐怖王の正体というか、動機は恋。こいつはすごいぜw 【注2】『幽麗塔』は翻案だが、黒岩涙香版からある“人体改造”に惹かれたのだろう。 【注3】ゴリラ男「てめえはそれでも探偵のつもりか」――仰るとおり……。 【注4】連載中に満洲事変が起こったりしているが、世相がどーのという気はない。 | ||||
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"構想の破綻"を理由に新聞連載を打ち切り、その責任を感じて失踪して世間を騒がせた曰く付きの「悪霊」(未読、これを読むために本作を手に採った)、シムノン「サン・フォリアン寺院の首吊人」(未読)の翻案である表題作、通俗スリラーと称される「恐怖王」の3つの中短編を収録した普段お目に掛かれない戦前の作品を集めた乱歩の中短編集。 中編の表題作は翻案とは思えない程に乱歩の作品と化している。河津という素人探偵が一連の謎を追う姿を描いた一種の冒険譚なのだが、全編を通じて河津の視点で描いている点が乱歩らしいフェアさ。怪奇趣味・覗き見趣味が横溢し、事件の解決後も理性では説明出来ないオカルティックな部分が残る点も乱歩らしい。"黒猫"を恐怖の道具として使っているのはポーへの敬意か。これを平明な文章で書いている点も特徴で、小学生の頃に「少年探偵団」シリーズを読んでいた当時を想い出した。中編「恐怖王」は作品の構成が上手く行っておらず、その場その場を安手のエピソードで凌ぐ、という体裁の物語で魅力を感じなかった。 そして、問題の「悪霊」(冒頭の二章だけ)。美貌の未亡人の全裸殺人事件、降霊会と乱歩らしい題材ではあるが、乱歩の狙いが「***」である事は直ぐに分かった。挫折した理由は「***」をもっと深く掘り下げ様と乱歩が生真面目に書込み過ぎたからではないか。細部は兎も角、もっと大雑把に構想を練らないと直ぐにバレてしまうし、記述を続けるのが難しかったろう。本家だって大雑把にやっている。しかし、問題の「悪霊」を含む戦前の乱歩を知るための貴重な中短編集だと思う。 | ||||
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