(短編集)
よるのふくらみ
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気に入りました!良かったです。 | ||||
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兄弟と幼馴染の女性との三角関係の話です。浮気、離婚、婚約破棄、なんでもありです。人によってはこいつら何を考えているのか、と思う人もいるでしょうが、お下劣さや嫌味もない感じなので、読みやすかったです。作者は女性ですが、圭祐の心情がよく描かれていると思います。 | ||||
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『よるのふくらみ』(窪美澄著、新潮文庫)は、窪美澄特有の直截な表現というか、あけすけな物言いというか、男の女の微妙な関係が本音で語られていきます。 各章毎に語り手が交替します。 圭祐と同棲している「みひろ」―― 「ふと隣の布団を見ると、圭ちゃんが私に背を向けて寝ていた。肩のあたりが呼吸に合わせて小さく上下している。昨日も帰りが遅かったのかな。私は左手を伸ばして、圭ちゃんの背中に触れてみた。圭ちゃんはぴくりとも動かない。あのう私、今、欲情しておるのですが。あなたとセックスがしたくてたまらないのですが」。 圭祐の弟・裕太―― 「俺がみひろを好きってことだって、兄貴は気づいていたはずだ。それなのに、先手を打つように、みひろに告白しやがって」。 圭祐―― 「みひろを好き、という気持ちに気づいてから三年が経っていた。好きだ。今日、その思いを伝えるために、僕は校舎と校舎をつなぐ渡り廊下に立って、みひろが来るのを待っている。・・・誰にも遠慮はいらないの。幸せが逃げてしまうよ。マリアさんに言われたことを僕は心の中で繰り返していた。なまぬるい夏の風が渡り廊下を通り抜けていく。僕はそれを言わなくちゃいけない。たとえ、それが、僕の小さな弟を傷つけることになっても」。 みひろ―― 「一緒に暮らし始めて一年経って、私と圭ちゃんとの間にはセックスが存在しなかった。病院で検査を受けて、圭ちゃんの体に問題があることがわかった。圭ちゃんは、治療薬を使わなければセックスができなかった。薬を使ったって、私は圭ちゃんとセックスできればなんの問題もなかった。けれど、薬を使ったそのセックスはぜんぜん気持ちよくなかったのだ。・・・(保育園の同僚の)立花先生が升酒を一口のみながら言った。目のまわりが赤い。『でも、あれですよねー。自分にとって、全部相性のいい相手なんていないってこと頭ではわかってるけど。セックス以外は全部いいのに、それだけだめって、結構不幸じゃないですかぁ。でも、好きだからって、その人とするセックスもいいとは限らないし・・・あたしの彼氏も』。立花先生が顔を近づけて言った。『めちゃくちゃ早いんですよぅ』」。 裕太―― 「灯りを消して、里沙さんを抱いた。里沙さんのやわらかい体は、いくらきつく抱いても、自分の腕のなかから逃げていくような気がした。みひろと里沙さん、二人への思いをだらしなく心のなかに飼っていた俺と同じように、里沙さんが、俺とだんなさんのことを考えていたかどうかはわからない。やさしい里沙さんがついた嘘かもしれない。そう思いながら、まだかすかに、里沙さんにだんなさんより愛されていたい自分もどこかにいた。ゆるゆるとあたたかい里沙さんの体のなかに収まりながら思っていた。・・・『あんた、若いし、もてそうだからわかんないだろうけどね』。かすれた川島さんの声が聞こえにくかったので、椅子をベッドのほうに引き寄せた。『一生のうち、ほんとに好きになれるやつなんて、そう何人もいないんだぜ。出会えないやつもいる。出会えただけで幸運だ。女のわがままなんて、かわいいもんだって。私を大事にしてくれ、って、あいつらの言いたいことはそれだけなんだから』」。 圭祐―― 「男ならまだ理解できても、女に性欲があることや、それを我慢できないことが、もっとわからなかった。女と男がイコールだと思いたくなかった。特に、自分の好きになった女は。・・・僕はいつか許せるだろうか。許せなかったいくつもの出来事が頭のなかを通り過ぎていく。みひろを置いて若い男と家を出たみひろの母親を。みひろの母親をいんらんおんな、と笑った商店街の人たちを。家庭がありながら浮気を続けた親父を。それをだらしなく見て見ぬふりをしたおふくろを。僕から逃げ出したみひろを。僕からみひろを奪った裕太を。そして、自分を」。 「『なぁ、おれとつきあわへん』。『いんちきな関西弁、いらっとするわぁ』。そう言って笑い、僕の首に腕を巻きつけてきた。会いたかったで、圭ちゃん。耳元でかすれる声が小さく震えていた。フェイクファーが僕の頬を撫で、コート越しに京子の体のあたたかさが、少しずつ伝わってきた。そのかすかな熱が冷え切った僕の何かをゆっくりと溶かしていくような、そんな予感がしていた」と結ばれています。圭祐よ、ほんまによかったなあ、わしもホッとしたで。 | ||||
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登場人物の描写がしっかりしていて、読みながら矛盾がなく、登場人物それぞれに感情移入が出来て最後まで一気に読んで、温かい気持ちになりました。 女性作家の官能描写もギトギトしていなくて、共感出来る描写だと思った。 普遍的な内容だけど、退屈にはならない作家の力量を感じました。 | ||||
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幼なじみを挟んでの兄弟での三角関係、などどいうありきたりな単純な話ではない。この物語に出てくる全ての登場人物がまさに愛すべき個性を発揮して、様々な彩と深みを与えている。また、主人公たち3人の心の揺れ動きも、本当にドキドキするくらいリアルに響いてくる。これは、作者の筆の力によるものだろう。連作短編集が、緻密な構成の上に成り立っているのである。作者はどんな決着の仕方を見せてくれるのだろうかと、ワクワクしながら読み進めることができた。 一方で、女性作者ならではの視点も面白い。第一話『なすすべもない』で、みひろが「ある日、気づいたのだ。私は生理と生理の間ごろに激しく欲情するってことに」と独白する場面があるが、程度の差こそあれ、女性だって欲情するということを、あっけらかんと表現してくれる。また、最終話で、仕事をやめろという圭介に京子が問いかける。「圭ちゃん…風俗とか、悪い仕事やと思てるん? 汚い仕事やと思う? うちのお母さんもそういう仕事でうちを育てたんやで…」「圭ちゃんもほかの男と変わらんな…違うと思てたけど」と、突っぱねられる。その後、訪ねてきた裕太との会話の中で、こういう思いを抱いている。『僕や裕太(男性)が、みひろ(女性)を守ってやるなどと思うことは、もしかして、とても図々しくて、傲慢で、あつかましいことなのかもしれない』これらは、オトコ社会でのいわゆる一般常識を一刀両断にしていて、爽快感さえ感じられる。 たぶん、一番辛い思いをしたであろう圭介。作者は最後にこういう場面を用意する。再会できた圭介と京子。最後の場面で圭介は、素直に自分の思いを京子に伝える。その思いは京子に受け入れられ、圭介は京子に救われる思いを抱くのである。 | ||||
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