夏日狂想



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    初公開日(参考)2025年05月
    分類

    長編小説

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    夏日狂想

    2025年05月28日 夏日狂想

    僕は人生かけて君に惚れているのだ—— 年下の天才詩人。知的な文壇の寵児。ふたりの男に愛された女は。 ひりつく三角関係の果てに自立を得る女を描く、直木賞受賞第一作。 明治末の広島に生まれた礼子は、自由のない故郷を出奔。女優を目指しながら、年下の詩人、水本と暮らしていた。そして出会った文壇の寵児、片岡。礼子は才能ある二人の男を愛し、求められ、引き裂かれていく。三角関係が終焉を迎え礼子が見つけたのは、自らも「書きたい」という情熱だった——。誰のミューズでもない、自分の言葉を紡ごうとした一人の女を創り上げた、魂を震わせる長編小説。(「BOOK」データベースより)




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    No.6:
    (5pt)

    500頁の本文で「助走」が420頁。長い長い助走を経たからこそ終盤で描かれる主人公がこの上なく映える、そんな長編

    女性が主人公を務める作品でこういう形容詞を使うのはどうかと思うが……「タフ」以外に本作の主人公・野中礼子の歩んだ人生を表現する言葉を思いつかない。

    久しぶりに手にした窪美澄の作品だったのだけど、読み始めてから延々と続く迷走気味な主人公の人生に「この主人公はいったい何がしたいんだ?」と思わされ続ける事に。しかもその迷走の長さが半端ない本文自体は500頁ほどなのだけど、そのうち420頁つまり8割強が迷走し続ける主人公の人生に費やされている。

    主人公と言うのはもっと一直線に自分の目標へと突き進むべき存在として描かれるべきで迷走ばっかりの人生に付き合わされるなど堪ったものじゃないと仰られる向きもあるかと思うが、本作に関しては「それでもなお読み進めてくれ」と言いたい。その延々と続く主人公の迷走が実は「助走」であったのだと気付かされる驚くべき終盤が待っているからだ。

    物語の方は広島は中島本町で商売を営む父親の元、何不自由する事無く育った女学生・野中礼子の日常から始まる。周りから器量よしと褒め称えられ大好きな吉屋信子に憧れて雑誌に文章を投稿したり新派の劇を観に行くなど表現に並々ならぬ関心を見せる礼子であったが大正時代の女学生に卒業後待ち受けるのは親が決めた相手との結婚。

    「エス」とも言われた関係にあった先輩から「新しい時代の新しい女になりなさい」という言葉を呪いの様に押し付けられた礼子は溺愛してくれた父の他界後に世話になった保守性の権化の如き叔父を出し抜く形で教会で出会った男・川島の手引きを受けて東京へ出奔。

    「女優になりたい」という願いを叶えるべく新劇の主催者・小山内を訪ねた礼子だったが広島訛りが隠せない事で「まず言葉を何とかしなさい」と遠回しに断られる羽目に。東京で悶々とした日々を送る礼子だったが関東大震災で混乱する町を脱出する様に京都へ移る。そこで待っていたのは自分より年下の詩人を名乗る生意気な少年・水本との運命の出会いであった……

    長谷川泰子という名は本作に触れて初めて知ったのだけど中原中也や小林秀雄といった日本文学史に燦然と名を連ねる文士たちを誑かした毒婦……という扱いを受けていた事もある女性らしいが本作はその長谷川泰子をモデルにしながら「新しい時代の新しい女性」たらんと足掻き続けた女性の一生を描いている。

    物語の方は完全に礼子の視点で語られ、礼子が自身の大正時代後半から始まり高度成長期まで続いた人生に、そしてその人生に常に付きまとい続けた男たちにどう向き合い続けたかを積み重ね続ける事で展開される。

    礼子のキャラを一言で表現するなら「真っすぐ」以外にあり得ない。それも女性にしては、という括りなど不要な世間の中で生きていく一人の人間として規格外に「真っすぐ」なんである。夢に向かって真っすぐ、表現という仕事に対して真っすぐ、恋に対して真っすぐ、人生そのものに対して真っすぐ……途中から怖くなってくるぐらいに「妥協」という事を知らんのよ、この主人公。

    今でも女性が一人で生きていくのは決して簡単じゃ無いと思うのだけど大正時代に良い家のお嬢様が親や親族の庇護を抜けて女優への憧れだけで東京へと出奔するなど正気の沙汰じゃ無い。だがこの真っすぐなお嬢様は敢行してしまうのである。この時点でだいぶ「大丈夫か、この主人公?」と読んでいる側が不安になるのだがこんなのは礼子の人生においては序の口。

    京都で中原中也をモデルとしたと思しき詩人・水本と出会ってからは恋に真っすぐな女性としての礼子の姿が積み重ねられる。恋に真っすぐだからといって惚れた男にベタベタとしな垂れかかるのではなく恋においても礼子は我を通すのだから恐ろしい。水本が求めてきても自分がその気にならなければ「触んじゃねーよ」とばかりに足蹴にしたりとか破天荒過ぎて唖然とさせられた次第。

    しかも水本と付き合い始めた瞬間に自分を東京へと連れ出してくれた川島にはあっさりと三下り半を突き付けた様に男を乗り換える事にも迷いが無いのが礼子の真骨頂。小林秀雄をモデルにしたであろう片岡と同棲したりもするのだけど、次から次へと創作家として生きる男と付き合い続ける訳だが決してこの男遍歴にばかりかまけていない所にこの礼子という女の人生の面白さがある。

    女優への夢は諦めず松竹やらマキノやらに出入りするんだけども、ここでも「妥協なき女」の姿勢は全く崩れない。多少役を貰える様になっても自分が気に入らないとなれば監督だろうが映画会社の重役だろうが「こんな作品に意味など無い」と吐き捨てるんだから開いた口が塞がらないとはまさにこの事。

    男と同棲してない時期は大部屋女優の給金では食えないものだから酒場の女に身をやつしたり、それでもなお自分は「何者か」になり得るのだと信じて疑わないのだから鋼メンタルとはこういう人物を指して使うのだなあ、と変な事を考えたりも。作者の意図した所とはズレるのかも知れないが途中からこの「直進行軍」みたいな礼子の人生がどこに辿り着くのか、そればかりが気になって仕方なかった。

    戦後になっても同棲していた作家が薬物中毒で再起不能になりかけたりとロクな事にならないのだけども、原爆が投下された後の広島を訪ねた辺りから礼子の生き様に変化が生じ始めて「お?」と。

    何というか……それまで自分の夢や付き合っている男たちの事ばかりしか目に入らなかった人生に初めて「他人」が映り始めて礼子が自分が生きる意味に向き合う様になったのでこれは間違いなく成長であろう。若さも無くし、女優という夢にも見切りを付けて薬物中毒に陥った男とも別れた礼子が初めて「自分がなすべき事」に向き合うのである。なんだか子供が初めて自分の足で立ち上がり、ヨタヨタと歩き始める姿を見た親というのはこういう心情になるのではないだろうか?

    迷走しっぱなしだった人生が、自分の心身を削って創作に打ち込む男たちの夢を自分の夢と勘違いする様な迷走から抜け出し50歳を過ぎて羽ばたき始める……こんな人生があるのかと瞠目させられた。晩年の礼子の慎ましく、しかし自分の足で確実に進むべき道を歩んでいる事が伝わってくる人生が「美しい」と感じるのは間違いなく延々と描かれ続けた「真っすぐ迷走する人生」を描き続けたからに他ならないかと。

    終盤の80頁で霧が晴れたかの様に真っすぐに前を見据えて自分の人生を突き進む礼子の姿を拝ませて貰っている間は「ああ、自分はこの礼子の姿を見る為に400頁以上もグダグダ人生と付き合ってきたのだな」と確信させられた。高く跳ぼうと思えばそれだけ長い助走が必要になるのである。

    延々と迷走し続ける主人公の人生に付き合い続けるのはラクじゃないけど、憑き物が取れた様な、自分自身が心底納得できる生き方に辿り着いた礼子の姿を拝む為には避けて通れないステップでもある。さあ、皆さんもこのグダグダ人生の果てにある尊い姿を拝む為に気合を入れましょう、そんな誘いを誰にともなく掛けたくなる一冊であった。
    夏日狂想Amazon書評・レビュー:夏日狂想より
    4101391475
    No.5:
    (5pt)

    すべての詩は頭の中にあった…

    ”器量よし”と言われた長谷川泰子をモデルに。
    現実を元に紡いだ物語は明治末から昭和40年代まで。
    女優を目指し広島から上京。
    中原中也と小林秀雄との三角関係。
    ”愛情という情”なのか。
    ”生きているうちは生きたいように”と、自由と自立を求めて。
    再読したエピグラフ、中原中也「春日狂想」に涙腺は緩む。
    夏日狂想Amazon書評・レビュー:夏日狂想より
    4101391475
    No.4:
    (5pt)

    とても面白いストーリー展開

    著名な実在の作家達の名前がしばしば出て、主人公の女性も実在? 読み終え解説を読んでモデルがいたんだって納得した。
    夏日狂想Amazon書評・レビュー:夏日狂想より
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    No.3:
    (5pt)

    大正から戦前、そして戦後の日本の情景まで鮮やかに脳裏に浮かぶ

    窪さんの作品、僕は正直、アタリ・ハズレが大きいんだけど、これは珍しく、大当たりでも、大外れでもなく、淡々と、でもグイグイと読めた。3人のことはもちろん、3人が生きた時代を、改めて見てみたいと思った。
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    No.2:
    (5pt)

    著者得意分野の女性の生涯物語

    実際のモデルがいるだけにイメージが沸きやすい点はあるが、それを差し引いても登場人物達のリアルさが迫ってくる。
    特に戦時中の描き方がの心情が訴えかける。

    1代記ということで、1冊にまとめるにはやや一つづつのエピソードが希薄になり物足りない部分もあるが、結末まで終えるという点での満足感はある。

    著者ならではの女性の視点でも描き方で、いつもの作風が好きな人にはぴったし。
    夏日狂想Amazon書評・レビュー:夏日狂想より
    4101391475



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