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黒い海 船は突然、深海へ消えた
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黒い海 船は突然、深海へ消えたの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.43pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全112件 81~100 5/6ページ
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徹底した取材、事実の積み上げ、素晴らしい調査報道と本書への評価には美辞麗句が並ぶ。 評者には一読して青山透子「日航123便 墜落の新事実」と似ている感じを受けた。中盤までの構成も似ているし、裁判を起こしていることやFRONTLINE PRESS所属にからくるおともだちの多さも同じ(青山は伊藤塾)。後半にはそれとなく青山をディスっている個所もあるが、お気持ち満載の文章、決めつけの強さは瓜二つ。取材開始時期から見て「自分の方がうまくやれる」と思ったのは評者の考えすぎか。 ページ数も少なく一部をネット公開で読んでいたこともあり、一時間もかからず読むことができた。どちらかといえば、ノンフィクション作品を読まない人向けの作品なのかもしれない。 結論だけ知りたければ247ページから読むと良い。 実名の人物が多いが、 P82「海上保安庁の教官」 P156「解析会社の社長」 P173「船舶事故の原因究明に長く携わってきたある人物」 P254「米軍の実情に詳しい研究者」 P255「外務省の局長経験者」 大事な所は全部匿名。特にP82の「海上保安庁の教官」特定して当てることもできなかったのでは力作とは言い難い。 水槽実験のYouTube動画は評者は見てなかったのだが書籍中にスクリーンショットでもあればと思った。著作権の問題で無理だったのだろうか。 本書に書かれていないこととして事故の補償問題がある。訴訟にまで発展した遺族はいないようだが自社で補償したのか保険なのか。もちろんこれが潜水艦の衝突なら国家賠償であり船主は負担しなくていい。 不満があるのはその後東日本大震災の影響もあるとはいえ会社がうまくいかなかったこともあるのではないか? 被疑者死亡なら事故で亡くなった船長らの送検も形式的なものだろう(だから不起訴)船舶事故の場合そうなることは船主も知ってそうだが。そこで問題になるのは事故原因の追求と刑事訴追との矛盾、つまりは業務上過失という犯罪の法のあり方ではないのか?著者も調べてれば気付いてそうだが……。 また、米原潜ジョージワシントンによる貨物船「日昇丸」当て逃げ事故についてP216「真相究明のチャンスは事実上、消えた」とあるが、小川和久「原潜回廊」に事故調査報告書などから分析した考察が書かれていることを著者は知らなかったのか? 評者は当初、意図的に無視したのかとも思ったのだが、続くP218の表に「原潜回廊」を読んでいれば絶対間違えないミス「米軍艦がはえなわ漁船87隻に漁網切断などの被害を与えた」があるので、様々な本を読んだという著者だけでなく担当編集者も校正担当者も同じ講談社の本なのに「原潜回廊」を読んでいないことが分かった。 この程度の調査能力、思考レベルしかないのかと、著作の信憑性に欠けるものと感じた。 と思ってさらに読み進めていると、当の小川和久が文中でコメントしているので評者は驚いた。青山透子の取材には協力しなかった小川だが、この本を読んで激怒しているのは間違いないだろう。 「潜水艦の男」当事者とでもいうべき事故当時の海上自衛隊潜水艦隊司令官が実名で登場し、流れを読まずぶった切ってくる。 そもそも著者は圧力だの隠蔽だの言うが、事故の多さ、それに事故発生から明らかになった期間をみると、本当に隠蔽とかされてるの?と評者は言いたくなる。 著者の主張通りなら、なぜ事故原因を「米軍や自衛隊の潜水艦は当時その海域を航行していないという返答があったので、中国やロシアの潜水艦が衝突した」にならないのか?ロシアや中国の潜水艦なら「圧力」で事故原因を隠蔽する必要がない。上記P218の表にも旧ソ連潜水艦が衝突したのではないかという事故がある。 著者は書いていないはずだが、事故現場海域に中国やロシアの潜水艦がいたことを証明すると自国の潜水艦探知能力が明らかになる、とでも言いたいのか? 結局、著者の予測は全て潰されてこの本は終わる。 こんな終わり方でこの本が企画、連載から出版されたのか分からなかったのだが、最終章の「花を奉る」で納得した。 処理され自然界的に問題ないレベルになったのに「汚染水」という科学的根拠を無視した風評被害の扇動はジャーナリズム的に許されることではないが(林智弘が激怒するレベル)、原因は分かっていない!隠蔽されている!と言い続けることで、原因究明とは関係なく事故を恒久化したいのだろう。これも青山透子と同じだ。 最後に、本書の内容と関係ないことだが他の方のレビューにレビュー操作を疑うみたいなことが書いてあって評者も見てみたが、評者から見てそのようなものはなかった。上記の通りあまりノンフィクション作品を読まない人向け、分量が少なく読みやすいのでレビューが書きやすいというのもあるのだろう。 ただし、ちょくちょく変わるルールとは言えガイドライン違反のレビューはいただけない。☆4つのレビューが1件運営により削除されているのを評者は確認したが、このようなレビューは慎まれるべきだろう。 | ||||
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今回購入したこの本の事件は、記憶にない事件でしたがとても興味深く読み進める内にどんどん真相が知りたくなり、普段本を読む事に時間がかかる私でも読みやすく読み進めることができました。 | ||||
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圧巻の内容で夜通し一気に読破してしまいました。 朧げに事故のことは覚えていたのですが、こういった背景があることは一切存じあげませんでした。国防とは何かを考えさせられるものでした。震災も重なり未だ苦しみながら生活しておられる方々もいることも忘れてはいけないですね。 しかし調査、取材での圧倒的な情報量、、、驚嘆の一言です。 まだ継続して審議されているとのこと。作り上げられた事実とは異なる真実が明らかになり、こういった事故の再発が起こらないことを望むばかりです。 | ||||
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長年趣味でヨットに乗っています。沿岸から離れることはそれ程ありませんがドローグ、パラシュートアンカーと呼ばれるものは常備しています。外海の深い海でも何かに衝突する事は低い確率とはいえ一応想定内。しかし、この漁船の様な事件に遭うのは全く御免ですね。海難審判にはほぼ全面的な信頼を感じていましたが、この本でその信頼も揺らいでいます。見事な取材です。 | ||||
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検証可能な形でドキュメンタリーに取り組む姿勢に感銘を受けた。これなら後に再検証してみることも出来るのではないかと思う。著者が学んだ英国大学のジャーナリズム学科というのにも興味が湧いてくる。日本では官僚が情報を徹底的に隠そうとする傾向があるように感じるが、こういったジャーナリストが現れれば逆に隠すことのデメリットも考える切っ掛けになるかもしれない。 結論から言えば『彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして・・・・・・。』ってのは煽り過ぎで、今だ事実は解明されていないし、今後もわかる機会はないだろうと思う。 ただ、読後にこの問題について真剣に考えてみたいとか、この国の制度を変えてみたいとか、問題意識を読者に持たせるような書きぶりは素晴らしい。次回作も是非とも読ませて戴きたいと思います。 | ||||
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読み終えた後は放心状態でした。 途中、何度と涙を抑えながら読みました。 沈没事故という日常では考える事もなかった現実と、そこで未だ苦しんでいる人達の様子、そして真実を追い求めるジャーナリスト魂の強さを感じながら一気に読みました。 たくさんの方々を丁寧に取材されている様子がよく分かります。 是非、沢山の方々に読んで頂きたいです。 | ||||
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こんな気概を持った著者が来られることに感服。 学校のサブテキストでも使って欲しい位です。 | ||||
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読み進めるほど引き込まれていく! が、決定づける物を得る難しさ、もどかしさ。 不帰の17人の魂、家族、人柄の良い船主の無念さを思うとつらい。 真実を解明してこそ、事故再発防止となるのに・・・。 しかし、著者の調査力に、感嘆した。 | ||||
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知られてない海難事件で、一流出版社からの立派な装丁の本なので手に取った。本を開けて、一見して字が大きく、情報の稠密さが足りないと感じたが購入した。 関係者への熱心な取材には感心した。 しかし取材した事実の落とし込み、説明がもっと欲しい。取材に応じてくれた人は、もっと情報をくれたと思う。 著者独自の推定原因の深掘り、展開も物足りない。取材が進めば、隠密行動が真骨頂の潜水艦は開示は期待できないことはすぐわかる。であれば開示情報からの組み立て、推論も欲しかった。ここは努力不足、もしくは取材方向の間違い。 取り扱ってる事案は技術的なことが多く、もっと図、写真などもあっていいと思った。 取材日記の域を出てないような感じ読後した。情熱ある著者なので今後の著作には期待は持てる。 | ||||
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とても興味深い内容でした。船に知識のない人(私)でも飽きさせない一冊です。 (人が17人もなくなっているのに飽きさせないとかそんな言葉もないものだけど) 描写がとても詳細で、まるで自分がそこに居て、波にのまれ息苦しくなるような感覚になりました。 読んでいくうちに呆れたり怒りを覚えたり涙したり優しさに触れたり。 ノンフィクションは凄まじい。文字通り事実は小説より奇なり。 これが小説だったらどんなに救われたか。 実は、読む前に帯を読んで「驚愕の真相とは」なんて煽りすぎじゃあない? この手の話って新しい事実やハッキリした結末なんてあるの?と、多少眉唾的な気持ちも有ったのですが ノンフィクションだから、すっきりとしたハッピーエンドと言うわけにはいかないけれど、でもそれでも 読んだ人ひとり一人にそれぞれの気づきが有ると思います。 14年が過ぎた今でも、ある日ひょっこり帰って来るんじゃないかと待ち続ける家族。 過酷な運命を受け入れて前だけを見る優しい社長。 帰らない夫の携帯を解約せずに今でも時折その電話にかけてしまう妻。 「希望を捨てていない家族にとって、私のしていることは「夫をあきらめなさい」という宣告になり、 家族をより深く傷つけてしまう事になるかもしれない」と葛藤する著者。 取材を申し込んでも「本人は不在」という良く聞く逃げの対応には丁寧に直筆の手紙を書いて 「本人の取材抜きに批判的な声のみを取り上げることはしたくありません」と説く。 著者の人となりも感じられます。 行間も広く文字も大きいので読書習慣の無い人でも読みやすいと思います。 個人的には文字が大きくなった小さくなったりするのが 妙に気になってしまったのだけど、それは私の老眼のせいだろうか。 運輸安全委員会もですが、この本のこと以外でも水俣病の時も福島の時もしかり、 ニュースでも新聞でもしょっちゅう見るけれど、一事が万事 必要な事は黒く塗りつぶされ錚々たる肩書の高級官僚達は数年ごとに入れ替わる。 後の事は存じません。 秘密にしたい事も秘密です。 「声を届けたい相手、「国」とは一体誰の事なのか」 この長い年月、酢屋商店の社長さんも遺族も生存者も、被害者達にとっては 本当にもどかしい時間だったと思います。 全ての人が、いつか心から笑える日が来ますように。祈りを込めて、続報を待ちたい一冊です。 そして私は苦海浄土を読もうと思う。政治家達には エーリッヒ・ケストナーのどうぶつ会議でも読んでいただきたい。 | ||||
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この本を読むまで寿和丸の事故について一切知りませんでした。事故の原因は潜水艦との衝突が一番怪しい、とはいえそれを証明するのがかなり難しい。 意図して隠してる事があるのか無いのか、もしかしたら本当に事故の原因は分からない(お金の問題等で調査しきれなかった)だけなのかも知れませんが、亡くなられた17人の方、ご家族、関係者の皆さんの想像しきれないやりきれない気持ちを考えると、現実は酷い。 | ||||
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長い時間をかけて多くの関係者に取材を重ねていく様子が丁寧に書かれています。背景にある疑問とともに、取材した相手や関わった人の様子や思いがとてもよく伝わってきました。自分は15年前の沈没については知らなかったし、当時ニュースで見た記憶もなかったですが、人の命が失われた事実があって、さらに震災という大きな災害に見舞われたご遺族や関係者にとってこの件は何も終わっておらず、こうしたことは今また誰かや自分にも起こりえる事と思います。今後新たな進展がある事を期待したいです。 | ||||
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最初に断っておくと、わたしは本書の最後の章に出て来る弁護士。だから、本書を褒める、というつもりはない。本書の何よりもすごいのはしつこい、とにかくしつこい、長い時間をかけた取材。なかなか取材に応じない相手も筆者の取材姿勢、問題意識に共感してかやがて応じる。そして重要な発言をする。おそらく部外者にはこれまで話すことがなかったような話なのではないだろうか。筆者は発言者を褒めちぎるでもなく蔑むでもなく、発言者の言っていること、言わんとすることを正確に記録しようとする。本書に出てくる発言者のほとんどは実名。フライング的に実名で書けば発言者から抗議殺到だろうが、この書き方なら抗議はないだろう。発言者はだれも公になることを覚悟している。 本書は多くの証言を集め、また、丁寧な調査をしているが、明確な結論に辿り着けていない。しかし、何が真相か、何が真相解明を妨げているのかは、おぼろげながら感じるものがある。本書を読んだ者の間でこの点について議論するのも意義があるだろう。 本書を読んでいると、事故発生当時すでにあった、最大潜航深度6500メートルのしんかい6500で探索すればいいのに、なぜしなかったのかという疑問が湧く。その疑問は、1985年8月に起こった日本航空123便墜落事故の原因調査で、伊豆半島南部の上空で落下した垂直尾翼と補助動力装置を海から引き揚げようとしなかった国の姿勢に抱くのと同質の疑問だ。 本書には、運輸安全委員会が設置された意義が繰り返し指摘される。そこでは、事故原因を究明して将来発生する事故の防止と被害の軽減に寄与することにあるから、事故原因を曖昧にすることはできない、何かを具体的に書かなければならない、という言われ方がされている。 運輸安全委員会が本気でそう考えているのだとすれば、呆れる。報告書にこんな事故原因の書き方をされたのでは将来の事故の防止にも被害の軽減にも役立つはずがない。むしろ有害無益だ。事故原因は客観的な事実として存在する。真相に辿り着けなければ辿り着けたところまでの原因可能性を指摘すればいい。調査記録を保存し、原因究明をしたい者が見られるようにしておけばいい。将来、後に続くだれかが再検証することでより真相に近づけるかもしれない。原因可能性は原因蓋然性に、さらに真相に辿り着くかもしれない。そうしなければ、真相解明を引き継げる者は一人も現れない。それでいいのか。 筆者ひとりでは真相に辿り着けないかもしれない。本書を読んだ人たちのなかから真相解明の作業に加わる者があちこちに現れれば、いつか辿り着ける日が来るかもしれない。 レビューのなかに、「潜水艦説をとった場合の教訓は、船員の安全を本当に考えるなら、船員の居室をもっと上部に配置すべき、ということだ。」という指摘をしているものがあった。わたしも船の構造だけを考えたとき、そうかもしれないと一瞬考えたが、3人の生存者の当時の状況を知って、すぐにその考えは消えた。今回の事故の場合、近くに漁船がいてくれたからこそ助かった人たちがいたのだ。これがもっと遠く離れていたら、生存者はいなかったのではないか。課題は沈没までの時間の短さと、海面に広がる燃料の厚さと広さだ。潜水艦に船の底を破られて燃料が一気に漏れ出たら、海に飛び込み船から脱出できたとしても、一面に広がる燃料の幕で、呼吸ができない(しにくい)、泳げない(泳ぎにくい)、短時間で体力を消耗という状況は変わらない。そうだとすると、乗組員の居室がもっと上部だったとしても全員が助かるとは思えない。解決策になっていない。 海上の船には海中の潜水艦はわからない。潜水艦は海上の船に気づき得る。測定できないないなら海上には船がいるものと考えて操縦すればいい。それはどこの国の潜水艦でも同じだ。船員の居室を移動させればいいという提案者は、「著者が今後、軍事の闇を突っついて、当て逃げの潜水艦を探し出しても、これから中国潜水艦も増えてくる中で、ほとんど意味があるとは思えない。」と書いているが、米国の潜水艦も日本の艦船もこれまで責任逃れをしようとした事件があった。中国だけが無法者であるかのように考えるのは誤りだ。軍隊はどの国であろうが平時に一般市民を犠牲にすることがある。だからこそ、政治的に対立関係にある国同士であろうがあるまいが、戦争に関与していない船舶に危害を及ぼしてはいけないのだ。 | ||||
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船舶について全く無知な私でも分かりやすく、何より人間ドラマに引き込まれました。サスペンスのように読み進まないといられない。読み応えありました。 | ||||
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何十人いや100人を超えてるかと思われる取材先の人々の自問自答や、それぞれの立場からの事故への目線が1冊のなかに書き出されている。そして事故調査当局の言動や日本の海上自衛隊やアメリカ、ロシア、中国などの潜水艦事情に至るまでの情報が記録されている。事故後に小名浜を襲った震災と原発汚染水が地元の漁業に及ぼした影響も。 提示された情報量が多いため、この取材は一体どこに行き着くのだろう、作品の意図は何か、と身構えて読み進めたが、終盤に著者が用意しているメッセージに、酢屋商店の野崎社長の生き様に、そして作中で紹介された石牟礼道子の花の詩に心打たれた。 詩のなかの花は、権力にかき消されるような困難な境遇であっても、ひたむきに奮闘する人々の姿に重なる。彼らの姿を知り、思いを受けとめること。我々は自分なりに事実に向き合うべきだということ。この作品の核心はこれなんだろう、と。 本作は間違いなく、多くの人々の目に留まるべき、と思う。 | ||||
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当書を読むまで15年前にこのような漁船沈没事故があったことを知りませんでした。 当書を読み進めていくと、まるで自分がその場にいるような感覚になり、とてもやるせない気持ちでいっぱいになりました。 酢屋商店の野崎社長、3名の生存者の方々そして遺族の思いを考えると悲しみで胸が一杯になりました。 著者の伊澤さんも、取材を通して多くの不条理と向き合ってきたのではないかと推測します。 当書を通じて、この漁船沈没事故を多くの人が認識し、真相解明できる事を願ってやみません。 | ||||
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ミステリー仕立てで息をつかせぬ展開。 転覆事故についてすごく詳しい描写なのに疲れさせない。映画を見てるよう。 生還者の記憶を迫真に迫って再現、そこから湧き上がった強い疑念。その流れの前半の描写が圧巻ながら、インタビュー中の著者の視点や気付き、腹の探り合いなど、後半の心理戦も臨場感たっぷりに描かれている。 著者は事故を「記憶になかった」と書いているように、船舶や漁業について詳しくなかったようだが、そのためか、専門的な話が分かりやすく書かれており読者層を選ばない。今まで知らなかった、知ろうとしなかったことを知るワクワク感も堪能できた。 そして、権力側から公表されなくても、一人一人が声をあげ、動かせぬ根拠を集めれば、ここまで核心に迫れるということが希望に思えた。真相究明への著者の切実で真摯な姿勢に、徐々に協力者が増えていくことも頼もしい。真実は深海に葬られたと受け取るか、真実は深海で待っていると取るか、後者に導かれた読後感だった。 また、オーソリティが発表した事柄だけを事実として記事にするジャーナリズムへの批判ものぞき、痛快。本来ジャーナリズムが持つべき権力監視の役割の重要性を思い知らされる。不条理の海で泳ぎ続ける人々、正史の裏側に追いやられた人々に向ける著者の温かい眼差しを感じる。生還者や遺族の方々は、事故から15年過ぎたが、著者に会えたことが苦難の中の僥倖だったと心から思う。 | ||||
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10年以上前に小名浜で起きた巻き網漁船の転覆事故。正直なところ、私自身の記憶に全く残っていなかった。 冒頭、生存者の視点で転覆事故が再現され、緊張感溢れる展開。著者はひょんなきっかけからその真相を追うことになるが、読者自身も著者と共にその真相を追い求め、読み進められずにはいられなくなる、そんな作品に久しぶりに出会うことが出来た。 | ||||
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事故調査の経緯を読むと、現場の声、当事者の声を軽視し、ただそのままの事実を観るということをしない官僚。 ないしは都合の悪い事実を隠蔽する官僚。 ずさんで都合のいい解釈で綴られる事故報告量。 それが民主党政権時の2011年4月に提出されていることに暗澹とする。 東日本大震災直後で混迷していたとはいえ、民主党の政治家たちはこのことを知っていたのだろうか。 濃密なドキュメンタリーだった。 事実を追うことだけでなく、置かれた人の心情までが濃厚に描かれている。 『花に奉る』ただ咲く花一輪にこめられた想い。 言葉を介す必要のない共感。 一方であまりにも感度の低い役人たち。 感度が低いゆえに、自己の感度の低さ、被害にあった他者への応対の鈍さに、まったく自覚がない。 常につきまとうこの霞がかかった精神性、霊性、魂たち。 相互通話や意思疎通が不可能な別の生物種とさえ思う。 280頁 人の話を深く聞くことの意味についても野崎は語った。「石牟礼作品から野崎さんが受け取ったものは何ですか」という私の問いに答えてのことだ。 「話を聞く行為って大事なんだろうな。ダイレクトに主張するのではなくて、聞くことで相手をかえって癒せるなって。励ましを寄越すというのじゃなくて、黙って聞いてくれるだけでいいのかなって。そこの意味合いが、石牟礼道子話の中に(見える)。あれは、うんと(患者家族らの声を)聞いて書いたからあの大作になるんだろうけど、あの過程に石牟礼道子の『聞く』という行為がすごくあるんだろうな」 まるでAH(アティテューディナルヒーリング『怖れを手放す』にて紹介されている癒しのプログラム)と同じ境地になっている。そこに苦悩を通して到達してることに感銘する。 それは野崎さんと著者の伊澤理江との関係にも表れてること。野崎さんは伊澤さんに聞いてもらうことで癒されてる。 | ||||
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この正月の空いた時間で一気に読みました。読んだ後は少々寝込みました。本は好きですがレビューを書いたことはありません。しかしこの「黒い海」を読んだからには書かずにおられない衝動があります。 ここ数ヶ月、遭難を題材にしたノンフィクションを読んでいた関係で、たまたま「黒い海」をネットで見かけて「まっ読んでみようか?」くらいの軽い気持ちでした。作者の伊澤さんに謝りたい気持ちになります。 真実を追求する執念を感じます。「メールの印象通りのお人柄」そうそう!「鳥肌が立つ」というところは一緒に鳥肌が立ちます。未解決事件、恐らく想定されるであろう答えは存在すると、状況を正確に押さえれば導かれるものと思われます。 しかし、石牟礼道子さんの詩を併せても押し寄せる不条理、生の不可解、そして一条の光、何とも言葉になりません。一つの事件を題材にしつつも、その本質は人生そのものであり、人の生き様であり、人の醜さと優しさ、そういう感慨を持ちました。事象を誠実に見つめる、その真摯な精神に敬意を捧げます。これからもずっと伊澤さんを応援したいと思います。久し振りにこんなにしっかりした書物に出会えたと、書いている今、ふと思って、やっと顔が緩みました。 | ||||
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