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月とアマリリス
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月とアマリリスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.21pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1~14 1/1ページ
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昔の女性への型にはまった見方や、ジェンダー要素をベースにしながら、ストーリー自体がしっかりしていて読み応えある。 この手の展開は得てしてメッセージ性が強すぎて、本編が霞む場合があるけど、そのような心配は全くなし。 事件へのアプローチが通り一辺倒でなく、展開を楽しめる。 被害者、加害者、それを取材する者のそれぞれの描写が良い。 | ||||
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社会派ミステリー好きで松本清張好きな僕は、町田そのこさんがチャレンジした社会派ミステリーの本書を多くの人に薦めたい。 ミステリーといっても、まるで刑事コロンボのように、はじめに犯人の種明かしをして、現代の社会問題(九州の男尊女卑、いじめ、アスペルガー、トランスジェンダー、ネグレクト、貧困家庭、単身高齢者、週刊誌と報道)解決への問題提起をじわじわと進めていく手法は、良い意味で一つの作品内で現代社会に起こっている問題を詰め込んでいる。それは各作品が単独の社会問題提起(ハンセン病差別、在日米軍、権力者の汚職、高度経済成長期の社会の変化など)を取り扱った松本清張の作品とは異なり、その点で今までにないマルチタスクな新しい試みのようにも感じる。一つの作品内で詰め込んでいるにも関わらず、詰め込みすぎだと全く感じないのは、そして、読後感が爽やかで希望が持てるのは、問題解決(犯人確定)の後の物語り、つまり犯人の再生や加害者と被害者の後日談に多くの記述がある点かもしれない。ということで、これまでにない新しい社会派ミステリーが登場したのではないか?と感心している自分がいる。 物語の舞台となる旦過市場や、その近くにある(僕も好きなクエスト)本屋、日本で初めてのアーケード商店街の魚町銀天街、チャチャタウン、(僕は行ったことないけど)ストリップ劇場やパチンコ屋。太宰府も舞台となる。地元が北九州の僕には、犯人追跡の手がかりが掴める(多くの偶然が起こる)小倉の街は、そんなことも起こりそうだと自然に受け入れられた。 ところで、和菓子屋の包み紙の裏に書かれたメモ。僕は松本清張の愛した和菓子、湖月堂の栗饅頭のお店が登場するものとばかり思っていたが。。。 | ||||
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元週刊誌記者の飯塚みちるは、中学生のいじめ事件の記事で一人の人間の尊厳を傷つけたことから、記者としての仕事と距離をおいていたが、みちるの実家の近くで起きた白骨化した遺体が発見された事件をきっかけに、再び記者として事件を追いかけていくミステリ小説。 一人の人間を追い詰めてしまった過去から、人の言動に関して人一倍過敏になっているみちるが少しずつ事件記者としての仕事の目的ややりがいに気づいていく過程が丁寧に描かれていた。 ただ、事件に関してはミステリ的な要素は少なく感じられた。 みちるの成長を描くとともに、女性だから、男性だから、といったジェンダー差別の要素もそれとなく描かれていた。 一つの事件を通して、逃げずに最後まで加害者、被害者の話を聞き続け、それを届けることが記者としての使命であり、「記者をやり続けることこそが、罪と向き合うこと」という考え方は共感できた。 随所に人の尊厳を守ったり、誰かに傷つけられたり、愛する人への依存に言及したりするのに使われている言葉選びが秀逸で胸に響いた。 「心配とか応援とかって言葉を使えば、誰であってもひとの人生に踏み込んでいいのかな。すごくモヤモヤしちゃうんだよ。でも、善意の気持ちを拒否していいのか不安にもなる」 「わたしを受け入れてくれるひとがいたら、愛と感じるものを示してくれたら、嬉しいと思ってしまう。しかもそのひとがわたしのためにわたしの生きる道筋を考えて示してくれたら、多分、喜んでしまう。愛に従っておけばしあわせになれるって彼女の言葉を聞いて、わたしも、妄信的に誰かを頼って自分を差し出す可能性がゼロじゃないなと思ってしまったよ」 「誰だって、誰かを傷つけて生きてきてるんだよ。自分もそうだと気付いたのなら、これ以上傷つけないよう気を付けていくしかない。あなたにも誰かを傷つけた過去があったことを教えてくれたそのひとに感謝してさ。生かせばいい。それだけなんだよ。向き合うのは大事だけど、考えすぎるのはダメだ」」 | ||||
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町田そのこファンなら感動できるのかな。行き当たりばったりご都合主義な展開が多すぎるのと、やたら感傷的で泣きを誘うかのような演出に白けてしまった。トーンがウェットすぎ。 ミステリーとして読んだら杜撰だし、犯罪小説として読んだら作り物すぎる。 次回の本屋大賞ノミネート確実って言ってる人いたけど、これよりいい作品たくさんあるでしょ…。 | ||||
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サスペンスとして読むと少し物足りなさを感じるが、テーマは犯人探しではないのだろう。加害者の気持ちが繊細に書かれていて、読み応えがあった。 | ||||
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しんどかったけど読んで良かった。 内容は読んで | ||||
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飯塚みちるは週刊誌の記者だったが、ある記事を書いたことで自分を許せないよう事態を引き起こし、挫折し体調も崩し、逃げるように北九州の地元に戻り、タウン誌の記事を書いていた。 しかし、みちるの地元で変死体が見つかったことから、周囲の心配をよそに彼女は事件に関わっていく。 主人公の「飯塚みちる」の考え方がいつも正しいとも、彼女をとても魅力的だとも思わなかったが、彼女が何か言う度に自分だったらなんて言うだろう、なんて思うだろうと、とても考えさせられながら読み進めた。 彼女が丁寧に取材を進めながら、謎が少しずつ解き明かされていく課程は、まさにミステリーの醍醐味だったが、加えて、加害者と被害者の関係、加害者にならざるを負えなかったそれぞれの理由、普通に見える家庭の中にある男尊女卑、弱肉強食、いろいろな意味でとてもとても内容の濃い作品だった。 まさに現実に起きていてもおかしくない犯罪態様は、現実的に描かれているからこそ、とても残酷で目を背けたくなるところもあったが。それでも大変面白く有意義な読書でした。 | ||||
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町田その子さんの大ファンです この小説はこの先どうなるのかどんどん引き込まれていきました 何度も読み返したくなりました | ||||
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女性の地位問題とかトランスジェンダー、独居老人とか現代社会の問題を色々ねじ込んでて最初は引き込まれるものの、読み進めていくうちに「その設定いる?」と逆にそれが鼻につくようになってしまい、どんどん現実味が無くなってしまいギブアップ。昔の言い方で言うと、所々クサいというか、作家の自己陶酔に付き合わされているような感覚になって読んでいて疲れた。 | ||||
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みちる、都合の良い偶然に助けられすぎ。 ☆3としたが3.5位。町田そのこ初読み。面白かったし意欲作だと思うけど、所々腑に落ちない箇所や疑問な点が多く、他の人のように手放しに絶賛できない。 まずみちるが記者を辞めるきっかけになった中学生のいじめ自殺事件。みちるは「被害者を加害者として扱って傷付けてしまった」って繰り返し悔やむんだけど、主犯・従犯の違いはあれ共犯には違いないし、本当の被害者からすれば西だって卑劣極まる加害者。 一度は助けてくれると期待させといて写真を流出したのだから、ぶっちゃけ一番憎いまである。 彼にも同情の余地はある。ある意味被害者でもある。 とはいえ一回裸にされただけ、全身に卑猥な落書きをされネットに拡散されたわけでもない。そして彼がその恥(と言えること?)に耐え切って告発に踏み切れば、被害者は今も生きていた。私が自殺した女子だったら西が一番憎い、裏切り者の偽善者だもの。 女性が抑圧される地域社会や家父長制の加害性にフォーカスした構成は時代性にコミットしているし、相棒がトランスジェンダーの男性なのも新しい。センシティブな社会問題を扱った令和なヒューマンドラマとしては評価できる。 が、主人公が甘い。甘すぎる。 タウン誌ライターを軽んじるっぽい冒頭の独白でも「ん?」となったものの、一番引っ掛かったのは推し活に命をかけてる風俗嬢に対し思ったこと。 「残虐に搾取されてるのにも気付かないで(以下略)」 ……いや、真っ当な大人の意見として見れば間違ってない。みちるは正しい。 だからといって哀れむのは傲慢。 「自分で働いて稼いだお金を自分の為に使ってほしい」って、それがこの子にとっちゃ推しに貢ぐことなんじゃない?搾取されてるのに気付いた上で、自分が気持ちよくなる為にやってるんじゃない? 世間的に不道徳不健全だろうとそれが今この子を生かす理由になってるなら、「男に搾取されている馬鹿で可哀想な被害者」と決め付けて一方的に見下すって、すげー失礼なことなんじゃないか? 確かに男に貢ぐのはやめた方が健康に生きられる。推し活なんてやめたほうがいいかもしれない。 結果、推しと切れたこの子は立ち直るかもしれない。立ち直れないかもしれない。人生に楽しみがなくなるかもしれない。生きる目的を失って空っぽになるかもしれない。人の形をした虚無になるかもしれない。 どっちがマシか選ぶのは彼女自身。 自分を救えるのは自分しかいない。 故に彼女を哀れむ資格はない、いわんや蔑む資格もだ。 自分の物差しで他者をジャッジする危険性や愚かさを説くみちる自身が、無自覚にこの手の「善なる哀れみ」を振りかざしまくるせいで萎えてしまった。せめて自らの傲慢さを省みる描写が欲しい。(井口にちょっと言われてけど) ミステリーとして読むと都合の良い偶然が多すぎるのもネック。井口に偶然会って助けられること三度、たまたま立ち寄った書店じゃ十数年没交渉だった元同級生とバッタリ再会、ライバル雑誌の記者とも偶然三度ご対面。何なら事件の犯人も知り合いでした。 待て待て北九州どんだけ狭いの、近距離で人間関係完結しすぎ!?東京に次いで何番目かに人口多くて栄えてる都会のはずでは……。 元記者の人脈を駆使してとか粘り強い調査の末に掴んだ新事実とかならわかる。が、単なる偶然。スミの事件調べ始めた途端何故か昔の知人や関係者に会いまくり、その人たちが絶妙のタイミングで絶妙な情報ドロップしてくれるって、幾らなんでもご都合主義が過ぎる……。 お陰でみちるが頑張って何かを掴んだ、成し遂げたっていうより、ただひたすらツイてるだけの女性って印象に堕ちてしまった。取材に行き詰まったら必ず親切な他人が助けてくれるんだもの。 主人公を記者にした以上、事件の核心に迫るピースは実力で掴んでほしい。人口密度的にあり得ない偶然があんまり連鎖するもんで、みちるの再生物語に没入する前に、作者の作為を感じて冷めてしまった。 全体の二割から三割を占める後日談も蛇足な感は否めない。 美散が半生を回想するルポルタージュは読みごたえがあったものの、要所要所のみちるの声がデカすぎて、感傷過多な説教臭さを感じた。ルポルタージュの体裁をとるなら淡々と進行してくれたほうが、フィクションで語られた「事実」の重みがズシッときた。 私が読んだ中では川上未映子『黄色い家』+柚木麻子『BUTTER』に近い印象。が、どちらの深みにも届いてない。『黄色い家』の行き場のない女たちの絶望や『BUTTER』の女記者のガッツと比べてしまうと、みちるの幼稚で独善的な考え方が共感を妨げる。「記者を辞める」と宣言した数ページ後にあっさり翻したりどっちやねん!? 彼女の心情も描かれてはいるものの、そこそこ経験を積んだ三十代の働く女性として見ると、「そんなことでウジウジするの?」「それは予めわかってたんじゃないの?」と言いたくなる。 大前提として、加害者支援施設に転職したところで「もうだれも、わたしの手で新しい傷を付けられることはない」はずがない。 そんなの絶対無理。 人は人で歪む。 だけど生きてく限り人との関わりはやめられない。 だからみんな人との関わりで傷付きながら懸命に生きているのに、十年以上記者として生きてきた人が今回の経験踏まえた上で、なんでそんな軽率に断言できるの……? 私たちにできるのはせめて人を傷付けることに自覚的になって、対面時に感情をセーブすることだけ。 タイトルの「アマリリス」が生かされてなかったのも勿体ない。作中みちると吉永が語っていたように女子会してほしかったとまでは言わないが、何か重大な意味が潜んでいるのかなと思ったら、予想外にサラッと流されてしまっていた。「月」は何……スミを埋める時に美散が仰いだ月?男(太陽)のお零れで光る女性の暗喩? 元カレの強い言葉が決定打になるラストも残念。きっかけは例のニュースだとして、他人(特に男性)の叱咤で心変わりするんじゃなく、きちんと自分の頭で考えて、取材対象や関係者を傷付けるリスクを自覚した上で、覚悟と責任をもって復帰してほしかった。 支配的な男性に搾取される女性の更生をテーマに引っ張ってきたのに、最後で結局そっちに行くのかよ、とガッカリ。 | ||||
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社会的な弱者に向けられる作家の視線が依然として温かくていい。 町田そのこワールドを確実に構築している。作品を読みながら温かい感情が溢れてることはよかった。 推理パートは偶然に頼るところが多い。もう少し緻密に仕込んでくれたらと思った。 | ||||
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社会問題を取り入れ、事件を追うサスペンスだけど、ここで町田そのこワールドが広がる。 ”ほんとうのかたち”を探し、心を再生していく。 そして信じた道を歩んでいくべきだと。 ”ここに大事なものは全部ある”という。 立ち止まることなく生きていけるように願って。 | ||||
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福岡県北九州市が舞台の作品です。 タウン誌のフリー取材ライターである、主人公の飯塚みちるが、東京にいた頃の元恋人に依頼されて、地元の死体遺棄事件について取材するところから始まります。 九州弁がかなり出てくるので、九州地方に住んだことがない私には、ところどころ分からない表現がありました。 事件の軸としては、遺体の発見から事件の真相を探っていく形なのですが、 その背景として、昔からの根強い男尊女卑、特に家庭内における男女不平等(男性の意見はすんなり通るのに対し、女性の自由には男性からの許可が必要等)がまかり通る状況がここそこに描かれています。 事件では、搾取されているのに、それを愛だと信じ込んでしまう女性もいて、格好の餌食となってしまうわけです。 みちるの相棒のような存在の井口さんが、またいい味出してましたね。各所でかなり活躍したと見ました。とにかく心強い存在。なにより、この二人のコンビがよかった。 終盤では、吉野スミおばあちゃんが暖かく愛しく思える作品でした。 殺人もののミステリですが、他の小説に比べ、犯罪に至るまでに経緯、犯罪に手を染めたあとの精神状態など、普通なら犯罪トリックに比べてあまり詳細には書かれないような部分を、この小説では大切にしていたように思います。 私はこういう犯罪心理が丁寧に綴られている小説に、読み応えを感じます。 多分一番訴えたかったのは、大切に育てられてこなかった、不器用な生き方しかできなかった女性の悲哀なのかな。 「危ない男には気を付けて!」を地でいくと同時に、暗いトンネルのなかにいるけど、遠い先に光明が見えてくる、そんな小説でした。 | ||||
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なんという読後感でしょう。読み終えた今、ただ呆然と立ちつくし、茂美(乃愛)や美散、スミおばあちゃんの人生を思って涙を流さずにはいられません。九州独特の女性蔑視がいたるところに読み取れたり、悲惨な事件が連続したり、読んでいて辛い人には辛いかもしれません。しかし、きっとこういう辛い人生を経験している人はあちこちにいるのだろうとも思わせる小説です。人生の寂しさと辛さを突きつけてくる小説ですが、北九州のかわいい方言や、たまにあらわれる他人の優しさに救われる小説でもあります。 | ||||
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