アニバーサリー
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解説の小島慶子さんが的確な指摘をしている。「残争を生き延びた晶子にとって、人生は何もかも失った所からのスタートだった。 手に入れる喜びを存分に味わった晶子、もっともっとと渇きの止まない真希、いつかは失われるだろうと虚無的に生きる真菜。日本を豊かにした世代と、その豊かさを享受した世代、そして次の幸福の物語を見失った世代、それぞれの渇きが描かれている」特に作者が中心に据えていたのが、家族の形だったのではないだろうか。戦後、高度経済成長と共に、三種の神器と呼ばれる家電が入ることにより、人々の生活にゆとりを与え、女性の社会進出を後押しした。それと同時に核家族化が進み、子育ては孤立していく。 物語は、それぞれの時代背景にあるものを色濃く反映させながら、リアリティを持ってそれぞれの時代に生きる女性たちを描いていく。 後半、東日本大震災と原発事故の中、出産した真菜。彼女を放っておけない晶子。世代も違う、赤の他人である二人が心を通わせ晶子の家で暮らす中、真菜の孤独は少しずつ和らいでいく。 この物語は、現在に繋がっている。何も解決したわけではない。不安な世の中は続いてゆく。それでも、生きていくのだという、柔らかいながら力強いメッセージを受け取った気分だ。 | ||||
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本当に良い、素晴らしい小説です。機能不全家族や出産という重い重いテーマを扱いながらも、窪美澄さんの文章からは生きづらい人生を生きる人たちの人生が交差する事、その奇跡への敬意のような、優しさが感じられます。 一章、戦時中の混沌の中で昌子の心が真っ直ぐに育っていく様に、今まで読んだ窪さんの小説とは違うタイプの涙を流しました。限りなくフィクションに近い所に設定された昌子の優しさだけど、昔の女性って本当にこんな風に素直に他人に優しい事が多い。そんな優しさが息子の死や流産という苦しみに襲われる、たったこれだけで泣かせられる文章の力がありました。昔の小説風の叙述が今読むと新鮮。 二章の真菜は真逆のゆとり世代。上手くいかない家庭の中で歪んでいく真菜の心と体が切ない。真菜の不純異性交遊と親友の関係性は他の小説で見たような話ではある、だけど読ませます。 そして311の地震と真菜の出産をきっかけに2人の人生の線が混じっていく三章。後半、真菜が両親とどう折り合いをつけるのかに従ってどんどん小説が盛り上がっていきます。上手くいっても嘘くさいし、いかなすぎても救いがない、その狭間でなんとか真菜の人生が好転してほしいと切なく読みました。 構成も良いなと思いました。最初は昔の小説風で、中盤からは現代風になっていくので飽きさせません。子供の親への歪んだ気持ちを描いた小説の中ではベストではないかと個人的に思います。 | ||||
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70代のマタニティスイミングコーチ 晶子と、その生徒で30代のシングル真菜の交流を描いた作品。 東日本大震災を起点に、晶子、真菜、それぞれの人生を振り返るという展開だ。戦争、子育てを経てキャリアウーマンとして歩んできた晶子は、シングルで子供を産もうとする真菜に心を砕いていく。 それぞれの人生が、ひとつの短編小説になり得る重厚さ。真菜の親子関係、そしてお腹の子の父との関係は、世捨て人のように自暴自棄になるのも宜なるかな。 著者らしい気持ちをささくれだたせるシーンはあるものの、ラストは爽やかな感動に包まれる。 | ||||
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素人のつづり方みたいで面白くなかった。今はパソコンで執筆する人が多いせいか、文章に重みがなく、推敲した後すら伺えない。素人の域を出ない小説と感じた。 | ||||
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お見事!これはなかなかの傑作でしょう! 窪さんの本を読んだのは今回で4冊目でしたが、本小説は「ふがいない僕は空を見た」に次ぐ出色の出来ではないでしょうか。 ➡これ以降、内容に触れます。先入観なしに読みたい方は、読まないでください。よい内容ですので、全く白紙で読んだ方がいいかもしれません。 ◇ 前半は、窪美澄さんの筆力に気持ちよく身を委ね、主人公晶子(あきこ)の子どもの頃から、結婚、出産、子育て、仕事を始めるまでの人生を辿ります。戦前に成功した質屋の娘、晶子のお姫様生活。戦中のひもじい疎開生活。そこでの晶子の変容。終戦での大人の変容に戸惑う姿。 筆力と言ったのは、窪さん自身が本当に大店のおひい様だったのではないか、疎開を経験したのではないか、自身で大きな心の変化を体験したのではないか‥‥。そう思わせる力量です。私より年下の窪美澄さんが疎開生活を味わっているわけがありません。 その筆力で、他人の豊かな愛情に包まれ育ち、前向きで明るい晶子の生活を描いています。素晴らしい。 ◇ 後半は一転、人の影の部分の描写が心の底まで届いて心を震わせます。これぞ美澄節! もう一人の主人公真菜の、華やかな生活の裏に隠れた寂寥感がやるせません。そのため真菜は少しずつ生活を乱し、ついに自身ではどうしようもない状況にまで、自らを陥いれてしまいます。そして出産。 3.11がきっかけで、戦前生まれの主人公晶子と現代的な主人公真菜が深く関わり合い終盤に突入します。晶子はこう思います。 「大人になれず、どこかが大きく損なわれた子供のまま、子供を産んで、子育てが上手くいくわけがない。子供に伝わるのは、愛なんかじゃなく欠損だ。欠損だけが受け継がれていくのだ。明るいものを、温かいものを、自分より後に生まれた人たちに渡していたはずなのに、それは自分が思っているよりも、ずっと冷たくて硬いものだったのかもしれない。」 ◇ 私は、「豊かさ」という点で、生まれてから今まで激動と言っていいほど大きな変化の時期を過ごしてきました。物質的豊かさを、カラーテレビであったり、オーディオであったり、家であったりと求めた時代から、全てが手に入る時代まで経験しました。それまで、手に入るものはただの物質でしたが、その一つひとつを得ることが、何だか内面の「喜び」にまで繋がっていた気がします。 反面、隣家の食卓で一緒に座って食事した生活から、一転、近所の方の仕事や生活、へたをすると名前までをもわからない今の生活まで体験しています。 得た物と失った物。今の生活は豊かになったと言えるのか?様々な言葉で繰り返し、窪美澄さんが疑問を投げかけてきます。 ◇ さて終末は何か全体に明るいトーンの結末で、「出来過ぎ」と思われる方もいそうですが、不安や余韻も残しながら、気持ちよい文末へと続きます。 素晴らしい読後感です。心から「読んで楽しかった」と思わせてくれました。 窪さんはやっぱりいいなあ。 | ||||
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