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炎の爪痕



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【この小説が収録されている参考書籍】
炎の爪痕 (創元推理文庫)

炎の爪痕の評価: 3.67/5点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

ジミー、ウィロー、キャシーたちの未来が幸せであることを遠くから祈るのみである。

本書は、「大鴉の啼く冬」から始まった『シェトランド島シリーズ』第8作目であり、その最後を飾るシリーズ完結編でもある。 
 この8作は一貫してシェトランド島を舞台にしており、その作品の構造も、序盤・中盤・終盤の基本形があり、ページ配分も同じくらいとシリーズ全体で共通している。

 にもかかわらず、このシリーズがマンネリ感を抱かせずここまで人気シリーズとして続いてきたのは、被害者や加害者を始めとしたシェトランド島内の人間関係がきめ細かに描かれ、そこに浮かび上がる人間同士の歪みや綻びが島内だけのものではなくどこにいても起こり得る普遍的なものであるからだと思う。

 と同時に、シリーズものであるからこそのレギュラー登場人物たちの近況の変化に対する尽きない興味がそこに加わる。
 フランの忘れ形見であるキャシーの存在が主人公ジミー・ペレスの生き方にどう影響してくるのか、キャシー自身の幸せはどうなるのか?
 前置きが長くなったが、この最終巻に課せられた宿題は読む前から読者に否が応でも期待せざるを得ない重さを持っているのだった。

 その結果に対する評価は読者各位それぞれのものがあるだろうが、いやはや、ジミーが選んだ今後については、彼の両親や親戚だったらかくやというほどの下世話な心配が尽きない。
 私は身内ではないのだから、遠くから彼らの未来が幸せなものであることを祈るばかりである。
炎の爪痕 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:炎の爪痕 (創元推理文庫)より
4488245129
No.1:
(4pt)

真実に近づこうとする右肩上がりの上昇曲線が忘れがたい結末へと向かう

「地の告発」(2020/11月)以来のアン・クリーヴスの新しい翻訳。「炎の爪痕 ペレス警部シリーズ "Wild Fire"」(創元推理文庫)を読み終えました。旅行中に読んでいましたので、少し時間がかかりました。退屈だったわけではありません(笑)。旅の合間に喉を潤すようにミステリを楽しみたい。
 舞台はいつものように英国、シェトランド諸島。シェトランドへ引っ越してきたヘレナとその家族。家の納屋で前の住人・デニスが首吊り自殺をして以来、おかしな絵が描かれた紙が家の中で見つかるようになり、ヘレナはペレスに相談することになります。そして翌日、その納屋で再度首吊り自殺が発見されます。その死体は、旧家・モンクリーフ家で子守をしていた若きエマ・シアラーでした。
 何故?誰が?ペレスはインヴァネス署からウィローを呼び寄せ、シェトランド署の刑事・サンディと共に捜査を開始します。
 一方、静かなさざ波のような寄せる思いと手離しがたい(とても健全な)思いが拮抗していたペレスとウィローの関係性の中に或る重大な事実が訪れることによって、事件の持つサスペンスとは別にもうひとつのサスペンスが生まれ、そのうねるような緊張感の中で事件の真相が徐々に明らかになっていきます。いつものようにスリラーですので、ストーリーを語るのはここまでにしたいと思います。
 <罪深さ>、家族の歴史が織りなす<機能不全>、シェトランドの風土が生み出す風聞という名の<悪意>。アン・クリーヴスのテーマはシリーズ中変わることがありません。それは、米国西海岸を描き続けたロス・マクドナルド同様ひとつのテーマを手を変え品を変え、繰り返すことによって一歩ずつこの世の真実へとアプローチし続けているような気がします。
 真実に近づこうとする右肩上がりの上昇曲線が"双極性障害"の持つ不確かな苦しさをも内包しながら、シェトランドの風の冷たさと「バイキングの火祭り」の篝火の暖かさを伴いながら忘れがたい結末へと導いてくれます。
 パズラーとしても緻密な布石が随所に散りばめられており申し分ありません。
炎の爪痕 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:炎の爪痕 (創元推理文庫)より
4488245129

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