給水塔から見た虹は
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『給水塔から見た虹は』は、技能実習生や移民労働者の現実と、子どもたちの心の成長を静かに、しかし力強く描いた作品です。社会の理不尽さに触れながらも、問いを投げかけ続ける子どもたちの視点が胸に刺さります。決してハッピーエンドではない結末が、現実の厳しさを突きつけ、深く考えさせられました。 | ||||
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「夏日狂想」から立て続けに窪美澄作品。折しもこのレビューを書いているのは2025年7月20日、いつの間にか争点が「外国人問題」になってしまった参議院選挙の投票日。そんなタイミングで取り上げる事になったのが外国人との共生を題材にした本作となったのは何とも奇遇。 物語の方は神奈川の東端、東京に隣接する地域に位置する古びた団地に住む二人の中学生の憂鬱な日常から始まる。 物語の主役の一人、桐乃は朝から母親の里穂に対してイライラしっぱなし。勉強をどれだけ頑張っても褒めてくれず、団地に住む外国人の手助けや日本語勉強会に掛かりっきりの母親にも自分を「団地の子」として煙たがっているクラスメイトにもうんざりで目下の目標は「良い大学に入ってこの団地を出ていく事」。 もう一人の主役はベトナム人移民の子として日本で生まれ育った少年・ヒュウ。三年前に父は母と自分を置いて出ていき貧困の中で母親からはネグレクト気味な上に母親がベトナム語ばかり話すものだから日本語が上達せずに学校では外国人向けの特別教室通い。クラスメイトのブラジル系不良生徒ケヴェンからはいじめられ続け、友達なんか誰一人いない身。 そんな二人が送る日々は明るさなんかどこにも見えないどころか桐乃がケヴェンのからかいに耐えかねて授業中にキレた事でクラスメイトから無視される様になり、ヒュウは団地の片隅でたむろしている外国人少年グループに誘い込まれて万引きや運び屋染みた仕事を押し付けられてアンダーグラウンドの世界へ引っ張られる様になりいよいよどこにも逃げ場がなくなる始末。 しかしある日、桐乃の母親である里穂がパートで勤めるスーパーにヒュウが万引きを働いた事からそれまで敬遠するべきクラスメイトとしてヒュウを扱ってきた桐乃との間に不思議な縁が生まれ、その関係は一人ぼっちで過ごす夏休みに更に深まって思い切った行動へと繋がる事に…… ……おお、これはまた評価が分かれそうな作品だなあ。いや、外国人との共生やら「どこにも行けない中学生男女のひと夏の経験」みたいなものを題材にしたら普通は読後にスッキリした余韻が残る「きれいな話」としてまとめると思うでしょ?愚かな事に自分もそう思って終盤まで疑わなかったのだけどラスト20頁で主役の中学生コンビともども作者から「世の中そこまで甘くねーぞ」とお立ち台から蹴り落とされた様な読後感が残った。 物語の方は外国人と強制せざるを得ない古い公団住宅を舞台にした中学二年生の桐乃とヒュウ、そして桐乃の母親で外国人向けボランティア活動に熱心過ぎる里穂の三人の視点が準繰りに入れ替わる形で進行する。 この作品、全編に言いようのない苛立ちみたいな空気が漂っているのが最大の特徴。上の冒頭部分の紹介でも取り上げさせて頂いた様に桐乃は外国人にかまけて自分の事を構ってくれない母親やクラスメイトの色眼鏡に苛立ち、ヒュウは言葉が通じない日本社会や自信をいじめのターゲットにするブラジル系のクラスメイトに苛立ち、大人である里穂もうまくいかない母娘の関係に悩まされている。 特に二章構成のうち「一学期」と題された前半部分においてはこの不満だらけの日常の中でイライラ感が煮詰まっていく状況を描く事に特化している。そんなイライラ感だらけのストーリー展開についていくのは面倒だなあと思われる向きも少なく無かろうがそこをカバーしているのが外国人との共生を余儀なくされる団地の住人の生活描写かと。 今回の参議院選挙でも争点にされてしまった感のある外国人問題なのだけど……正直、ピンとこないのは自分が外国人との関りが最小限に留まる世界に住んでいるからに他ならない。コンビニの店員やら現場作業で働いている彼らの姿は毎日の様に見掛けているけど労働の場を離れた彼らがどこへ帰ってどんな暮らしを営んでいるかなんて知りようも無いし、たぶん窪美澄作品を読もうなんて方の大半は似たり寄ったりの状況でお過ごしなのではないだろうか? 本作の舞台となっている外国人住人の多い団地の世界やら第二章で取り扱われる技能実習生たちの生きる世界の生々しい描写は「関わらずに済む側」としては大変興味深く「今の日本にこんな世界が繰り広げられているのか」と作者の熱心な取材に感心させられる事しきりであった。 が、問題はこの舞台となる団地には当然の事ながら日本人も多く住んでいるのだけどやはり自分にとっては彼らの世界も縁遠い。冒頭から桐乃が「団地の子」としてクラスメイトから謂れの無い色眼鏡で見られる立場が描かれるのだけど、やはりこれも他人事であってそこに二重構造の差別が存在する事にはなかなか気付けない。 団地で外国人と共生している桐乃ですら意識しなければ外国人たちの世界なんて目に入らず、里穂が外国人にかまける理由への理解も及ばないわけで「見ようと思わねば見えない世界」の難しさはこの作品のメインテーマの一つなのかなと思わされた次第。 この色眼鏡で見られる世界から抜け出そうにも抜け出せない桐乃とヒュウが不思議な縁で関係を深めて第二章「夏休み」ではもっとディープな「元技能実習生」の世界に踏み込むのだから興味は尽きない。低賃金重労働(それも給料が約束通り払われるとは限らない)の労働環境に耐えかねて入管送りを覚悟して脱走した外国人労働者たちがどんな日々を送っているのか……興味を惹かれる所もあるでしょ? 居場所の無い団地を飛び出したヒュウと桐乃に居場所を与えてくれた元実習生たちの生き方は完全に脱法そのものなのだけど自分を救ってくれないルールを押し付けてくる日本社会の中で彼ら外国人労働者が最後に辿り着く生活のグレイさを肯定も否定もせず「こうせざるを得ないのだ」という突き放した描き方をしていたのにはちょっと感心した。 こんな感じの展開だから、それまで目に入ってこなかった世界を知った事で桐乃やヒュウは精神的に成長し、これから彼らは外国人との共生に理解を深めて日常へと回帰していくのであった……みたいな「きれいな話」で終わると思ってたのよ、自分は。が、そうは問屋が卸さない。 終盤の20頁は身も蓋もないというか……中学生がちょっと学校外の世界を知ったからって世の中がどうこう出来る力が手に入るわけではなく、従って憂鬱な日常はそのまま。ヒュウにとってはボートピープルとして日本に必死の想いでやってきた祖父とも会いたくて仕方が無かった父親とも「幸福」を共有できないという苦い現実を突き付けてくるのだから「おうっ?」と変な声が出た。 敢えて救いを見出すとすればヒュウが「自分の幸せなんて自分の手で掴むしかない」という覚悟を決める所にあるんだろうけど……そこまで400頁近く「外国人との共生バンザイ」「未来ある少年少女って素晴らしい」みたいな呑気な結論を信じて読んでいるとこのオチは作者から裏切られた様に感じる人も多いだろうなあ……この救いの無いオチを堪能する為にどうか終盤までお付き合い願いたい(ゲス顔) 読後感は思い切りビターだけど、甘さ控えめで終わりの見えない現実と向き合う覚悟を決める少年の姿を「成長」だと認められる方なら読んで損は無し……しかし、えらいタイミングでえらいもんをレビューしてしまったもんだ。 | ||||
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いつもと変わりのない景色のなかで、”白玉団子のような”あの給水塔がみんな見ているよ。 理不尽ないじめにあい、独りぼっちで、居場所がない中学2年生。 そんな二人が出会い、初めての友だちになる。 お気に入りフレーズは”自分の納得できる人生を、精一杯自分の力で選ぶこと、それが生きること”。 | ||||
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中学2年生の桐乃は、多国籍な住民が暮らす団地での生活に嫌気がさしていた。 クラスではベトナム人のヒュウがいじめられ、母は他人ばかりを優先する。 そんな中、ある出来事をきっかけに桐乃はヒュウと心を通わせ、「団地を出たい」という共通の願いに気づく。 中学入試に出題される可能性があると思い購入しました。 さまざまな国の人々が暮らす団地を舞台に、言葉や心のすれ違い、そして思春期の揺れ動く感情が丁寧に描かれています。 鬱屈した日々の中で出会った桐乃とヒュウの関係は、読後も心に残ります。 ヒュウはいじめや不本意な関係の中で苦しみ、桐乃は母の他者への献身に疎外感を抱えながら、閉塞した環境から抜け出したいと願う。 二人が心を通わせる場面には温もりがありますが、その関係さえも、出口のない現実の中ではあまりにか細く脆い。 派手な希望はなくても、二人の経験がこれからの糧になると信じられる物語でした。 文章量はやや多めですが、難解な語句は少なく心情描写も丁寧なので、小学生でもじっくり読めば理解できると思います。 親子で読み、語り合いたい一冊です。 いま読めてよかった。 | ||||
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